2021/03/03 のログ
シャンティ > 人差し指を唇に当てる

――少女の顔が渋面を浮かべる。一瞬で喜色満面に変化する

脳裏に流れる文面を読み取りながら、考える。自傷、に何か思うところがあるのだろうか。記憶に留めておく

「ふふ……気を、つか、わなく、ても……いい、のよぉ……? 通り、すが、りの……カップル、から、のぉ……お、す、そ、わ、け……なぁ……ん、ちゃ……って、ぇ……」

少女の様子に、冗談めかせて笑う

「私、はぁ……それ、でも……いい、のだけ、れ、どぉ…… 彼、は……ちが、う……かも、しれ……ない、わ、ねぇ……?」

少年の方に一瞬顔を向ける

「そう、そう…… お茶、は……そう、ねぇ……趣味……といえ、ば……趣味、かも……しれ、ない……わ、ねぇ……?」

己を満たすための行為、という意味ではこれを所持しているのは趣味の一環、といえるだろう。使いみちは些か趣が異なるかも知れないが。

「う、ん……真面目、すぎ……て、他、が……駄目、な……タイプ、ね……ふふ。かぁ、わ、いぃ」

少年の担ぐという言葉と、少女の反応にくすくすと一人笑う

「あ、ぁ……帰り、たく……そう、いう……そう、ねぇ……減点君、には……まか、せ……られ、ない、しぃ……」

人差し指を唇に当て、しばし考える仕草。そして

「それ、な、らぁ……この、あと……おち、ついた、らぁ……今夜、は……私、の……ところ、泊ま、るぅ……?」

そんなことを少女に向かって口にする

芥子風 菖蒲 >  
「砂糖水はいらないかなぁ」

ノー。両掌を見せて首をふるふる。
失礼と言えば失礼。
良くも悪くもどの言葉に嘘がなく、純粋なのだ。

「パーティにはなるのかなぁ……ん。
 "ケンカップル"……?何それ、新しい渾名?」

聞きなれない単語を不思議そうに聞き返す。
事、恋愛事には疎い、と言うより知らない事はとことん知らない。
物知らずな少年には、俗っぽい事なんてわかりはしない。

「通りすがりなのは間違いないけど、アンタとは一緒にされたくないなぁ。
 ……帰りたないって家出って奴?と言っても、此処でほっといても……えっ」

"女の子相手に担ぃで帰るってのはダメっしょ、減点っす"。

「…………」

不愛想な表情に驚きが、そしてすぐに不安そうに眉を下げた。

「どうしよう、俺担いで帰った事ある……」

落第街で倒した相手を連行する時に。
幾ら相手が相手でも、女の子を担ぐのはよくないらしい。
どうしよう、と困ったように二人視線を右往左往。
こういう時の対処はよくしらない。

黛 薫 >  
「お茶が趣味ってなんか、アレすね、優雅?ってーか
お嬢様?みたいな。あーし、ぅまく言えないすけど、
そーゆーの、女の子らしくてイィなって思います。

……ま、そーゆーイイ感じのお嬢様だ、か、ら。
あーしみたいなの、簡単に家に上げたらダメすよ」

渇いた口の中に残ったクッキーを紅茶で流し込む。
強すぎる砂糖の味でも合成甘味料の味でもない飲料は
慣れないものの、優しい味……のような気がした。

「家出……ってほどでもなぃすけど、まーちょっと
住んでるトコでいざこざっつーか?ぁりまして。
帰りにくいなーって」

微妙にぼかしているが、いざこざを起こしたのは
家ではなくスラムでの話。嘘は吐いていない。

「年頃の女の子、つーか異性の身体に許可なく
触るのはアウトじゃね?ってあーしは思います。
いや深い仲?恋人同士とか?だったりどっちも
気にしてないならまー、って感じすけど……」

落第街暮らしの割に随分ピュアな意見である。

シャンティ > 「あ、らぁ……無知……なの、かし、ら……ねぇ……それ、とも……興味、ない……だ、け? カップルって、いう、の……はぁ……こ、い、び、と……の、こと、よぉ……?」

