2019/06/28 のログ
ご案内:「青垣山」にアガサさんが現れました。
ご案内:「青垣山」にアリスさんが現れました。
アガサ > 青垣山は時折、生活委員会による敵性怪異の駆除が行われる。
偏に登山者の安全確保が理由とされているけれど、今は理由は置いておく。
大事なのは、その怪異駆除の際に一部の参加者から『ツチノコを見た』という証言が出てきたこと。
──ツチノコ、それは大変容以前から存在するとされる未確認動物。大変容以降、類似の生命体こそ確認されたそうだけどツチノコは見つかっていない。
そして、もし本当にツチノコが居るのなら大発見。という訳でこの一報を聞き付けたガビー・スネイクなる老人が賞金を出す事態にもなっている。

「今回はきちんと駆除が終わった後だから安全だろうし、何より最近は前期末試験対策でずうっと勉強ばかりだったからさ。
ちょっとした気分転換にどうかなあって思ったんだよね」

目の覚めるような晴天の夏日。何処からか気の早い蝉の声のする、木漏れ日の落ちる山道を歩きながら傍らの親友に声をかける。
アリス君を誘ったのは言葉の通りで、学生の本分は学業だと理解こそすれ、面白そうな事を逃すのも勿体ない。
真面目に勉学に励む傍らの息抜きも時には良いものさ。なんて理論武装を引っ提げて今日に至る。
勿論、罷り間違っても予定外の出来事になんかならないように、同じ蹉跌を踏まないように、事前に調べたのは言うまでも無い。

アリス > 青垣山は好き。山登りも最近はそこそこできるようになったし。
何より、色んな生き物が息づくこの山が、気に入っているのかも知れない。
敵対的怪異は除く。怖いし。

「ええ、素敵。アガサと山登りというのも良いし、ツチノコを探すという目的も良いわ」

塩飴舐める?と飴の包みを一つ差し出して。
暑気がまだ心地よく、山の風が私たちの間を通り抜けていく。
最近、勉強ばかりでこういうのしてなかったから。
誘ってくれた親友に感謝。

「ところでツチノコってどんなところにいるのかしら…」

アガサ > 「人間は考える葦である。なんて昔の人は言ったけれど、考え過ぎて本当に根が張ってしまったら大変だもの。
だからこうして外にも出歩かないとーってね。んふふ、お気に召したなら良かった!」

差し出された飴を受け取りながら表情を緩ませる。
私の会話に混ざるのは蝉の声に鳥の声。遠くに少し聴こえる誰かの声は私達と同じくツチノコ探しに来た人達だろう。
ほら、耳を傾けると『ハチミツ……ハチミツ……』と亡霊のような声が──ハチミツ?
アリス君との会話の途中に顔を茂みに向けると、甲冑のようなものを着込んだ人が軽快に斜面を駆け下りて行くのが見えた。
……見なかったことにしよう。

「うん、ツチノコの居場所なんだけど……やっぱりこう、ヘビなんだし湿った感じの場所なんじゃないかな?
山だし、そこら中湿っているけれど……一応目撃情報とかは整理してきているよ!」

ポケットから携帯デバイスを取り出し、アリス君に見せるように画面を開くと、そこには事前に入手しておいた目撃情報が纏められている。

「此処からだと……沢が近いのかな。アリス君はどう思う?」

画面には沢、キャンプ場、神社跡、廃墟と化した古民家と目撃情報が記されている。

アリス >  
人間は考える葦である。
昔はこの言葉を知った時、葦がなんなのかわからなくて調べたことがあったっけ。
日本語というのはとても難しい。

「外に出歩くと考えて山に来るのがアガサらしくてね……かなりアクティブね?」

聞こえてきた亡霊のような声にアガサと視線を合わせて。

「は、はちみつ………?」

そして斜面を駆け下りていく甲冑装備ヒューマン。
ああ、今日はこんな感じでドタバタなのだなぁ。

「目撃情報まで集めているなんて……手際がいいわ」

携帯デバイスを見ていると、確かにここからだと沢が近い。
近い場所から探していくのも、楽しいかも。

「それじゃ、沢に行きましょうか。いざとなったら網と籠を錬成するからいつでも言ってね」

アガサ > 「ふっふっふ……だってほら、あれから異能の訓練もしているからね。今ではこんな事だってほーらほーら」

斜面を駆け下りて行くライバルを見送り、纏めた目撃情報を確認し合って沢へと向かう。
GPS機能を駆使して道なき道を歩く途中に、私はブーツを履いたまま颯爽と樹に足を掛けて、そのまま足場にするように立った。

