2020/07/06 のログ
空蝉 藍那 > 名前で呼ぶのに苦労している様子にまたくすくす笑う。
少女が近寄れば驚いて目を見開く様子に、結構隠せない子なんだなと思った。

「そうなの?お爺さんは獣人だけど慣れてた。やっぱ練習なのかな。和食、慣れないけど美味しいから食べたくても、フォークとナイフで食べてると周りが変な顔するんだよね。」

容姿はアジア系と言われればアジア系だし、かといって純粋なアジア系かと言われると首を傾げたくなるような、言ってしまえば入り交ざったような顔立ちの少女。
ピアスばっちばちにしてる以外は全く普通だし、地球人と思われてもしょうがないからか、少しズレた事をすると目立つ。
すぐに異邦人だって分かって、視線は外れるけど。

「普通は見ず知らずの子に食べ物分け与えたりしないと思うよ?貧しい人に見えたなら別だけど。」

自分の事を怪しいと思ったっておかしくないし悪い事じゃないと言外に告げながら、その上で食べ物を分けてくれる彼をやはり優しい人だと言い切るように笑みを浮かべた。
そして残念ながら―――見えている。
明かりの無い夜の山道を先ほどまで歩けていたのは、今少女の目が暗闇でもハッキリ物が視認できる状態だから。
彼の気持ちとは裏腹に、ばっちり、見えてる。

「ううん、驚いたけど、面白いね!甘くて美味しいし!」
「……ところでなんでそんな畏まった喋り方なの?多分ボクたちそんな年違わなくないよ?あ、もしかしてこう見えてすっごく若いとか!?」

首を傾げた後、サンドイッチを頬張る。

水無月 斬鬼丸 > 笑われると少しバツが悪そうに。
なにか変なことでもしただろうか?
いや、うまく喋れてないのだから笑われて当然なのだが。

「まぁ…この島、結構異世界人多いみたいなんで…無理に使わなくてもいいんじゃないっすかね?」

確かに目立つといえば目立つ少女。
それに異邦人…それだけで敬遠するもいる。
だが、できないことを稀有な目で見る…というのはまた違う気がしないでもない。
自分だって海外で、エスカルゴ食べる道具をうまく使って見ろと言われれば自信はない。

「そうかもっすけど、話しかけられてお腹すいてそうってのがわかったらまぁ…
そのままスルーってわけにもいかないじゃないっすか」

確かに、彼女の言うように完全に見ず知らずで、少しも関わらないような相手であれば
老若男女の隔たりなく、食べ物をわけたりはしないだろう。
だが、彼女とは関わってしまった。小さな出来事であったも。

「え…あー…これはなんつーか……癖みたいなもんと言うか……
俺みたいなのがタメ口ってだけでも気に食わない人もいるんで…」

空蝉 藍那 > 「……言われてみればそうかもね。ここに飛ばされて、驚いた。」

相手の言葉に肩を竦めて笑った。

「……ボクが居た世界では、例え貧しい人間だって他人には無関心だったよ。隣人だろうと子供だろうと。それが当たり前だった。言い訳をするならみんな自分の事で必死だった。自分の事すら満足に出来ない人間が他人を助ける事なんて出来ない。……ミナヅキは自分に余裕のある人だね。余裕があって、その上で、その余裕を他人に分け与えられる。それはとても良い事だと、ボクは思うよ。誇っても良い。大袈裟なんかじゃない。けど、それを普通と言えるこの世界はそれだけ余裕があるのかもね。」

少し真面目な顔になり淡々と告げた後、最後には笑って首を傾げた。

「癖ならしょうがないけど、ボクはそうじゃない。気に食わないなんてありえない。」

首を左右に振って言い切った後、またにっこり笑って最後の一口を頬張った。
手を払ってサイダーを飲むが、まだ慣れずにパチパチする口元を隠して目をぎゅっと閉じた後、ぷはっと口を開けた。

