2020/09/03 のログ
リタ・ラルケ >  
「なにそれすごい」

 素直に驚いた。こんな小さいバッヂに、まさかそんな機能がついているとは。
 原理は自分には全く分からないけど、そんな便利なものなら素直に使わせてもらおう。

「ありがと。終わったら返すね」

 どこに着けようか考えて、まあ普通に胸元でいいかと、服の胸元、少し右くらいにバッヂを取り付ける。
 瞬間、すっと体の疲労が抜けていく感じがした。軽く腕を回す。さっきより軽い。
 これならだいぶ楽になる。微笑んで、

「ん、これなら大丈夫そうだね。えっと、準備はいい?」

霧島 孝介 > 「なんか凄い異能に目覚めちゃったみたいなので、はい」

素直に驚かれて。少しドヤ顔を見せてそう告げる。
正直自分にもこのゲーミングPCのようにキラキラしている光の正体はわからないが
彼がイメ―ジして作ったのならそう機能するのだ。彼の『異能』がそうさせている。

「どうぞ、遠慮なく使ってください」

彼女がバッヂを付ける様子を見て、腕を回したり、明らかにフットワークが軽くなったのを見れば
こちらも少し笑って、効果はあったと確信する。

「はい、それじゃ…このコインが落ちたらスタートで」

先ほど、道端で拾った1円玉を見せて告げる。
親指の上に1円玉を乗せて、指で弾く。

1円玉は高く上に上がって、回転しながら、地面へと落下する。

数秒後―――地面に1円玉が触れればアルミニウムの軽い音が響き渡る。

リタ・ラルケ >  
「……っ!」

 コインの音が聞こえた瞬間、自分は素早く距離をとった。

 たかだか十二歳の小娘である自分が勝つためには、ほとんどの場合なんらかの工夫がいる。だからこそ自分の中では、ある定石が生まれている。
 一対一なら、まずは相手の出方を見る。それから、"纏繞"すべき精霊を判断する。そして隙を見て纏繞し、そのまま相手の弱点を突く。それが自分の中で確立されている定石の一つだった。
 そのためには、自分から突っ込むわけにはいかない。必ず相手がどうするかを見ないといけない。攻撃するにしたって、せいぜい牽制程度だ。魔力の温存もしないといけない。

「……どう来る?」

 自分だけに聞こえるよう呟き、目の前の相手をじっと見つめた。

霧島 孝介 > こちらはコインが落ちても解くには動じずに彼女の動向を探る。
素早く距離を開けた彼女に目を細めて、こちらは身を構える。

「やっぱり…初動はみんな様子見るんだな」

距離が開いて様子を見る彼女。
それはそうだ。よっぽどの初見殺し至近距離パワータイプじゃなければ、初動で突っ込んで先制攻撃を仕掛けてくるはずない。
まずは相手の異能を『見る』。それから行動を設定する。セオリーだ。

となるとこの戦いは…遠距離攻撃の牽制から
隙を見てデカい一撃を至近で叩き込む。という感じになるだろうか。

「なら、まず俺から…!」

遠距離ならば得意分野と言わんばかりに両手に蒼い光を発生させ、ハンドガンを生成する。
二丁拳銃にあこがれて密かに練習していた成果をここで発揮せんとばかりに彼女へ向かって発砲する。

