2021/12/05 のログ
羽月 柊 >  
座学はともかく実習は時間が過ぎるのは早い。

崩志埜に促され、撤収の準備を始め、
小竜たちの情報と統合し、
それぞれの今後の課題を一旦口頭で言い渡す、という流れ。


…かつて、失敗を知らぬ故に一度の失敗に、
あまりにも大きな欠損に膝をつき、
そこから足掻いて、1%の成就に命を投げ打とうとした『例題』があった。

その投げ打つことを止めたのは、
懊悩の果てに失敗塗れで歪んだ道を歩む自分だった。

そうして、己は教師の道を歩んだ。


「魔術の大半は事象顕現の為の応用ばかりだからな、実際に扱うと…。」

授業の後片付け、C班の怪我した生徒を医務室へ先導、
そうして、授業が終わりを告げる。
生徒がまばらに帰り始め、男は言葉を零す。

「『大地が育み、抗えぬ荒廃を知らせるように。
  水が生命を産み、押し流すように。
  火が文明をもたらし、焼き尽くすように。
  風が季節と種を運び、消し飛ばすように。』

 …相反する結果の行方を知り、
 成したい事を成す為に知識という手順を身に着ける。」

これも一緒だ、と、指をパチリと鳴らせば、
B班の成長させた、相手の眼と同じ色の葉が…枯れて地へと還る。


「あぁ、俺のこれはな、ほとんど魔術で鳴らしている。
 実際の指鳴らしは学生の頃から下手でな。」

そう言って己の手を見て目を伏せた。


 これを知っているのは、
 今まで、己の右耳のピアスの対を持つ彼女だけだった。


…だから、話したのは、聞かれたのは、初めてだった。

つまるところ羽月は、詠唱簡略の為に、
前提で音という別の魔術を使っていたのだ。

カスタムというのは、そういうこと。

魔力も実力も無い故に身に着けた、自分なりの道筋。

崩志埜 朔月 > 教師不足の現状、崩志埜という個人が恐れているのが個々人の課題の不透明さだった。

座学系の講義であれば設問やテストで持って自分の不明点が分かる。
解法の決まっている、答えのある学問であればなおさらだ。

それが実技科目には第三者からのレスポンスを要求されてしまう。
自分の不得手は見えにくい物だ。
その点、小竜達の目もあってかこの講義は安心できそうだ。


「知識を伴わない技術は、危険ですからね。
 自身にとっても、周囲の皆にとっても。
 為したいという思いが根底にある限りは、きっと大丈夫ですよ」

音と共に枯れ行く緑を、少し名残惜し気に。
短く言葉を唱えて葉のひとひらだけを土から取り出す。

潰えたはずの緑の命のかけら。
葉の表面には薄くコーティングが施されているようで、光を当てれば煌めく。
念のために保健室に行くように伝えた生徒に、後で渡しておこうと思っての事だ。

