2020/07/20 のログ
ご案内:「訓練施設」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 めったに立ち寄る事がない訓練施設。
 試験が終盤を迎えて、利用する生徒が減ったところに丁度良く申請することができた。

「さて――やりますか」

 誰もいない中空へ話しかけるように、虚空へと視線を向けた。
 訓練所の入り口には『神樹椎苗 使用中』と表示されている。

『――――――』

「そうですね。
 次の領域を抜けようとしたら、必須なのはちげーねえのです」

 『彼女』のいる、あの場所へ。
 向かおうとすれば、椎苗では絶対に越えられない領域がある。
 だからこそ、裏技のような方法を使えるようにしなければならなかった。

神樹椎苗 >  
 虚空に向かい、手を合わせる。
 瞳を閉じ、己の内側に語り掛けた。

「――生は死と共に在り。
 ――祝福は安寧をその身に宿す。
 ――死を想え。
 ――死に眠れ」

 それは、忌むべき祝詞。
 人々から避けられ、畏れられ、排された、失われた呪詛。
 椎苗を取り囲むように、黒い霧が漂い、訓練所の中を渦巻いていく。

「――吾は黒き神」

 祈りを終えると共に、光を遮るように黒い霧が空間を覆いつくす。
 その中にうっすらと、闇色の炎が揺らめく。
 椎苗の右目に、黒い炎が灯っていた。

ご案内:「訓練施設」にさんが現れました。
神樹椎苗 >  
 体の中に、別の存在が宿るのを感じる。
 急速に魔力と――生命力を吸い上げられているのが分かった。

(――まあ、こんなもんですかね)

 今の世の中でも珍しい、神を呼び下ろす正真正銘の儀式魔術。
 かつて、椎苗の体に書き込まれた儀式の術式は、椎苗という存在に溶け込んだまま存在している。
 だからこそ行える、完全な状態での神の召喚。

 自身の肉体を媒介に、魔力と命を引き換えに神を降ろす魔術だ。

> (ドゴンゴンゴン)

強烈なドアノック、そしていつもの声

「しーいーなーちゃーん、あー、そー、ぼー!」

神樹椎苗 >  
 心はあまりにも静かで、穏やかだ。
 その身に降ろしているのは正しく『死神』だというのに、安らぎすら感じられる。

(――久しぶりにしては、しんどくないですね)

 『あの頃』と違って、強制されているからじゃないだろうか。
 それとも『―――――――』と、目的が一致しているからだろうか。

 そうして自身に集中している中、聞きなれた声が聞こえた。

(また、すごいタイミングできやがりますね)

 よくまあこの場所が分かったものだと感心しつつ、ロックがかかっている以上、入ってこられる心配はないだろう。
 そう考えながら、ふと、疑問が沸き上がった。

(――ロック、掛けましたっけ?)

 そう、訓練所の施錠を忘れていたのである。

> 「えいっ」

ドアが開いて、いつもの全力ようじょが走って目の前までずさー、と走って滑り込んだ

神樹椎苗 >  
 訓練所の中は、黒い霧で満たされていた。
 照明の光すらおぼろげにしか通らない中、ぼんやりと浮かび上がる椎苗の姿がある。
 その右目には黒い炎がゆらゆらと燃えている。

(あーあ、やっちまいましたねこれは)

 目の前に滑り込んでくる少女。
 万一にも害を与える事はないはずだけれど、うっかり魔力視でもされてしまえば。
 今の椎苗に宿る、神の本質を直視してしまう事になるはずだ。

> 「わ、しーなちゃん、黒くて大きくて、深くて広くー、ん?」

じーと見つめていたが、途中でぼんやりと見ながら。

「カッコいい!」
じーと見つめてくる

神樹椎苗 >  
 少女の反応に、思わずひっくり返りそうになった。

(いや、まあ、それでいいんですけどね)

 どうやら魔力の質とその流れだけは追えているようだったが。
 『死神』の本質、死、そのものを目にするには、まだまだ届かないようだ。
 うっかりショック死されても困るので、その点に言えばむしろ幸いと言うところだが。

(まだまだ、特訓する必要がありそうですね)

 とはいえ、教えるのが上手い教師は多い。
 椎苗が何かを教える必要は、きっとないだろう。
 しかし、どうしたものかと一人悩む。

 今の状態の椎苗に、肉体の主導権はほぼ無いと言っていい。
 そして、基本的に椎苗の意思でこの状態を解除することも出来ない。
 椎苗が出来るのは神を降ろす『だけ』。

(さっさと帰ってもらわないと――)

 この魔術が終わるのは『この体の命が尽きるとき』。
 あまり人に見られたい物ではなかった。

「――娘よ。
 余り吾を見るでない」

 そう、『椎苗』が柔和に微笑み、少女へ暖かな瞳を向ける。
 普段の椎苗とは、どこか違う表情だろう。

 開きっぱなしの扉からは、黒い霧が溢れ出していく。
 霧自体には何も害はないのだが、人に見つかって騒ぎにならないとよいが。

ご案内:「訓練施設」に水無月 沙羅さんが現れました。
> 「しーなちゃんだけどしーなちゃんじゃないひと?」

くきりと首をかしげ

「はじめまして!」

水無月 沙羅 > 本日も訓練時間、何時も道理のルーチンワーク。
さて、今日は何の特訓をしようか。 基礎体力は十分についた、武道の稽古は師匠がやってくれる、となれば後は魔術の訓練か。
開いている部屋は、と探すと見知った名前。

