2019/03/09 のログ
ご案内:「農業区・少山」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 幻想生物生態学の新入生歓迎レクリエーション、というものがある。
常世島島内で自然が色濃く残る場所にて3泊4日の現地実習と言う名目のサバイバル生活を送って貰おうというものである。
名無が正教員となってから毎年春に行われ、何人もの生徒の心を折れる寸前まで追い込んでいるこの行事、
もちろん開催地は事前に名無本人が足を運び、安全性を確認しているのだが。

「……そう、説明したよなー……俺。」

生い茂る低木の枝を鉈で切り落としながら背後を確認する。
毎年一人で下見に来ていたが、今回は温泉と言う言葉に釣られた同伴者が一人居た。

ご案内:「農業区・少山」に伊従のどかさんが現れました。
伊従のどか > 背中にはちゃんと水分補給用のスポーツドリンクやらお茶、お昼ご飯などが入ったリュックを持ち、肩にはいちおうタオルもかけている。
準備万端。
恐るるものなどないといわんばかりに山へと突入したが

「そ、そう……デス、ネ……」

そう返事したのどかの顔は、すでに疲労感が浮かんでいる。
息切れを起こしながら、それでもなんとか足を動かす。

暁 名無 > 「………。」

農業区の駅前で待ち合わせしてここまで来たが、最初に伊従の姿を見たときに一目で『あ、こいつ絶対ピクニック気分で来たな。』と名無は確信したという。
しかし、普段着で来なかっただけ何倍もマシだと思う。

「もう少し上行ったら開けた場所に出るから、そしたら一度休憩しようか。」

既に疲れ始めている伊従をよそに、名無は涼しい顔で鉈を振るう。
地味にスタミナだけは化物並なのだ。昔取った杵柄、とは本人談。

伊従のどか > 本人は一応、邪魔にならないよう山登りに関して軽く調べたうえでこの格好だ。
とはいえピクニックレベルの登山としか考えていなかったわけだが。

「うぐぐ……ありがとうございます……」

少し悔しそうな顔でお礼をいいつつ、必死に歩く。
都市部の歩きに慣れた足では、登山はそう簡単にいかなかったらしい。

暁 名無 > 「はっはっは、それまで温泉に釣られた愚かな自分を恨むがいい。」

さっきから敬語しか話さなくなっている伊従が面白くて笑いながら、ずかずかとペースを落とさず道を切り拓いていく。
時折、滑り易くなってるから気を付けろ、だの枝が鋭いから気を付けろ、だの後ろの伊従へと注意を促して。

──歩くこと、30分。

鬱蒼としていた茂みが突如無くなり、4畳半ほどの広さに草木が横倒しになって開けた場所へと出た。

「よーし、第一チェックポイント到着だな。
 伊従ー、生きてるかー?休憩だぞー」

伊従のどか > 「こんなのおかしい……おかしいよぅ……。
おんせん……おんせん……うぅぅ……」

若干涙目になりつつも、こちらに一切容赦しない名無のペースに必死についていく。

そして休憩ポイントに到着すれば、すぐに座り込む。

「や、やっと……きゅうけ……」

暁 名無 > 「よーしよし、よく頑張ったな。」

あっはっはっは、と笑いながら座り込んだ伊従を見下ろす。
この調子なら暗くなる前には目的の温泉に辿り着けるぞ、なんて彼なりに励ましながら、今登って来た道を確認。
丁度人ひとり通れるほどの細いけもの道が、続いているのを見れば、満足そうにうなずいた。