「それも魔術で?
 確かに詠唱を殆どされずに行使しているので、
 てっきり鳴らす音に先に仕込んでいるものとばかり」

どうやら指鳴らしのコツを教わることはできそうにない。
やっている内に少し痛みを感じて、鳴らない指鳴らしをやめる。

羽月 柊 >  
これは持ち生徒が少ないからこそ出来る芸当だ。
それも、己の授業を継続して取ってくれる稀有なタイプの。

なので、羽月のやっていることが正しい、とは言い切れない。
大多数の教師生徒にこれを適用することが出来ないからだ。


「そうだな、こういった手合いほど、
 "好き"や"学びたい"、"成したい"と言った
 "意志"が事象を成就させる。

 結果の為に過程を知る。それを今後も教えていければ良いが…。」

葉を掘り返す彼女を特に咎める事は無い。
地に還るようにしたとなれば、人体に影響があるはずもないからだ。

魔力を軽く抜いて栞にでもすれば、長持ちもするだろうか。


「音はスイッチのようなモノだとも。
 これそのものに仕込みは無いが……
 俺は言霊なりこの指鳴らしの"音"が無いと魔術が使えなくてな。」

片付けも終わり、職員室へ二人で戻りながら話す。


「知識があれば、遠回りの道も、近道も見つかる…という訳だな。
 貴方の役に立つかは分からないが…。」

今日は助かったのだから、少しでも相手の助けになれば良いんだが。


そんなことを考え、雑談を交え、忙しい教師の日々は過ぎていくのだった。

ご案内:「演習場【近代魔術実習】」から羽月 柊さんが去りました。
ご案内:「演習場【近代魔術実習】」から崩志埜 朔月さんが去りました。
ご案内:「演習施設」に赤城ヒカリさんが現れました。
赤城ヒカリ > 鈍く叩きつける音と共に訓練ダミーが機能を停止する音が聞こえる。
それ以降一切動くことは無いが壊れてはいない、手加減はしたつもりだしそれ以上の追撃はしていない。

気がつけば演習のステージ上には13歳のちっぽけな少年が一人、寒空の下で白息を吐いて微かに肩を上下に動かし汗も滲んでいる。
周囲には訓練ダミーが数体程。人型のロボットだがいずれも模擬弾や模擬刀などを装備していた。

対して赤城ヒカリは生身かつ徒手空拳で…いや、地面にバラバラになった組み立て途中のようなハンドガンが一つ。

「拳のラッシュ速度が上がったな。銃器なんて相変わらずまどろっこしくてやってられねえが…。
 あん?ダミーは全部倒したんだからいいんだろ?銃の扱い?知るか」

訓練の内容的に銃で制圧するような内容だったのだが実銃の使いに慣れていないヒカリは飛び道具に頼らず拳で機械である訓練ダミーを打ちのめしたのだ。ほぼ無傷で。

赤城ヒカリ > 今日で実戦を想定した訓練を何回か試した。
少し離れたベンチにあるスポーツドリンクを一口飲みながら結果と評価のプリントを閲覧する。

身体能力:S+
異能力:E
魔術能力:F
射撃能力:F

総合評価:D


「は?俺が評価Dとかあり得ねえだろ…一瞬でぼっこぼこにしてやったってのに。」

変身能力を使うまでもない、と言いながら蹴散らしていったのがアダとなった。
変身能力さえ使っていれば異能力欄が評価されたはずだのだが趣旨が理解できていない。

キレ気味にペットボトルの口をがりがりと噛んでいる。噛み癖があるようだ。

ご案内:「演習施設」に霧島 孝介さんが現れました。
霧島 孝介 > 最近は魔術の関連の勉強に精を出しているものの
異能を使った戦闘をしなければ感覚が錆ついてしまう。
そんな事を考えつつ、演習施設へとやってきた陰キャ。

スポーツウェアなんか持っていないこの男。
学園指定のジャージというちょっとダサめの格好で来たのだが…

(やべ、先客おるやんけ…)

鈍いたたきつける音と数体の訓練ダミーの群れ。
その中心には、見た目では自分より年下と思われる少年がおり
拳のみで、訓練ダミーを圧倒していた。

(うぉお~すげぇ、身体能力強化の異能か…?)

そんな考察をしつつ、演習施設の出入り口からちらちらと
今はベンチの近くで休憩している少年を観察して

赤城ヒカリ > 訓練場であるにも関わらずこちらは着崩した学校指定の制服にひと昔前のヒーローが巻いていそうな赤いマフラーの不良っぽい服装だ。だが、まだ二次成長期が抜けていない子供で威厳などそういうものはない。

訓練場で浮いている恰好なのはむしろこの男の方かもしれないが
しかしながら目立たない場所で自身を見る視線に気が付きそちらの方に目を向ける。

「おたく…なんか用?トレーニングしたいわけ?こっちはもう終わったから遠慮せず使えば?」

自分より年上だが臆する事無く普段の言葉遣いで接する。
ギラっと目つき悪い赤目が相手を睨むように見据え、如何にも普通そうな雰囲気の男だなと第一印象を心の内に留めて


「(こいつ…俺の戦いを見てたのか?まあ、いいけど。だったらこっちもお手前拝見させてもらおっかね)」

素直に場所を相手に譲り…代わりにベンチで見学をすることに決めた。

霧島 孝介 > 少年の恰好を確認する。
あ、あぁ~…あるある。俺も『そういう時期』あったわ~…
ヒーローに憧れるのは男の子の特権だ。
自分はギリギリ過ぎ去ったものの、懐かしいものを見る目で少年の恰好を確認して

「あ、は、はい。ありがとうございます…」

流石に視線が露骨過ぎたか、気付かれて声を掛けられれば
ビクッと肩を跳ねさせて、小さな声でそう告げる。
めっちゃ睨まれているのが居心地悪い。え、もしかして見学するの?

