2020/08/19 のログ
ご案内:「青垣山」にジャムさんが現れました。
ジャム > 青垣山のふもと。
私鉄で移動できる駅からほどほど近い、あまり奥深くない森林地帯の昼下がり。
ほぼ手つかずの自然の獣道を我が者顔で行く獣人が居た。

「はー……!山の中すずしいー!
ファミレスの中も涼しいけど、こっちの涼しさ落ち着くー……!」

バイトの帰り道、まだまだ暑い日中の避暑地として青垣山を選んだのだった。
自分の生まれ故郷には広い森があった。自然に親しむ異邦人は半分ぐらい野の獣。
気持ちよさそうに両手を伸ばし、緩い坂道を下っていく。

途中で流れる細く清い川の流れを見つけると、近づいて冷たい水を口に含み。
そのままローファーを脱いで裸足を川へ沈め。

心地よさそうに両足ぶらぶら、後ろ手をついて木々の枝を見上げて獣耳揺らしてる。

ジャム > 森を渡る風がそよそよ。顔を仰向ける半獣人のおでこを撫でて瞳を細める。眠気誘われて、後ろ手の片方を離して口元へ当てた。あふ。

足先に冷たさを感じながら、自分が居るのはちょうど大きな木陰の位置。背中に雑草の気配感じながら仰向けに寝そべった。
午後は課題をする以外に特に用は無い。このままお昼寝決め込もうと少しずつ重くなる瞼。
その目と目の間、小鼻の先に。

――ぶーん。

スズメハチがとまった。

「……っ!」

動いてはいけない。奴はたぶん敵と勘違いする。
手で払いのけるのもリスキーだ。成功しても次の瞬間やられる。

というわけでそのハチが何か目的を見つけて飛び去るまでの数分間。
身動きもできず表情強張らせる異邦人の姿があったことと――。

ご案内:「青垣山」からジャムさんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 黒猫、やってきた。

廃神社。
ここの雰囲気は、どこか懐かしい気さえして落ち着く。
今の常世神社とやらの方が真新しい感じがするけど、今は人の通りが多いから落ち着かない。
この際ぼろっちいのは目を瞑る。雨風凌げるんだし文句はない。

今日も境内に堂々と寝そべった。
色々ふらふらと彷徨ったが、彷徨ったっきり面白いことは特に見当たらず。


「んま、独りになるのはしゃーないが。
 誰かに会いたいと思うんだったら、下山すればいいこったしな。」

わざわざこんなところにやってくるニンゲンなんて、
それこそ肝試しなんかしようとする怖いもの知らずくらいしか、いない。
だから静かなところを望もうとしたら、ここに来るしかなかった。

ご案内:「青垣山 廃神社」にユラさんが現れました。
ユラ > 「すっげ静かじゃん」

静寂をブッ壊すように、ピーナツの袋をがさがさ鳴らしながら、制服の男子現る。
口いっぱいモリモリ食べながら歩いてきて。

「……あ、ども。一番乗りじゃなかった。
あの、オレお邪魔ッスか?」

猫を見下ろして、一言。
ついでにピーナツ一粒差し出してみた。

アーテル > 誰か来た。
流石にへそ天だと恥ずかしい。うつ伏せ気味に、寝返りを打つ。
いや、見せたくないものは毛並みに覆われて見えないハズだが。
すると、まるで先客のように言葉を掛けられたから。

「別にお邪魔じゃあないぞ?少年。」

喋って、返す。
めっちゃ流暢に。ごく自然のように。まるで当たり前のように。
場所代みたいなピーナッツを前足で押さえ、こちらに引き寄せる様にしながら、ぱくりと一口で頂きながら。

「ここまでわざわざやってきた、その心根の部分は気になるけどなぁ?
 何を思ってここに来た。少年。
 ―――あっ、結構イケるなこれ。んまい。」

ぼり、ぼり、ぼり。

ユラ > 「ども。じゃあちょっとこの辺、居るんで。
この豆美味いですよね」

どうやら喜んでもらえたらしいので、さらに数粒ころころと転がした。
周囲を軽く見渡す。

「ああ、はい。樹を探してんス。手紙出そうと思ったんで。
……んで、見たことない建物あったんで、ちょっと見に来ただけッス」

さらに一掴み、ピーナツを口に入れた。
話す猫と相対するにしてはニュートラルだが、多分こういうことに慣れているのでしょう。

アーテル > 「どぉーぞ。ショバ代頂いちまったからにゃ、目ぇ瞑んねえとな。
 ま、ここ俺の家でもないんだがー。」

更にころころ転がってきたそれらを、たしっ、たしっ、たしっ。
器用に猫の前足でそれ以上の進行を止めながら、こちらにころころ転がして。
はぐ、はぐ。纏めていくと背徳の味がした。