「地形が悪くとも私に任せてくれたまえよ~。勿論、最初から網とかはアリス君をアテにしていたから期待しているとも!
いざとなったら魔術でツチノコを打って動きだって止めてみせるさ!」

垂直姿勢でくるりと樹を一周するように回ってからすたりと着地。
学業の合間にも練習を欠かさなかった成果の一部を詳らかにし、得意顔なのは言うまでも無かった。

「……お、そろそろ沢かな。水の音がするね。」

そうこうしていると水の音が聴こえ始めて前方の木々が途切れているのが判る。
近付くと岩と砂利と清流があって涼し気な気分にさせてくれるけれど、ツチノコ的姿はとりあえず視得ない。

「んー……ツチノコって泳ぐのかな?そっちは何か見えるかい?」

アリス >  
その時、何とアガサは靴を履いたまま華麗に異能を使って見せた。
なんという走破性……ニンジャは実在した…そして私の親友だった………!

「異能が進化しているわね! 魔術の練習も?」

水の音が聞こえ始める中、慎重に山道を歩く。
普段ならこんなところ来ないっていうのが、また冒険感を加速させる。

「何も見えないわね………あっ、あそこ!!」

指差した先で河童が沢を流れていった。
かなりぐったりしている。

「なんだ……ツチノコじゃないわね…」

がっかり。あと浅いからほとんど見えてる河童。がっかり。

アガサ > 「もっちろん練習しているとも!アリス君の飛行機を全部撃ち落とす日だって、そう遠くない……ん?」

目を皿のようにして周囲を見渡しながら会話をしているとアリス君が突然声を上げた。
釣られるように其方を向くとなんということだろう。今日では割とポピュラーな怪異である河童が沢を仰向けに流れて行くじゃあないか。

「……い、いや。もしかしたらあの河童はツチノコと戦って敗れたのかもしれない……!」

男性の河童。色々丸見えだからそう判った事に少しだけ私の言葉が濁る。
正視せず一瞥に留めて彼?の沢下りを見送り、私の視線は上流へと向けられた。

「………なにあれ」

向いた先では鮫が歩いていた。
手と足が生えていて、四足で沢を泳ぐというか歩くというか、そんな感じで悠然とした様子で私達の前を横切っていく。
私達の事なんかまるで無視して通り過ぎて行くのだから成程敵性怪異ではないのだろうと、生活委員会の確かな仕事ぶりに唸るばかり。

アリス >  
「それじゃ私もコントロール技術を高めなきゃ……って…」
「ツチノコ強いわね……河童より強いのね…」

河童の沢流れを視線を外しながら終えて。
ああ、乙女には刺激が強いわ。

「え!? 今度こそツチノコ!?」

上流を見ると。
悠然と鮫が歩いていた。
どうして鮫は歩くのか。

「……まぁ、とにかくツチノコじゃないのは確かだわ…」

マッハで目が死んでいく。
ああ、見れば見るほど鮫肌。触りたくはない。

「キャンプ場に行きましょうか」

歩き出していく。
あんまり見すぎるとこの世の全てがどうでもよくなりそう。

アガサ > 「あれって魚扱いでいいのかな……」

"あれ"が丸のまま学生街の商店街に並ぶ姿を想起する。
いや、よそう。自ら正気を失う必要も無い。
今はアリス君の言う通りに、あれがツチノコではないという事実だけが大事な事だ。

「そ、そうだね次はキャンプ場に行ってみよっか。
一応シーズン前だけど、もしかしたらキャンプしにきてる人がいるかもしれないね。
もしかしたら情報とか手に入るかも!」

