2020/08/08 のログ
角鹿建悟 > 「――自覚があっても、直せといわれて直せるかはまた別問題だけどな…。」

少なくとも、直す手を止める、という選択肢は男には最初から存在しないのだから。
と、師匠の言葉に少し考える。リラックス?寝ている時や風呂に浸かっている時しかないが。

「――ルーチンはあまり無いな。あっても仕事方面に全部傾いている。
…強いて言うなら、朝が早いから外の空気を吸いに軽く散策をするくらいだな」

ジョギングとかではなく、本当にただの散策みたいなものだ。
朝が早いので。眠気もあるにはあるが散策の間に意識もしゃっきりしてくる。

「――視力を犠牲に残りの感覚が優れている、という事か。成る程な」

羨ましい、というのは正直あるがそれも視力の犠牲と彼女の努力あってこそ。
おいそれと羨ましがるものでもないだろう。

「…腕は能力使用する時にも、それ以外でも使うし特殊な道具を用いる場合もあるからな」

修繕部隊なので、能力だけで全て直すわけでもない。男は能力特化型ではあるが。
ともあれ、彼女の助言と共に足を掴まれれば、一瞬戸惑うが抵抗せずに矯正して貰おう。
こういうフォームは矢張り、正しいフォームを体と脳で覚えて反復するしかない。

「――矢張り凄い違和感があるが、これも慣れてくれば気にならなくなるんだろうな。
…ともあれ、了解した。これは何度も繰り返して体に叩き込む必要があるな」

と、足回りの課題を特に意識しつつも、師匠の言葉に頷いてみせて。まぁ、初めてにしてはマシだろうか?

不凋花 ひぐれ > 「私が直せば良いのでしょう?」

直す者に直すなどと、さも当然のように軽口を叩いた。これが本気かどうかは含み笑いを添えた言葉なので真偽は不明である。

「まあ、そんな年で趣味の無いサラリーマンみたいなことをしていたら体が潰れてしまいますよ。
 なら散策の際、新たに気付いたことを発見できるようなことがあると良いですね。
 たとえば同じ時間にジョギングしている人はいないか、鳥は何匹いて、種類は色は何かとか。他所様の朝食の匂いとか
 他者に眼を向け意識を割くのも余裕を持つ練習の一つです」

 徹底的に欠けているものを、人としての生き方でない彼のそれを少しでも改善できるのなら、他愛のない、くだらないことだって提案してみる。
 それを既に実践していたとして、彼を知る良い気付きになるのだ。悪い事ではない。

「なるほど、それならこれだけ芯があるのも納得です。ますます下半身が足りていないのが惜しいところです。これは鍛え甲斐がありますね」

しかし彼にも一応のモチベーションはあるようなので、そこはかとなく安堵した。

「勉強と同じです。一度習ったからと覚えられるのは天才くらいです。それでもしっかりと堂々たる姿になりました。かっこいいですよ、建悟」

角鹿建悟 > 「――師匠は本気でやりかねない所があると俺は思う」

とはいえ、これでも悪友や師匠を初めとした交流で若干以前よりマシにはなっているのだ。
ただ、根本的に”人ではない機械みたいな生き方”の矯正には遥かに遠い。
ついでに言えば、彼女ならとっくに”気付いている”かもしれないが肉体的にも既にかなり酷使されている。
能力の使いすぎによる心身の負荷が積もり積もっているのだ。それでも、当然男に能力を使わないという選択肢は無い。
まぁ、要するに――彼女の想定よりもおそらく数段酷い有様で、男は頑固で職人気質で――狂人なのだ。

「――流石に、足回りはジョギングや筋トレ以外はあまりやっていないからな。
重心を意識したりとか、そういうのは初めての経験だが――新鮮で悪くない」

悪くないが難しい。腕周りについては意外と早く身に付きそうだが、課題は矢張り足だろう。
勿論、モチベーションはある――身に付ければ効率よく仕事が出来る、というワーカーホリック全開な考えだが。

「――そうか?少なくとも形になったなら良かった。…しかし、足回りは中々大変だな」

これに足運びや呼吸法も加わってくるのだ。しかも今はまだ構え――基本中の基本のフォームをやっと及第点を貰ったに過ぎない。
まぁ、当然ながら一朝一夕で身に付くものでもないのだ。今後はこのフォームを毎日やるのも日課になりそうだ。