水無月 斬鬼丸 > 何か、悪いことでも言ってしまっただろうか。
真面目な様子で語られる、彼女の世界の話。
それはまるで、辛く厳しい世界の話のようで…あまり、楽しいと言えるものではなさそうだ。
不味った…とすこし眉を寄せる。

「余裕なんて!!いや、むしろいっぱいいっぱいで…
で、でもあれっす。そう言えるならあ、ア、アイナ…さんも誇れるだけの余裕があるってことなんじゃないっすかね…」

正直地雷を踏んでしまったかと気が気ではない。
少しオロオロとしながらも言葉をつづける。

「あ。…ああー…えっと、そんじゃ…その…
えーっと…普通に、しゃべる…」

これでいいか?と、サイダーを飲む少女の顔を伺って。

空蝉 藍那 > 「なーんかまだ硬いなー?」

サイダーのペットボトルの蓋をしめると、階段に置いてすっと距離を詰める。

「ほら、笑って笑って。」

そう言って自分の両手の人差し指を自分の口の端に引っ掛けて、にひーーっと笑って見せる。

「……って、あんな話した後じゃ笑えないか。そうだ!」

思い立ったように立ち上がると、サイダーを持ってぱっと離れて彼の前に立つ。
そしてスカートを両手で払った後、仰々しくお辞儀。

「紳士淑女の皆さま!どうぞその目でご覧ください!こちら種も仕掛けも無いサイダー!ええ、ミナヅキさまがお買い上げいただいたものですので種なぞございません!」

大袈裟に声を張り上げれば右手のサイダーを掌の上に乗せてみせた。

「それでは注目!このなんの変哲もないサイダーを、こうしてハンカチで包みますとー……」

スカートのポケットからハンカチを取り出してぱさっと被せる。
包むというより本当にただ被せただけだが、それをぱっと取り払うと。

「はーい!なんと爆弾に早変わりー!そぉれ!」

丸くて小さないかにもな爆弾に変わり、しかも導火線に火が着いている。
それを上に投げると頭上で爆発し、紙吹雪が舞い散る。

「パパーン!!」

ここが拍手のしどころですと言わんばかりのあからさまなファンファーレ。
両腕を持ち上げて口を大きく開けた笑顔を浮かべるが、うっかりスプリットタンが見え隠れ。

水無月 斬鬼丸 > 「むえっ…!?」

まだ硬いという少女。何をするかと思いきや
一気に間合いを詰めて…笑顔をみせてくる。
天真爛漫と言うかなんというか…明るい笑顔だ。
見ているだけでも元気になるような。だが、彼女の言うようにあの話の後では
彼女のような笑顔にはなれない。

「え?ええ?え?なに?」

すると少女がなにか…まるで大道芸人のように高らかに声を上げる。
一体何をしようというのか?思わず注視してしまう。
すると…手品かなにか?ハンカチを被せたサイダーが爆弾になっている

なにかの異能かそれとも普通に手品なのか?

「うぇ!?アイナさん!あぶない!!あぶなっ!!ちょ…!!うわぁっ!?」

頭上で炸裂する爆弾。ふりそそぐ紙吹雪と破裂音に思わず身をかがめた…が、顔を上げ
少女の笑顔をじっと見つめる。

「…………舌…」

そして、ただ一言つぶやいて。

空蝉 藍那 > 爆弾を作ったのは異能、然しサイダーと取り換えたのは手品だ。
異能と手品を融合させたマジックを見せてなんとか笑顔を引き出そうとした。
我ながら完璧な手品のつもりだったけど、ちっとも彼は笑わない。
滑ったかな、と思っていたが、少年の言葉に目を丸めて慌てて口元を押さえた。