『神樹椎苗』

沙羅の尊敬する人物のひとりであり、生死観の基盤となった人物。
気が付いたら足が向く、歩いていたのに駆け足に。
また会えると思ったら止まらなくて。

「しーなせーんぱーいっ!!!」

飛び込んだなら闇の中。

「なんだこりゃああああ!?」

思わず突っ込んだ私は悪くない、悪くない。

神樹椎苗 >  
 椎苗であって『椎苗』でない。
 その感覚は間違いなく、今、椎苗の体を支配しているのは、『黒き神』そのものだった。

「吾を恐れぬか。
 変わった幼子だ」

 死神は少女に慈愛の瞳を向ける。
 しかしふと、訓練所の入口へ目を向けると。

 すぐに悲鳴めいた声があがった。

 黒い霧に包まれた訓練所は、視界は悪く薄ぼんやりとしている。
 霧は渦を巻くように漂っており、その中心には椎苗と、もう一人幼い少女がいるだろう。

「来客が多い日だ。
 なるほど、確かに間が悪い」

 ふっと、薄い笑みを浮かべて目を細める。

(ああ、また面倒なのが)

 椎苗は一人、『黒き神』に受け渡した肉体の中で、頭を抱えていた。

> 「んーと、えーと、はじめまして、希です?」

友人であって、友人でない彼女と、もう一人の誰かに挨拶するように。

少女の服には風紀見習いの腕章がつけられ。

体には蒼く光を纏っていて、生命力を感じる。

水無月 沙羅 > 風紀委員の腕章をグイッと引き上げて少しだけ仕事モードへ。

「えっと、とりあえず害はない。 うーん? 只の煙じゃないとしたら魔力の視覚化? 
 それにしたって随分と。」

禍々しい、というのが正しいだろうか。
渦の中には椎苗先輩と、同い年くらいの少女?
なんにしても通常のあり様ではない、これはすぐに訓練課程の中止を、とりあえず椎苗先輩の様子をうかがうべきか。

「しーなせんぱーい? ご無事ですかー? ちっちゃい女の子も何もないかなー?
  魔力漏れ出てないか確認しますよー? 」

魔術なら自分の本分……いや、正確には魔術は二つしか使っていないけれど、魔術や魔力の素養は高い訳で、自然とその関係の、風紀の仕事の依頼も増える、となると勉強も必要なわけで。
何なら医療魔術師のまねごとくらいは可能だ。

あぶない状態でも困るし、二人の状態を確認しようかと、目に魔力を集めようとした。

> 「ふーきのお姉さん?」

くきりと首をかしげ

「あっ、だめ、みちゃだめ!」
たしか今の状態はこうみつどまりょくやらえねるぎーをまきちらしてるだけって言ってた、眩しいってそふぃあせんせーが教えてくれた

神樹椎苗 >  
 死神は、新たに現れた娘と、少女へと交互に視線を揺らす。

「はじめまして、か。
 吾はよく知っている――無垢な幼子よ」

 そう少女へと静かに語り掛けつつ、こちらの様子を窺う娘へと顔を向けるが。

(――ああ、やっちまいましたね)

 もし、魔力を読み取れるのなら、それは人のものではありえないほど強く、異質なものだろう。
 もし、性質を読み取れるのなら、それは見かけによらず、穏やかで慈愛に満ちているだろう。

 けれどもし。
 その本質を読み取ってしまえば。
 そこにあるのは純然たる『死』そのもの。

 視覚だけでなく、心にまで届く『死』という概念の塊。
 それを目にすれば、あらゆる『死』の記憶を想起し、また予感し、幻覚する事になるだろう。

水無月 沙羅 > 「ほぇ?」

かけられる声、時すでに遅し。
魔力を読み取り、その性質を読み取り、本質を読み取ろうと……。
椎苗の方へ顔を向けたのがいけなかった。

ジュッ、目の焼ける音がする。

「いったぁああああああ!?」

希と名乗った幼い少女の溢れんばかりの魔力に晒されて目が焼ける。
どんなエネルギーをしているのかこの二人。
幼女怖い。

幸い不死の体にその程度問題はないが、魔力視は諦めたほうがいいだろう。

「お、おおおぅ……、ちょ、ちょっと遅いよ……、えっと、二人は何ともないのね?」

よろよろ目を抑えながらとりあえず接近することにしよう。
ところで、さっきっから椎苗先輩キャラ変わってないですか?

> 「んーと、あ、しーなちゃんみたときのくろいのさん?」

神をくろいの呼ばわりである、このようぢょ。

「えーと、だいじょうぶ?おねーさん、ごめんなさい」

言われても制御不能の無意識パワーである、が、心配そうに謝って

水無月 沙羅 > 「だ、大丈夫大丈夫。 おねーさん死なないし怪我治るから、あ、でもそれ無暗にやっちゃだめだよ?」

回復した視力で辺りを伺い、希の髪を優しく撫でる。

「私は水無月 沙羅、風紀委員で、あぁ……なるほど見習い。」

駆けつけた、というよりは遊びに来たらこの状態だったという感じだろうか。
この少女は今のこの現状に何か覚えでもあるらしい。
とりあえず害がないのなら静観としようか。

神樹椎苗 >  
 目を抑える様子に、椎苗は安堵していた。

(まったく、ヒヤヒヤさせやがりますね)

 肉体がどれだけ不死だとしても『精神』までは不滅ではない。
 体が生きていても、心が死んでしまえば取り返しがつかないのだ。

「――ほう、運がよいな。
 その幸運に感謝するがいい、哀れな娘よ」

 死神は憐憫を含んだ目で娘を見る。
 正しき死の循環から外れた、哀れな魂。
 死神にとって、本来ならば安寧へ送るべき相手だった。

「ああ――良い目を持っている。
 師に恵まれているな、幼子よ」

 そして対照的に、慈しむような視線を向けるのは少女へ。
 
 二人が触れ合う様子を見れば、その様子をじっと見守り、少女に答えるだろう。

「――吾はかつて世界から排されたモノ。
 吾はかつて人々に畏れられたモノ。
 吾は安寧を司るモノ」

 そう二人に向けて語る。

「今は椎苗の身体を譲り受けている」

 

> 「ご、ごめんなさい、さらおねーさん、ちから、せーぎょ出来なくて」

濃密な闇に身体が勝手に反応しているのだろう、光るのが抑えられずに先輩である沙羅に謝罪し

「うん、そふぃあせんせーにならったの、でもみじゅくだからあんまりみえない、かも、よろしくおねがいします、くろいのさん」

ぺこりと頭を下げた

水無月 沙羅 > 「運が良いとは思えないんですけど!?」

眼焼かれたんですけど!?