目から正気と精気が失せたように見える親友に水筒を差し出しながら沢を後にする。
背後で何かが跳ねる音がしたけれど、振り向いても何の姿も認められなかった。

「──と、ゆーわけで此処がキャンプ場なんだけれど……」

それからのこと。
沢から程近いキャンプ場はシーズン前と言う事もあってかテントの姿は無い。
管理人さんが居る筈の丸太小屋にも人気は無く、けれども中央の本来ならばイベントに用いられると思しきキャンプファイヤには火が熾きていた。

「誰か来ていたのかな?火の始末をしないだなんて危ないなあ……おや?」

近付いてみると地面に紙切れが落ちているのが解った。
焚き付けの残りかと思って拾い上げると『奴らは火を恐れる』とだけ殴り書きに記されている。

「……ツチノコって火、嫌いなのかな?」

どう思う?とアリス君に訊ねてみよう。

アリス >  
「でも手足生えてるし……」

セクシーなおみ足だこと。
もし河童と鮫が逃げていったのなら上流にいる何かは恐ろしい。

「そうね、情報がないと正直山は広すぎて手がつけられないし、良い案だわ」

水筒を受け取って水分補給をしながら歩く。
山で怖いのは脱水と低糖だ。

「見事に空ね、キャンプ場」

広々とした空間に、焚き火がある。
近づいてみると、紙切れがあった。

「いやいやいや、『奴ら』がツチノコでも敵対的怪異でもデンジャーでしょこれ…」

一気に血の気が引いた。
周りに私たち以外いないのがなんともホラブル。
これを書いた人はどこに行ってしまったのだろう。

その時。近くの茂みがガサガサと動いた。

「誰!?」

ヒイッと飛び退いて親友にしがみつく。
すると。

なんと、首から先が人間の牛が現れた。

「なに……くだんじゃない。驚かせないでよ」

くだんは予知能力がある妖怪で害はないはず。

アガサ > 「考えてみると、そもそも火が平気な生き物ってそもそもあんまり居ないよね?」

火が平気な生き物、と言われて思い浮かべるのはファンタジックな火竜とかそういう類だ。
時折転移荒野ではそういった大物が現れて騒ぎになるそうだけど、そんなものは此処には居る筈も無い。
そもそも警告文が必要になるモノは居ない筈、なのだからアリス君と顔を見合わせる私の顔は少しだけ、青い。

「ぎゃあっ!?」

その時、近くの茂みから怪し気な音がなって親友にしがみ付く。
けれども指先は確と茂みに向けるのは忘れない。いざとなったら──

「──わお、あれがくだん?初めて見たなあ……ちょっと不気味だけれど」

ところが茂みから現れたのは髭を蓄えたナイスミドル……の顔をもった牛だった。
アリス君と頬をくっつけて抱き合ったままの姿勢で私の嘆息が長々と落ちる。

「確かくだんって色々教えてくれるんだよね。もしもしツチノコの居場所は御存じかな?」

アリス君から離れ、抱き着いた勢いで地面に落ちた麦わら帽子を拾い上げながらくだんに問う。

『神社』

くだんは惚れ惚れするようなバリトンボイスで一声発するとその場に座り込んで瞳を閉じた。
予言をすると立ちどころに死んでしまうという話だけれど、そういった様子は見られない。

「……どうする?信じていってみる?それとも丸太小屋を調べてみる?」

死なないのだから、くだんに見えてくだんではない可能性もある。そして、少なくとも目の前の生き物は火に近づいてこない。
私はアリス君に耳打ちして判断を仰いだ。
何故か管理人さんが居ないのも気になる所であり、丸太小屋を調べるのも良いかもしれない。

