2022/05/04 のログ
ご案内:「青垣山」に出雲寺 夷弦さんが現れました。
ご案内:「青垣山」に伊都波 凛霞さんが現れました。
出雲寺 夷弦 > ――――時刻、昼過ぎ。

天候、快晴。

ロケーション、青垣山。


こんな最高の天気と場所にきたら、やることなんて一つ。

それは。





「――っっ!!」

――木々の枝を蹴り、重力に逆らう。
山の景色が線となって消えていく。何時もより、ほんの少しだけ無理の通るくらいの力を以て、山の険しい道を、半ば飛ぶくらいの勢いで貫いていく。

「っっと、おッ!!」

――一高い所から一気に地面へと降り立ち、ヒビを入れる程の勢いで着地する。
ドウッ!!と、煙があがり、それを手と、羽織った外套で払い、息をつく。

「……っ、はぁ」

……俺はなんで、凛霞を誘って、こんなことをしているんだろう。

「……凛霞、ちょっと、休憩するか……」

疲れたわけではないんだけどね、ちょっと、頭の整理だ。
――それから、ちょっと様子をうかがうべく、少し振り返って顔色を窺う。

伊都波 凛霞 >  
豪快な着地を見せる彼とは打って変わって、すとんと軽やかにその横へと降り立つ
山肌を撫でる風が長いポニーテールをさらりと棚引かせていた
ふとすれば同性でも目を奪われるだろう、名に恥じぬ凛とした立ち姿

ただし、その顔はとっても不満げにじっとりとした視線を向けていた

遡ること数日
彼から一緒に出かけようと提案される
久しぶりのデートのお誘い
これは風紀委員の仕事をお休みしたでも受けなければならない
何を着ていこう、春の新色、買って着れていない服もあったりして
コーディネートを考えるのもデートの醍醐味の一つである
それで何処に行くの?と問いかけた彼から帰ってきたのが

「なんでデートで山……」

ぷぃ、とそっぽを向いてぶつぶつと声を零していた

出雲寺 夷弦 > 「…………」

視線が痛い。聞こえてる。いやほんと、全くその通りなんだけれども。
着地の姿勢から立ち上がる。

一見、鋭く開いた赤い瞳といい、靡く赤毛混じりの茶髪といい、武将のそれを思わせる鎧防具のような外套。カタギではない、間違いなく。
そんなだから、少なくとも楽しくデートをしてるなんて風ではない。
そして色々と荷物を内包しているであろう鞄。中に実はちょっと武器とか道具とか色々持ってたりもする、何の為にだよ。重さがなきゃいけなかったからだ。

――要するに、山を踏破する鍛錬しにきてしまってる。
デートのはずなのに、なんでこんなことしてしまってんだろうか。
馬鹿野郎だな俺。

「…………」

それはもう、天気もロケーションも最高なのを台無しにする雰囲気。
バッドコミュニケーションもいいところである。
気まずい、とても気まずい。

「……あ、あー……その……り、凛霞……」

恐る恐る、振り返る。
火を見るよりも明らかだが、一応。

「……やっぱ、怒って……るよな……?」

久しぶりだってのにね。これだから、絶対怒ってるだろうって。

伊都波 凛霞 >  
青垣山
常世の島の中でも未開地区に分類される
怪異や妖(あやかし)、山神などといった超常とも思える存在がいるとされている、そんな場所

普通の生徒はまずそうそう近寄らない
凛霞の実家はこの山中にあるわけだが
それは武術家でもある父が修行になるからと山腹に道場兼自宅を建ててしまっただけではあるものの
おかげで、この山で育っている凛霞にとっては、刺激も新鮮味もない場所なのだった

恐る恐ると投げかけられる彼の声
怒ってる?とんでもない

「別に怒ってはいないけどー?」

そう、この場所を選んだだけで怒るのであれば、不機嫌にまでなったりしない
そもそも、別の場所の提案をしたりしていたはずである、つまり

つまり、デートだと思っていたらデートじゃなく鍛錬だったことがしょんぼりなのである
新しい服とか着てこれなかったのもちょっと不満ではあったけれど

そんなこんなで返される一言はやっぱり、そっけない、つまり

拗ねているのであった

出雲寺 夷弦 > 「…………」

怒ってるわけではない。ないのは解った。
確かに怒ってはないが、うん。拗ねているのも解った。
――凛霞にとって、決して新鮮でも無ければ、ここは楽しい場所ですらない。
下手すると、ちょっと嫌な記憶の引き金にだって、きっとなりかねないのに。
……暫し頭を掻いて、天を仰いだり、周りを見回したりして、重い口を開く。

「……その、ごめん。俺、なんかいざ、デートって誘う気でいたのに、なんか余計なこと、考えだして、それで……場所、こんなところ……」

――いやに言葉を濁らせたが、はあ、と、息を挟むと。

「……今日はちょっと、凛霞に聞きたかったんだ」

振り返った。気まずさで狼狽える、歳頃の男子ではなく。
ちょっとだけ前よりもその色から陰を抜いた、"当代"の面持ちになって。

「……凛霞、俺は」

その面持ちで言うには、少し、不釣り合いな内容で。

「もう二度と、妖とかとは、戦わない。
槍も武術も、護身以上のことはしない。
――ずっと、お前にとっての、帰る場所でいたい」

「……だからこそ、ちょっと、聞きたかったんだ。
――凛霞は今、"どういう状況"なんだろう、って」

……命を賭した戦いから身を引くことの宣言。
しかし同時に、いまだ尚、危険へ身を投じる相手の、現在を尋ねるべく。