真実から免れた沙羅はその言葉の真意を知る事は…。
肉体は不死かもしれないが、心が死ねば治せはしない。
いや、心も一度死んだといえばそうなのかもしれないが。

「哀れな娘って、まぁいろいろ境遇はあれですけども……。」

どうにも様子がおかしい、こちらに送る目線も、言動も、依然あったソレとは違う。
以前も確かに上から目線ではあったが、これがどっちかというと……。
うん、そう、神様目線とでもいうべきなのだろう。

「……安寧。 ですか。」

畏れられて、安寧をもたらす物……椎苗先輩のあの言葉を想起させるというならきっとそれは。

「なるほど、運がいいとはそういう事ですか。
 譲り受ける……椎苗先輩が望んだと。
 まぁ、まぁいいです。 椎苗先輩に怒りたいところではありますけど。」

自分に死を想えと言っておいて全く、死の神(仮)を降ろすとは何事か。
まぁ、それだけの事情があるのだろうけど。

「あぁ、魔力制御ができないの?そればっかりは感覚で掴むしかないものね。
 ソフィア先生。」

あの試験をボイコットした教師か、本当に教師なの?
大丈夫? この子ちゃんとした授業受けてる?

「何かあったら私頼っていいからね……。」

どうしてこの子たちはこう、心をえぐってくるのか。

神樹椎苗 >  
 死神は娘へと瞳を向け、笑う。

「気分を害したか?
 案ずるな――吾と椎苗の目的は一致している。
 正しき終わりを――『祝福』と『安寧』を与えねばならないモノがいる」

 そう娘へ伝えると、ふと、遥か遠くへ視線を向ける。
 その顔色を見れば、普段から白い椎苗の顔色は、土気色になっているだろう。
 生命力を消費しての神降ろし。
 肉体への負担は少なくないのだろう。

「吾と椎苗はそのために存在する。
 哀れな娘よ。
 貴様が望むのであれば、その魂も送ることが出来よう」

 そうして試すように、娘へと問いかけた。

「くろいの――くく、ああ、今の吾はそれで充分だ。
 椎苗には黒き神と呼ばれているが――今更神を名乗るのも、おこがましい」

 少女に答えながら、自らを嘲るように笑った。

> 「あんねー?あんみんみたいな?」

よくわかんないやってかおのようじょ

「んーと、いのーもちょっとだけ」

照れ臭そうに申し訳なさそうに笑いながら、沙羅にゆびをちょっとだけ開いて

「ん?うん?ありがとうさらおねーさん」

よくわからないがお礼を言う

「しーなちゃんも、くろいのさんも大丈夫?」

じーと眺めて

神樹椎苗 >  
「――ああ、そのようなものだ。
 貴様には、まだ関わりのないものだがな」

 少女に微笑みかけながら、優しい声で言う。

水無月 沙羅 > 「じょーだん、私はまだその『祝福』と『安寧』を受け取るつもりはありません。」

今それを受け取ると、間違いなく暴走する厄介な男が居るのだから。
それにしても。

「……私は構いませんが、いや、構いますけど。 それ、彼女に見せてもいいんですか。」

顔色がもう生者のそれではなくなりつつある、おそらくは生命エネルギーとかそこら辺を食ってる異形の存在。
彼女ならたぶん、スペアがあるから問題ないのだろうけども。
幼い希に其れを見せるのはまずいのではないか?

と、随分と小さい死神を見下ろす。
また『椎苗』の死を視るのは正直良い気分ではない。

あぁ、自分が死ぬのを見る彼らもまたこういった気分なのかもしれない。

> 「んー、のぞみはねちゃうとぐっすりしちゃいます!」

そういう事ではないのだが

「ん?みちゃだめ?」

じーと二人?一人と一神を見て

神樹椎苗 >  
 死神は不愉快そうな娘を見ながら、どこか楽し気に笑った。

「ふふ、そう機嫌を損ねてやるな。
 椎苗もまた、理を外れたもの。
 吾がいずれ、『もう一度』送らねばならぬ者」

 その声に威圧するものはなく、ただ穏やかに凪いでいた。

「吾の不始末を、仰がれてしまえばな。
 しかし、今はその術がない。
 その時が訪れる事は、ないのかもしれぬが――」

 その様子は後悔を含むもので、常の椎苗よりも、ともすればずっと感情的に見えるだろう。

「――そうだな。
 幼子よ、貴様はまだ目にするべきものではない。
 ソレに触れるには、まだ早いだろう」

 そう言いながら少女へとゆっくりと指先を向ける。

「ああ、ぐっすりするといい。
 束の間だが、瞳を閉じて身を委ねよ」

 死神の指先が揺れる。
 黒い炎が微かに灯った。

 それは死には遥か遠い、しかして、入り口である眠りへの誘い。
 抗う事も難しくないだろうが、少しずつ眠気がわいてくるだろう。
 

> 「ん、ん?んー、ふぁ」

欠伸をすると段々と微睡んでふらふらとし始め、近くの二人の体に倒れ込むように

水無月 沙羅 > 「うぉとっとっと!?」

倒れこむ希を間一髪で掬い上げ、抱きかかえる。
赤子をあやすように背中をポンポンと叩いて眠気を誘いながら。

「良い趣味してやがりますね……と、椎苗先輩なら言いそうです。」

なんとなく、そんな気がしただけ。
この人は好きになれそうもないな、と思う。

「降霊術、正直椎苗さんに聞こえてるのかわかりませんので一応。
 時計塔で待ってますから、って伝えてくれますか?
 それと……、映像記録はこちらで消しておきます。
 たぶん、訓練施設には万が一のための記録媒体があるはずですから。」