少年の反応に楽しそうに微笑む


「ふふ。そん、な……大し、た……こと、ない……わ、よぉ……お嬢、様……な、らぁ……もっと、上等、な……お茶、を……もっと、優雅、な……入れ、物、にぃ……いれ、て、る……わ、よぉ……私、はぁ……本、が……好き、な……だけ、の……ただ、の……女、よぉ……?」

くすくすと笑う。特に少女は語らないが、特有の気配はそこかしこに"見え"る。大体の出自も予想できるので、尚更好ましくみえた。

「男、でもぉ……物、みたい、に……もつ、の……だ、め……よ、ねぇ? その、うえ……異性、に……無遠、慮、に……それ、じゃあ……もぉ……っと、だ、め、よ?」

口に手を当てて、くすくすと笑う

「ふふ……それ、に……して、もぉ……割、と……かわ、いい……意見、ねぇ……」

芥子風 菖蒲 >  
「許可は貰う気もなかったし、倒した相手だったから聞きようもないし……。
 それでも拙かった、のかな?でも、俺男だけど気にしなかったけどなぁ……」

そもそも倒した相手だ。許可の聞きようもない。
風紀委員の職務を以て鎮圧しただけに過ぎない。
……のだが、言葉足らずも言葉足らず。
聞き方次第では誤解を招いて然るべきだ。
無知と無遠慮さがにじみ出ている。

「恋人」

比較的愛想の悪い方の人種だが、少年の表情は今日はよく変わるようだ。
恋人と言われて、二人の顔を交互に視線が行き来した。
ぱちくり、瞬きして小さく首を振った。

「なら、カップルじゃないよ。そもそも、俺この人の名前すら知らないし……。
 それに、好きとかよくわかんないし、寧ろ俺は痛めつけられた側だけど」

何はともあれ、正直で在ることには違いない。
キッパリと断りを入れたし、恨み言の様に吐き捨てた。
実際、恨みとまではいかないけどシャンティの事を良い目では見れない。

「……それに、家出かはどうかはともかく、それ"誘拐"じゃないの?
 俺はアンタを捕まえたくてうずうずしてるって事、忘れないで」

彼女の違反性はあの一件で十分だ。
意図的に違反組織に手を貸した以上、十分すぎる"敵"だ。
場所が場所なら、既に刃は抜いている。

「まぁいいや。俺だって、人は巻き込みたくないし。
 ……にしても、そんなに帰りづらいって事は喧嘩でもした?
 どうせなら、繁華街のホテルとか泊まってけばいいのに。お金いる?」

お金の出所は勿論経費。
他意は一切ない。屋根があった方が寝やすいくらい。

黛 薫 >  
「本好きなんすか、いぃなあ……あーしぁんまり
本とか読まねんすょね。教養?とかそーゆーの、
欲しいなって思ってるんすけど、本ってハマると
けっこーお金かかるんすよねー……。

って、あーし何か変なこと言ぃました?
年頃の乙女ならそーゆー感覚、なぃすかね……?」

純情な意見をつつかれて動揺したのはさておき。
本を読むのが好き、となるとなおさら『視線』が
感じられないのが腑に落ちない。紅茶を飲みつつ
何か手掛かりがないかと観察を続ける。

やはり思い当たるのは『異能』だろうか。
視線感知の無効化なんてピンポイントなモノは
ないだろうし、隠蔽の類かとあたりをつける。

「倒したとか痛めつけられたとか、随分とまぁ
物騒な話すね。ってもこうして談笑できるなら?
あーしからは仲良しに見ぇるんすけど」

ぱきん、チョコレートを齧る音が大きく響く。
喧騒の最中の不自然な静寂を『天使が通った』と
表現したのは誰だったか

「……捕まえたぃ、っーことは、はぁ。
あーた、風紀とか公安?の方ってことすかね。
そっちもお嬢様かと思ったら、目を付けられるとか
随分とやんちゃしてるよーで。あと風紀の人って
女の子に軽々しく金渡しすぎじゃないすかね?
あーし、こないだも貰ったばっかなんすけど」

このまま談笑してはいさよなら、と別れられたら
多少なりとも心の慰みにはなったのだろうか、と。
2人の間の……そして恐らくは自分と男性の間にも
隔たる亀裂を目の当たりにして、溜息。

