2020/11/16 のログ
ご案内:「演習施設」にリタ・ラルケさんが現れました。
■リタ・ラルケ >
演習施設の一角を、空を切る音が駆ける。
「87……88……89……」
その音は、私から――ううん、正確には私が振っているものから。
ヘッドが大岩でできた、巨大ハンマー。私の身の丈を超える大きさを誇るそれは、圧倒的な質量を以ってして、周囲に重い音を鳴らしている。
「……せーのっ、きゅうじゅうーっ!」
両手でしっかり握って、フルスイング。
ひときわ元気な声が、風切り音と一緒に辺りに響く。
■リタ・ラルケ >
強くなる理由ができた。
死ねない理由ができた。
(『私は死なない』、かぁ……とんでもない約束、しちゃったなあ)
そう心の中で呟いて、困ったように笑いながら思い出す。
それは、凡そ2週間前のこと。ハロウィンストリートに立ち並ぶ店の一つ、その中で友達に言った言葉。
しかして約束を交わしたことは、今の今まで後悔してはない。
さりとて今日演習施設に足を運んだのは、それだけが理由っていうわけじゃない。
このところ、スラムや落第街といった所謂裏の世界の動きが不穏だと。そういう噂を耳にした。
そも嘘か真かもわからない話だし、それを聞いてどうするというわけでもないけど。
もし本当ならば――たとえ嘘だとしても――己の命を脅かすような火の粉が、いつ自分に襲い掛かってきても不思議ではないのだ。
かつて戦いの中で、都合の良い兵器として振るわれた力を。
今度は、自分を――そうして、友達を守るために。
「さーあ、頑張らなきゃね、私っ! きゅうじゅういちっ!」
■リタ・ラルケ >
「……100ーっ!」
元気よく、威勢よく。自分に課したノルマをこなした達成感とともにハンマーを振り抜く。
勢いをつけすぎたか、強烈な遠心力に引っ張られて一回転。しかしバランスを崩すことはなく、くるりとハンマーを回して、地面に下ろす。
「――よーし、おっけー! ふーっ、つかれたーっ!」
どぉんっ、と。素振りの終わりを告げる重い音が、軽い地響きとともに鳴る。
傍から見れば軽々と扱っているようにも見えるが、実際見た目通り重いのだ!
「それじゃ、私の出番はもういいかなっ! 纏繞解除ーっ!」
■リタ・ラルケ >
――掛け声とともに、ハンマーが消える。
そしてそのままその場に座り込んで、小休憩。
「はーっ……まあ、とりあえずこんなものかな」
普段からいくらか体を動かしてはいるけど、武器を思いっきり振り回すのは久しぶりかもしれない。心地よい疲労感と、どこか懐かしさを覚えていた。
「……まあ、あの頃に戻るつもりはないんだけどさ」
リタ・ラルケは――いや、正確には精霊纏繞士という存在は、かつて戦いに利用された。
正直、その時のことはよく覚えてはいない。ただまあ、ずっと戦わされていたことと、それがとても嫌だったことだけは印象に残っている。
「……ま、いっか。考えるの、やめよ」
終わったことだ。
今の自分は、ここにいる。
「さーて、これからどうしよっかな……」
自主的な訓練とはいえ、その場のノリで決めていることではある。
次は何をしようかと――ぼんやり考えながら、寝転んで空を眺めていた。
ご案内:「演習施設」に照月奏詩さんが現れました。
■照月奏詩 >
日課というのも変だが。何も用事がなければここに来るようにしていた。体を動かさないと感覚が鈍ってしまうから。
いつもの様子でここにくると先客がいたようだ。練習が終わった直後なのか、上を眺めてゆっくりとしている。
「へい、使わせてもらっても問題ないかい?」
出入口付近で軽く休んでいる少女に手を振りながらそう声をかけた。
休んでいるのならいいとは思うが、一応声をかける。
別にうるさい能力ではないので邪魔にはならないとは思うが、発動の一瞬はどうしても音がなってしまう。
「もしくは体調が悪いとか……そういうことじゃないよな?」
と一応そっちの心配もする。体を動かしすぎて気分が悪くなったなどはどうしても運動をする以上起きる現象だ。
■リタ・ラルケ >
「んー」
空を眺めていると、誰かに声をかけられた。おもむろに上体を起こす。
背の高い男の人だった。どうやら自分と同じでここを利用しに来たらしい。
「あー、どうぞー。別に私に許可取ることもないのに」
手をぱたぱたと振って、問題がない意を示す。そも自分がここを管理している立場というわけでもない。誰がどう使ったって自分がどうこう言えるものじゃないだろう。