後始末くらいはしておいてあげますよ、とため息を零した。

「私は、死ぬのも死を視るのも嫌いです。」

沙羅はこの惨状を見守ることを、それでも尚選択した。

> 「くかー、すぴー」

むにゃむにゃと沙羅に抱かれて
眠りはじめた。

「えへへ、しーなちゃんから、あそんでくれるの?、むにゃむにゃ」

しあわせな、ゆめをみているのだろう

神樹椎苗 >  
 少女を眠りに誘い、娘がそれを抱きかかえるのを見届ける。
 邪険に扱われようと、それに死神が気分を害することはなかった。

「ああ、椎苗なら言うだろうな」

 くく、と笑いながら、死神は娘を見上げる。

「案ずるな、その眠りは束の間のもの。
 吾が離れれば、幼子はすぐに目を覚ますだろう」

 そして娘の提案には首を振る。

「必要はなかろう。
 吾の事、そして椎苗の事も、この島の管理者は心得ている。
 なにせ幾度となく、椎苗の意思に反して吾を呼び出したのだからな。
 椎苗はすぐに『作られる』。
 伝えるものがあるのなら、自ら伝えればよい」

 そして、いよいよ椎苗の身体からは生気が失せ、死神は静かに瞳を閉じる。

「――ああ、吾も嫌いだ」

 そう呟くように言うと、周囲の霧はあっという間に晴れていき、椎苗の身体はその場に倒れるだろう。

 そして、その直後に前触れもなく。
 その体を見下ろすように、寸分変わらない姿の椎苗が現れた。

「はあ。
 やらかしちまいましたね」

 施錠を忘れたせいで、見せたくないモノを見せてしまった。
 自分の死体を一瞥して、娘と少女に視線を向ける。

「――後輩、違法ロリを見ておけですよ。
 さっさと『処理』しちまいますから」

 そう言って屈みこみ、死体に触れると、その手が徐々に植物のように変化していく。
 そして死体へと根を張るかのように、勢いよく浸食していった。
 それから一分と待つ事もなく、死体は身に着けていたもの諸共、一山の砂へと変わっていくだろう。

> 「しーなちゃんジェンガはそこはそこはだ、ん?」

スッキリと目が覚めたようで二人をみて

「さらおねーさん、しーなちゃん、おはようございます!」

水無月 沙羅 > 「わかってます……。」

何処か不服そうに頬を膨らまして椎苗をみやる。
あぁ、この人も『自分の死』に無関心になってしまったのだろうか。
私は、まだそこまでにはなれない。

「せめて弔い、って言って下さいよ。」

さっきまで生きていたんだから。
言おうとして、涙が出てきた。
やっぱりこういうのは好きじゃない。

「希ちゃーん、もう起きていいですよー。」

涙を拭って背中をもう一度優しく叩く。

「あ、おはよう。」

早かった。

神樹椎苗 >  
 不服そうな娘に、椎苗は胡乱な瞳を向ける。
 その目は先ほどと違い、無味乾燥な深く青い色。

「しいは、こういう『モノ』ですからね。
 しいにとって、『死』は救い。
 痛みも苦しみもなく死ねるなら、それでいいんです」

 結局椎苗は、自分の死に、無関心にはなれなかった。
 むしろ、死に焦がれ、自らの死に囚われていると言ってもいい。

「お前のような再生と違って、再生産、再構築。
 『端末』として消費されるだけの、道具でしかねーのです。
 そんなもんに、情を持つ必要なんかねーですよ」

 そう、すっかり普段通り、突き放すような物言いに戻っている。

「おきましたか、違法ロリ。
 随分と幸せそうな夢を見てたみてーですね」

 目を覚ました少女に、視線を向けて眩しそうに目を細めた。

水無月 沙羅 > 「いーやーでーすー。 ロボットにだって感情があればそれはもう道具じゃないですからね。
 私はそういう風には、ぜーーーーったい、扱いませんから。」

べーっと舌を出して抗議する。
子供みたいになれるのは不思議とこの人の前だけだ。

「っていうか、希ちゃんと扱いがあまりに違くありませんかー!?」

> 「しーなちゃんはしーなちゃんだよね、あそぼ?」どたたと近づいて

「ありがとさらおねーさん、ねちゃってた」

ごめんなさいと

水無月 沙羅 > 「ん、いいよ希ちゃん。 子供は寝て育つっていうものね。
 どこも具合悪くない?」
 
なんだか、やっぱり懐かれてるよなぁとみる。
姉と妹……という感じだろうか。

神樹椎苗 >  
 あんまり子供っぽい娘の様子に、椎苗は目を瞬かせた。

「お前、ずいぶんと『それらしく』なりやがったじゃねーですか。
 ――まあ好きにすればいーです。
 それと、別に扱いを変えてるつもりはねーですよ」

 娘の主張を、特別、否定することもなく。
 そして両者の扱いに違いを感じるとすれば、抵抗を諦めたかどうかだろうか。

「いつも言ってますけど、遊ばねーです。
 お前、試験がもう終わるからって、こんなところまで押しかけてきてるんじゃねーですよ」

 そう、まっすぐにじゃれついてくる少女へ右手を伸ばして制しつつ。

> 「大丈夫ー、元気いっぱい、いいゆめ見たし」

沙羅に力瘤ポーズ

「えー、せいぎょの訓練してたけど、しーなちゃんがどあ、あいてらたからはいっただけだもん!」

水無月 沙羅 > 「それらしく……、ですか? よくわかりませんけど、そうさせてもらいます。
 むーん……、まぁいいですけど。子供相手に嫉妬も見苦しいですし。」

「あぁ、やっぱり懐かれてるんですね、しーな先輩。 面倒見良いですもんね。」

くすくすと、少女2人がじゃれつく様子を見て思わず笑みが零れる。
何も知らなければ背伸びした子供が同い年の子相手に意地を張っているだけに見えるのだが。
そう考えるとやはり面白い。
希にはこの少女がどう映っているのだろう。