「おっといけない……。あ、別に怪我とかじゃないよ?これ、こういうお洒落。だけど怖がる人も居るから普段隠してるんだけど。いやー、失敗失敗。」

マスクを持ち上げて頬を掻き、苦笑を浮かべた。
紙吹雪がヒラヒラと舞って、草臥れた神社を彩っていく中、隣にまた腰を下ろす。

「うーん、笑顔にするつもりが失敗しちゃったなー。ミナヅキの笑顔が見たいんだけど。」

マスクの下で頬を膨らまして。

水無月 斬鬼丸 > 「あ、いや、こわいとかじゃなくて…いや、たしかに珍しくてびっくりはしたけど…」

紙吹雪を頭に乗せたまま、口元を抑える少女に弁明するように。
彼女の手品にも驚いたが、それ以上に別れた舌。
確かに驚き、あっけにとられてしまった。

「えっと、すごかった!手品!
ってか、あれ、ああいうの得意…だったり?」

不器用ながらも笑顔を浮かべる。
言葉も頑張って砕けさせたつもりだ。
隣の少女に気を使う…というわけではないが…驚き、焦るだけというのも不義理だろう。

「舌は…手品ってわけじゃない、よな?」

空蝉 藍那 > 「そう?良かった!えへへ!ボクは気に入ってるんだ!」

怖くはないと言って貰えれば満面の笑みで喜んだ。
とは言え見たいと言わない限りは見せるような物でもない、自己満足なのでマスクで結局隠すけど。

「へっへーん!実はそーなのだー!得意って言うとちょっと図々しいけど……」

得意と言う言葉には恥ずかしそうに頬を染めて、照れたようにはにかんだ。
まだ得意だとハッキリ言い切るほどには自信が無い。

「……ん?舌は違うよ。スプリットタンっていう人体改造の一つ。まあファッションだけど。」
「……見る?」

マスクに手を掛けて目を妖しく細める。

水無月 斬鬼丸 > こころなしか、先程よりもいい笑顔。
夜闇の中にありながらも眩しく感じる気がする。

「へぇ…えーっと…マスクとか口隠してたのも舌がそうなってたせいかなんか…ってことかな?
気に入ってるのに、なんかたいへんだな…」

本人は気に入っていると言っているが
見せびらかすどころか隠すような所作が多かった。
配慮していたのだろうか?と少し気になった。

「全然種とかわかんなかったし…その、面白かったっつーか…びっくりしたっつーか…
まぁ、その…良かったと思う、うん」

語彙力は貧しいものの、彼女の芸に対しては賞賛を送る。
実際、自分はこうして比較的普通に彼女に接することができているのだから。
そして、彼女が気に入っているという舌を見たいかという問。
そういうファッションもあるのかと少し感心する。そして、問への答えはもちろん…

「見せてくれるなら、その…みたい、かな」

空蝉 藍那 > 「へっへーん。びっくりさせたかったからね!」

花とか鳩とかもっと平和的な物も出せないわけじゃないけど、びっくりさせたかったから選んだ爆弾。
とは言え本物じゃないけど。
自分の異能じゃ、本物は出せない。

「っていっても、ホントに分かっちゃえばなんともないもんなんだけどねー。」

知らずに見たら驚くけど、と言いながらマスクを下ろして、少し身を寄せる。
暗闇でも見えるくらいの距離で口を開ければ、れぇ、と舌を伸ばした。
細長い舌が二枚並んでいるかのように、ひとより少し長い舌がぱっくり割れている。
中央には痕のようなものはあれどすっかり閉じており、左右交互に動かしてみたり交差してみたり、開いたり閉じたり。
それぞれの舌が機能しているのを見せる。