ただ、実弾は流石に使えないので、ゴム弾を使用。
でもゴム弾でも、当たればかなり痛いだろうか。

リタ・ラルケ >  
 青年のほうから、蒼い光が見えた。
 さっきと同じ光。その光が集まった後、両手に何かが『現れた』のが見えた。

「あれは……」

 少し遠いから詳しくはわからないが、拳銃だろうか――そう考えていた時にはもう、発砲音が聞こえていた。

「っ!」

 反射。髪に掠めたが、ぎりぎり躱した。
 どうやら彼は、銃撃戦に持ち込むらしい。

「そっか……ならまずは――あれでいこうかな」

 彼の動きを警戒しつつ、頭の中で"精霊"を呼び寄せる。幸い、集まるまでには時間はかからないだろう。それまで凌げればいい。

 ……まだ自分からは、動くときじゃない。

霧島 孝介 > 「流石…!」

こちらの狙いも完璧ではないものの、この距離で何を生成し
どう攻撃するか察知した彼女に称賛を送る。

何か攻撃策をひらめいた彼女のことなどお構いなしにこちらは攻撃を続行する。

弾丸を撃ち尽くしたら拳銃は消し去り、次はライフルサイズのレーザー銃を生成する。
先ほどの弾丸よりは連射は効かないが速度は速い。
膝をついて地面にしゃがみ、照準器を覗き、狙いをよく定めて、レーザー銃を放つ。

「当たれ!」

緑色の光が一直線に彼女の方へ向かう。
威力は抑えているものの、当たれば確実に体力は削るだろうか。

リタ・ラルケ >  
 青年からの銃撃を、凌ぎ続ける。
 幸い、避けられないことはない。精霊を呼び寄せつつ、手元を見て、射線を想像して、そこから外れる。
 ……が、予想外だったのは。
 青年が銃を撃ち尽くしたとみるや、躊躇いなくその拳銃を消したこと。
 そして、次は見たことのない銃を作り出したかと思えば、そこから緑色の光が飛んできたことだ。

「うわ、やばっ……!」

 レーザー。直撃は、避ける。しかし、躱しきれなかったようで、肩に当たってしまった。
 ダメージは彼がくれたシールドのおかげか、低い。だけど少しだけ、計算が崩れた。

(……いや、いずれにせよ、やることは変わらないかな)

 精霊は、十分に集まった。いける。

「……精霊纏繞、風」

 おそらく、手間取っていたらやられる。自分は素早く意識を手放し、精霊に身を任せた。
 ――"精霊"が自分の中に入ってくるのを感じる。髪が緑に染まる。

 ――意識が"リタ"に渡ってくるのと同時に、リタは空中に飛び立つ。そのまま空中に浮かびながら、地面の相手を見据えた。

霧島 孝介 > 「流石に甘いか!」

自分のレーザーが寸前で躱されたのを見る。
肩に掠っても少しはダメージが入ったが、渡したシールドも込みでダメージは低い様子で。
自分の道具が優秀なのを少し厄介に感じながら、再度狙いを定める。

「…ッ!」

再度彼女に照準を合わせようとしたところで、彼女の異能が顕現する。
白い髪の彼女は翡翠の色へと変化し、突然、視界から消えたと思ったら空中に浮遊している。

(タイプが変わる異能か!?さっきは紅かった、それに今度は緑…安直な思考で行けば、さっきは『炎』、それで今回は
 『風』か『自然』辺りか…?)

これはこちらも上手く対応しないと、相性の有利を押し付けられたまま負けてしまう可能性が高い。
とりあえず、空を飛ぶ彼女に牽制のつもりで、レーザーを乱射する。

狙いは精確ではないが、先ほどより光線の数は多い。

リタ・ラルケ >  
 光線の弾幕が、彼から放たれる。幸い、狙いはあまりつけられていないようで、大多数はリタを離れて明後日の方向に飛んでいく。
 しかしこの弾の量では、近づくのもままならない。
 相手が銃撃戦に持ち込むなら、こちらは素早く近づいて近接戦に持ち込むつもりだった。とはいえ流石にそう簡単には許してくれなさそうだ。

(……いいんだけどー)

 だけど、問題ない。
 近づけないなら、あっちから近づいてもらうだけ。

 高度を下げ、低空飛行に移る。そして。

「……こっちにこーい……すいこみー」

 こちら側に思い切り引き寄せるように、相手の背後から突風を吹かせた。

霧島 孝介 > 弾幕を張って、とにかく彼女の接近を阻む。
来させさえしなければ、こちらが有利だ。
彼だからこそできる数打ちゃ当たる戦法で接近を拒みながら、距離を取ろうと後ろへ下がろうとするが