> 「んー、沙羅おねーさんはしーなちゃんのお友達?」

くきりと

「なら、私ともお友達!」

にこーっと飛躍した意見を述べた

水無月 沙羅 > 「おともだちー……なんですかねぇ?
 如何なんですしーなせんぱい。」

個人的には、お友達というより恩師なのではあるが。

神樹椎苗 >  
「『生きてる』ように見えるっていってんですよ。
 ――ああ、色気づいてもいやがりますね。
 なに盛ってやがるんですかバカ後輩」

 随分と人間らしく――生者らしくなったと思い目を細めて見れば。
 余計なモノまで読み取ってしまって、ついついひどく冷めた視線になってしまう。

 訓練していたという少女の話を聞けば。

「なら訓練続けてやがれです。
 しいにもやることがあるんですよ」

 そうぐいぐい寄ってくる少女をけん制しながら、諦めたようにぐったり肩を落としてため息を吐く。

 友達かどうかと問われれば、椎苗は眉間にしわを寄せながら不可解極まるといった表情。

「知らねーです。
 お前はバカな後輩で、お前は面倒くさいロリです。
 それにしいにとって友達なんか――」

 一人しかいない。
 そして、一人で十分だった。

「――友人なんか、いらねーのですよ」

 そう呟きながら、少女をけん制していた腕からも力が抜ける。
 視線も地に堕ちて、目が伏せられた。

水無月 沙羅 > 「そう見えるのなら、良かった……って、何覗いてるんですかしーなせんぱいのえっち!?」

思わず体を隠すようにしてじとっと見てしまう。

「わ、私だってべつにす、好きでやってるわけですけどまぁ……ってそんなことは置いておいてですね。」

はぁ、とこちらもまたため息をつく。

「冷たい先輩ですね……良いですけど。 そういう割には、気のせいですか? 泣きそうな顔に見えますよ。」

別に、泣いてる顔が本当に見える訳ではないけれど、力が抜けて、目を伏せて、そんな悲しいこと言うのは。
泣いている子供にしか見えないじゃないですか。

どうせ拒否されるだろうから、肉体強化の魔術を使って大人げなく抱き着いてやる。

「よしよし、何か辛いんですね。」

怒るだろうなぁと思いながら、子ども扱いする様に撫でた。
なんとなく、今はそれが必要な気がしただけだ。

ご案内:「訓練施設」にさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にさんが現れました。
> 「あそぶ?さんにんで」

キラキラしたら、めでみつめて

水無月 沙羅 > 「三人で遊ぶのもいいかもしれませんねー?
 なにしましょうか、希ちゃん。」

椎苗を抱き寄せながら笑って尋ねてみる、せめてこの子くらい、お友達に認めてやってもいいんじゃないですかね。
せんぱい。

神樹椎苗 >  
 ジト目で見てくる娘に、椎苗は呆れた様子でますます冷たい視線を向けた。

「覗きたくて覗いたわけじゃねーです。
 お前が随分と盛んに色気づいてるのが悪いのです。
 どうぞお幸せにしやがれ、色ボケ後輩」

 などと、呼び名が一段階アップグレードされた。

 そしてわざわざ強化魔術まで使って抱きついて来られれば、酷く不愉快そうな表情を浮かべるだろう。
 けれど、力づくで押しのけるようなことはしなかった。

「別に辛くなんかねーです。
 お前たちに気にされるような事はねーんですよ」

 そう言いながら辟易とした様子で、両者を押し返すように両手を突っ張る。

「ええいお前たち二人してうぜーのです。
 それに遊ばねーって言ってるじゃねーですか。
 お前ら人の話を聞きやがれってんです」

 そうやって、懐いてくる二人に挟まれながら、ようやく緩慢に逃げ出そうと動き出す。
 が、簡単に逃がしてくれそうにはないので、すぐにあきらめた。

水無月 沙羅 > 「色ボケとは失礼な!! 私は一途だしボケても居ません!!
 というかそもそもあれは先輩の方からー……じゃなくて!!
 聞いてます!? しーなせんぱい!」

ぎゃんぎゃんと吠える子犬が一匹。
飼い主から邪険にされるのに抗議しているような、そんな光景。
あと何回繰り返せば、この人はこっちを向いてくれるのだろう。

> 「ん、わーい、三人であそぼー」

抱きつくように突貫

神樹椎苗 >  
「あーあー、聞いてねーですし、興味ねーのです。
 耳元で騒ぐんじゃ――お前も飛び込んでくるんじゃねーです」

 あっちへ引っ張られ、こっちから抱きつかれ、右へ左へ揺さぶられながら、すっかりやる気なく抗議。
 しかし、二対一である。
 多勢に無勢。

「お前ら、いい加減にしやがれです」

 と、そこで抱きつく二人に、頭突きを一発ずつ。
 割と手加減なしだった。

> 「ぐえっ、いたいよしーなちゃん」

頭をぶつけられ、うーと呻いて

水無月 沙羅 > 「いだぁっ……た、たん瘤はできても治るけど、痛いものは痛いんですからね……」

頭を押さえて蹲り。

神樹椎苗 >  
「じゃれついて来やがるのはまだしも、はしゃぎ過ぎてやがるのです。
 ちったー頭を冷やしやがれですよ」

 と、頭突いた本人も、額から血を流しつつ。

「はあ――もういいから引き上げますよ。
 大人しくしてたらアイスの一つでも食わしてやりますから、そろそろ離れやがれです」

 そう疲れたように言った。

> 「アイス!やったあ」

いつものように手を差し出して

水無月 沙羅 > 「って、ち、血ー! 今治癒魔術を……あ、待ってくださいしーな先輩!!
 私はストロベリーで!!」

いそいそと起き上がって、少し小さい先輩の後をついていく。
尻尾を振る子犬の様に、餌につられる子供の様に。
ちょっとだけ心配な飼い主の隣に行く。

「わたしも、はい。」

今度は、手、ちゃんと届くかな。

神樹椎苗 >  
「あーもう、鬱陶しいのです。
 なんでお前らそんなに元気なのですか」

 そうげんなりしつつ、差し出された手には抗わず捕まえられて。
 二人に半ば引きずられるようにしながら、訓練所を後にするのだろう。

ご案内:「訓練施設」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」からさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
更衣室
ぎゅ、と帯を閉めればなんとなく気持ちも引き締まったように感じる不思議