「正直、途中で引き返すのも覚悟してたんだけどな。」

無造作に横倒しにされた樹の幹に腰掛けながら、伊従へと声を掛ける。

伊従のどか > 「……」

暗くなる前には、と聞いたあたりで目が虚ろになる。
おっ、このペースを半日以上続けるのか、と考えたあたりで考えるのを止めたようだ。

それはともかく。

「引き返すのだけは、しないように頑張るよ。
温泉目的とはいえセンセーの邪魔は……じゃま……は……」

しないつもりだし、と小さな声でいいつつ。
震える足を動かして、名無の横に座り込む。

暁 名無 > 「そんな路地裏で乱暴された後みたいな顔すんなって。」

けらけら笑いつつ隣に腰を下ろした伊従へと水筒のお茶を差し出す。
邪魔はしないと言い張る姿勢は名無も評価したいところだが、その気迫が逆に足を引っ張る事もある。

「ま、最悪おんぶしてやるから無理はすんなよ。
 それに、ここから先は流石に今まで見たいな道程じゃないしな。」

これから進もうと考える先を見る。
まだ少し鬱蒼と藪が茂っているその先、針葉樹林が広がっている様だ。
道らしい道は、見えないが。

伊従のどか > 「自然に蹂躙されて傷心中の女の子にそんなこと言えるなんて流石ですねセンセー。
大変鬼畜やろーです」

ジト目にかわり、厳しめの視線を送ってあげる。

「う……。
……出来るだけ頼らないようにはしますけど。
……もしおんぶすることになったら、『重たい』とか言った瞬間、頭殴りますからね」

どうやら頼ってしまう事は想定できるらしく。
先に禁句だけ告げておく。

暁 名無 > 「ただ歩いて来ただけで蹂躙されただなんて大袈裟な。
 こんなのまだまだ序の口だぜ?」

厳しめの視線もするりと受け流して、へらへらと普段通りの笑みを返す。

「はいはい、それだけの荷物なら多少重いのは仕方ないだろ。
 手ぶらで来るなよとは言ったけど、弁当持ってこいとは言わなかったぞ……?」

基本は現地調達、それがサバイバル。
とはいえ、伊従にサバイバルするぞ、とは言わなかったのもまた事実であるが。

伊従のどか > 「うぅ……センセーのペースに合わせるだけで足腰ガクガクでこんなにびしょびしょなのに……。
まだまだだなんて……センセーのきちくぅ……」

言葉の意味に深い意味はない。
言葉を選んで言ってはいるものの、深い意味はない。

「……?
お弁当なかったらどうやってごはん食べるんです?」

いやうそでしょ、と。
この状態からサバイバルするの?と。

暁 名無 > 「なんだ、まだ余裕ありそうじゃねーか。
 じゃあそろそろ出発するぞ、あんまりゆっくりしてたら日暮れまでに温泉着けねえしさ。」

ちなみに、確かに名無の歩きは早かったが、これが本ペースではない。
本来なら道を拓く事もしないし、背後に声を掛ける事も無い。
今までにかかった時間を振り返れば、名無一人であれば既に登頂している頃合だ。
しかし、名無はそれを口にしない。既に足を引っ張ってる事を伊従に悟られたくないのだろう。

「現地調達。
 ま、お前さんは弁当食って少しでも荷物軽くしとけ。後で、だけど。」

さてそろそろ良いかね、と木の幹から腰を上げ、地面に刺していた鉈を拾い上げる。
ほら行くぞ、と伊従を促して。

伊従のどか > 「うえぇぇぇー!!センセーマジ鬼畜ー!
休憩した!?そんなに休憩した!?」

はやいよーと喚きながらも、荷物を持ち上げて歩く準備をする。

「ところでセンセー。
割と謎なんだけど、なんでこんなサバイバル実習するの?」

暁 名無 > 「したした。充分した。
 言ったろ、あんまり休憩が長いと暗くなる前に温泉着かないぞ、って。」

ぐりぐりと鉈を持つ手の手首を回しつつ、早速藪に向けて振り下ろす。

「なんでって、そりゃあ俺の授業の半分はフィールドワークだからな。
 大変容からこっち、動物も植物も異世界の物がわらわら流れて来てる。
 日々書き換わる分布図を確認するには、現地に来るのが一番だしな。

そのカリキュラムに耐えられるかどうかの、まあ入門試験みたいなもんだ。」

へらりと笑いながら答えるが、中々にアレな事を言っている自覚も多少はあるようで。

伊従のどか > 「あー……そっか。
そういえば異世界のものって結構きてるんだっけ」

そこまで意識したことはなかったが、当然分布図とかも変わるだろう。
そのせいで従来の生物とかもいなくなるのだろうか。

「実習内容は鬼畜だけど、フィールドワーク自体は大切だもんね。
……もっと楽なら、私も興味あるんだけど……」

暁 名無 > 「特に虫や植物、微生物類なんかは一週間もあれば全く書き換わるからな。
 それに、転移荒野なんてもんがあるこの島が今のところ研究の最前線の一つでもある。」