「うおっ!?」

彼女が高度を下げたのを見て、狙いを定めた瞬間に後ろからの突風。
突然のことでかなり驚いて、彼女の方へ吹き飛ばされる。
確かに風を操る能力は警戒していたが、風の斬撃や空を飛ぶのに使うことばかり考えていた。

「うべっ!」

咄嗟のことにも柔軟に対応する能力は、経験が浅い彼には備わっておらず
地面を踏ん張って抵抗するが、その抵抗も虚しく彼女の目の前に転ぶように投げ出されて。

リタ・ラルケ >  
 彼の態勢が、大きく崩れる。
 それを見てリタは、両手に魔力で大きな爪を形成する。

「……ごめんねー」

 模擬戦とはいえ、力は弱めているとはいえ、やはり傷つけるものを人に向けるのは、少しだけ抵抗がある。
 でも――躊躇って攻撃をやめるのは、してはいけない。
 彼の思いを、踏みにじることだから。

「……それー」

 戦いをしているとは思えない、そんな気の抜けた声で。
 リタは転ぶ彼に、爪を振り下ろす。

霧島 孝介 > 彼女の前に大きく投げ出されて、彼女を見上げる形で地面に仰向けになる。
視界の中央、逆光に照らされながら、大きな爪を形成されれば言葉を僅かに発する

「や」

ヤバい。『これ』を振り下ろされてまともに食らってでも見ろ。
少なくとも体力出血でショック死する自身はある。
彼女が爪を振り下ろすのと同じタイミングで持っているレーザー銃を盾にして突き出す。

「っ…!く、…!」

ガキン!
金属が強い衝撃を受けた音を発しながら、レーザー銃で爪を防ぐ。
拉げる音を出しながらも力を込めて押し込まれないように彼女の攻撃に耐える。

(ど、どうする…!?)

とりあえず、攻撃は防げた、が防げただけ。
もう一回同じ攻撃が来たり、今度は脚に爪でも生やされて攻撃されたらやばい。
この圧倒的不利の状況下。どうすればいい…!?

リタ・ラルケ >  
 振り下ろした爪は、見慣れない銃で受け止められた。全力で押し込んでも、爪がそれ以上、彼に近づくことはない。
 態勢は、明らかにこっちが有利。だがやはり、そもそもの身体能力が欠如している少女と鍛えられた青年が力勝負をすれば、押し負けるのは当然だった。

「あー……」

 爪を押し込むのを、やめる。銃から爪が離れる。そのままリタは空中にバックステップをし、浮かび上がって距離をとる。
 再び銃撃戦をしようとしているわけではない。そうしたって不利な土壌に自ら飛び込むだけだ。
 このままでは埒が明かないと、攻撃方法を変えるだけのこと。

 爪が受け止められるなら、受け止められないような攻撃をすればいいのだ。
 リタは、そのまま足に魔力を込めていく。

霧島 孝介 > 態勢の不利は身体能力の差でカバーが出来たようでなんとか防衛に成功する。
彼女が離れる様子を見れば咄嗟に体を起こし、立ち上がる。
レーザー銃『だった』ものを投げ捨てれば、光にして消し去り、彼女を見据える。

「っ…あれは…!」

彼女の魔力が足に込められるのを見据える。恐らく、ここで『決め』に来るつもりだろう。
今から距離を取っても俺の足じゃ遅い。道具を生成して移動するにしても試していない移動手段は多分追撃されてお陀仏だ。
ここは…

「真っ向から迎え撃つしかないか」

そうつぶやくと、彼の右半身と背中辺りに蒼い光が集まる。
今までとは違う規模。2mは優に超えるほどの大きさの『武器』の生成に取りかかる。

自身の右半身と脚には衝撃吸収と筋力を増強する補助アーマーを纏わせ。
背中からは巨大な金属の『拳』を作り出す。拳は右手と連動しているようで、グーパーと握れば同じような動きをする。