あまり実家の道場以外でこの服装になることも最近はなかったけど
気持ちを切り替える…という意味ではあって悪いものじゃない

ひた、と素足に夏とは言えタイルの冷たさを感じながら、訓練場へ
手には大きな竹刀袋、中身は竹刀ではないが、刀剣の持ち運びには便利である──

伊都波 凛霞 >  
古武術の型や鍛錬は、此処では行わない
実戦以外の場所で誰かに見せるものではないから、である

なので此処で行うのは、主にそれに追随する武器術
特に長柄ものは勘が鈍ればすぐに取り回しが利かなくなるモノばかり

手早く竹刀袋から取り出したのは折れ柄の薙刀
バチンと小気味良い音を立てて二対のそれが連結し、一本の薙刀へと姿を変える

「ふー──……」

呼吸を整えて、まずは型稽古
薙刀術の基本に立ち返る正眼
さりとて古武術の流れを組んだ、全方位に意識を向ける独特の型
 

伊都波 凛霞 >  
流水のような、無駄のない動き
時に靭やかに、時に力強く
薙ぎ、斬り、突き
360度だけはなく、上も含めた半球体

間合いの全てを意識し、立ち回る型稽古
実戦的な動きも含んだもの、であるにも関わらず
長く艷やかな髪がその動きに合わせて流れ舞う様子は、どこか舞踊にも似た美しさを見せる

伊都波 凛霞 >  
武道における『型稽古』の時間は長い
それは現代におかえる格闘技との大きな違いの一つ…といえるだろう

"多くの技を繋ぎ合わせた長い型"は実戦的な動きを交えつつも心肺機能を強化させる
戦場で長時間走り回っても息切れすることなく、戦い続ける身体を作ってゆく

一方で瞬発力を重視する近代格闘技は、決められた型の稽古は少なく、比較的自由に動く
練習で自由に身体を動かすとなれば、自由に使っても危険の少ない動作が多くなる
危険が少ないということは───殺し合いの場で殺傷能力が低い動作であるということ

故に形骸化していない型稽古は、実戦的ハードトレーニング、といえる

「……はっ───!!」

裂帛の気合とともに最後の突きを放ち、"舞"による残心を残して、型稽古を終える

伊都波 凛霞 >  
「──…ふー…‥」

やや、息が上がっている
ここのところ座学というか、机に向かっての時間が増えていた
毎日のように青垣山を上り下りしているとはいえ、長柄ものを振り回すのはまた別の疲労がある

その場に座って、ペットボトルで水分補給しつつ、小休止

さすがに試験が終わって間もない午後、
視界には生徒の姿はなく、閑散としていた

ご案内:「訓練施設」にマディファ=オルナさんが現れました。
マディファ=オルナ > 褐色犬耳尻尾少女姿のマディファ。
最近暴れていないため、気晴らしに身体でも動かそうと訓練施設に来たのだが。

「ううむ、閑散としておるのう。
 やはり試験が終わった、とやらで羽目を外しておるんじゃろうか」

と、あたりを見回しながらやってきて。
そうして、袴姿の少女をひとり見つける。

「一人、か。
 ……しかし胸が大きいのう、風菜と言いこちらの世界はそういった女子か胸のない女子かの二極化でも起きておるのかや?」

そんなことを呟くのだった。

伊都波 凛霞 >  
「……ん」

口元からペットボトルを離して、現れた人影に視線を向けると…
犬のような耳が目立つ、小さな女の子…に見える

さて凛霞の聴覚ではその小さな呟きも聞こえてしまって、
やや苦笑気味の笑顔を向けてみる

マディファ=オルナ > 苦笑気味の笑顔が向けられて。

「む、聞こえておったかや。
 失礼」

こちらも苦笑してしまうというもの。

伊都波 凛霞 >  
「ふふ、お構いなく」

目立つししょうがないよね、と

「運動でもしにきたのかな?」

学園の生徒だろうか
まだまだ見たことのない子がいるなあ、なんて思いながら
そんな言葉を投げかけて

マディファ=オルナ > 「うむ、試験試験で少し鬱憤が溜まっておっての。
 身体でも動かそうと思ってきたのじゃが、こうも閑散としておるとは思わなんだ」

適当に相手を見つけて訓練戦闘でもやろうかと思っていたら大空振り。
まさかこんなことになるとは、という渋い顔。

「そういうお主は……ふむ、一人で動いて、その休憩といったところかや?」

伊都波 凛霞 >  
少年少女にしてはやや古めかしい喋り方
その見た目通りの…というわけではないのかな、と考える
この島では、さして珍しいことでもないけれど──

「あはは、試験が終わってすぐだもの。
 すぐに身体を動かそうー、なんて人はあんまりいないかも?」

こうやって、だからこそ訪れている生徒もいるのだろうが

「そうそう。ちょうど休憩してたとこ…。
 あ、私3年生の伊都波凛霞。キミは?」

ゆっくりと立ち上がりながら、袴を払って、問いかける

マディファ=オルナ > 「やはりそうであったか。
 初めての生活様式ゆえ知りもしなんだな……」

やはり異世界は興味深い。
己の世界ですら全て見知ったわけではないのだが。

「む、上級生であったか。
 わしは一年生のマディファ=オルナという」

伊都波 凛霞 >  
「マディファちゃんね。一年生だったかー。
 この島だと聞いてみるまでわかんないよねえ」

見た目や年齢で先輩後輩かの判別がつかない
こうやって言葉をかわしてようやくそれが掴める、といった具合

「さて、私はもう少し運動していこうと思うけど……」

閑散としていて広いし、各々で運号をするのもいいだろうが──

マディファ=オルナ > 「確かにのう。
 お主から見ればこの見てくれ幼子が学園の生徒とは確認するまでわからぬものよな」

面白いものだ、と思いつつ。
まあ元の世界でもこの容姿ではあったから見た目で舐められることは多々あった。
それを利用したこともあったが。

「うむぅ、運動程度かや。
 ならばわしは日を改めるとしようかのう。
 無理せぬように……などと新参が言っても説得力は無いかの」

マディファは機械竜である。
だから普通の人間のトレーニングは意味がない。
訓練でも戦闘ができないのならば、用はないと言わんばかりに。

伊都波 凛霞 >  
「うん、試験勉強で身体が鈍っちゃってそうだったから…。
 ──てことは、マディファちゃんは運動しに来たわけじゃないのかな」

口ぶりを聞けば、首をかしげる
そういえば鬱憤が溜まっている、なんてのも言ってた気がする
運動は運動でも、所謂ストレス解消的な、何かアレソレの相手を探しに来たのだろうか