「ほぉ……?」

どう?と尋ねる声は舌を伸ばしてるせいで間抜けだった。

水無月 斬鬼丸 > 「たしかにおかげさまで情けない声が出たけど…
夜に山登りしたかいがあったっつーか…見れてよかった…っていうと大げさか」

緊張を解し、笑顔をくれた少女に対して
彼女自身の眩しい笑顔も含めてみることができてよかった。
それが偽物だろうが本物だろうが、同じことだ。

「まあ…ちょっと変わった舌だなーってくらい…
舌とかあんまみる部位じゃないし…」

顔を寄せれば、二股に別れている。
しかもそれが左右別に動く。
異能や種族としての特性ではないらしいが…器用なものだ。

「すごいな…なんか別の生き物の舌みたいで…」

そこまでいいかけてふと気づく。
いま、滅茶苦茶距離近くないか?と

空蝉 藍那 > 「たははー。ボクも久々に人に手品を見せたかなー。大袈裟大袈裟。」

ヒラヒラと右手を振って笑い飛ばした。

「普段はお口の中だからねー。」

お互いに顔を寄せて、至近距離から見せた舌。
伸ばしているから余計に近く感じる。

「んふふ。舌って筋肉なんだって。だから練習すればこんな事も出来るってわけだー。」

にひっと笑ってまた舌を出した。

「……他の人はキスが上手そうって言うんだよ。まあ実際、癖になる人が多いって聞くけど。」

相手が気付いた事を見透かしたかのか、或いは気付いてはいないけどただ揶揄う為か。
どっちとも言えないような、ただ妖しく笑う口から舌を覗かせていた。

「……それも、試してみる?誰も、見てないよ。」

こんな山中の廃神社、他にも偶然人が居ましたって確率は低い。
そんな事を言いながら舌で自分の唇を舐めて、目を細めて笑う。
うん、なんだかからかいたくなるんだよね、ホント。

水無月 斬鬼丸 > 気づいてしまえば、彼女の言葉の半分くらいが耳に届くかどうか。
やばいやばいやばい。
珍しい舌に気を取られてしまったが、相手は同年代の女の子だ。
不用意にここまで…しかも舌を見せてと接近するなんて…
伸ばした舌が今にも触れてしまいそうだ。

「…あぁ…あー…その…あの、あれ、あれだ。
れ、練習ってどういうふうに…?
やっぱこう、口の中とかでストレッチみたいな……」

言葉遣いは硬さが抜けているものの
今度は別方面の緊張が感じられるだろう。
照れと、焦りと、少年特有のなんやかんやだ。
更に追い打ちをかけるかのような彼女の物言いは、それを加速させる。

「た、たしかに、うまそう、だけどっ!?きっ…スッ…て…
え?」

試す?いま?ここで?

「お、俺ッ…キスとかしたことなくて!いや、だから、試すもなにも違いとかがわかんなくて!」

もはや思考は滅茶苦茶で、なにを言ってるのか。

ご案内:「青垣山 廃神社」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
空蝉 藍那 > 深い青色の瞳がじっと少年の目を見つめ、一瞬も逸らさない。

「んー、まぁとにかく動かす?ぐにょぐにょーって。」

残念な事に少女は説明が苦手だった。
何せ基本「やろうと思ったからやった」「やれた」「やれなかった」である。

「たははー、焦り過ぎ焦り過ぎ。」

一気に挙動不審になる様子に笑って肩を竦めた後、すっと身を引いた。
男子に言われるのは恥ずかしいけど、こういう相手だと意外に出来ちゃうもんだなと思った。

「初キスならしょうがないかー。ボクなんかが盗っちゃ悪いし。」

スカートを巻き込むように膝を抱えて、首を傾げてほくそ笑む。

水無月 斬鬼丸 > 夜だと言うのに、互いの色がわかる距離。
じっと見られていると、こちらも目を離せないじゃないか。
これでは落ち着けない。

「あ、ああ、そう…」

舌の動きに焦点を当てて話題をそらす作戦
失敗!
作戦は失敗したのだが…少女は笑って身を引いた。
もちろん、いやとかそういうわけではなかったのだが、初めてのキスチャンスがふっといきなり湧き上がってくれば
流石に気が動転してしまうというもので。

あと、初めてあった女子だったし。

「なんかって…そういうわけじゃなくて…あれだ、あれ…
むしろ、俺こそそんな…ビビっちゃって、ごめんっていうか…冗談だったろうに本気にしそうになっちゃって」

身を引いた彼女に少しホッとした様子で。
ホッとはしているが、先も言ったとおり嫌だというわけではもちろんない。
年頃の男子…しかも陰キャとしては仕方がないのだ…。

空蝉 藍那 > 「うーん、半分本気だったよ?だってミナヅキは良い人だし……」

引いた筈の体をすっと寄せて、彼の顎を右手が捕えるふりをする。
顎を持ち上げるような素振りだが、実際には触れない、触れそうな距離。
膝立ちになって彼を見下ろせば、不敵な笑みを浮かべる。