不凋花 ひぐれ > 「私の事が良く分かってきましたね」

 元々世話焼きなのか、あるいは彼を放っておけないからなのか。
 そのまま突き進んだらきっと谷底に落ちてしまいそうな危うさを感じて、少女は道化る。
 せめて彼が転がる姿を少しでも引っ張って和らげるしか方法が無い。現状やっているのは引き延ばしにもならない。
 これはあくまで前段階なのだ。何も知らん人が救世主たりえるかと言えば数は限られよう。
 相手を理解する為に歩み寄り、寄り添うことが初めにやるべきことなのだと己は思う。

「足運びのトレーニングの前に、先ずは地力を付けなければいけませんね。
 基本的な立ち方に動かし方、筋肉の構造と説明するとキリはありませんから概ね絞るとして――」
 
 彼はまじめだから、きっとこの手の反復を続けてくれるに違いない。
 だから先んじて教えておきたいこともある。

「さて、立ちの構えが準備できたら次は呼吸です。
 剣士と剣士が相対する時、呼吸は刹那の内に発生します。
 息をしている間に剣士はその首が落とされる可能性があるからです。
 建悟には特別戦う相手はいないかもしれませんが、強いて言えば己の異能、或いは己自身といったところでしょうか。
 
 そんな己を制するにはまず呼吸です」
 
しっかりと構えた儘、言葉を続ける。

「疲れると息を切らすのはよく経験がおありでしょう。そして往々にして、心臓は早鐘のように鳴り喧しくなる。それが人体です。
 たとえば全力で走った時も同じようなことが起こりますが、落ち着くために深呼吸をしなさい、とよく指導されるでしょう。
 呼吸と脈拍は連動していて、脈が速くなったり自律神経が乱れていると呼吸は小刻みになり、落ち着いていると呼吸は最小限で済みます。
 ――つまり脈が速いと呼吸も速くなりますが、逆に呼吸をゆっくりすれば脈拍は緩やかになります」
 
 構えを崩し、己の胸に手を当てながら軽く首を傾げる。
 
「己の内からコントロールすることで。疲労を外に出さず疲れていないように体を構築する。そのアクセス先が呼吸です。
 こればかりは体を鍛えてもどうにかできることは少ないです。
 
 普段我々は鼻で呼吸をして口から吐いて生活していますが、限定的に口から息を吸って鼻で息をすることで、深呼吸の要領で体にある種の余力を持たせることができます。
 瞬発的な深呼吸と言い換えた方が分かりやすいでしょうか。
 ここぞ、という疲れる部分――異能の使用時などでこれを身に着けることが出来れば、疲れを先送りにできるでしょう」

角鹿建悟 > そう、少年はこのまま行けば遠からず心身の限界を迎えて”壊れる”。
今、彼女を初めとした周りとの交流や手助けを受けて踏ん張ってはいるが、結局先延ばしであり――
角鹿建悟は長くは持たない。これは現状ではどうしようもない確定事項だ。
それでも、彼には多少自覚があり、若干ながら変わりつつあるのは完全に絶望的ではない、と言えるか。

「地力か――確かに、それが無ければ間々ならないのは確かだろうな」

師匠の言葉に頷く。そして、次の課題は呼吸だ――構えがやっと形になった事で次は呼吸。
ただ息をするだけではそもそも特訓の意味が無い。彼女が伝えたい事をしっかり覚えなければ。

「――確かに、俺は戦う為に師匠からこうして教わっている訳ではないからな。呼吸も同じだ。
…自分の身体機能を高めて効率化する為と、それにより異能の負担を減らす事だ」

だから、異能と己自身の肉体の為に呼吸法も学んでいくのだ。それに、呼吸は大事だと何かで聞いた覚えもある。
今の基本的なフォームを何とか保ちつつも、彼女の言葉に成る程な、と。