これで殴る。

構えを取って、空中の彼女を見上げながら、拳を強く握り、タイミングを見計らう。

リタ・ラルケ >  
 畢竟リタが狙っていたのは、要するにただの『突撃』だった。
 風の力を生かして、高速で突撃する。とはいえ数十キロの身体が質量兵器となって高速で飛んでくる――受け止めることなどできないはずだと、そう思っていた。
 しかしながらそんな彼女の思いは、彼女の予想だにしない形で裏切られることとなる。

「……!」

 彼の背中に生まれたのは、金属の拳。固く握られたそれは、リタの身長――いや、それどころか青年の身の丈すら超える程の巨大なもの。
 あんなものに突撃してしまえば、受け止められるどころの話じゃない。下手したら迎撃されて、こっちが大ダメージだ。

「……だうんばーすとは……だめかー……」

 対抗手段がないとは言わないが――今からそれに攻撃手段を変えるような魔力の余裕は、ない。
 かといって、真っ向からぶつかるのは自殺行為。

「……」

 仕方ない。賭けだ。
 これに負けたら、リタは負ける。

「……とつげきだー……えりあるだーいぶ……!」

 意を決し、リタは青年に向けて突撃する。

霧島 孝介 > 呼吸を整える。
生成したアーマーの人工筋肉は膨らみ、衝撃吸収の準備と膂力(パワー)を増強させる。
拳を強く握れば、モーターから油圧が調整され、巨大な手指が一本一本駆動する。
彼が想像したSF―――架空の科学―――の結晶は、彼の思惑で原始的な攻撃方法へと転換される。

しかし、その原始的な攻撃だからこそ、威力は計り知れない。

「来い…っ!」

彼女の思惑は知らない。恐らく何か対抗手段はあるのかもしれない。
しかし、あってもなくてもこちらが切れるカードはこの一つだけ。
引き付けて、殴る。これだけだ。

彼女が突撃を仕掛けてくる。
最後の攻撃。意を決した彼女の攻撃に呼吸を合わせる。

「…ッシャ、ァァァァァアアアアア!!!」

彼女が突っ込んできて、間合いに入るのを見定め拳を振るう。
瞬間、とてつもない衝撃と音が二人を中心に演習施設を走る…!

リタ・ラルケ >  
 リタの考えはこうだ。あの鉄拳――文字通りの――は確かに脅威だが、特別な機構がない限り、拳は拳。攻撃手段は限られてくる。ましてあのサイズなら、動かすのにも時間がかかるだろう。

 それを突く。

 拳が当たる直前、リタは再び風の力で軌道を変え、真上に飛んだ。
 振り抜かれる拳を躱してしまえば、絶大な隙が生まれるはず。そこに、もう一度突っ込む。
 そう考えた末の、変則軌道を描いた。体に負担はかかるが、上手くいけば確実に勝てるはずだった。

 誤算だった。
 リタの予想よりも拳は素早く、そして大きかった。

「あぐっ……!」

 ――伸ばしていた脚に、鉄拳が直撃した。 
 真上に勢いを付けた体は、態勢を崩して、空中での制御を失う。
 視界が回転する中、風の制御に集中して、なんとか安定はした。
 しかしもう、突撃するだけの運動エネルギーは残されていない。

 せめて最後に、一発。まともに狙いをつける余裕もない。
 ただ相手の方に、右手を向けて空気の塊を弾として撃つ。

「……やられたー……」

 そのままリタは、ふらふらと地面へ降り立った。

霧島 孝介 > 彼女の思惑は知らなかった。
ただ、引き付けすぎて彼女の攻撃が先に当たるより、早めに拳を突き出した方がリスクが低い。
そういう読みだったのだが…少年にとってはうれしい誤算となった。

衝撃の瞬間―――
少年の身体全体を揺らし、踏み込んでも数歩分、後ろへ押し戻される。
威力は絶大であった。彼女が真上にベクトルを掛けていたこともあるが
魔力と位置エネルギーを纏った暴風のごとき爪に打ち勝ったのだ。

しかし、彼女にトドメを刺すには至らず、気を抜いたところで空気の塊の弾が飛んでくる

「ぐっ!?」

もちろん、そんなことなんて警戒していないためまともに食らう。
アーマーは防御用に作られておらず、負荷も限界になってばらばらに砕け散ると共に
右腕は強い打撃を受けたように回転する。