「それに何といっても可愛いし、良い子だ。ボクは良い子が好きなんだよ、ミナヅキ。」
「キミの大事な初めてを盗むのも一興だけど、それはボクの信条に反する。ボクは良い子からは盗まない。」
「盗んで欲しいなら別だけどね……」

触れそうなくらい近くから囁くような声で告げる顔は、微笑みながらも真剣で、射貫くような青い瞳が見つめている。

水無月 斬鬼丸 > 「サンドイッチ分にしたって…お釣りが払いきれないんだけど…」

いい人判定の分として少女からのキスなどもらったら
何回彼女にサンドイッチをプレゼントすればいいのかわかったもんじゃない。
触れそうで触れない指の動きは、触れていないにもかかわらず顎にくすぐったさを残して
それにつられるようにアイナの不敵な笑みに視線が向く。

可愛いし良い子…という評価はまるで子供に対してのものっぽいが…
そのことに対して文句は言わなかった。
いや、言えなかった。
盗む?信条?この子は、一体…突然現れた少女の青い瞳から目が離せない。

「え…ぁ……ま、待って…えっと、下の名前…おしえとく…斬鬼丸、だ」

盗まない、そして盗むかどうかの選択肢をこちらに委ねた彼女に
名字しか名乗らないのはなんだか失礼な気がして。

空蝉 藍那 > 「じゃあこれからもボクと遊んでくれればいいよ?それで十分。」

対価に見合いたいというのならばそれで十分だ。
少年に逃げる様子は無く、ただ戸惑うばかりなのがまた可愛い。
少女には今まで見た事無かったタイプの男子だ。

「良いの?名前なんて大事な物を教えて。それとも、期待してるから?答えを聞いてないけど。」

触れない。触れそうで、やっぱり触れない。
触れるのはお互いの吐息だけで、擽るようにお互いの唇に触れ合う。

「それとも強引に盗まれるのが好きなのかな?」

指先がいよいよ顎に触れて、本当に持ち上げる。
月夜を背にして陰りながらも、青い目が絶えず少年を見つめて離さない。
その手を振り払わなければいよいよ本当に盗んでしまうよ、と。
告げるかのように指が顎を擽る。

水無月 斬鬼丸 > 「そりゃ…まぁ、もちろん……
別に避ける理由とかもないし…」

知り合いや友人ができるというのならばむしろ大歓迎なわけだが
状況が状況、戸惑わざるをえない。
かといって、逃げる…などという選択肢を選ぶほど彼女を恐れているわけでもなければ
喜んで受け止められる甲斐性もない。ついでにそんなに女子なれしてるわけではない。


名前を名乗った理由を問われる。
吐息が頬をくすぐるようでむず痒い

「期待、とかじゃなくて…その、なんつーか……っ!
アイナ…は、名前で呼ぶのに、俺だけ名字しか教えないって…
認めてくれてんのに失礼かなって…っ!?」

言葉にするのもやっと、心臓が痛いくらいにドキドキしている。
顎に指先が触れるともはや言葉も出ない。動けない。

「っ…まっ・・・」

まて…その一言すらも息が詰まったかのようで言葉にならない。

空蝉 藍那 > 「ふふっ、それを今言うの?もっと早くにも言えたよね?今言うのは期待してるんじゃないの?」

何度も彼を「ミナヅキ」と呼んだし、彼は「アイナ」と呼んだ。
幾らでも適切なタイミングはあった筈だと意地悪く告げて首を傾げながら目を細める。

「じゃあ、盗ませてね。ザンキマル。」

わざわざそう予告のように告げた後、唇を奪うように上から重ねる。
顎を掴んでいない片手を彼の後頭部に添えて支えながら、舌を伸ばせば2枚に分かれた舌がぬるりと彼の唇を舐める。
そのままくにくにと、割れた舌で彼の下唇を挟んで遊ぶ。
唇を一度少しだけ話すと、見せつけるように舌をだらりと伸ばして、左右交互に上下に揺らして舐り遊ぶ。
そのまま彼の唇を割いて、舌を差し込もうとまでする。