「脈拍と呼吸の連動――か。鍛える、というよりもコツを覚える、という感じに近いのか。
確かに、呼吸というのは鍛える、という意味合いは少し違う気もするしな」

そして、大事なのはその呼吸により疲れを先送りに出来る――異能の負荷の軽減に繋がる事だ。
頭の中でそれを意識しつつ、瞬発的な呼吸――それも覚えねばならないだろう。

不凋花 ひぐれ > だから、急がねば。やらねばと急いだところで何も得られるものはない。
荒療治でも良いのなら竹刀で叩くのも手だ。それでも己の望むところではない。
少しずつで良い、ゆっくりでもいい。着実に前へ進みながら遅らせる事が出来れば、いつかは追いつくのだ。

「この呼吸さえものにすれば、より効率的に体を使えるようになります。異能で体を『酷使』するタイミングでこの呼吸を使うことを覚えれば、擦り切れるだけの体も少しは持つようになる。
 水を求めて喘ぐような真似を控えめに、『次』を見据えることに繋がります。
 ――とはいえ効率的な呼吸でも体に蓄積される疲労は変わりません。コトが済んだらいつも通りに無理をせず、眠って回復する。いつもの仕事にスパイスを足すくらいで長持ちするようになります」

肺に空気を送るように、人間の機能の例を出しながら実演する。口を開けすぎず、されど一瞬で。己の平坦な胸が僅かばかり膨らんだ。

「顎を引きつつ頬には絶対に空気を溜めず、吸う時は一息で。己の胸に手を当てながら膨らむ感覚を意識しつつ鼻から空気を吐き出す。この呼吸は疲労のみならずしっかり鍛えれば痛みにも強くなりますが、目的が違うのでおいといて。
 覚える事は多い上にこれはコツがいる方法です。やり方はシステマに近いので、動画サイトで自己鍛錬もしやすいですがね」

角鹿建悟 > 時間はあまり残されていないが、急いでも得られるものはない…だから、一歩ずつやっていくしかない。
少なくとも、そうやって現状を少しでもマシなものに変えていかなければ、本当に先が無い。

「――異能を使うタイミングで『呼吸」を用いて、負担を最小限に抑える、と。
――『次』、か。…ああ、分かった。ちゃんと睡眠とかはしっかり取るようにする」

彼女の呼吸の実践を見る。胸が僅かばかり膨らんでいるのは確認できた。特に疚しい気持ちは無い。
それよりも、あれだけ分かりやすいと取り入れる酸素の量とかもかなりのものなのだろうか。
ともあれ、引き続き師匠のレクチャーを聞いていく。

「…システマ、は名前だけは聞いた事があるような。確か軍隊格闘か何かだったか?
…動画サイトとか殆ど見たことが無いんだが、どうせなら良い機会だしそちらも参考にさせて貰おうか」

ふぅむ、と考え込みつつもフォームは先ほどから崩していない。体幹そのものはしっかりしている様子。

不凋花 ひぐれ > 「あなたは直すばかりなようですし、せめて次に直す仕事が来るまでの負担を減らせれば楽になると思いますから。
 睡眠以外に食事もですよ。一汁三菜に美味しいものを味わって食べること。あなたは食事にも頓着が無さそうですから」

 気分は母か何かのようで。肩を竦めながらやれやれと首を横に振った。

「ロシアの軍隊格闘です。これを更に発展させたものはいくつか民間にも伝わってアレンジもされていますね。
 体の軸や先の呼吸、痛みに対して非常に重きを置いたものです。システマの呼吸は通常通り鼻から吸って口で吐くものですから理論は少し違いますけど、参考にはなるでしょう。
 あとでメールに添付しておきますよ。参考資料として。

 ……それにしても随分と安定して竹刀を持てていますね。安定感もある、と」

ほう、とやおら息を吐く。流石にかわいそうなので構えを崩して良いと言葉を添える。

「さて、もう少し色々仕込みたいところですが、今日はここまでにしておきましょうか。デモンストレーションということで、今日は無理をせずにしておきましょう」

彼と相対するように一度竹刀を構えた後、納刀して一礼をする。

角鹿建悟 > 「――俺は暴力の類は一切振るわないと決めているからな。
少なくとも、誰かと戦う気は無い。――俺にとって、戦いとは直す事に他ならないからな」

ある意味で清々しいくらいに彼女の1番弟子たるこの男は一貫していた。
ここまでブレないからこそ、その性格も相まって、こうして打ち込めて集中出来るのかもしれない。
食事については「…一応最低限自炊はするぞ」と、そこは師匠に申しておく。とはいえ、一汁三菜などは守れて居ないのだけど。しかし、まるで■■みたいだ…いや、違う俺に■■など居ない。