自分とは正反対で、特徴的な少年から向けられる視線に、嫌だなぁ~…と神妙な顔をしつつも
少年がやったのと同じ設定でトレーニングを開始する。

開始まで1分と長めのカウントダウン。
その間に体操・柔軟を済ませて、カウントダウンが0になると同時に息を吐く。

「よし、やるか」

訓練ダミーが複数。
素での個体は勿論、模擬弾の入った銃と模擬刀が個体が出現し
襲い掛かってくる。

赤城ヒカリ > 「ふん…」

懐かしい目で見られたのが気に食わなかったのか鼻を鳴らす。
普段ではあれば噛みついている場面であるが体を動かした後で幾分か心身ともにすっきりした状態だ。
不機嫌そうな顔のまま横を通り過ぎ、ベンチに座る。

「さて、見せてもらうぜ。どうやれば評価が上がるのかをよ」

見学されて迷惑そうな雰囲気はなんとなく感じているがそれで退くほどヒカリは素直ではない。
むしろ反抗するようにじっと注視する。

訓練ダミーで死ぬことや重症を負う事はないものの下手をすれば怪我をする。
ダミーは複数。ある程度連携と陣を組んで突撃するだろう。ヒカリの時もそうだった。


「(さて、どう動く?)」

霧島 孝介 > 戦いが始まった際は何をするか。
まずは、機動力の確保。
異能を発動し、蒼い光の粒子を自身の身体に纏わせる
腰部にスラスターの付いたバインダーを装着した状態で作り出し、点火。
スラスターから青白い炎が出て、推進力を獲得し、姿勢制御をしながら後ろへ下がる。

「次は…」

攻撃方法の確立。
左手に銃身の上下にレールの敷かれたレーザーライフル。
右手に片手で持てるサイズの大容量マシンガンを作り出す。
同時に身体の各部に銃の反動や筋力のアシストする外骨格を作り出し、装着する。

これで準備は整った。
訓練ダミーは陣形を組んで攻撃を仕掛けてくる。
拳、模擬刀を持ったものが前衛、模擬弾を持ったものが後衛。

狙いを定め、前衛の丸腰で突っ込んでくるダミーごと、後衛のダミーをレーザーライフルを放つ。赤黒いレーザーが一閃。命中した箇所を白熱化させ、2体のダミーの胸部に風穴を作る。

赤城ヒカリ > 「優等生だな」

一言で彼の戦いを現すならそれだ。

先ずは初手。この時点からしてヒカリとは正反対に一度後方へ下がりながら冷静に機動力を確保している。
ヒカリと言えば先手必勝と言わんばかりに手ごろなダミーに突っ込んでいったのだ。

そして装備。彼は異能で武装を出現させてダミー軍団よりも射程と火力で勝る武器を出した。
武装召喚系の能力者は上位の者になると後出しじゃんけんのように相手よりも優位な武器をだせる。
ちなみにヒカリは事前に貸し出しの拳銃を支給されたのだが使い方が分からなかった。

そして攻撃は近寄らせず射撃させず圧倒的な蹂躙だ。
もはや言うことは無い手本の戦い方だ。


「随分と派手な能力で羨ましい限りだぜ。」

ベンチでパチパチと乾いた音の拍手をした

霧島 孝介 > 恐らく、少年から見たら教科書通り、セオリー通りの戦いと言えるだろう。
命のやり取りの経験の乏しく、模擬戦や訓練で習うことしかしてこなかった
彼の戦い方が、今目の前で実践したものだ。

よく言えば、丁寧。
悪く言えば、分かりやすい。
それに、何よりも異能のパワーに頼った戦い方だ。
反射神経や直感、身体の動き、そして、何より心。それらの人間性能を発揮していないともいえる。