シャンティ > 「あら……ごめ、んな、さぃ……ねぇ……間違っ、て……ない、のだけれ、どぉ……もう、すこしぃ……すれ、てる……可能性、も……考えて、た、から……ふふ。」

少女に笑ってみせる

「ふふ……だ、から……誤解、よぉ……私、は……痛め、つけ、て……なん、か……いな、い、わぁ…? それ、にぃ……誘拐、だ、なん、て……ひどぉ、い……わぁ……そんな、こと……して、も……意味ーーない、で、しょう?」

くすくすとまどいなくよどみなく、少年と少女に答える

「こぉ、ん……な、細、腕、で……できる、こと……なん、てぇ……しれ、て……る、わぁ……?」

細く華奢な腕を出してみせる

「ふふ。風紀、だって、ぇ……そん、な……気前、いい……人、多く……ない、と……思う、わ、よぉ……おおか、た……お金、持ち……さん、なん、だと……思う、わ、よぉ……?」

少女の言葉に、一人の少年の顔を思い浮かべて答える。其の事実は、すでに"見て"は、いる。そして、その彼は今頃、なかなか厄介な存在に絡め取られかけていることも、少しだけ見えた

芥子風 菖蒲 >  
「…………」

訝しでに顔をしかめた。
彼女にとって、隣の女性とは仲良く見えるらしい。
仲良くしたくないというのが本音だ。
青空の両目が虚ろな目をじ、と横目で見やった。

「そうかな……?俺はそうは見えないけど……」

不満が残る。
とは言え、こう見てる分にはとてもじゃないけどそうは見えないのは事実だ。
華奢な細腕を一瞥しても、少年は首を振った。

「筋力だけじゃなくて、幾らでも誘拐する方法はあるよ。
 魔術でも異能でも……見た目だけじゃ判断できない事のが多いし」

単純な筋力だけで判断はしないし、女子供でも人を殺せることを少年は知っている。
それが"出来ない"の証明になるはずもない。
だからこその警戒心を緩める事が出来ない。
未知だからこそ、警戒はする。当然だ。

「ん、風紀。俺は芥子風。芥子風 菖蒲」

否定する事も無く、当たり前のように頷いて肯定した。

「お金って言っても、どうせ経費で落とすからいいよ。
 人を助ける為なら、適当な理由付ければ落ちるし。
 ……あ、こういう時って、俺が金を払った方がいいの?別にいいけど……」

「金持ち……ではないんじゃないかな?
 確かに、風紀って体張る分もらえるけど、生活以外じゃあまり使わないし」

うーん、と今一腑に落ちないご様子。

「……と言うか、風紀委員ってそんなに誰かにお金渡すんだ」

黛 薫 >  
「あー、ぁー……いやうん、否定はできなぃ……。
自分で言うのもアレすけど、遊んでそうな格好、
してるもんなー……ナメられたくないっつーか、
反抗?みたいな……その程度すけど……」

少し頰を赤くして、インナーカラーの髪を弄る。
形から入ったファッション不良がいつの間にか
本物になってしまっただけだ。

「にしても誘拐とか、随分疑われてるみたいすね。
もしかして前科あり?ぁー、誘拐のって意味すけど。
少なくともそれ以外に何かしらやらかしてるのは
あーしでも分かりました」

ともかくすぐには……少なくとも自分に向けては、
どちらも強硬手段に出ることはないと判断する。
一触即発とまではいかない、しかし穏やかとも
言い難い空気に、気まずそうに紅茶を啜る。

「アヤメ、ねー。思ったより可愛い名前すね。
あーしは『黛 薫(まゆずみ かおる)』っす。

まー?風紀って名前ですし?恵まれなぃ乙女には
優しくってことかもしれねーですけど。悪い女に
引っかかって絞られてもあーしは知らねっすよ。
自腹は自腹で騙されたらみっともねーっすけど、
経費でも悪い女に渡したら風紀の名折れっしょ」