「ロシアのだったか――まぁ、その内容より呼吸についてあれば動画でも確認しておきたい所だな。
ああ、参考資料は助かる――ん?」

安定感がある、と言われれば不思議そうに己のフォームと持った竹刀を確認して。
まぁ、成果が出るのは悪くない。と、そこで構えを崩していいとお達しが出て、息を吐きながら構えを説いた。
それから、きちんと彼女に合わせてこちらも一礼をしっかりしておこうかと。

「…分かった。フォームについては覚えたのでこつこつやってみる」

ともあれ、お互い一礼すれば彼女に竹刀を返しつつの。

「――今日はありがとう”ひぐれ”。また時間が取れそうな時にお願いしたい」

不凋花 ひぐれ > 「その信念はとても素晴らしいことです。あなたはずっと貫き通せるのでしょうね」

悲しい位ずっとずっと。根底は全く変わらないのだろう。
それでもそういうところは非常に好ましい。一本の芯があるというのはある意味心の支えであり基盤である。
彼を彼たらしめる存在意義と言っても良い。
なればこそ、何がここまで彼を突き動かすというのか、興味は尽きない。

「最低限でなくしっかりと自炊して欲しいものです。食事を栄養補給とだけ見なしている風でしたので、ついつい」

一応はそれなりの御家の娘。剣道場を広げた実績を持つ。スポーツにおいて食事の重要性はよく理解しているからこそ口を酸っぱくしていた。

「勿論、これからも一緒に頑張りましょう、建悟。
 私達は友であり師弟です。弟子(とも)の為なら時間は惜しみませんよ」

貸していた竹刀を貰い、バッグの中に詰め込んで行く。

「訓練のみならずとも、プライベートの悩みや相談でも何でも受け付けますから。私は先輩ですからね」

角鹿建悟 > 「――ああ、死ぬまで――いや、”死んでも”俺は貫き通すさ」

何故ならそう決めたのだから。だから、きっと死ぬまで変わらない。その根幹は。

「…了解した。まぁ善処はして見るが」

と、一応は師匠の言葉に頷いてはいるが、きちんと毎日自炊するかは謎である。
そもそも、料理をする時間があれば仕事とか鍛錬に回しそうな男であった。

「――ああ、本当に心強い事だな。これからもよろしく頼むひぐれ師匠」

そう、僅かに目を細めながら彼女に向けて一礼をしつつ。さて、片付けが終われば後は帰るだけだ。

「――流石にプライベートは分からないが、了解だ。それじゃあ、途中までは送るぞ師匠」

と、言いつつ彼女が断らなければ一緒に歩き出して。宣言通り途中までは送り届けるかもしれない。

不凋花 ひぐれ > 「その意気です。死なない程度にそうあればなお良いのですけど」

それを少しずつ修正するのは友の役目だ。精々死なないように、と。

「その善処はあまり信用できない善処ですね。お弁当でも作りましょうか」

次の学期が始まったあたりとか、そんな他愛もない話をしながら白杖を取って来た。
ここは何度も訪れているから、起点となる場所が把握できれば後は歩数や音の反響で何となくどこにいるかが分かる。こういう時は便利だとつくづく思う。
バッグを手に、杖を片手に。帰る準備は万端だ。

「しっかりエスコートをしてくださいね。我が弟子」

――そういう気が利いたところを常に発揮できれば良いのに。
外を出て、寮に向かうルートの途中までは一緒に歩いたことだろう。何か話したかもしれないし無言だったかもしれないが、今日の出来事を思い返すだけの心地良い帰り道だったことは間違いないだろう。

ご案内:「訓練施設」から不凋花 ひぐれさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に日月 輝さんが現れました。
日月 輝 > 手紙が届いた。
時節の挨拶に始まり、健康を気遣う文字が続く平坦な文章。
早く目が治って帰ってこられるといいね。と綴られる字体は柔らかで、娘を思いやる親の感情が解るような気がする。
他人事のように、そんなことを思う。