アリス >  
「確かに……何を怖がってこんなメモを残したのかしら…」

火が弱点だと想像しない相手。
となると、幻想種の生き物だろうか。
もしそうならはっきり言って手に余る。即下山も視野に入る。

抱き合ったまま茂みを見ていると、くだんはこっちをじっと見つめてくる。
少しして離れ、麦藁帽子を落としたことを謝りながら咳払いをする。

「丸太小屋を念のために調べてから、神社に行きましょう」
「ひょっとしたら管理人さんがいるかも知れないしね」

瞳を閉じたくだんに一歩近づいてみる。

「来年の新作アニメ」
『ドラゴンキューブ』

ええ……古典じゃん…そんなアニメが新作というカテゴリに入る未来なんてくるのだろうか…
後ろ髪を引かれる想いをしながら丸太小屋に歩いていった。

丸太小屋は閉っている。
つまり、誰かが声をかけるか、開けなければならない。

息を呑んだ。なんでこんなホラーゲームみたいなことになっているのだろう。

アガサ > 「もしかしたら誰かの悪戯だったりして。ほら、ツチノコ狩のライバルとかさ」

帽子を確りと被り直し、余裕を持って水筒で喉を潤してからアリス君の提案に頷く。
もし、小屋の中で管理人さんが倒れていたら大事だもの。ツチノコ探しをしている場合じゃあない。
よし、と気合を入れるとアリス君はくだんにアニメの動向を訊ねていてずっこけそうになるのだけど。

「アリス君、アニメ好きなの?」

ドラゴンキューブ、知らない名前だ。
下山したら調べてみようかな?なんて与太な思考をキャンプファイヤに置き去りにして私達は丸太小屋へ。
改めて近づくと中々立派な造りで、窓から覗き見る暗い室内に階段なども見て取れた。

「うーん人の気配はしないねえ。もしかしたら管理人さんもツチノコ探しに行ったのかな?」

『否』

「うわっ!?」

扉には当然鍵が掛かっている。それを確かめた所で私の呟きに応えたのは、いつの間にか後ろに来ていたくだんだった。

「ふぅん管理人さんは別の要因で留守……と。そういえば君はこの紙切れの意味、解るかな?」

くだんは相変わらず大人しい。火元から離れたらもしや、そんな予想もしていたけれど杞憂と知れてそれはそれで一安心だ。
それなら一安心ついでに私は手に持ったままの紙切れを彼?に見せてみる。