シャンティ > 「いい、の……よぉ……そう、いう、の……矜持……は、大事。たと、え……ちっぽ、け……って、思った、として、も……ね?」

どこか冗談めかせた笑みが多い中、束の間――穏やかな笑みを浮かべる。口調も、気怠くしかし、どこか優しげですらあった

「あ、は……いる、で、しょぉ……風紀、委員、に……いる、でしょ……何人、か……お金、持ち。たと、えばぁ……ふふ。鉄火、さん……と、かぁ……」

少年に向けて、くすくすと笑う。彼とて、例の護送車の件に噛んだ以上、鉄火の名くらいは知っているはず、と思いながら。

「い、やぁ……ね、ぇ……私、は……なに、も……して、ない……の、よぉ? 弱って、る……人、の、味方、くら、いは……する、けれ、どぉ……些細、な……こと、くら、い……よぉ?」

一方で、少女には悪びれもなく至って普通に答えてみせる


「アヤメ、くん……ね、ぇ……ふふ。たし、かに……かわいい、かもぉ……あぁ。そう、いえば……別、にぃ……私、も……お金……だし、て……いい、わ、よぉ……? どう、せ……ろく、に……つか、わな、い……も、のぉ……」

使う先がない、ともいう。自分が"こう"なって以来、本当にお金を使わなくなった

芥子風 菖蒲 >  
「…………」

敢えて何も言いはしない。
詳しい事なんて知らないし、知る気も無い。
"敵"だというのであれば、それで充分。
排除するには十分すぎる理由だ。

「黛 薫。……ああ、合ってた」

記憶に読んだ監査報告書に在った名前と一緒だ。
間違いは無いみたいだ。とは言え、敵とはまだ認定しない。
未だに紙面に出てたような感じはしないからだ。

「うん、宜しく。……恵まれない乙女かどうかは知らないけど
 困ってるならお互い様だし、いいんじゃないかな?
 ……悪い女かは知らないし、自分からそう言うなら悪い事をしないでしょ」

自分で言うならきっと彼女はしないとは思う。
勿論そんなものはただの思い込みかもしれないけど
少年は基本的には人の善性位は信じる方だ。

「それに、別に持ち逃げされてもホテル代位は"外回り"ついでによく使うし。眠くなるから」

疲れるからね。

「……鉄火。ああ、神代 理央の事?アンタ、知り合いなんだ。
 羽振りはいいって聞いてるけど、アンタも何か奢られたクチ?」

確かに金持ちとは聞いた事がある。
例の作戦も、彼を援護するために参加した。
直接顔を合わせた事は無いけど、『鉄火の支配者』の名を、曲がりなりにも前線にいる少年が知らないはずもない。

「…………可愛い?」

二人から言われてそれこそ首を傾げた。

「初めて言われたけど、それ褒められてるの?
 男に可愛いって言うのは、違うんじゃないかな」

どっちかって言うと男の子、かっこいいって言われたい方。

「……それで、薫はどうするの?コッチの人も、泊まるお金位は出してくれるみたいだけど?」

黛 薫 >  
「……っはー、何すかみんなお金持ちっすか。
えー、それじゃあーしがちょっとくらぃ貰っても
良くね?みたいな気持ちにも?なりますけど?
働かずに貰った金ってロクなことにならねーつか、
良いコトがあると今度は悪いコトがあるみたぃな?
バランス取られる感じなんすよね、はーヤダヤダ」

わざとらしくむくれた様子で、クッキーとチョコを
重ねて口に運ぶ。味気ないクッキーもこうすれば
なかなかどうして悪くない。

少し大袈裟に感情表現したのは、女性の口から出た
名前に誘われた動揺を隠すため。何せ自分にお金を
恵んでくれたのは他ならぬ『鉄火の支配者』だから。
心穏やかに受け流すのは難しかった。

「……素泊まり分、2000円だけ貰っていいすか」

それでも快適な寝床には勝てない、勝てないのだ。
精一杯の意地と言うべきか、価格設定は歓楽街の
1番安い、狭苦しいカプセルホテルのもの。

そんな、絞り出したような呟きの直後。

「もーー何なんすかね、ホンっっトさーー!
何だよ合ってたって!あーしが違反学生だって
知っててその扱いって、何がしたいんすか風紀は!

