2020/08/07 のログ
ご案内:「訓練施設」に角鹿建悟さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に不凋花 ひぐれさんが現れました。
■角鹿建悟 > 本日は、ひょんな事から知り合い『師匠(ゆうじん)』となってくれた先輩との訓練の日だ。
仕事は流石に早めに予定を詰めて切り上げつつ、夕食や風呂を先に済ませてからジャージ姿に運動靴というラフな格好で訓練施設を訪れる。
学生証を提示して入室許可をクリアしつつ、訓練施設をぐるり、と見渡す。
正直、異能や体力訓練などは独自にやっているので、この施設を利用した事は殆ど無い。
「――ひぐれは……まだ来ていないみたいだな」
時間は間違ってたりしないだろうか?メールでのやり取りを思い出す。…うん、大丈夫なはずだ。
ともあれ、先に着いたのならば軽く柔軟やストレッチをして体を解しておこうか。
■不凋花 ひぐれ > からんころん。かつんかつん。独特の音を引き連れてやってきたのは和装の少女だった。
友人であり弟子である建悟が半ばストレッチを終えたタイミングで悠々とやってくる。
「すみません、待たせましたか?」
その手には常日頃携帯している刀ではなく白杖。もう片方の手には長いバッグ。丁度竹刀でも運び込めそうな長さのそれ。
「私の実家、地元では剣道場を開いているんですよ。里帰りする時もよく指南するので、大船に乗った心算でいてください」
■角鹿建悟 > この島では、いや自分の周囲ではあまり聞き慣れない音が男の耳に飛び込んでくる。
だが、その音には馴染みがある――下駄の音だ。僅かにほんの一瞬だけ動きが止まるが、直ぐにゆっくりとした仕草でストレッチを終えた体ごとそちらへと向き直り。
「いや、丁度ストレッチや柔軟が終わった所だ、問題ない――今日はよろしく頼む、ひぐれ師匠」
ふざけている訳ではない。大真面目に師匠呼びしながら律儀に頭を軽く下げる。
彼女の目がかなりの弱視で殆ど見えていないのは以前聞いたが、それはそれだ。礼儀は大事。
と、そこで彼女の持つ白杖と長いバッグに銀色の視線が向けられる。
「…道場を…成る程、確かにそれなら指南は慣れていそうだな。そのバッグに竹刀が?」
と、納得した様に頷きながらも長いバッグを指差して。剣術どころか剣道すら己は経験が無い。
勿論、竹刀や木刀などがどういうものかは知っているが…。
「取り合えず、俺がひぐれから教わるのは呼吸法や足運びと…あと、剣道だったな」
無論、これは戦闘の為の訓練ではない。どちらかといえば身体操作の向上や精神修養目的だ。
■不凋花 ひぐれ > 「はい、自前のものです。多少打ち込みが激しくても折れるものではないので、気兼ねなく振ってください」
身体的弱者にも関わらず、しっかりと礼儀正しく対応してくれるのは好感が持てる。
「それは良かったです。ではさっそく始めましょうか」
クス、と己を師匠と呼ぶ彼に口元を隠して笑う。彼が茶化さず真面目にこちらを敬称で呼んでくれるのは百も承知だが、一個下の子とはいえ、長身の男子からそう言葉を浴びせられることは無かったものだからつい笑ってしまった。
気を取り直すように、眼を閉じたままバッグを開くと竹刀が二振り出て来る。一本を彼に渡すよう、持ち手を差し出した。
「はい。今回は剣道との複合で、竹刀を構えながらの呼吸を浅めに、そして脚運びを一緒に学びましょう。人の基礎的動作を剣を交えて体得できれば、効率的な体の動かし方や、異能の使用に際してた笑楽になるよう立ち回ることを目的として」
■角鹿建悟 > 「……分かった。正直初めて握るからそもそもまともな握り方すら俺は分からないが…。」
筋肉はきちんと付けているし、体力や持久力が無い訳ではない…が、彼女の視点から見ればまだまだだろう。
要するに、効率的、という観点から見れば男の体の使い方はまだまだ”無駄が多い”のだ。
それ故に呼吸、足運びなどを学んで効率的な体の使い方を学習し、剣道によって精神を鍛える。