「っ…」

右手の衝撃とダメージによりバランスを崩して、尻もちをつく。
ゴンッ、と巨大な拳は地面に接地し、アーマーの破片は地面へと飛び散る。
しかし、彼女よりは体力に余裕があるようで、不要な鉄塊を消し去って、立ち上がって

「やられた…ってことは、終わり…ってことですか?」

リタ・ラルケ >  
「そー……こうさーん……」

 青年の質問に肯定する。
 動こうと思えば動ける。が――魔力が尽きかけている今、戦闘を続けたとして、勝てる見込みがあるわけじゃない。
 だからここで、降参しておくことにする。

「つよかったー……すごいねー……」

 相も変わらず緊張感のない声で、青年を称える。

 つと、足に痛みが走る。さっきの拳で、足を少し痛めたらしい。
 久しぶりの戦闘だったので、少々不覚をとったか。

「……」

 目を閉じ、リタは心中で精霊を呼び寄せる言葉を唱える。その状態のまま、

「……もどれー……」

 体の中の精霊を、外に放出する――纏繞解除。

 ――髪の色が、瞳の色が抜け、元の白色、灰色に戻っていく。
 ――"自分"の意識が、徐々に戻る感覚がした。

霧島 孝介 > 「…!」

勝った。勝てた。勝てたんだ!
正直スマートと言えるほどの勝利ではなかったが、確かにその手に勝利をつかんだ。
異能を使った戦闘での初勝利に少しばかり感極まって震えるものの

まずは彼女の怪我の状態を確認しようと近づいて

「あ、えっと、ごめん。怪我、とかその大丈夫…?」

彼女に近づいて足の状態を見る。
見た目ではわからないだろうが折れてはいないだろうか?
最初に渡したバッヂを付けてれば例え折れていても、数十分で治るだろうが…

無暗に触ろうとはせず、オドオドとしつつ様子を見て

「ん?」

彼女が目を閉じる様子を見据える。
戦闘前に会話した状態の髪色に戻っていく様子に、この状態がノーマルなのかと
納得した様子で見守り、意識が戻るのを待つ。

リタ・ラルケ >  
「ふぅ……お疲れさま。やっぱり私、戦いは苦手だなー……」

 自分の意識が戻ってきたところで、改めてそう言う。実際、結構思惑と外されたことは多かったし、やむを得ず戦い方を変えざるを得なかった場面も多かった。やはり戦術眼はまだ全然鍛えられていないらしい。いや、別に積極的に戦いに身を投じるつもりはないけど。

 ……そういえば。こうして精霊纏繞をまともに他人に見せたの、もしかしたら初めてかもしれない。故郷にいた頃は、見せるのは大体敵か自分のことを何とも思ってない大人たちだけだったから、あまり気にしてなかったけど。
 これ、結構性格とか変わるし、外見で分かりやすいし、というか変なこと言ってないよね自分。

 ……意識したら恥ずかしくなってきた。考えるのはやめよう。

 それにしても、怪我か。正直痛むだけで大したことはない。
 それに、"リタ"が結構いい置き土産もしてくれたみたいだし。

「怪我は大丈夫だよー。幸い折れたとかそういうんじゃないから。すぐ治ると思う」

 そうやって、笑った。

霧島 孝介 > 「お、お疲れ様です。…いや、俺も苦手ですよ!」

正直自分も、至らないところは多かった。
爪を使って詰められた場面や、最後に真っ向勝負に持ち込んだところ。
結果的に相手の戦術が変わったことでこちらの戦術が何とか打ち勝ったという所があるが
もっとハイレベルな戦いになればそうもいかないだろうと、腕を組んで考え込む