風紀に優しくされたり?その風紀の所為で痛い目
見たり?あーーしの感情の行き場がわっっかんねー
ですよこの頃さー!あ゛ーーーっ不良品の敵なら
嫌いって言っても心が痛まないくらいに痛め付けて
ボコボコにしろよいっそもぅ!!」

頭を抱え、酷く震えながら不安定に叫び出す。
場に漂う中途半端な緊張に晒されたのもあってか、
痛みで無理やり復帰させた理性もいい加減持たなく
なりそうだ。

シャンティ > 「ふふ……それ、なら……いやぁ、な……風紀、から……絞って、やる……くら、い……大き、く……かまえ、ちゃえ、ば……いい、のよぉ……くれ、るって……いう、ん……だ、ものぉ」

少女の言葉に、少女の混乱具合に思わずくすくすと笑う

「ま、あ……私、は……おご……って、もらった……こと、ない……け、どぉ……いけず、だわ、ねぇ……?」

人差し指を頬に当てながら首を傾げてみせる

「風紀、委員……はぁ……正義、を……騙、る……以、上……良い、顔……も、みせ、ないと……いけ、ない……の、よ。ジイコウイ……って、や、つ……あら、ちょ……っと、ちがった……かし、らぁ……?」

くすくすと笑う

「プライド、の……せめ、ぎ、あい……ね。いい、こと、だわぁ……ふふ。じゃ、あ……2000円――で、いい……か、しら……ね、ぇ?」

少年の方をみて、首を傾げながら問うた。

「バラン、ス……な、ら……ほ、ら……今、の……不安、と……不満……と、ぉ……さっき、のぉ……敵意、で……十分、じゃ、ない、かし、らぁ……? 精神的、苦痛、の……ね」

いたずらっぽく笑った

芥子風 菖蒲 >  
「金持ちって自覚は無いけど、何時までもこんな生活出来るとは思ってないし。
 死んだらお金なんて、紙くずにしかならないから。使える人が使った方がいいんじゃないかな?」

刹那的な考え方かもしれないが、風紀委員なんてそんなものだ。
特に、自分の様な前線を張るような人間は何時死んでもおかしくない。
そんな事を百も承知だから、平然と言ってのける。
ある意味それは、何事にも無頓着なのかもしれない。

「…………」

そしてそれは、弾けた声音でも動じる事は無い。
表情一つ変えず、じ、と薫を見ていた。

「別に痛めつけられたいならしてもいいけど、俺にそんな趣味ないしなぁ。
 それに正義とか、良い顔とか、俺には"どうでもいい"よ。そんな事」

「俺は体を張る事しか能がないんだ。俺一人の命で"皆"が守れるならそれでいいし
 風紀委員にいた方が活動しやすいから此処にいるだけ。"ジイコウイ"……?って言うのはわかんないけど
 俺の金で誰かが助かるなら別にいいかな」

忽然と言い放った。
少年は己の能力を弁え、誰かの役に立つ使い方を教わっている。
正義など大義などに興味は無い。自分の守れる範囲の為に、誰かの前に立つ。
立ちふさがる邪魔者を倒す。行動理念は一貫しており、そこに"何か"を挟む気は微塵も無い。
冷徹と優しさを同居させた二律背反。

「それに俺は、別に薫の事嫌いじゃないし。
 報告書でしか知らないし、実際に会った人間をいきなり殴るのもなぁ……」

「はい、これでいい?」

懐から取り出した二千円を、薫へと差し出した。

「……アンタも何か奢って欲しいなら今日は特別に奢ってあげるけど?
 牢屋が良いって言うなら、今すぐにでも手配してあげるけど」

シャンティの方を一瞥し、問いかけた。

黛 薫 >  
震える手で宿泊代分の紙幣を受け取る。
金額を抑えたところで本質的には何も変わらない。
縋らなければ生きていけない自分の弱さと惨めさが
どこまでも自身を追い詰める。

包帯に血が滲んだ指先で自分の喉を押さえ付け、
込み上げたものを飲み下す。恵まれたばかりの
食物を吐き出したら、きっと耐えきれない。

朦朧としているかと思えば、唐突に気付けをして
道化た態度を取ってみせ、かと思えば前触れなく
感情を爆発させる。

風紀の報告書にあった数々の違反行為の原因は、
この不安定さが根底にあったからだろう……と、
想像するのは難しくないはずだ。

「……ぁ゛あ、そっすね……あーしの自業自得で、
今回は……マイナスが、先に来て、だから……ぃ゛、
受け取らなきゃ、マイナスのまんま……バランス、
良い方だけには、振れなぃ癖に゛っ……選ばなきゃ、
悪いのを、埋めることだって……クソがよ……」