それとどうやら気分が良くないように見えたのか、気遣うような素振りも見せてくれたので、
「別に体調が悪いわけでもないよ。まあ、これから何しよっかなって考えていたくらいで」
そう返しておく。実際疲労感はそこそこ抜けてるし、そろそろ休憩を終えて別のことをしてもいいかもしれない。
……いやまあ、その「別のこと」を決めている最中ではあるんだけど。
■照月奏詩 >
「それなりに音がするからさ、寝てる最中だと驚かせちゃうだろ?」
少し苦笑いを浮かべて手を軽く振るうと両手、そして両足に紫電が走る。だがそこから響くのは電撃の音ではなく金属同士がこすれあうような甲高い音。
たしかにうるさいといえばうるさいかもしれない。
「ああ、やっぱり休憩中か。休憩か体調が悪くなったか意味なくかのどれかだろうなぁとは思ってたんだが」
そんなことをいうと体を動かし始める。
はじめは軽く鳴らす程度なのか軽く腕や足を動かす、実戦の動きではないので比較的ゆっくり目。中国拳法と古武道を足したようなそんな動き。
「まぁでも、練習終わった後なら少し休むのもありじゃないか? ほら、ずっと動かしっぱなしってのは逆に体に悪いとかいうしさ」
ピッと一発鋭い蹴りを空に放つとゆっくりと足を下ろす。
甲高い金属音は手や足を振るう度に剣のように空気とこすれその音が振るう瞬間は大きくなるだろう。
■リタ・ラルケ >
男の人の四肢に紫電が伝い――そこから、金属音が鳴る。人によっては不快感を覚えるような、そんな甲高い音。
確かにこれは、何も知らない人からすれば驚くかもしれない。念のため周囲に声を掛けておくというのも頷けよう。
さて、軽く言葉を交わせば、そのまま男の人は体を動かしだす。
ゆっくりではあるが、これは……武道の動きだろうか。生憎、そちら方面の知識は疎いものだから、どのようなものかはわからないけれど。
「んー、まあそうなんだけどね。もうちょっと体を動かしたい気分というか」
そういう気分であるというのが一番ではあるが――もう少しちゃんと鍛えておきたいというのもある。
「……いやあ、凄い。何かやってたりする?」
蹴りと共に金属音を鳴らす青年を眺め、そう言う。
実際、体術については自分では比べ物にもならないだろう。自分の戦闘スタイルが、異能と魔術に極端に頼るところというのもあるが。
■照月奏詩 > 「なるほど、なら休むのはあれか」
んーと考えながらも手足を動かしていく。クルクルと手と足が空に放たれる。速度と鋭さは徐々に増していく。
何かしていたのかと聞かれれば一瞬ピタリと動きを止め。
「まぁ、武道を少しな。名前は無いらしい」
実際は違法組織で作られ広められた流派な為名前を言うに言えないというのが正解なので表向きそういうことにしてあるだけだが。
そういって少し体を動かそうとして構えを取った所でふと構えを解く。
「そういえば体動かしたいんだよな?」
とそちらを向く。手足の紫電はまだまとったまま。
指を一本立てて提案と言いながら。
「俺もだが実戦形式の方が練習にはなる……が、悲しいかな。俺の能力ってこの電気みたいなバリアだけで。攻撃面は武術に頼っててな。正直そんなに強くない。ガチでやったら練習になるまでもなく伸ばされちまう」
そんな事を恥ずかしい話だが等といいながら苦笑いを浮かべる。
でも軽くグッと握りこぶしをそっちに向けると今度は不敵に笑う。
「でも攻守どちらかに寄せれば話は別だ……そこで。どうだ、交代で攻め守りを決めて練習しないか? 守り側はカウンターや反撃はなし。ひたすら相手の攻撃を捌くだけ。逆に攻める側はそれをいかにして崩すかって感じだ。守り側が攻撃を貰ったら……というかもらったらヤバいから寸止めとかで交代だ」
こんな練習法はどうよと提案を彼女に返した。
■リタ・ラルケ >
「……へえ」
面白い発想だな、と思った。戦況が流動的に推移する戦場において、攻め守りの区別はないに等しい。来る攻撃には守るか避ける。隙があれば叩く。どちらかが攻撃側になるといったスポーツじみたことなどやらない。
だがここは戦場ではない。だからこそ、明確に攻守どちらかを集中して訓練することだってできる。それはそれで悪くない訓練にはなるだろう。
「――いいよ、臨むところ。……ああでも一つ」
笑みを浮かべて、その提案に乗る。だけれどその前に、明確にしなければならないことが一つ。