「んー…それじゃあ、軽く手合わせ…なんかしてみる?
 もちろん怪我なんかはしない程度で…」

折角出会った縁、二言三言で別れてはもったいないと少女は考える

マディファ=オルナ > 「うむ、見てくれは幼子だがわしは機械竜でな。
 多少の鍛錬程度ではどうにもならんのじゃ」

と、凛霞の申し出にぴくりと反応し。

「それは嬉しい申し出じゃな。
 では、お相手願おうかのう」

ニコニコ笑顔で返答する。

伊都波 凛霞 >  
機械竜…
見た目通りの年齢だとかそういう次元の話でもなかった

オートマータ、アンドロイド…色んな呼ばれ方はするけれど
厄介だな…と思う存在である。主に立ち会う相手という意味で
痛みを感じなかったり、効果的な攻撃が分からなかったり、といった具合

怪異や人間を相手どる技術ばかりを煮詰めてきている故、やや苦手分野といったところである

まぁ、ちょっとした手合わせくらいならいいか、と
薙刀を折りたたんで、床に置いて徒手へとスタイルを変える

「ふふ。それじゃあお手柔らかに」

前後に広く脚の幅を取り、両手を前へと構える

マディファ=オルナ > そう考えてる凛霞とは裏腹に。
マディファは己のことを知った上でどんな手を使ってくるかを楽しみにしているのだった。

「うむ、よろしく頼む。
 先手はお主からでよいぞ」

半身に構える。

伊都波 凛霞 >  
「──では」

どちらかといえば『返し』のほうが得意ではあるけれど、
先手を譲られたなら、行かざるをえない

まずは真っ直ぐに踏み込んで見て、左の手刀を放つ
踏み込みは浅めで、その一撃が様子見であることを悟らせる、かもしれない

マディファ=オルナ > 様子見の一撃か。
ならば受けても大したことはないと判断。
そもそもが圧倒的な物理攻撃への防御力を持つマディファである。

「ふっ!」

手刀に頭を突っ込むかのように当たりに行く。
その代わりに拳の一撃。
こちらも全力ではなく、防ぎやすい程度の様子見の一撃だ。

当たった手刀はマディファの硬さを凛霞に伝えるだろう。

伊都波 凛霞 >  
「っと…」

相手は避けない
ということは、ダメージを受けない自信があるということ
少女の頭部を打ち据えた手刀はその硬さを確かに捉える

同時に、まっすぐな拳の突きが飛んでくる
体重の乗せ方、踏み込みの甘さ
そして何より殺気のなさが様子見であることを伝える
となれば受け流すようにして後方へといなし、その体重を加えて投げ飛ばそうとする

マディファ=オルナ > 果たして目論見は通り、マディファは投げ飛ばされる。
だがくるりと空中で一回転し、着地。

「ふむ、なるほど。
 ならば、もう少しよいか」

言うと、距離を詰めてまた殴りかかる。
武術のそれではなく、喧嘩に使うようなパンチだが。
このくらいなら防げるだろうと加減して、しかし先程よりも鋭い拳を放つ。

伊都波 凛霞 >  
「…む」

綺麗に空中で姿勢を正しての着地
一般人程度の運動能力ならば、まず不可能な芸当である
互いに、威力偵察の第一波を終えたというところか

続いて向かってきたのは、理論武装のされていない…要するに『丸見え』のパンチ
ただしスピードはそれなり、威力も先程の突きに比べれば高いだろう
なら、あれをやってみようとやや後ろへ下がってから、姿勢を前傾にとる

狙うのは、パンチが伸び切った瞬間
この大きなモーションなら、タイミングを合わせるのは容易──

「(──今!)」

左手の掌を水平に、その拳へと伸ばして押し当てる
相手の勢いをそのまま反転させ合気の要領で以て、跳ね返す

マディファ=オルナ > 「!?」

拳の勢いが跳ね返され、大きくのけぞる。
見たこともない術理。
驚きとともに、これだから人間は面白いと実感する。

追撃するのであれば絶好の、無防備なこの状況。

伊都波 凛霞 >  
大きな仰け反り
飛ばなかったのはさすがというべきか、加減があったからか

体勢を崩しているのを見れば素早く入身の姿勢
懐に入ってしまえば、続いて手を脚を払う四方投げの形へと入り、そのまま腕をとって肩を極める──までいければ上等か
もちろん反応や反撃次第では失敗する連携である

絡み十文字、と呼ばれる古流武術・伊都波の極め技による連携の一つ
もっともそんなものを知らない人がそれを見れば腕を抑えた単なるおっぱい固めにしか見えないのだけど

マディファ=オルナ > 踏みとどまったかと思えばそのまま腕を取られ、肩を極められる。
のけぞったことに加えて、マディファの知らない術理に反応が遅れ、凛霞の狙い通りに決まる。

「ぬおぉ!?」

関節が軋む。
この程度で破損するほどダメージは蓄積していないが、それでもこの状況はきつい。

「むう、降参じゃ降参」

無理すれば反撃は出来るだろうが、それではどちらかが怪我をするまで止まらなくなりそうだと判断。
己の中の竜も異論はない。

伊都波 凛霞 >  
「1、2、──」

3カウントをはじめる凛霞だったが、その前に降参の宣言が為された
機械竜、と名乗ってはいたけれど人間の形状をしていればとりあえず人間相手の術理は通じるということだろう

