2020/06/30 のログ
■暁 名無 > 「──まあ、そうだな。」
もしこの場に他の教員が居れば、叱責どころの話じゃないだろう。
当然だ。生徒に向けてお前は人間じゃないだなどと人権無視にもほどがある。
……で、ほどがあるから何だ?
「そうなるな。
まあ、お前さんがそれを良しとしないのであれば考慮するが……
ふむ。そも、俺には不慮の事故で息絶える程、人間じみた様には見えないが。」
物の例えだというのは解る。
解るが、もうちょっと例え様があるだろうに、まったく。
「それくらいは雇い主の責務として当然だろう?
責任が恐くて生徒を危険に放り込めるか。」
腐っても一応、教師だ。いや、今回ばかりはその任を超えたことをしてる自覚はあるけれどもだ。
が、それ以上に。一人の人間として、一人の異邦人に相対しているつもりでいる。
や、違うな……あらゆる常識が異なるひとつの生物同士として向かい合っている方が正しい。
「そうだな、それも已む無しだ。
もし仮に異邦の者がこちらの世界の人に手を掛ければ報復を受けるのが道理だ。
その理屈を無視して、一方的に異邦を謗る謂われは無いだろうよ。」
人間も異邦人も関係無い。手を出されたから報復する。
話はシンプルだ。人間同士でもよくやってる。
「ふむ、──『人を信じるな』か。
そこまでの事を認めるのは流石に荷が勝ち過ぎているな……でも、お前さんの根っこはそれ、なんだな?」
なるほど、と腕を組んでしばし考える。
二つ返事で認めるには、自分でも言ったが荷が重すぎる。
が、かと言って現状を如何とする術も無し……ふーむ。
■シュルヴェステル > 「……ああ。私は、人間など信用できん。
斬らば死ぬ。その弱さを武器にする、人間という生き物が嫌いだ。
徒手空拳に爪牙を隠して、我々よりもよほど指向性のある暴力を用いる」
異能。魔術。指向性のある、超常の力が嫌いだ。
一度口を開けば。まるで人のように言葉が流れ出す。
目の前の人間に対して、どれだけ、どうして嫌いなのかを詳らかにする。
「して、私は何より。――人間の傲慢が、許せない。
はじめから、『わかりあえる』などという幻想を抱かなければよかった。
共生できているという幻想に溺れ、真実を見ようとしなかった。
即ち、私は。……私は、《異邦》の取捨選択が、……、」
人間と交わることのできる異邦と、交わることのできない異邦。
この転移荒野でも様々な異邦の民が、交わることできずに死していった。
人が死ぬこともあったろう。それよりも、異邦の民のほうがよほど。
「ここにやってきた全てを殺さなかった人間を、私が許せようか」
揺れることなく。
気高き知性を持ちながら、「わかりあえない」ということを「わからなかった」。
――転じて、「わかりあえると思った」人間の傲慢さを、彼は許せぬと。
悩む暁とは対照的に、シュルヴェステルは高らかに謳う。
「わからない」を「わかる」暁ならば、と胸中を打ち明けてから。
「私は。――私でよいのであれば、その任、承ろう」
■暁 名無 > 「───なるほど、な。」
ふむ、ここまで強固な意志を持つに至った理由も聞かされれば納得のいくものではある。
俺自身感じていたもの、外から来た彼は、より鮮明により深刻にその身に感じて来ていたのだろう。
その感情を、間違いだとする様な感性は、日和った精神は持ち合わせていない。
「そうだな、そうとも。お前さんの言う事は尤もだ。
その怒り、悲しみ、嫌悪は正当のものであると認めざるを得ない。」
これ以上の適任は居ないと思うと同時、最悪の選択でもあると思う。
なら、だ。
「それなら、だ。一つ言いたい事がある。
人を嫌うは良し、信用出来ないと言うのも認めよう。
ただ、それらを踏まえた上で一つ。
決して──殺すなよ。
異邦の者も、人間も、どちらも殺すな。死なせるな。
それが出来る者として、俺はお前さんを選びたい。」
さて、これで相手がどう出るか──
■シュルヴェステル >
「心得た」
静かで、短い答えだった。
すこしの逡巡もなく、すこしの動揺もなく。
それをそうするのが、最初から当然至極であるかのように。
「『人間の真似事をせよ』と貴殿が云うならば。
ここに辿り着いたときに殺されることができなかった自らを責めるほかない。
人間にとって、排除せねばならないほどの脅威たり得なかった自責に他ならん」
もし、その膂力がなにもかもを殺すほどに強ければ。
もし、その行いが人間が絶対に許せないことであれば。
もし、転移荒野にやってきた時点で少しの知性もなかったのならば。
そのどれもが架空で、「そうでなかった」のならば。
「どうにかできるほど」に弱く、中途半端であるのならば。
その申し出を不可能だと告げる理由を持ち合わせていない。
それができてしまう。――弱いから。