――戦いにも応用できる技能だが、男は直す者…決して自らその力を暴力に使わない。
「ああ、そうだな…時間も惜しい。焦る事ではないが、覚える事は多そうだからな」
彼女がバッグを開いて竹刀を二振り取り出す、その片方を差し出されて右手で受け取ろう。
重さや長さを軽く確かめつつも、下手に素振りの真似事はせずに彼女の言葉に耳を傾けて。
「構えからの呼吸、そして足運び…成る程、基礎的動作は確かにオレには必要だ。体は鍛えているがほぼ我流だったしな…。それに、異能を使う際の負担軽減に繋がるのは有難い」
むしろ、体より異能の負担が減るのが男には喜ばしい。とはいえ、体を鍛えるのを疎かにはしないが。
そうなると、まずは竹刀の構え方や姿勢からか…そこは彼女の指示を待つとしよう。
■不凋花 ひぐれ > 「そこはそれ。最終的に型に嵌るかはあなたの選択ですが、基礎を学ぶのは良き事です。
バットを握るようなフォームになっても、より実践的な型になっても良いとは思っています。
大事なのは心の在り方、そして余裕。その実直な丸太のような意志に私は鉋をかけるだけです。」
手を加えれば、あなたはきっともっと良い存在になれるだろうから。
みすみす潰す真似はしたくない。
竹刀はほどよく軽く、彼程の身長であれば多少短く思えるかもしれない。この程度なのか、とも。
身長に合わせた竹刀を取り寄せてはいるものの、多少なり筋力があるならそう感じるだろう。
「先日の一件で、異能の使用に際しても呼吸にムレがあり、ムダがあることを把握しました。
多少なりとも叩いて向きを正せば、より効率的に異能が使えるようになるし、直すことも充実化ができるでしょう。
――前置きはこれくらいにしましょう」
白杖を壁に立てかけ、何歩か歩いて訓練施設の中央へと移動する。
「竹刀の握り方はこうして右手を柄の方へ、もう片方は後ろ側を持ちます。
腕は伸ばさず、肘が軽い力で曲がる程度に。
右手ではぎゅっと握らず、親指と人差し指以外で力を入れて握る。
親指と人差し指は添えるようにして握ると良いでしょう。
左手は傘を持つようにしっかりと支えて握りなさい。
これが基本的な握り方。構えは右足を前へ、左足を後ろに。
丁度自分の拳が一つ入る程度に間隔を空けます」
己は非常に小柄だ。身の丈は非常に幼いものの、何千と重ねた構えをスムーズに実演しながら例示を見せる。
上手くいかない場合は己の手で調節するなどすることになるだろうか。
■角鹿建悟 > 「――そうだな、ある程度まで師匠から教わって、後は俺なりに磨いていくしかないか――…心の在り方と余裕か」
ひぐれ師匠のその言葉、何気ないそれが己の心に僅かに棘のように刺さる。
心の在り方は兎も角、余裕は――正直無い。無自覚と思いきや多少は心当たりもあるのだ。
だが、手抜きや妥協を何より嫌う男は、無理や無茶をしてでも直し続ける。
――言ってしまえば、その意志も頑固さも、丸太どころか鋼の如く強靭”過ぎる”のだ。
さて、竹刀を持てば正直やや短いという印象だ。とはいえ素人には長さの適性は分からない。
少なくとも、腕力は体格相応にあるので持つ・振るだけなら全く苦にならない。
「――そうか。まぁ、誰に教わるでも矯正されるでもなく、ずっと我流でやってきたからな…それが、少しでも良い方向に改善されるなら是非も無い」
杖を壁に立て掛ければ、ひぐれ師匠と共に中央の方へとこちらも移動しつつ。
さて、彼女がお手本を示してくれた構えをこちらも実践して見る…が、初めてだから少しぎこちない。
「右手がこうで…左手がこう、か。腕は伸ばしきらずに……親指と人差し指は添えるだけ、と。
それで、左手は傘を持つように…支えて握る…。」
呟きながらまず上半身のフォームは何とかこなす。ついで足元だ。
右足を前に、左足を後ろに。自身の握り拳一つ分を意識して足の感覚を空けておく。
一先ず形にはなったが、多分細かい所は師匠の手で軽く修正はされるだろうか。
