2022/05/05 のログ
伊都波 凛霞 >  
ふぅ、と小さくため息
いつまでも拗ねてみせてるのも、よくないかな、なんて思いつつ

「いいよ。いい運動にはなったし。デートは今度私が行きたいとこ連れてってもらうもん」

そう言って、視線を彼へと戻す

そして、それから彼の切り出した会話の内容は少しだけ意外だった
真面目で、多分、彼なりに色々を考えたり思うことがあったのだろうという言葉
それが伝えたくてあえてこの場所に二人できたかったんだと、納得もできる内容だった

「座ろっか」

小さく微笑んで、汚れなさそうなとこへ移動する
山に来るには確かにいい季節、風も心地よいし、日差しもそれほど強くない

さて、彼の言った内容と言えば…
妖…つまりは怪異と、もう戦わないのだと言う
それは、素直に驚いた。そして…

「答える前に、いいかな…?」

「えっと…家のこととかは、いいの?」

彼の家は、そういった家柄である
それを彼の血族…近く遠くを含めて周囲は果たして許すのか…そう、控えめに問いかける

出雲寺 夷弦 > 「……ああ、次は、凛霞がやりたい事、行きたい場所、全部叶えるデートにするよ」

自分一人で決めるのがそもそもよくなかったわけだし。

提案に頷けば、二人で移動し、腰を降ろすに丁度いい場所へうつる。
自分は別に、山は嫌いじゃないし、何かと縁もある。
だからか、ちゃんとこうやって、聞きたかったことを言葉に出来るというのは、
山にいて、その空気が、天気が、自分によく馴染んだものだったからだろう。


「……"一度死んでしまったんだから、帰ってきた後は自由にしてください"……ってさ。
俺が一度死んだ後に、俺の居ない出雲を最後のギリギリまで支えてくれてた、数少ない生き残りの中の一人から、そんなこと言われた」

――出雲武流は、一度絶えた。多くの人が居なくなってしまったとも。
だが、それでもまだ生き残りは居たらしい。出雲無き出雲を支えた人だから、
きっと或いは、カミヤや凛霞のように、彼の帰還を待ち望んでいたのだろう。

「……それに、カミヤがさ」


過る拳。アイツから貰うのは何時だって言葉と拳ばかりで。
――振り抜かれた拳の後に言われた。

『もう二度と置いていくな。そして絶対、繰り返すな』

「……って。それなら、もう槍を持って、前に立つ必要もないだろって、話はまとまったんだ」

伊都波 凛霞 >  
「そっか。…夷弦が新しい出雲寺として生きていくつもりなら…うん。それでいいと思うな」

一度絶えたと思われたものが奇跡的に繋がった
かつての出雲寺を取り戻し、復興させるという道もあるだろうし
生き残りがいるのならそれを望む者もいるだろうと思っていた
しかし思いの外、さっぱりとした答えをもらっていたことにどこか安堵する

「私のほうは、うーん…」

彼とは幼馴染
それは家同士の付き合いがあったからに他ならない
伊都波の家は遡れば戦国の世から、怪異退治のお家の影となり、支え、共に生きる家だった
そのための技術は今も脈々と…現代においては凛霞に受け継がれている

「家の方の考え方は多分変わらないし、私も父様の後は継ぐつもりだから…」

「もしかしたら、揉めるかもねー…」

父は世継ぎ…子宝に恵まれなかった
生まれたのは、自分と妹…母の身体のこともあって、為した子はそれだけ
伊都波の技は影の技、闇の技、決して表には出ず、一子相伝によって受け継がれる
妹に継がせたくなかった、という気持ちもあって、凛霞は子供の頃から出雲寺や霜月といった怪異退治と密接な家との付き合いを深めていた
今後、本格的に伊都波の後継者として生きていくなら、
怪異を討伐しないと決めた夷弦…出雲寺ではなく、今現在怪異討伐を続けている他の家の影として従事する可能性がないとは言い切れなかった

「今は何も言われてないから、わかんないけど」

出雲寺 夷弦 > 「…………、あー」


ちょっと認識がすれ違ったなと、直ぐに悟る。
苦笑いと共に、首を横に振った。確かに、そう。
戦いに率先して赴くことはない。ないのだが。

「……出雲武流は変わらねえんだけどさ、俺があくまで、立場上当代の頭ではあるんだけど」

頬をかきながら、少し言い方を悩んだ。
真っ直ぐに言ってしまうならなんてことはないんだが。

「……"形式上"、あるんだけど、俺はこう、後はもうなんか、指導というか、教える側として完全に割り切られるっていうか……。
んで、出雲武流の実働、出雲武流っていう組織の今後のやり方は、これまで通りなんだよ。
言ってみれば、妖異や怪異相手のパスファインダーっていうか……だから」

あくまで、パスファインダー。
食い止め、時間を稼ぎ、より有力な退魔師たちにバトンを繋いで、自分たちはその後方支援として現場を維持すること。
その魁としていた夷弦は、一番危険な場所でもあった。だから。

「"俺が前線から引くだけ"で。
実働としての隊長だとか、家の維持については、生き残りの出雲武流の奴等と、
……あと、特に、カミヤが中心になって動くってさ。
だから俺は任を解かれて、名前を背負っただけの、ただの学生になる。んで……」

ふい、と、視線は真っ直ぐそちらを射抜く。
……此処からは男子として、こそっと自分の感情も交える。

「……出来ることなら、もっと、普通らしい道を選んで、なるべく命を脅かされない生き方をしろ、って釘を刺されてる、かな。
……もっと適切な言い方があるはずなんだけど、つまるところそういう感じで、さ。
こうやって、二人で、とか……そんな感じの……」