弱いものが、強いものの定めた法に従うのは事実である。
人間というこの島でのヒエラルキーの頂点からそう言われたのであらば。
オークという種において、弱いことは悪しきことである。
故に、弱いのであらば力をつける以外にやることなぞありやしない。
全ての人間を殺せるほどの暴力を持ち合わせていなかった自分が悪い。
「その全て、『聡き檻』が承る」
幸いであったことは、「死ぬな」と言われていないことだ。
もし、「殺される」手違いも、「自死」の手違いがあったとしてもいい。
「その代わり、生活委員会より。
この世界に足を踏み入れたとき、取り上げられた私のつるぎを。
どうか返してもらえるよう、口を利いてもらえないだろうか」
答えを聞かずに、口の中に肉の野菜巻きを詰め込んでから。
「できる」も「できない」も聞きたくなかったが故に、静かに踵を返す。
異能学会で、転移荒野で。そして、博物館でまでも。
異物として扱われた異邦人に返すつるぎがあるかどうかを。
……いまは、なぜだか知りたくなかったから。
ご案内:「開拓村」からシュルヴェステルさんが去りました。
■暁 名無 > 「嫌いな物、信用ならないものをその感情のままに殺す。殺すことに理由を求める。
その方が俺はよほど『人間の真似事』だと思うが。」
一度目を閉じ、ふぅ、と溜息を零す。
其処も含めて常識の齟齬か、と改めて溝の深さにめまいを覚える。
が、彼の抱えていたものはこの程度の物ではないのだろう。もっと深く、昏いものに違いない。
「──つるぎ、だな。善処しよう。」
正直、一介の教師が回収できるかは分からない。
わからないが──それがやらない理由には成り得ない。
であればダメ元でも掛け合うだけの事をするだけだ。
去りゆく背を見送りながら、酒場の店主と顔を見合わせて。
……え、あいつ代金払って無い?本当に?
「──まったく、難儀な場所だよ。この島は。」
憎々しげになけなしの昼食代を店主に渡し、俺も酒場を後にしたのだった。
ご案内:「開拓村」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」に真浄虎徹さんが現れました。
■真浄虎徹 > 「――いやはや、どうしてこうなったんだろうね…うん。」
そんなボヤきを漏らしながら目の前の”怪物”を見上げる。…沢山の首を持った竜…多頭竜というやつだろうか?
何でそんな怪物と対峙しているのかと言えば――ただの偶然であり不運でしかない。
異能も魔術も全く使えない…結果的に”補習”となったのだが…まぁ、色々あって転移荒野で魔物退治だ。
(…うん、ただの凡人にどうこう出来る相手じゃないよねぇ、これ…僕、人生詰んだかな)
と、ぼんやり思いつつも不思議と恐怖心は感じない――昔からそうだったけど。
それでも、脅威は感じ取れるので強そうな魔物、というのは流石に分かるのだけど。
「――あーーうん、えーと、こっちの…というか、人間の言葉とかって分かる?
出来れば交渉、とゆーか話し合いをした――」
カッ!!
直後、多頭の竜の首の一つが放った閃光のブレスで少年の背後の地面が抉り取られるように蒸発した。
ゆるーい空気はそのままに、何となく後ろを振り返り…「あーーこれヤバいね…」と、他人事のように呟く。
「そちらさんは殺る気満々なのは分かったけど、僕としては特にやり合う気はないんだけど…と、いうか勝てる訳ないじゃない」
次の瞬間には自身が今度こそ閃光のブレスの餌食になりそうなものだが、少年の態度は何時もと変わらない。
■真浄虎徹 > 「…よし、取り敢えず逃げないと死ぬのはよく分かった…まぁ、逃げ切れるかどうか分からな――あ、やっべぇ」
独り言をぼんやり呟いていたが、緊張感ゼロの「やべぇ」発言の直後に真横に転がるように身を飛ばす。
再び、つい一瞬前まで少年が立っていた場所が閃光のブレスにて地面が抉られるように蒸発。
何とかギリギリ回避は出来たが、正直勘に助けられたかもしれない。
緩慢な動作でゆっくりと身を起こしながら多頭竜を見上げて…。
「…いや、ほら…えーと。僕、村人Aみたいな端役なんで見逃して貰えないかなぁ…。
あ、駄目?うん、だよねぇ…村人Aなんて魔物に殺されるというのもよくある事だし…」
周りのように異能も魔術も使えないし、凄い武器や道具を持っている訳でもない。
備えているのは大雑把に過ぎる『体術』と、生まれつきちょっぴり精神の耐性が強いくらいだ。
(あーー…今の交わしたから、奴さんちょっとイラッて来てるみたいだなぁ。
…うん、全部の頭がこっち向いてるし目が凄い迫力で僕チビりそう…)
■真浄虎徹 > …とはいえ、恐怖心がサッパリなので実際にチビりそうなのかどうかは分からない。