だからこうしてフィールドワークしなきゃならんわけだ、と締め括った辺りで針葉樹林へと出る。
鉈をしまいながら伊従へと振り返って。

「ま、俺んとこの授業は二年制、最初の一年はどっちかと言えば必要な知識をありったけ叩きこむ方に重点を置くから、
 こんな山の中に頻繁に来る事は無いさ。こういうのは“先輩”向けだ。

実際伊従と同じ年の生徒が何人も行っている。
最初にレクリエーションとして行うのは、あくまでも楽じゃないって事を知って貰う為ってのがデカいな。」

伊従のどか > 「変に誤解されるよりは、いいかもしれないけどねー……よっと」

地面に落ちている石をひょいと飛び越えつつ、名無に賛同し。
しかし体験するとますます、この道には進まないなぁ、とは思いつつ。

「じゃあ、センセーはなんでこの仕事してるの?
幻想生物が好きだから?」

暁 名無 > 「んー?まあ、そんなとこだな。
 元々異邦人に関心があって、そこから派生したって感じだ。
 ホント、異邦人も色んな人がいるけど、幻想生物……異世界の生き物も、色んなのが居てさ。」

たとえば、と振り返ったタイミングで、伊従の頭上の針葉樹の枝から、細長い影が落ちる。
鉛筆程の太さのそれは、肩の上に落ち、襟元から服の中へと侵入しようとするだろう。

「たとえばそいつは異世界のヒルの仲間なんだけど、
 血を吸わないで人体の古い角質や汗なんかを吸い取る、サバイバル生活の力強いお供で──」

伊従のどか > 「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」

いやー、なのか、ぎゃー、なのかいまいち判別のつかない悲鳴を挙げ、入ってきたヒルをとりだそうと慌てる。
――あらかじめ説明を聞いていれば、慌てることはなかっただろうが、普通に吸血ヒルだと思っており、かつ説明を聞いていないために慌て。

「センセー!ヒル!ヒルヒル!!!やーーっ!?」

ばたばたと服を捲りあげて、ヒルを追い出そうとする。

暁 名無 > 「いや、聞けって伊従。
 大丈夫、そいつは血を吸うやつじゃないし、それに」

多分胸のとこで引っ掛かって落ちてこねえって。
その一言を言う前にすっかりパニックを起こしている伊従に、言っても無駄かと諦める。

「そもそも血を吸うヒル自体昨今の魔術の拡がりから数が激減しててな。
 ほら、簡単に火を起こせるだろ?それですっかり人間に寄りつかなくなっちゃって。」

宥めるような事言っても無駄だろうから、と薀蓄を語り始めた。
ヒルの方はヒルの方で、伊従の服の中をゆらゆら這い回る。

伊従のどか > 特段、虫が嫌いというわけではない。
勿論毒をもつとかそういう手合いは苦手だが。

ただまぁ、ヒルは勘弁してほしい。
吸血ヒルなんてもってのほか。
触りたくもない。

「墜ちっ、落ち……!取れ……!」

ばっさばっさと服を捲ってヒルを落とそうとするが、当然のように胸が邪魔で落ちてこない。

「センセー!!!ヒルがー!」

下着が見えても気にするほど余裕がないのか、びえぇぇと叫びながら名無に助けを求める。

暁 名無 > 「びしょびしょになってたのが仇になったなー
 そのヒル、どっちかと言えば男の方に多く集まり易いんだけど。」

この場に居る男、つまり名無は額に汗一つ浮かべてない。
つまり必然的に汗だくの伊従へと集中する。
そんな縁起でもない事を解説しつつ、助けを求められれば少しだけ怯む。

「いや、ヒルがーって言われても。
 落ちてこないなら頑張ってつまみ出せば良いじゃないか。」

居るとしたら多分谷間か下着のカップの中、だろう。
そんな事を指摘しつつ、一歩、後ずさる。

伊従のどか > ――ヒルにさわりとうない。
後にのどかはそう語ったという。

自分の中で、胸の中でうごめく軟体動物を排除すべく取った最終手段。

「センセー!!!!手!!!貸して!!!!」

1歩下がって逃げようとする名無に5歩迫ってその手を掴もうとする。
掴んだら有無を言わさず――自分の谷間に突っ込ませてヒルを取らせようとするだろう。

暁 名無 > 「ひぇっ!?」

鬼気迫る様子でこちらへ向かって来る伊従に、思わず悲鳴を上げる。
思わず制止しようとした手を掴まれたかと思えば、伊従の声が高らかに響いて。

「!?……!?!?」

次の瞬間、名無の右手は柔らかな肉の塊の間に消えていた。
何が起きたのか、思考の処理が追いつかず、すぐには手が動かない。
汗で湿り、高まった体温で火照る肌の感触が脳に焼き付けられる。