初めてにしては上出来、といった程度で矢張り素人なのでぎこちなさは否めない。
■不凋花 ひぐれ > 「特に余裕は大切です。日々の生活において何気ない動作、心の持ち方で効率的な生き方が出来ますから」
丸太をへし折れと言われたら出来る者は極僅かだ。しかしへし折ることも曲げることもこの場では許されない。
徐々に柔らかく、加工しやすいように剥いでいくしかない。その強靱な鋼のような意志も頑固さも、職人の手にかかれば丸裸。
――それが出来るようになれれば、己も一人前と言えるだろうか。教えるのは兎角難しいのだ。
「すこし骨と筋肉がぎこちないですね」
構えたまま、顎を引いた状態でふと言葉が零れた。
すっと構えを解きながら適宜修正を行い、彼の腕に触れ、切っ先も正す。
「足の筋肉も少し硬いですね。慣れない構え方で力が入り過ぎています。動く時の初動が遅れてしまいますね。
脚運びもまた剣道においては重要ですが、日常に置いて慣れない挙動なのは致し方ありません。
少し爪先を浮かせるように後ろに引いた足を浮かせて、右足をしっかりと付けて下さい。重心を寄せれば多少は楽になります」
■角鹿建悟 > 「――俺はどうやらその”余裕”とやらが致命的に欠けているらしいからな。」
師匠に隠し事はあまりしてはいけないと思ったのか、素直にぽつりとそう零す。
実際、仕事に全てを捧げ過ぎたワーカーホリックの極致みたいな性格だ。
青春や憩いのあれこれをすでに捨てているし、覚悟が決まり過ぎて矯正も難しい。
だからこそ、それ以外のアプローチで”余裕”を作っていくしかないのだが。
「…筋肉は分かるんだが、流石に骨を意識するのは難しいぞ師匠」
と、思わず彼女が漏らした言葉にこちらもそう返して。とはいえ、適宜修正されていく事で成る程、と脳内でも構えの修正をしておく。
「…何だろうな、多分腕…上半身より下半身…足の動きや重心?のほうがオレには課題な気がする」
足の筋肉の硬さ、無駄の力の入れすぎ、初動の遅れ。全体的に見れば勿論ぎこちないが。
矢張り足回りのそれのほうが、竹刀を構える上半身や腕周りよりもぎこちなさは強いかもしれない。
「爪先を少し浮かせて…右足はしっかりと付ける…重心を寄せる…むぅ」
難しい。おそらく柔軟性が足りないのもそうだが、重心移動や無駄な力の抜き具合が足りないのだろう。
とはいえ、彼女に適宜矯正されつつ、何とか形は整っていくかもしれない。
■不凋花 ひぐれ > 「自覚がおありなら宜しい。馬鹿に漬ける薬が無いと思わせないのは良い事ですよ、弟子(ゆうじん)よ」
フフッ、と笑みを浮かべてそう零す。
「リラックスすることは何かしないのですか? 牛乳を飲んだり、新聞を読んだり。好きなように足を組んで座ったり。
日々の中で落ち着いて行動できるルーチンを組めればより最適なのですけど」
そんな風に雑談を交わしつつ、指摘された言葉に「そうですね」と返す。
「私、耳が良いものですから。骨の振動や起こりが耳で聞こえてしまうんです」
眼を極限まで悪くした代わりに、それ以外の感覚を飛躍的に向上させる己の能力の一つ。パラメーター一つを犠牲に他の感覚にポイントを割り振ったような力は、常人には冗句とも捉えられそうになる。
それはそれで話のタネとしては悪くはないのだけど。
「腕はしっかりと鍛えられてる証左もありますし、足は意図的に使わない限りは難しいですよね」
どれ、と彼の足をノックするように叩こうとする。拒否されなければ両手でつかんで無理やり修正したりするだろうが、己は小柄で筋力も少ないので振り払おうとすればすぐに逃げることも出来るに違いない。
難しいなら口頭で以って説明もするだろう。
そうして荒いが一先ず形になったタイミングで、すっと再び揃うように竹刀を構える。
「これが基本の剣道の構え方です。その立ち方と感覚を概ね覚えておいてください。竹刀の見え方もよく記憶しておくと良いでしょう。体の中心にある物体の見え方も一つの参考になりますから」