いや、気分的には漏らしても罰は当たらないと少年的には思うのだけれど。
まぁ、勢いで小と大を一気に、という可能性も無きにしも非ず…それはまぁ置いておいて。
「……うーん、誰かに助けを求めるにしても、転移荒野だしなぁ、ここ…。」
スマホ?さっきこの多頭竜さんに不意打ちでぶっ壊されましたけども。
――経済的に厳しいのだけど、それよりまずは生存第一。別に死にたい願望は無い。
(――無いんだけど、これ逃げ切るのもやっぱり無――)
「――って、待った待った、たかが凡人学生一人に君は何マジになって――っ!!」
次の瞬間、複数の頭から放たれた閃光、電撃、火炎、凍結、毒霧、他数種類のブレスが乱れ飛ぶ。
最早、回避がどうとかそういう問題ではない。ただ無意識の動きで回避行動を取るが――
「…だから…マジになりすぎだって…っ!!」
直撃こそ無かった――否、あったら死んでいたけど――ブレスの衝撃で上空に吹っ飛ばされる。
即死よりかはまだマシだが、このまま地面に叩き付けられたらどちらにしろ死ぬのではなかろうか。
「……あ、これは何とかしないと死ぬなーー」
考える時間は無い。さて、どうするかと思っている時点でもう地面がすぐそこに迫っている。
■真浄虎徹 > ――考えている時間が無かったので、まず空中で身を捻ってつま先から地面に着地、そのまま体を丸めて地面を転がるようにしながら脛の外、臀部、背中、肩の順番で地面に接地して衝撃を分散していく。
いわゆる『五点着地』というやつだが、勿論少年はそういうのは知らない。
「…っはぁ…死ぬかと思った…いや、現在進行形で死にそうなんだけど」
そのまま反動で身を起こしながら、衣服の汚れを軽くパンパンと払っておく。
体だけはやたらと鍛えられていたから助かった…まぁ、痛くないかと言われたら痛い。
――今ので仕留め切れなかった事にご立腹なのか、多頭竜の目が血走ってきた。
…あと、低い唸るような声も聞こえる。…死を回避したと思ったら次の死がそこにある。
ご案内:「転移荒野」に真浄虎徹さんが現れました。
■真浄虎徹 > (うーん、こういうピンチに覚醒!とか主人公補正あったらいいんだけど、そーいうの無いしなぁ)
村人Aとはそういうものである。あと、都合よく覚醒したらそれはそれでどうかと思う。
よって、手持ちの札で何とかしないといけないのだが…倒す?論外だ。僕が死ぬ。
誰が来てくれるまで耐える…これも論外だ。体力切れでどのみち僕が死ぬ。
あと、都合よく誰かが来てくれたらそれこそ奇跡的だろうと思う。
と、なると逃げるしか無いのだが――多頭竜から完全に逃げ切るって難易度高すぎでは。
「あれかな、今僕の人生はハードモードにでもモードが切り替わったのかな」
取り敢えず、ジリジリと後ずさるように後ろへと下がり始める。あの図体だから動きは鈍い…と、思う。
何せこんな怪物と出会うのは初めてだからしょうがない。ともあれ、最優先は生き延びる事。
――いよいよ切羽詰ったら見切りは付けるが、それにはまだ早い。死ぬならやる事をやってから、だ。
■真浄虎徹 > 「――よし、死ぬ気で逃げよう」
方針は決まったし、後は…まぁ、なるようになれ。
都合の良い覚醒は無いし、都合の良い助けは来ない。
自分の『体術』でアレが倒せるか?…高望みし過ぎだろう。
(ほんと、異能とか魔術がある人が羨ましいなぁ――)
「なーーんて、ね。無いもの強請りしてもしょうがないだろう僕。
どんな力があっても死ぬ時は結局死ぬんだし…。」
だったら、無能力でも凡人でも生き残ればそれで上々だ。
――で、うん。考えタイム中に攻撃してこない君は実は結構優しいのかな?
「――ほんと、日本語というか言葉が通じたら話でもしてみたい所なんだけどなぁ」
首が沢山あるドラゴンって格好良いじゃないか!!と、少年は思うがそのドラゴンさんに殺されかけてる訳で。
取り敢えず、ここを生きて切り抜けられたら補習かました人に文句の一つくらいは言わせて貰おう。
「――さーて、僕が逃げ切るか君が僕を殺すか…命がけの鬼ごっこだねぇ」
■真浄虎徹 > 結果的に言えば――彼は生き延びた。
食われかけたり、ブレス食らいそうになったり、腕試しで着ていた誰かに巻き添えで吹っ飛ばされたり。
――まぁ、生き延びたけど見事にボロボロになった。
「あ、僕は別にこんな格好だけど変質者じゃ――」
『いやーー!?また全裸が現れたわーーー!!』
まぁ、ほぼ全裸だったのは仕方ない。生き延びるのに必死だったもの。
衣服なんてボロボロになり過ぎて既に跡形も無かったのだ。
(――と、いうか”また”全裸ってどういう事なんだろうなぁ)
悲鳴を上げた女子(自主訓練で来ていたらしい)に派手に吹っ飛ばされながら、僕はそんな事を考えるのだった。
ご案内:「転移荒野」から真浄虎徹さんが去りました。