後半、聞き取れるかどうかくらい声が萎む。
――――からの間。

「…………、カミヤには、ちょっと、負担を掛けるけど」

彼、だいぶ眠そうにしてたりしたが。

伊都波 凛霞 >  
「なんだ、そういうことか」

小さく肩を竦めてみせる
あまりにも真面目な顔で言うものだから、一族の在り方含めての一大決心かと思ってしまった
まったくなんというかこう…何事にも全力投球みたいな感じ

「夷弦は無茶しそう、って思われてない?」

まっすぐな視線にはくすりと笑ってそう言葉を返す
過去の例もあることだし、周りの心配も当然といえよう

「うーん、でもそれだとお家的には…」

「私カミヤくんのサポート役になっちゃう、のかな?」

遠くを眺めながら小首を傾げてみる

青き山々が風にざわめく様は怪異の跋扈するとは思えない風景である

出雲寺 夷弦 > 「……あー、思われてる、絶対。
そうでなきゃ、こういう形を許されたりしないだろうし、さ」

死んで迷惑かけて、生き返ってもまた迷惑掛けるのは、と思ったりもしたし。なんて添えて、
……同じ遠くを、視線を追って見上げるのと共に、はて、と首を傾げた。

「……そうなる、のか?……あー、うーん、いや……そうなるな?」

当の本人は自分が信頼する相手だし、負担がいつも大きいあいつを助けてくれるのが凛霞なら、
これほど頼れる二人組っていうのは無い。
いない、けれど。

「……んぐ」


――今度はこっちが拗ねる番らしい。ちょっともやっとしてるのは割とはっきりわかる。
頬をかき、視線を斜め下へやって、何やら納得いかない様子。
信頼する相手、最愛の相手。いや、でも、それはなんかこう、違うだろ。と。

伊都波 凛霞 >  
「まぁ私もカミヤくんなら。夷弦と同じくらい昔から知ってるしね。気楽といえば気楽だけど───」

伊都波の後継者は戦場だけでなく、その身辺までサポートするのが役割
故に子供の頃から家同士の交流を続けているとも言える
お互いの為人をわかっていればより密接に、その影となることができるからである

さて、どう反応するかな?
と内心思わなかったわけでもない

じ、と視線を向けてみると、もやもやしているのが手にとるようにわかる
うーん…わかりやすい……大丈夫なんだろうか、彼
これだけわかりやすいと…なんか、学校で変な女に誑かされたりしないだろうか…心配である

「…もやもやしてる?」

なのでストレートに聞いてみるのだ

出雲寺 夷弦 > 「……」

振り返った。顔は変わらない。もやもやしてる。
ストレートな質問。うん、嘘をつく理由なんかない。


「……ああ、凄く。カミヤのことは信頼してるし、凛霞がサポートしてくれたら、あいつも凄く助かるかもしれねーけど」

くしゃ、と歪んだ顔で、むず痒そうに。
片手は自分の頭を少し押さえて、それからそのまま頬をおさえ。
完全に自分の気持ちを裸にして告げる

「……凛霞には、俺の隣に、居て欲しいっていうか……。
多分、お前がカミヤの隣にいて、一緒に仕事してたら……絶対、嫉妬する」

――直情、直球。嘘が下手なら、嘘は言わない。思うがままに真っ直ぐに感情を吐露し、そこまで言い切ってから顔をもう一度見つめる。

「……鍛錬は、この後すぐ切り上げよう。凛霞」

だって、想像しただけでも嫉妬心が擽られるのに、今後は先程告げた通りに変わっていくのだとして。
果たして凛霞と自分が一緒に居る時間と、カミヤと凛霞が一緒にいる時間。
どっちが長くなるのかなんて考えだすと、鍛錬なんかよりもよっぽど別な意味での時間で一緒にいたい。

伊都波 凛霞 >  
「…この話、カミヤくんにはしないようにね?」

絶対呆れられるだろう、そんな顔が目に浮かぶ
いやだってこんなに自分に正直すぎる彼、うっかりこういう話もしちゃいそうだ


「? いいけど、もう帰る?」

急に鍛錬を早めに切り上げようとする彼に問いかけるも、理由は即判明
こちらを気遣っている…以上の気持ちがそのまま言葉に現れているのだから、なんともなんとも…

「それ、いつもとあんまり変わんないよ」

笑みを浮かべてそう答える表情はすっかりいつも通り
まぁ、なんだかんだいつも通りが一番幸せなのかもしれない

出雲寺 夷弦 > 「……絶対しないさ。あいつ、実は結構気にしてるからさ、俺と凛霞が付き合ってる事。
……俺に対しても、実はそこだけは線引きを結構してくれてる、っていうか」

多分、話した次の日からカミヤは凛霞の半径2メートル以内に近づけなくなってしまう。
だから言わないほうが絶対に良い。そうなってしまうのは、なんかこう、申し訳なさもあるから。

「……帰るっていうか、まぁ、うん。一緒に商店街でも、とか、コンビニとか、自販機で……」

それはつまるところ下校してる時と何も変わらないではないか。
全く指摘通り、結局その後、夜まで。
同居してるんだからそれもまぁ当たり前といえば。

「……それが一番好きなんだよ、そうしてる時の、凛霞の顔が」

ぼそ。

「一番可愛くて、一番好きなんだから」

――聞こえてて欲しいような。聞こえて欲しくないような。
そんな言葉。

その後、宣言の通り鍛錬は早めに切り上げられて、何時もより余裕たっぷりな下校デートもどきを楽しむこととなった。
……もちろん、一緒に家についてからの、"家デート"も、になるのだが。

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