「じゃ、ここまで!」

こちらも宣言し、その手を解く
間接を極められてはいたものの、驚くほどにそこへの強いストレスはなく
痛覚があったとしても痛みは残っていないだろう
それくらい、綺麗に極めていたという現れかもしれない

「さすがというかなんというか。
 二回目のアレで飛ばなかったのはちょっと驚いちゃった」

立ち上がり、やや乱れた道着を直しつつ、そう笑顔
そう言う割には、冷静に距離を詰めて仕留めにかかっていたようにも見えたが

「何にせよお疲れ様、手合わせありがとうございました。
 運動したら、水分補給も忘れずにね!」

マディファ=オルナ > 「む、普通なら吹き飛ぶのか。
 まあなんとか踏ん張れただけじゃが。
 しかしその先、腕を固めに来るとは元いた世界では考えられんかったのう」

今回の敗因は先ず間違いなくそれだ。
自分の知らない術理にことごとく対応できず、相手の思う通りに事が運んだ。
かつて英雄とも呼ばれうぬぼれていた所にいい冷や水の敗北だった。

「こちらこそ、感謝する。
 まさか魔術も異能も抜きに負けを認める事になるとは思わなんだ。
 いい敗北の経験じゃよ。
 ああ、水分補給は心配せんでも人の子とは違うからのう」

本当にいい経験になったと、笑顔でも語る。

伊都波 凛霞 >  
「あ…そういえばそうだったね」

水分補給、というのも人間ありきの考え方だ
なかなかそういった常識の変換は難しいなと再確認する

「ふふ。まあ簡単な手合わせだったからね。
 あの先をやろうとしてたら、結果はわからなかったんじゃないかなー…」

その体躯の強さや硬さを十二分に感じ取ることはできた
相手が見た目通りの存在だったなら、また話は違うのだけれど

「──さて、程よく汗も流せたし私はこのへんで、ありがとうねマディファちゃん」

取り出したスポーツタオルで首元を拭いつつ、お礼を言う
一人の型稽古なんかでは得られない、程よい緊張感の中で身体を動かすことが出来た

得物を片付け、ペットボトルを回収して…
特に引き止められることがなければ、ひらひらと手を振って別れの挨拶を告げつつその場を去るだろうか

マディファ=オルナ > 「全くじゃ。
 あそこから無理に反撃すれば、どちらかが血を見ておったろうな」

まあわしは機械竜じゃから血は出ぬが、と茶化して笑う。

「うむ、こちらも重ねて言うが感謝する。
 いい敗北で満足したことだし、わしも帰ることにしよう。
 また会おうぞ、凛霞殿」

こちらは着の身着のままであるため、そのまま訓練施設を後にするのであった。

ご案内:「訓練施設」からマディファ=オルナさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「演習場 自由記入」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
夜の実習区、蒼月輝く宵闇の雑木林。
誰もいないはずの木々の隙間に、男は一人佇んでいる。

「──────……。」

腰に添えた、一本の打刀。
鞘に納め、握りに手を添え、不動。
すずろに囁き虫の音色さえ、今の男に届く事は無く
涅槃の如く、背景の一色と成りて動かない。

紫陽花 剱菊 >  
生温さを運んでくる薫風が肌を撫でる。
風に舞う、微光の夏蛍。

「────……!」

刹那、草木が靡く。
瞬く間に抜かれた銀の刃が、空を切った。
抜かれた一刀は瞬く間に夏蛍を通り過ぎ、男の頭上迄既に振り抜かれている。
居合抜き。神速とも囃される一閃が、憐れにも蛍の体を……

……両断とは、至らない。

代わりに、灯篭の火が消えるように、蛍の光が"割れるように消えた"。
光"のみ"を斬って見せた。
人として会得した異能の第二段階。
生命を斬らず、立ちはだかる生涯を斬る第弐の刃。
友の激励を受け、賜った此の力。
見事に使いこなせると自負はするが……。

「…………。」

男の表情は浮かばず、宵闇の様に暗い。

紫陽花 剱菊 >  
「…………。」

かつて、己の世で多くを斬った。
人に限らず、人知を超えた魍魎を斬った、斬り伏せた。
蛮勇と称される事も、この身一つでやってのけた。
勝敗を考える事も無く、唯一本の刃として駆ける以上、其の雑念は無用。
だが、次に斬ろうとする相手は、"一切両断出来る景色が見えてこない"。

「……『真理』、か……。」

其れ自体を恐怖とは思わない。
だが、初めて己は"失敗による喪失"を恐れていた。
人知を超えた次元の存在。
人の異能たる此の二本目が通じるのさえ、当の本人に"無理"と断ぜられた。
己も、肯定してしまった。

「…………其の程度で…………。」

諦めるのか。諦めるはずも無い。
情けない話だが、最早この身、この心は……。


あの時より、確実に弱いと実感する。



「……無念無想、未だ至らず。空言の夜に、未だ暗れ惑う、か……。」

静かに、刃を鞘に納めた。

紫陽花 剱菊 >  
勝算が無い訳では無い。
"人知を超えた"と言う意味では、未だ抜かれずの"雷神"がそうだ。
しかし、其れさえ通じなければ……?

「…………。」

目の前で失われる、多くの生命が、何より彼女の生命が────……。


其れこそ、雑念だ。頭を振り、振り払う。
振り払おうとしたが、未だ脳裏に拭えない。

「……馬鹿が……。」

己がこの様で、如何するというのだ。


<────俺を『拒絶する』なら、『絶対』を持って来い>



あの男の言葉が、今でも耳朶に反響している。

「…………。」

最早、猶予も無い。
男は静かに、その場を立ち去った。

ご案内:「演習場 自由記入」から紫陽花 剱菊さんが去りました。