水無月 斬鬼丸 > 「そんなっ…ことは……えーぇっと…」

ないといいたいところだが、説得力のある言い訳は思い浮かばなかった。
何か、なにか言葉を紡ごうとしたところ。
名を呼ばれた。

「へ?」

唇が重なる感触。
今何をされたのか、一瞬思考が追いつかなかった。
まさか、本当にされるとは思っていなかった。いつもどおり、からかわれるだけ。
そう思っていたのだが…そうじゃなかった。
唇の感触だけではなく、ぬらりとした粘膜の感触…先ほど見せてもらった二股の舌すら触れている。

「っ……」

思考が追いつかず混乱したままに下唇から舌がはなれた、軽く息を吸う。
何か言おうと唇を開くも、見せつけられた舌に目は釘づけて…先程触れていた部位と思えば中止してしまうのも当然。
そして、その舌が潜り込んでくることすら抵抗できずにいて

空蝉 藍那 > 舌を差し込めばそのまま彼の舌を二股の舌で挟み、絡めとる。
唾液を混ぜ合わせて絡めた後、自分の舌を浮かせて彼の舌を下顎に押し付けるようにした後、また左右交互に彼の舌の平を擽る。
混乱している様子を熱のこもった青い目で見下ろしながら、ぢゅ、ぢゅぷ、と唾液が混ざり合う音がお互いの口の中で響く。
彼の舌を舌で挟んで揉んだり擽ったり引っ張ったり、スプリットタンだからこそ出来る事を彼に直接教えていく。
何も出来ずにいる彼が面白くて、ついそのまま彼の肩を片手が掴み、後頭部はぶつからないように支えたまま、彼を押し倒そうとして。

空蝉 藍那 > ―――そこで止まる。
思わせぶりな動きの途中で。

「……分かった?舌の動き。」

顔を離せば至近距離で微笑み、先ほどまで混ぜ合わせていた舌を覗かせる。

水無月 斬鬼丸 > 「んっ、ぐぅ……ぅ!?」

何をされている?彼女の別れた舌が自分の口腔をかき回している。
自分の舌はと言えば、挟まれ、擽られ、もてあそばれるばかり。
不意を打たれたようなもので、目を閉じるなんて気の利いたことが出来るわけもなく
見下ろす彼女の視線を正面から受け止めてしまう。心臓が早鐘をうち続けている。
やばい、やばい、やばいって…
頭の中でそう思うも、彼女に体を横たえさせられて…
そこでようやく、唇がはなれた。

「ん、ぐ…はぁっ…はぁ……は……え、ぁ……は、はい…」

呼吸も忘れていた。
息を吸うよりも先に口腔に溜まった唾液を嚥下して。
至近距離で微笑む少女には放心したままに返事を返しカクカクと三度うなずいた。
まだ、実感がわかない。

空蝉 藍那 > 「あはは、よく頑張りましたー。」

放心しているかのような少年の様子に、けろりと軽い調子で褒めて体を起こした。

「ごちそうさま、ミナヅキ。」

自分の舌を舐めてからマスクを戻しながら体を離して、にいっと目を細める。

「どうだった?初めてのキスは。」

先ほどと変わらない能天気な笑顔で首を傾げた。

水無月 斬鬼丸 > 仰向けに寝転んだまま、体を起こす少女を見送る。
思わず、もう一度つばを飲み込んだ。
うまく言葉が出ない。

「んぐ…んっ、はぁ…は……ぇ…あ……何、何を…」

何をした?何をされた?
キス?俺が?
二股の舌でのキスは…初めてのものとするにはあまりにも未知すぎた。
混乱もそのままに、ごちそうさまと言われれば反射的とも言える返事を返す。

