2019/02/10 のログ
天導 シオン > 「まあ、私の村でもよく悩まされてたなぁ。…あんなにゴツくはないけれど」

ここに来て中々の大物を発見してしまった。声を殺して思わず失笑している。
監視を続けていたら、案の定作物の前で立ち止まって匂いを嗅いでいる。それが食べられるものだと学習すれば、躊躇う様子もみせずにぱくりと。
この生物がクロだと確信して。

「では、成敗しちゃおうか」

と、木の上で大きく伸びをした後、とんと跳躍。
軽やかに跳んだと思えば、見下ろした先の魔猪に狙いを定め、猛禽類が獲物を襲うように急降下。突き立てた膝は勢いのまま魔猪の脳天へと落とし、何が起こったのか理解していない魔猪の野太い悲鳴が響き渡る。

天導 シオン > 魔猪は暫く混乱した後に、彼女と目が合えば先程の襲撃を理解したように威嚇を始めた。
鼻息を荒くして攻撃態勢に入っている際に間合いを取り、半身にして拳を引いて迎撃準備。
読み通り一直線の突進が迫れば、横に流れて身体全体でその攻撃を捌き、そして…

「らあァッ!!」

気合いを入れる為に絞り出した声は非常に荒い。
野生生物の肉体はたんぱく質で出来た強固な鎧、生半端な攻撃では通用しないと熟知している。
そこで身体全体を捻って、後脚をバネにしたアッパーは対人には向かない大振りの攻撃。しかし、今回のような動作が単調な獣ならば、動きを呼んでその鎧を貫くカウンターを放つ事が出来る。
肉を打つ轟音により、脚が宙から浮いたのは、自身より体格面で遥かに勝る魔猪の方だった。

天導 シオン > それでも一撃で倒すのは難儀であり、闘争心を失っていない魔猪は凶悪な牙を振るい回して、目の前の対象を薙ごうとする。
それもまた、動きを読んでいるかの如く、冷静に上半身を逸らして躱せば、次の攻撃に備えて手は後ろに引かれていた。
攻撃後の隙を突き、その鼻っ面に両手を添え

「たぁっ!」

体内で蓄えた空気を放出しながら放たれたシンプルな突き飛ばしは、自身の周辺に突風に似た衝撃波を放った後、魔猪を容易に吹き飛ばした。
圧倒的体格差を持つ化け物を討つ為に、実戦で体得した「気功術」。これが彼女を優れた闘士として印象つける唯一の能力である。
必殺まで練り上げた一撃を受けた魔猪は、よろけながら立ち上がり、ダメージで自由の利かない脚を引き擦って立ち去っていった。

天導 シオン > 腰に手を当てて、退散する魔猪を自慢げに見送った彼女の数m先に、剣の如く鋭い牙が落ちていた。
今回の証明程度にそれを拾い上げて、後ほど依頼主に届ける事にした。

「さて、久々に動いた気がするなぁ…」

実質職を失い、不向きで平和な学校生活を送って暫く経つ。
この様な感覚に懐かしさと僅かに恋しさを感じつつ、帰りはその余韻に浸っていた。今度この力を発揮出来る機会は何時だろう、と

ご案内:「青垣山」から天導 シオンさんが去りました。