(イヤミに聞こえますぜ、ボス…)

少年の拍手と言葉が聞こえ、苦笑いを浮かべる。
そのまま、前衛のダミーに対してはレーザーライフルで一蹴、外したとしてもマシンガンで迎撃。
遠くの敵はアウトレンジからレーザーライフルの連射で撃破。
接近してきたらバーニアで退避と、これまたつまらない形で訓練ダミーを全て倒して。

トレーニング終了のアナウンスが流れる。

息を吐きながら、少量の汗を拭い、武装を蒼い光に戻す。
結果と評価のプリントが印刷され、そちらに寄って自身の評価を閲覧する。

身体能力:F
異能力:D
魔術能力:F
射撃能力:S+

総合評価:D

この結果を見て、苦笑いを浮かべる。

赤城ヒカリ > 「戦いのお手本って感じだな。」

もし仮に自分の戦いがVTRとして残っていて、彼の戦いと見比べてみるならば安定してるのは間違いなく彼の方だろう。
危なげなく、撃ち漏らしがあったとしても冷静に対処していく。
被弾のリスクが少ないのはアウトレンジ戦法の強みである。

「おつかれさん、結果はどうだった?
 俺の方は…まあ聞くな。沢山殴ってどうにか合格ラインって事だ。」

一通り訓練が終わったのを確認すればベンチから労いの言葉をかけながら右手を気さくに挙げて呼ぶような仕草。
ヒカリ自身の結果が芳しくなかったので自身の結果は控えるが相手の評価は気になるようだ。

霧島 孝介 > いや、まぁ、アレだ。
今回の目的は『異能を錆びさせない』こと。
つまり、訓練で高評価を出すことじゃない。

うん、それは分かってるけど勝手に評価されて勝手にDランク付けられるこの気持ちよ。
……次はしっかり体も使おう。そんなことを考えていれば

「!、あ、はい。あ、ありがとうございます…
 俺は…あれです、いっぱい撃って…って感じっすね…はい…」

少年から声が掛かって、身体をビクつかせる。
自分より年下に見える少年にいきなりため口で気さくに声を掛けられて、普通に動揺し
呼ぶような仕草をされれば、そちらに向かう。

このふてぶてしさ、人間ではないのか…?などとも考えて、評価の話になれば
恥ずかしそうに総合評価の書かれたプリントを見せる。

赤城ヒカリ > こっちは年下のはずだが相手の敬語を使う態度に違和感を覚える。
とは言えこっちは13歳と言えどもう既に修羅場を幾度なく超えた身だ。少し堂々とし過ぎてるかもしれない。

座ったまま見せられたプリントを見る。
視力は1.5~2.0の健康児だ。しっかり見える。
評価はD


「俺と同じ…いや何でもない!
 コホン…。戦い方は気に食わないがなかなかやるじゃねえか。」

なかなかやる、と口にしてるが闘争心を隠しきれないのかギラギラとした目で知らずのうちに相手を睨み付けるように見ていてしまった。


「俺は赤城ヒカリ。誰よりも強いヒーローになる男だ。」

自分から名乗るが自分から動かないスタイルで人間性を現している。
ベンチに座ったまま手を出して握手を求めてる。

霧島 孝介 > この男と少年は全く正反対の存在と言っても差し支えないだろう。
男の方は、修羅場というものをあまり経験せず、この異能を持て余しているところがある。
誰かのために戦いたい。そんなことは夢想するが…

「は、はぁ…」

今同じって言わなかった?
こちらの視力は0.1~0.2。その代わり、聴力は人よりずば抜けて良い。
というか気に食わないとか、隠しきれていない闘争心とかツッコミどころ多いんですけど!?
恐らく、少年特有の競争心というか、1着になりたいとか、そういうアレなのだろう。
睨みつけられるのコワイ。

「あ、霧島 孝介、二年生です。
 えーっと…ヒーローとは…?」

相変わらずベンチに座ったままの少年。
一言、何か言ってやりたいが初対面相手にそれは中々ハードルが高い。
ふてぶてしいとは思うものの、差し出された手を蔑ろにするわけにもいかず、握手をしながら
自己紹介の中に混じった単語に目を細め、疑問を浮かべる。