「よ、よかったぁ~…」

正直、天然ふわふわ系の彼女の言動や喋り方は戦いの方が手一杯でほとんど覚えておらず
まともに会話したのは最後の降参宣言くらいだ。

まぁ、髪色によって性格が変わるのはアニメとか漫画で見てきたし
そんなに珍しがることはないんだろうなぁっというのが彼の意見だ。
うん、この常世島ではほとんどなんでもアリみたいなところあるし。

「な、なるほど…不安だったら、その、俺が作った道具、バッヂ?着けててもいいですから!」

恐らく軽くは無いだろう怪我に痛みを感じつつも笑う彼女に
こちらは申し訳なさそうに、言葉を振り絞って告げる。

リタ・ラルケ >  
「あんまり気にしなくてもいいんだよ、ほんとに。このバッヂはすごいけど、このくらいはね」

 気遣ってくれるのは、すごく嬉しいけれど。

「すぐ治る……っていうよりは、すぐ治"せる"っていうのが正しいのかな。幸い、そろそろ"いける"だろうし」

 精霊纏繞は、精霊を体に取り込む異能。
 故に纏繞後の能力は、取り込んだ精霊によって変化する。
 そしてその中には、傷を癒すのが得意な精霊だっているのだ。

「――集中」

 あらかじめ、"リタ"が呼んでくれていた精霊を体に取り込む。
 今度は黄緑色のカラーリングを髪と瞳に施して。
 ――もう一度、精霊纏繞。今度は"木"。戦うためじゃない。

 ――意識が"わたし"に、渡されてきた。
 癒しが得意なわたしに。ふわりと、辺りに花の匂いが香る。

「えへへ……はじめまして。この状態だと、傷が早く治るんです。気遣ってくれて、ありがとうございますね」

霧島 孝介 > 「そ、そうですか?それなら…」

あんまり気にしなくていいっていう言葉が一番気にしてしまう。
何故ならコミュ障はそういう生き物なのだ。
相手は気にしてないが、こっちはグダグダと相手に余計な心配をして
自分で自分の首を絞める。それがコミュ障なのだが…

「治せる…?いける?」

彼女の言葉に首を傾げる。
そしたら彼女の髪と瞳の色がまた変わる。
これは先ほどの空を飛んでいた子とは違う。また別の子なのだろう。

花の匂いに心が休まって、緊張が一気に解けていく。

(かわいい)

花の匂いと清楚感100%の彼女にほんわかしながらそんなことを考える。
なるほど、この子は恐らくヒール担当なのだろう。うん、ヒーラーみたいな見た目と性格している。

「ならよかった。安心ですよ」

未だにほわほわしながら、笑顔で言葉を返す。

リタ・ラルケ >  
「これで少しすれば、完治すると思います」

 "木"を司るわたしは、光を浴びると体の調子が良くなっていく……という体質がある。
 だからこれでしばらくすれば、自然に足の痛みも治るだろう。

「それよりあなたは大丈夫ですか? 怪我していたら、大変ですし……」

 なんだかんだ、さっきまで戦っていたのだ。もしどこか痛めた場所があるなら、言ってほしい。
 さすがに自分のように治すとはいかないまでも、傷薬くらいなら作ってあげられるし。

霧島 孝介 > 「なるほど…なら安心ですね」

彼女の言葉に頷いて安心したように息を漏らす。
しかし、炎、風、木とバリエーション豊かだな。
性格が変わるし、切り替わるのに時間が掛かるのが難点なのだろうか?

そんなことを考えていれば、彼女に怪我のことを聞かれ

「え、あぁ、大丈夫!最後の風の弾丸みたいなのは食らったけど…大事じゃないと思うから」

自身の右手、打撲した場所を見せる。
青あざにはなっているものの、骨折はしていない様子である。
少なからずアーマーのお陰で威力が下がったのかもしれない。

自身は平気そうに笑顔で答えるが、さて、彼女はどう捉えるだろうか

リタ・ラルケ >  
「だ、だめですっ。ちょっとした怪我でも、放っておくととんでもないことになっちゃうこともあるんですからっ」

 彼自身は平気そうに笑っているし、実際大事ではないのだろう。だけど、わたしにとってはあまり安心できるものじゃなかった。
 模擬戦とはいえ、傷つけたのは自分なのだし、罪悪感と、それからちょっとの使命感も湧いてくる。