伊従のどか > 名無の手を操作し、ヒルを捕まえさせる。
肌に触れてくるヒルの感触がなくなれば、そのまま谷間から腕を引っこ抜く。

「はい、センセー!ぽいっ!ぽいって捨てて!!!」

そして名無の手を離し、後のことは任せたとでもいいたげに、捨てるよう指示をする。

暁 名無 > 「ちょ、ちょっと待って伊従!
 そんな雑に動かしたら当たって、ぎゃー!
 零れる零れる、危ないことになってるー!!」

自分の意思とは無関係に、手が乱暴に(しかも手動で)操作される。
柔肉の中で乱雑に自身の手が動かされ、それによって伊従の胸が下着から溢れそうになっているのを目の当たりにし、
登山では汗一つかいていなかった名無も、流石に冷や汗が停まらない。

「は、はい!取った!取ったよ!ぽいっね!はい、ぽーいっ!!」

多少のすったもんだはありつつ、無事にヒルは捕獲され、
伊従の指示通りに名無によって投げ捨てられる。
ぜえはあ、と息を切らしつつ、これでいい……?と疲労困憊と言った様子で名無は伊従を振り返って。

伊従のどか > 「はぁ……はぁ……。
ありがとうございました、せんせ……」
……なんかもう、疲れました……」

さっき少し回復した体力が全てヒルに使われた。
死にそうな目、というか路地裏に捨てられた目でぺたりと座り込んでいる。

服も大変乱れている。

暁 名無 > 「ああ、うん……はぁ……
 どういたしまして……お疲れ様。」

多分俺の方が右手以外三倍くらい疲れてる。
そう言いかけたのをぐっと堪え、名無は大きく息を吐く。

めっちゃ柔らかかったな、と右手の感触を反芻し、
ちらりと伊従見て背筋に冷たいものが走る。
そもそも、最初にヒルが伊従に付いたのは、彼女の発汗が原因だろうと予測できる。
服をちゃんと着ていた上でも奴らは汗の臭いを嗅ぎ取って降って来たのだ。それほど嗅覚が鋭敏である。

それを今、殊更汗をかき肌を露わにしているという事は。

「伊従!さっさとこの林を抜けるぞ!!」

顔を青くした名無は、顔だけでなく衣類まで路地裏乱暴コースの伊従の手を引いて立ち上がらせ、半ば引き摺る様に針葉樹林を抜け出そうとするだろう。

伊従のどか > 「うぇっ!?もう移動!?
ちょ、たいむ!
まだいろいろと、したくが……!」

手を引かれれば立ち上がって連れていかれる。
が、服は乱れたままで、何よりさきほどのせいでいろんなポジションがずれたために直したかった。

「せめて!どこかでもう一度だけ休憩させてー!」

暁 名無 > 「ヒルまみれになりたくなければ我慢しろ!
 この林を抜けたらまた休憩挟むから!」

伊従を立ちあがらせ、手を引いて走り出せば。
ほんの数秒前に伊従が居た場所へとヒルが落ちてくる。
その様子を確認してから、伊従にヒルが落ちていないかを確認する。

「………っ!」

収まりが悪くなったことで半ば自由になったものが、すごく暴れていた。
何も見なかった事にして、名無は前を向いて針葉樹林の終わりまで走り続ける。

伊従のどか > 「うぇー……」

事がことだけに仕方なく走り出す。
しかし胸がたゆたゆと動き、動きにくい。
結局、息切れしながらも山の中を限界まで走る。

暁 名無 > 「もう、少しっ……!」

時折伊従の様子を窺いつつ針葉樹林を抜け出すまで走り続け、ようやく間際に差し掛かる。
見るからに体力の限界が近そうな伊従を引き寄せ、半ば抱きかかえるようにし、

「一気に行くぞ、舌噛むなよ!」

と、相手の返答も待たず抱えたまま跳躍、文字通りに針葉樹林から飛び出したのだった。
ハリウッド映画さながらのアクションである。別段無害なヒルから逃げるだけなのに。