2021/01/04 のログ
川添春香 >  
興奮した様子で話しかけてくる彼女に頬を掻いて答える。

「今の? こう……身体変化系の異能で足をギュルっとして…」

ああ、説明が下手。
そして力には自信がある、と言い切る彼女に首を左右に振って。

「可愛い女の子に傷がついたら、嫁にもらう人が悲しみます」

私の生きてきた未来でもかなり時代錯誤な発言をしつつ。

「リタお姉ちゃん? ふふ、なんか変わったヒトですね」
「ではリタお姉ちゃん、私は今から怪異出現と通報します」

「私はこの場に居合わせた理由を説明できないので、後はなんとかしてくださいね!」

要は後のことを押し付けて帰る、と言い切った。
私のことながら、手前勝手だなぁ。

リタ・ラルケ >  
「え、でもこのくらいならちょいちょいってすれば治るよ?」

 あっけらかんと答える。私の異能って、なかなか便利なもので。特に傷を癒すのに長けた姿もあるものだから、実際多少の怪我はどうってことない。

 ――多分そういう問題ではないのだが、それを気にする様子はない――

「やったっ! じゃあよろしくね、春香ちゃん!」

 自己紹介を交わすと、女の子――春香ちゃんは、素直に私のことをお姉ちゃんと呼んでくれる。新年早々、妹ができました!
 して、その妹ちゃんはどうも何やら訳ありらしく。私に「なんとかしてくれ」と頼んでくる。
 
「ん、いいけど。説明も何も、『たまたま通りがかったところに来た』じゃダメなの?」

 嘘は言ってない。なぜなら私が――正確には元々の"自分"がここに来た理由は、本当にたまたまだったから。

川添春香 >  
「治るの!?」

いや私も治るけど。それはそういう異能があるからであって。
不思議なヒトだ、リタお姉ちゃん!!

制服についた土埃を払うと、血をハンカチで拭って顔を顰める。

「これからも」

血のついたハンカチを畳んで。

「『たまたま』大事件の場所を通り掛かることになるから……」

そういう未来になっている。
惨劇の結末を回避するためなら、私は何度だって。
その何度目かに。
バタフライエフェクトで消えることになっても。

笑ってリタお姉ちゃんに手を振る。

「今回はよろしく、お姉ちゃん!」

そう言って携帯デバイスで手早く通報し、そそくさと走り去っていった。

ご案内:「開拓村」から川添春香さんが去りました。
リタ・ラルケ >  
「……あっ、待って! せっかくならその怪我を……」

 治してから、と。そう言い切る前に春香ちゃんはそそくさと去っていった。

「……あーあ、変なこと頼まれちゃったなあ」

 怪異と出会った理由、だなんて。そんなの、たまたま。それ以上に何か言えることもない。

 それに。去り際に春香ちゃんが残していった言葉。
"これからも『たまたま』大事件の場所を通りがかることになる"。
 そういう異能の一つか、それとも、そうなるとわかっているのか……?

「……わからなーいっ! 纏繞解除ーっ!」

 色々と小難しいことは、元々の自分に任せるっ!
 後のことは、知らないっ!

リタ・ラルケ >  
「……はあ」

 意識のコントロールは、戻った。
 今までのやり取りも、覚えている。

「……厄介なことを押し付けるなあ、私……」

 溜め息は、荒野の空に溶け。
 これから来るであろう人たちに、はたしてどう説明したものかと、頭を悩ませるのであった。

ご案内:「開拓村」からリタ・ラルケさんが去りました。