「私、体術はあんまり得意じゃないから。異能と魔術は制限なしで。……ああもちろん、相手に危害を加えないっていうのは大前提だけど」
それならいいよ、と。そう問うてみる。
■照月奏詩 > 「…………マジか。いやまぁうんそりゃもちろん大丈夫だ」
目線が泳ぐそれから苦い顔を浮かべる。
だがその後少し笑う。
「こりゃとんでもない相手に勝負仕掛けたっぽいな。接近する手段考えないと。さってそれじゃ」
手足だけにまとっていた紫電が動き手首足首だけに集中する。
電気の濃度もさっきよりはるかに濃くなり見ただけで強化されたとわたるかもしれない。
構えもさっきまでの様な前に出るような、いわば攻撃的なスタイルではなく。手をしっかりと体の近くに置いた直立。
すなわち防御的なスタイル。
「先攻どうぞ? 先に手札を見ておかないとこっちの攻撃の方法が思いつかないし」
と言うと少しだけ笑った。
■リタ・ラルケ >
「ん、先攻いただきます。それじゃあ行こっか」
純粋に身体能力の一点だけに限れば――はっきり言って、自分は凡人か、それ以下である。
魔術が使えるならば、なんとかこの人にも渡り合えることだろう。
……さて。素直に見れば相手はどうやら電気に特化していると見ていいだろうか。雷の精霊が彼に寄っているのも見えるし。
聞いた話によればバリアとのことだが、さてどれほどの強度なものか。
「……それじゃ、行こっか。集中――」
一度纏繞を解いた精霊を、体に呼び戻していく。
■リタ・ラルケ >
私の髪の色が茶色に変わっていく。精霊が体を満たす感覚。
うん、さっきもこの状態だったし、準備は万端っ!
「――よーしっ、早速食らえーっ! ストーンヘーッジ!」
さっきとは打って変わって明るい声色。
そしてそのまま、突き上げた右手に拳大の石を生成し、彼に向って投げつける!
■照月奏詩 >
雷の精霊にかんしては全く纏っていない。見た目だけ電気というだけでその性質は電気とは全く異なる物だろう。
そんな自身は彼女の石を飛ばす攻撃を冷静に見る。
「……なるほど」
彼女の雰囲気が一変したのを見る。そして髪の色も。
おそらくそれが彼女の能力、魔法による副産物といったところだろうか。
それが魔法の石であるか本当にただの石であるか。それらはわからないが、攻略方法はさっき聞いた言葉。すなわち体術はあまり得意ではないという点。
「反撃は無しでもこういうのはありだよな」
手首にまとっていた紫電は右の手に集中。グローブのように電気を纏うとそれをまっすぐ打ち出すすさまじい金属音と同時に岩は違う方向に逸れる。
生成していたということは連発はできないはず。そう読みをつけるとこちらも踏み出す。少しでも近寄ってインファイト。つまり足で相手の魔法をかき乱そうという魂胆。
■リタ・ラルケ >
「わぁっ」
石弾が彼に着弾する刹那、金属音と共にその弾道が逸れる。
弾かれた、ということか。まあ予想はできている。
「おっと」
そのまま彼はこちらに踏み出してくる。確かに生成という一プロセスを踏んでいる都合上、石弾は連発できない。その弱点を突こうとしたのだろうが――そも石弾は補助という位置づけが強い。
この状態の場合、むしろ近接戦は得意な方だ。
「させないよっ! ロッククラッチ!」
彼の周囲に岩を複数生成し、そのまま中央――彼のいる場所に飛んでいく。
特に抵抗がなければ――重い岩が彼に組み付き、そのまま枷となることだろう。
■照月奏詩 >
「接近できればこっちの物だ。後はかき回させてもらうぞ」
生成に時間がかかるとはいえ決してまっすぐは走らない。左右に移動し急ブレーキや急加速を交え不規則に動く。そうしてもうすぐ取り付けるかというタイミングで。
「げ! こっちが本命か!」
左右に飛ばされた岩そして左右から迫る岩。苦い顔をする。
最低限の物を回避し、打ち落とし。なんとか後ろへとバックステップを行い逃げる。
「今のはびびった。最初の岩はある種のフェイントか。完全にしてやられた」
両手にグローブのように電気を纏うともう一度身を低くとる。
「つくづく実戦じゃなくてよかったって思ってるわこれ。今のを被弾覚悟で突っ切る以外方法なかったもん」
こういうルールだからこそこの離れた位置で待つという手段もとれるわけだが。実戦ではそうはいかない。
戦闘ではなく試合だからこそできる戦法のおかげでなんとかケガは免れているわけで。