『草木を薙ぐ夜風に紛れるもの。その姿は魚に似ず獣にも鳥にも似ていないが昆虫にもまた似ていない』

相変わらずの美しいバリトンボイスだ。でもそれは今は置いておこう。

「あー……っと。生活委員会の駆除って、確か日のある内だけ、だったね」

携帯デバイスを開き、生活委員会の広報ページを開く。
そこには先日執り行われた日程が記されていて、成程確かに日のある内だけだった。

「とりあえず明るい内に下山する。として~……流石に扉を壊す訳にもいかないし、神社跡に行ってみる?」

時計を確認し、位置関係を確認し、時間帯的には無理をしなければ暗くなる前には下山できそう。
そういった事をアリス君に伝えよう。

アリス >  
「ライバルが読むかどうかもわからない紙切れを置いて悪戯かぁ……」

どっちかというと切羽詰って書置きだけが残されたように見える。
悪戯だったら、多分平和なのだろうけど。

「え、アニメとゲーム大好き」

突然のオタクカミングアウトしながら丸太小屋の前へ。
中に人の気配はない。
念のために声をかけてみたけど一緒だった。

「お、驚かせないでよくだん……」

後ろに来ていたくだんに驚きながらも彼(だろう、多分)の声に耳を傾ける。

「なにそれ、なぞなぞかしら………」

草木を薙ぐ夜風に紛れるもの。
魚にも獣にも鳥にも昆虫にも似ていない。
なんのことかさっぱり。

「…神社跡、行ってみましょうか」
「ここまで来たらどーんといきましょう、ただ帰りのことは忘れずに」

もしもの時のために発煙筒を錬成した。
山で無闇に使うのは憚られるけど。身の危険を感じたら使う。

「ちょっとした大冒険になったね、アガサ」

怖さを吹き飛ばすように明るい声を出しながら、歩いた。

アガサ > 「大好きなんだ。そういえばベッドの下に……」

ポスターがあったね。と何時かの出来事を引っ張り寄せて猫みたいに笑う。

「でも私も時々ゲームはするよ。最近は御無沙汰だけど、ええとACE Survivalだったかな。ロボットとか戦闘機に乗るゲーム」

勿論フォローする言葉だって忘れないけれど。それらは一先ず閑話休題、それはさておきとなる事。

「微妙に抽象的だけど……とにかく、日が落ちると良くないよーって事だけは判ったね。収穫収穫!
それじゃあ神社跡に行ってみよう。どーんとね、どーんと!」

今は目標が定まったことを喜ぶべきだもの。
私は危うく、あの時と違って異能も魔術もあるのだから、なんて言いそうになるのを堪えて
発煙筒を鮮やかに作り出す親友の肩を叩く。

「おやおや~今更かい?ツチノコなんて神秘を探すんだもの。最初っから私は大冒険のつもりだよ?」

努めて元気に快哉の如く笑って。肩を叩いた手がそのままアリス君の手を握ってキャンプ場を後にする。
去り際に後ろを振り向くと、くだんは瞳を閉じて悠然と座り込んでいるだけだった。

「────で、神社跡……多分、此処の筈だけど……静かだね」

それから私達は途中に休憩を挟みながらも山道を登り、途中からは石段を登り朽ちた境内へと辿り着く。
整備されていない石畳に、かつては鳥居があっただろう沓石の跡。奥には屋根が崩れた小さな社が見て取れる。
そういったものを除けば、山の中腹にある広場と言っても良い場所だ。

アリス >  
「むしろあれ見て私をアニオタでゲーオタだと思っていないのは人が好すぎ」

うっさい忘れて、と軽くツッコミを入れておいて。

「ああ、あれ面白そうよね。でも最近ゲームを買ってはクリアしない悪癖が…」

雑談もそこそこに肩を叩いた彼女に微笑みかける。

「それもそうね! せっかくの冒険なら楽しまなくちゃ」

―――神社に到着。

「待って、おかしいわアガサ……静かすぎる」

言った後に頭の後ろに手を置いてにへらと笑って。

「この台詞、一度でいいから言ってみたかったのよね」

緊張感ゼロにへらへらしながら、内心でおっかなびっくり社の周囲を見て回る。
ツチノコはどこだろう。ツチノコはどこか。

「……なにも、いない…?」

アガサ > 「……何だかちょっと物寂しいね。この山って昔は祭祀も執り行われた場。だそうだけれど……ずうっと昔は此処も賑やかだったのかな。」

アリス君の手を離し、一歩二歩と歩み出てから身体ごとぐるりと境内を見回して首を傾げかかって動きが止まる。
けれど、親友が直ぐに破顔するなら私は大きく息を吐いてから抗議するんだ。

「も~アリス君ったら人が悪いんだから!折角人が好いと思ったのに──」

腕を振り上げて判り易く怒った格好となるのだけど、そういった動きもまたアリス君の言葉に止まる。

「──……そういえば蝉の声も、鳥の声も。」

先程まで賑やかしい程に賑やかだった音が何も無い。
そこで私は漸くに思い出す。時に異界とも称される古き山は大層魅力的に人間を拒み、迂闊に訪れた者に襲い掛かる。
ツチノコ探しなどと言う惹句に誘われた人間は──

「う"わっ……アリス君、あれ、なんか凄いのが出てきたぞーっ!?」

突如として木々のへし折れる音がした。
振り向くと崩れかけた社を粉砕するようにして巨体が、全長にして10mはあろうかという蛇が現れて鎌首をもたげている。
胴は通常の蛇ならざる太さを持っていて、成程確かにツチノコ的体型だと感心もしよう。

「ツチノコでいいのかなあれ!?トコヨオオツチノコモドキとかじゃないよね!?」

大きく開けた口からは鋭い牙が見て取れる。その先から滴る液体が石畳の上に落ちてじゅうじゅうと煙を立てた。
どうみても危険な生き物にしか見えない。