2019/06/29 のログ
■アリス >
蝉の声も、鳥の声もしない?
冗談を言ってからなんだけど、本当に静かすぎる。
これは……
その時、姿を現した巨体は。
「な、なんじゃこりゃー!?」
乙女らしからぬ悲鳴を上げて慄く。
巨大な……ツチノコ!!
これは籠に入るレベルでもないし、むしろ私たちがあの大蛇のお腹の中に入るレベル!!
すぅ、と息を吸って蛇に向かって地面を思い切り踏んだ。
「空論の獣(ジャバウォック)ッ!!」
私の足元から岩でできた巨拳が伸びる。
空論の獣の切り札パート1、質量攻撃。
前は異能が使えなかったからあの程度の怪物にも遅れを取ったけど。
広い場所で蛇に負けてやる義理はない!!
■アガサ > 巨大な蛇が獲物との距離を測るように近づいて来る。
一定の距離まで近づいたら素早く飛び掛かり、その牙で標的を仕留める。
そういった狙いが判り易い程に解り、単純明快な恐怖を湧き上がらせる。
「この………!」
それでも私は挑むように右人差し指を蛇に向け、左手を添える。
恐怖に負けてはいけない。意識を集中しろ。私が護りたいと願ったものの前で失敗は許されない。
「Gyfraith newid, Bydd synnwyr cyffredin diflannu nen──《私の声は、貴方の容を認めない──》」
指先に力が灯る。青から白へ、白から紫、そして黒。呪いは満ちて、今にも放たれようとして──
「……う"わー」
しかして放たれず、私の呆れたような声が静かならざる境内に転がり落ちて、消えて行く。
だって、私の背後からアリス君の頼もしい声と共に、正に巨人の拳が轟音と共に飛んでいくのだもの。
巻きあがる風圧で思わず尻餅を搗くのと、巨大な蛇が拳に強かに打ちのめされて宙を舞い、木々の合間に消えて行くのは同時だった。
そういった場外ホームランのような光景を見届けてから、私は立ち上がってアリス君の元へ駆け寄る。
「さっすがアリス君!頼もしいなあ!」
駆け寄って、手を握って鮮やかな異能の冴えに感嘆の声。
巨大な蛇が戻ってくる様子は無く、境内は再び蝉の声や鳥の声が賑やか如く鳴り始めていた。
■アリス >
「あら、ごめんあそばせ。出番をとってしまって」
内心でスゴク緊張からくるドキドキに支配されながらも。
親友の前で情けない姿を見られたくない一心でそう言った。
そして彼女の手の温かさに。
「何度だって守るわ」
と、いつも考えていたことをつい口に出してしまって。
真っ赤になった。
「あ、いや、その……前の事件で情けない姿を何度も見せてたから、そういうの、考えてて…っ」
「ンギャーかっこつけすぎた!!」
全くカワイくない声を出して頭を抱える。
背後で岩の拳がゆっくりと土くれに戻っていっていった。
「さ、さぁ……このことを報告しないと………ね」
「委員会とか、そういうのに…」
恥ずかしさを堪えて、そう言うのが限界だった。
■アガサ > 「……やっぱり君は恰好いいなあ」
生半の怪異なんか物ともしない強力無比な異能。
誰もが羨むような鮮やかな金色の髪に蒼玉の瞳。
明るく元気で、太陽のように振舞ってきっと、大勢のヒーローにだってなれる。
それなら、そういった素敵な親友の為だけのヒーローになろうと思っていた。
私の手を取ってヒーローのような事を言うアリス君を視る私は、きっと瞳を輝かせていて、同時にまだまだ遠いなあと心裡で溜息を吐く。
「情けなくないよ。一生懸命な事は情けなくなんかないさ。大丈夫、私が保証するとも!」
顔を真っ赤にしてわちゃわちゃと瞳を泳がせるアリス君を視て、喉を揺らすように笑いながら何度も頷く。
「うん、ツチノコは見つからなかったけれど、こういった報告も大事だからね。
今日、此処にきた甲斐もあったと言うものさ!」
アリス君の恰好いい所も見れたし。と付けたそうと思ったけれど
親友の顔がこれ以上赤くなって、もしも戻らなくなってしまったらどうしようと思ってしまったので、それは止めて置いた。
「今から下山して、委員会まで報告したらすっかりと夜になっちゃいそうだね。
帰りに何か食べて帰る?門限、大丈夫ならだけど。例えば……蛇料理?」
代わりに心にもない料理を提案し、ヘビの真似をしたりしながら下山しよう。
ご案内:「青垣山」からアリスさんが去りました。
ご案内:「青垣山」からアガサさんが去りました。