手紙を送った。
時節の挨拶に始まり、健康を気遣う文字が後追う平凡な文章。
島では友人も出来、楽しく生活しています。と綴られる字体は■■■■で、親を思いやる娘の感情が──

「なんだかなあ」

実習区に設けられた訓練施設。
ドーム状の外観の内には様々な訓練所があり、あたしはその内の一つ。一言で言うならば体育館のような所で独りごちていた。
言葉は自らの出来事を他人事のように俯瞰させた感想で、貸切でも無いのにがらんどうの館内で退屈そうに振舞う。
なんてことのない自主練習。可愛さ皆無の小豆色のジャージ上下姿に甘んじて、一本結びの髪が揺れる。

日月 輝 > 「べ~っつに戻る必要性とか、感じないんだけど──と」

一人きりの館内で"体重をかけず"跳ねる。
あたしの身体は無重力空間にあるかのように緩慢に飛び上がり、視界が空転し、天井に足を着く。
そうして天井を蹴り、また同じように緩やかに回りながら床に戻る。
本日の重力操作に抜かりなし。鳥が当然と空を飛ぶようにあたしの身体は異能を行使する。

「この島……愉しいし。このまま帰らなくても……」

今度は倒立の姿勢。文字通りに軽々と身体は動き、それでいて質量変化の悪影響は何一つない。
そうした力を完全に扱えるのだから、視線を患わなければ、この島に来ることは無かった。
翻り、視線を制御出来るようになったら本土に帰らないと行けない。
今は、それが明瞭な不満となってあたしの口元に尖るように現れる。

倒立の姿勢から音も無く五体投地の姿勢へ転がり込む。
あくまで軽やかで痛みも不都合も無い着地。

日月 輝 > 「でも、どうなるにせよ居続ける腹積もりでいるなら自活……自活よね。将来の展望を持たないとだわ」

今現在は仕送りをして貰っている身。
それで好き放題にしていられるのも、父母の愛なのだと理解はしている。
両親はあたしを一人娘として愛してくれている。それを疑ってはいない。
ただ、その形があたしの求めるものと少し違うだけ。
『そんな恰好をしなくても』『貴方の為を思って』『そんな右目で可哀想』他etc.etc

「……逆瀬が言うような探偵とか本当にありかもしれないなあ」

重圧の愛。本土にて、昔々から続く老舗の一人娘。
いつかは婿を取って平穏に跡継ぎを云々、そんな今時黴だって生えないような古い家。
人にもよるかもしれないけれど、少なくともあたしはそうした押し込められるような愛は苦手だ。

いつか夜の街で出会った不思議な探偵のことを思い出す。偶然とは言え、あたしが命を助けた相手。
彼に相談でもしてみようかしら?

「……いやでも流石にさ、それって短絡的な気も……」

ゆうらりと上体を起こして頭を掻く。如何にも面倒ごとに直面したかのように見える所作。
それから腕を組んで顎に手をやって考えているかのような所作。

日月 輝 > 「マリーに相談してみるのもありよね。お悩み相談の看板あるくらいだし……んー……でもなあ」

そうした姿勢のまま、今度は年上の友人。何かと親交のある女性を想う。
彼女は異邦人だ。元の世界に残した家族が居ないとは言え、流石に故郷に帰る帰らないの進路相談は如何なものかしら。

「……こっちの世界楽しいって言ってたし、平気かな。うん」

目隠しの裏で瞳を閉じて考えて、瞼の裏に楽しそうに笑うマリーの顔が浮かんだ。
それに自活と言う意味でなら彼女は歴戦の旅人であるのだから、色々教えて貰えるかもしれない。

「よしっ。それじゃあ一先ずはそれとして今は練習に励んでおきましょうっと」

立ち上がって意気軒高に腕を振って威勢を示す。目算は成って心算も立った。
それなら後は思うがままの自主練習。
己が満足するまで動き回って、それが済んだら帰りにフニャペチーノでも食べましょう。

ご案内:「訓練施設」から日月 輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に日月 輝さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」から日月 輝さんが去りました。