「えっと、打撲は……こうだったかな……」

 生薬となる植物を生み出し、そのまま軟膏として調合する。

「腕、失礼していいですか? ちょっとだけ薬、塗りたいので」

霧島 孝介 > 「あ、え、はい」

彼女に言われると背筋をピンと伸ばす
もしかしてけがは絶対治す保健委員系の性格なのだろうか?
彼女が植物を生み出し、調合する様子をみると「おぉ」と声を上げる。

「え、腕、出すんですか?」

少し恥ずかしそうに腕を巻くって患部を見せる。
薬を塗るだけだが、なぜかこの少年。顔を赤くする。

そう、この少年、生まれてこの方女子と触れ合った経験がないのだ。
いや、あるにはある。あるが…こういう手当されるような恋愛的シチュエーションは初である。

彼女は全く意識してないだろうし、少年も意識しないようにするが…
意識しないようにすればするほど、余計意識してしまって体が固まっていく

リタ・ラルケ >  
「すみません、すぐ終わりますから……」

 差し出された腕を取り、ゆっくりと軟膏を塗っていく。
 薬が馴染むように、何度か、優しい手つきで患部を撫でた。
 その間、わたしはしゃべらないでいた。

「……」

 少しの間、何も言わないでいると、そういえばと大切なことを思い出した。

「……名前、そういえば言ってなかったですね。リタ・ラルケです。覚えておいてくれたら、嬉しいな」

霧島 孝介 > まるで注射されるときのように肩に力を入れて、顔を逸らす。
顔は赤いが軟膏を塗っている彼女にはわからないだろうか

「は、はぃ…」

声は自然と細く、弱くなる。
優しい手つきで患部を撫でられ、リラックスするような緊張するような
不思議な気持ちで、こちらも黙ってケアを受ける。

「…あ、リタさんですね。俺は霧島 孝介、です。1年です。わ、忘れるわけないですよ!」

彼女の自己紹介に答えるように自分も名を名乗る。
最後の彼女の言葉に、食い気味にそう答える。
戦闘まで付き合って貰って、自分が怪我してるにも関わらずこっちの怪我を優先してくれる天使のような少女を忘れるわけない。

(霧島家の長男として、男として、そのような恥を犯すわけにはいかない)

と謎の決心をして彼女の名前をこの思い出と共に心に刻む。

リタ・ラルケ >  
「……ありがとうございます……」

 忘れるわけない。
 その言葉が、どれほど嬉しいことか。

「……はい、終わりました。患部はちゃんと安静にしてくださいね。明日には治ってると思いますけど……」

 手をゆっくりと、患部から放す。自分の足の痛みも、そういえばだいぶ楽になっていた。

「……えへへ、それじゃあわたしは、もう行きますね。今日は一緒に異能訓練、付き合ってくれてありがとうございました」

 微笑んで、一言。

「……また、どこかで会えたらいいですね」

霧島 孝介 > 「任せてくださいよ!」

ドン、と胸に拳を付ける。
その勢いに少しだけ咽て。

「ありがとうございます。リタさん。明日は特に体を動かす予定もないので
 ばっちり安静にしますよ」

彼女の言葉に微笑んでそう返す。
処置が終われば、彼女から別れの言葉が飛んでくる。

「こっちこそ、疲れてるのにありがとうございました!…あ、バッヂはあげます。その友達の証として…はい。要らないだろうけど…」

彼女が胸元に付けているバッヂを指さしてそのように告げる。
少し恥ずかしそうに、さらっと友達という認定を彼女にして、頬をかく。

「…そうですね。ありがとうございました。絶対どこかで会いましょう。
 
 それじゃ、また!」

その後彼女に別れを告げる。
いつか、また彼女と会う日があるだろうが、いつになるだろうか―――

ご案内:「演習施設」からリタ・ラルケさんが去りました。
ご案内:「演習施設」から霧島 孝介さんが去りました。