2020/09/11 のログ
ご案内:「青垣山 廃神社」に神名火 明さんが現れました。
神名火 明 >  
もはや詣でる神もいなくなっていそうな廃神社に、ふわりと白衣の裾が揺れる。秋口の山歩きは蜂や冬眠前準備に入ろうとしている獣たちと出くわすのが恐いが、味覚もたくさん成っていた。

「いやあ~、罰当たりだとは思うんだけど申し訳ないね。ちゃんと片付けるから許してね」

大きく開けている場所なもんだから、山歩きの果てにちょっと参道から外れたところで携帯コンロを広げちゃったりしていた。野営道具を開拓村で借りてきた感じ。ありがとう開拓村のひとたち。

神名火 明 >  
人の暖かさに触れて、人の感謝の声をきく、そんな身近なこと。病院にいたときもしていたはずなのに、そんなことに気を配る余裕がなかったのは自分のほうだったんだろう。茹で上がったパスタを、載せ替えたフライパンの上でレトルトのソースで和えた。もそもそした携行食料よりもよほど心が潤う。

「美味しいもの、たくさん食べさせてあげたいなあ」

無性に甘やかしてあげたくなった。ただこうして旅してまわるだけで、自分の身一つになった心細さを実感する。まだ夕焼けの空がずいぶん遠くて…からすがくるくるしてる。長居はできないな。

神名火 明 >  
そんな秋の山、物を隠すのには便利だと思ったがそうした団体の機材の運び込み自体がなかった。何か「大きな戦闘」がここであった…夏季休暇に入ったばかりくらいのときに、そういえば男の子が病院に担ぎ込まれたっけ。いま考えなくていいことを頭から振り払って、それくらいだったと追想する。自然の中に人間の手が入ると、どれだけ巧妙に偽装してても目立つものだ。

「ここを過ぎれば、あとは港か。物資の運び込みに人員の隠蔽もやりたい放題。私に見落としがないんだとしたら…ド本命はここだけど、まさか直球で此処だったりして、ね」

真っ先に行っていればあるいはなんていうのはやった後に気づいた無用な後悔だ。いまは「信じて」「進む」しかない。明日の昼には港に辿り着く。

「ディープブルー…か」

海沿いをよく調べていた理由になる固有名詞を口にする。マッド集団。もし彼らに捕まっていたとして、まだ生きているならいい。非道な人体実験。それでもまだ彼女に被験体としての価値が、数日しても残っていてくれたらいい。もしそうでなかったら、使い終わった実験体の末路なんて…

本当はもちろん、そんな人達に捕まってきておらず、今すぐにデバイスに連絡が入ってきて、マリーの元気そうな声が聞こえてくれるのが一番…でも、そうはならない。

神名火 明 >  
パスタとお茶を平らげて、塩分のタブレットを口のなかで転がす。

「お邪魔しました。ごめんね、私の神様があなたじゃなくて」

それでも手は合わせておく。荷物を片付けて身を翻す。次は海。玄関口。ディープブルーへの入り口。懲悪に興味はない。私の目的は、ひとえに信仰の果て。信心を示すこと。もう一度会いたい。深い闇の底から自分を照らし出したあのかがやきにいま一度照らされますように。

神名火 明 >  
願わくは、いつかはあのひとを照らせますように。

ご案内:「青垣山 廃神社」から神名火 明さんが去りました。