「……んぅ~……?
 ちといいかぁ?少年。」

話を聞いてると、どうにも繋がらないところがあったらしい。
気になることがあると、調べたくなって仕方がない。

「樹を探してんのは理解した。
 そういう理由でこういう山々を巡ってんなら正解だしな。
 木を隠すなら森の中ってんなら、逆もまた然りだろぉ。」

森。というか、山だが。
細かいことは気にしない。まあ森みたいなものだし。

「んでだ。
 手紙を出そうってのがどーにも繋がんねぇ。
 ……樹を探したっつー後で、どうして手紙に繋がるんだぁ?」

喋る猫と、それに対して何の疑問も抱いていない少年。
こういう手合いは慣れているのか、こちらも大して自分のことを明かそうとはせず。

ユラ > 「ん、はい。
こういうとこだと、いい樹があるはずなんで。
……今んとこ、まだ見つからないッスけど」

まだ食べるかな、とさらにいくつかころころ。
おいしいものは共有していきたい。

「え。いや、ほら。樹を通して、実家に手紙を送るんス。
この辺異界みたいなもんだし、そんなにデカい樹じゃなくてもつながってるはずだし」

なんでもないことのように語る。よって話がかみ合わない。
猫と少年の間で常識が完全にすれ違っている。

アーテル > 「………あぁー……。」

もう一言同じ話を聞いて、理解した。
ぱっと見フツーの少年だが、異邦人だ。
そう考えれば腑に落ちる。錯乱している様子もなさそうだし。

「なぁるほど。そういう世界から来たってぇわけか。
 ま、仰るようにこの辺はイロイロと淀んではいるけどさ。」

もうほとんど人の手がかかっていない、廃神社。
野ざらしにするなんて、仏閣に対して罰当たりなことこの上ないわけだが、それを咎め正す人さえいないという事実。
…当然、そうなれば淀むものは淀む。掃除をしていない部屋と同じように。

「お前さんとこの実家ってぇのは、なんだ。
 樹と寄り添って生きてるとかそーいうアレなのかい?
 もそっとその辺の話を聞かせとくれよい。」

ともあれば、にこにこしながら話を聞き出そうとする。
知らないことを知ることは、大変な刺激になるからだ。
そういった享楽を、この猫は分かっていた。

ユラ > 「はい。こっちは結構違って困ります。
……もしかして、こっちでは樹を通して移動したり、手紙とかモノ送ったりしないんスか?」

やっちまった、みたいな顔をした。
地元と何が同じで、何が違うのかもあまりよくわかっていない様子。

「はい、うーん。上手いこと話せるか自信無いですけど。
うちはえーと……エルフの国ッス。自然と一体みたいなとこあります。
うちにあるデカい大樹が、いろんな世界と根っこで繋がってて……で、そういうの通して手紙とか送れるんで。
それで今まで探してたって感じッス」

アーテル > 「ぉお!エルフの国っ!!」

その単語に対する食いつきがよかった。
まだ喋ってる途中だと気づくや慌てて口をふさいで、続きを促した。
後はちゃんと聞く姿勢。これはコミュニケーションができる猫。

「……ほぉほぉ、なぁるほど。
 この常世島の世界みたく、熱と電気の文明でこそ為せる機能が、そっちじゃまるまる樹がやっちゃうわけだ。
 …そうなりゃ、進歩する技術の方向が違ってきちまうな。
 だって樹がやってくれることを、わざわざニンゲンがやる必要がねぇわけだしな。」

ふむふむ、と彼の話を頷きつつかみ砕く。
香箱座りしながら、再び彼に眼を向けると。

「生憎こっちの世界は、そーいう便利な樹はねぇみたいでなぁ。
 なーんもかんもニンゲンがやんなきゃダメみてえだ。
 だから、あんな風にニンゲンが楽するための技術が発展した。」

自分がこの世界にやってきて、あたりを巡って抱いた感想は、それ。
彼の抱いているギャップも、きっとこういうあたりだろうか。

「面白れぇなぁ!そのエルフの国の話!
 そのーなんだ!やっぱアレか、エルフと言えば精霊っつーイメージがあるけど……そうなのか?」