「お、おそまつ…さま…?アイナ…えっと、その…」

確認すべきか、しないべきか、一瞬躊躇するが、直後にアイナの口から種明かしがされる。
そう、したのだ。キスを。

「……なんか、なんか…その、すご、かった?」

ただでさえ初めてであのような攻めを受けたのだ。言葉になるわけがなかった。

空蝉 藍那 > 「あはは、混乱しすぎだよミナヅキ。」

ただキスをしただけでこの混乱具合。
別に見目が悪いって訳じゃないのに、余程性格的に女慣れしてないんだと思った。
言っているだけでしたら意外と乗るかと思ったけど。

「それはよかった。忘れられない初体験になったならボクとしては嬉しい限りだよ。」

マスクの下でにっこりと笑った後、立ち上がって手を伸ばす。

「ほら、もうそろそろ帰らないと、いい加減寝坊しちゃうよ。送ってってあげるから。」

すっかりお姫様扱いである。

水無月 斬鬼丸 > 「…しっ、しかたないだろっ!!ほんとにされるとか…」

おもってなかった。それに初めての経験なのだからあたりまえだ。
しかも、彼女の舌のことを鑑みれば
今後そうそう経験できるものではないのだ。
未知が重なりすぎているのだ。だからこその混乱だ。

「俺、なんか…ろくなこと言えてなかった…」

彼女との距離に気づいてからこっちまともな言葉を発することもできず
あれよあれよとこうなってしまった。
一生忘れられないファーストキスであることは確かだ。
彼女の手をとって起き上がれば、足元がおぼつかない

「…ねぼうっつか、寝れなさそう…」

真っ赤に赤熱したかと思えるような顔をなでつつ、フラフラと歩き出す。

空蝉 藍那 > 「えー?逃げる隙は十分に与えた筈だったんだけどなー……?」

マスク越しの顎に指を添えて首を傾げて惚けた。

「そもそも言葉になってなかったかな、大半。」

そして笑顔で追い打ちをかけていきながら、彼の手を取って起こすと、そのまま歩き出す。
足元が覚束ない少年は支えていないとそのまま階段を踏み外しそうで怖いし。
まぁ踏み外したとしても受け止めるけど。

「たははー。地球に来て初めての悪い事しちゃったかなー。」

わははは、と笑いながら歩いてのんびりと帰っていたが。

彼と別れてから、真赤になった顔を押さえて帰ったとか。
だって、逃げると、思ったんだもん―――

ご案内:「青垣山 廃神社」から空蝉 藍那さんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。
ご案内:「青垣山」にレナードさんが現れました。
レナード > やってきた。

本当なら一日早いのだろうけれども、当日は色んな人がこういう場所にもごった返すのだろうと思って。
誰もいない静寂の中で、夜空を眺めてみたくって、宵闇に落ちた山の中の、少し開けた場所に来たのだ。

「……ほんっとに静か過ぎで逆に怖いし。
 あーやだやだ、なんか出たら僕一人でなんとかしなきゃいけねーわけ……」

と、思いついた愚痴を垂れ流すように独り言ちているも、そんな状況にあってもこの場所には来ておきたかった。
文明の光に照らされた地上からでは、夜空の煌めきは霞んでしまうもの…
別の世界では当たり前だった光景が、ここでは何とも遠いものだから。
そんな感傷につい浸りたくなって、怖さを押し殺して独りここまでやってきたわけで。
勿論、暗い暗い道中にもその黄色い瞳は大いに役立っていた。

レナード > 「……この辺でいいかな……」

さて、足を止めたのは少し開けた草原のようなところ。
腰を下ろすと踏みしめられる草たちが少し柔らかくて、ちょっと申し訳ない気分になるものの。
そのまま真上を仰いでみれば、満天に輝く星々のなんと饒舌なことだろうか。
光瞬く大絶景なパノラマを、風の草木を撫でる音をバックに堪能することにした。

「………おー……」

この少年は、本当に感心しているとき、それを口に出さない。
それは、例え意志ある者相手でなくても、変わらないところであった。
そのまま暫く、呆けるようにして夜空を眺めているだろうか。