譫言のように呟き、怯えるような目で2人を見やる。
心の内から湧き上がる、制御不能な感情をどうにか
一時でも押し殺して、飲み下して。

「でも……ありがとって……言わねーと、なんです。
あーし、ぃ゛ぅ……は、助けられて、だから……」

感情に反してでも、道義は通す。
そんな違反者らしくない言葉を吐き捨てて。
逃げるようにその場を去っていった。

ご案内:「青垣山 廃神社」から黛 薫さんが去りました。
シャンティ > 「ふ、ぅ……ん?ずい、ぶん……と……ね、ぇ。ふふ。かぁ、わ、いぃ……わ、ぁ……?」

感情の不定、激しく上下する情動。ともすれば、壊れているとも取れる"ソレ"は、とても心地よいものであった。故に、女は笑う。そして、ある種、その対極にいる少年。それはそれで、揺るがぬソレは興味深く、面白いものであった。故に、女は微笑む。

「ふふ……君、は……徹底、して……る、わ、ねぇ……あ、は。牢屋、は……いやぁ、ねぇ……おごり……は、まあ、いい、わ? 割り勘、で……どこか、お茶、でも……す、るぅ?ふふ」

くすくすと笑う

芥子風 菖蒲 >  
紙幣は受け取られたが、彼女の表情の雲行きは宜しくなかった。
何かを押し殺すように、血の滲んだ指先で、喉奥の何かを吐き出したがっているようだった。
酷く不安定な気がしたが……。

「……何か気に入らなかったのかな?」

ただその不安を理解する事は、出来なかった。
立場か、或いは思い至らなかったか。
何にせよ、立ち去っていく背中に尾を引かれる気持ちだけが残された。

「変な奴だったな、薫。……ん、お茶?別にいいけど、何処行くの?」

笑うシャンティへと、少年は向き直る。
何故笑っているのか、何が面白いのか。
少年には思い至らない。

「なんだかやけに楽しそうだけど、悪だくみ?
 お茶を飲みに行くのはいいけど、変な所連れて行くならその時は牢屋に行ってもらうから、そのつもりで」

シャンティ > 「気に、いらな、かった……と、いう……のは、まあ……たし、か……ね、ぇ……しょう、が、ない……で、しょう、け、れどぉ……」

去っていく少女の動向を読みながら、少年に応える。無事、といえるかはわからないが……とにかく立ち去れたことは確かなようだ。

「そう、ねぇ……学生、街……の、お店……と、か? ふふ。悪だ、く、み……だ、なん、てぇ……ない、わ、よぉ……そん、な……だぁい、たん、な……こと……でき、ない、しぃ……?」

くすくすと笑う。少年の心のあり方が酷く歪で面白い。ただ、それを眺めていたい。それだけ。

「さ……い、き、ま、しょう?」

笑って先に立ち、無防備に背中を晒して歩き出す

芥子風 菖蒲 >  
「そっか」

薫の事を何も知らない少年には、それしか言えなかった。
けど、興味は出た。彼女の感情の憤りが何だったのか。
彼女の事を、知りたいとは思った。

「学生街?いいよ。行こうか。……悪い奴の割には、そう言う場所行くんだ」

てっきり落第街とか、そう言う仄暗いアングラな場所だと思っていた。
無防備な背中を見せられても、刃は"まだ"抜かない。
今じゃない。それはそれとして、今は彼女に付き合うことにした。

「何考えてるかわからないのに、よく言うよ。
 俺より賢そうだもん。アンタの頭なら、悪だくみの一つや二つ思いつきそうだけどね」

「まぁ、いいか。今は俺が監視役」

今はそれでいい。
その背中を追うように黒衣を靡かせ、てってとその場を後にした。

ご案内:「青垣山 廃神社」からシャンティさんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」から芥子風 菖蒲さんが去りました。