2019/03/20 のログ
ご案内:「フタバコーヒー」にアガサさんが現れました。
■アガサ > 春。
外に出れば何処となく緑の匂いを感じ
外に出れば何処となく踊ってみたくなる
外に出れば犬も棒に当たると言うのだから、流石に踊りはしなかったけれど。
「えーっと新作のフニャペチーノくーださいな」
日中。四月からのあれこれに想いを馳せて、踊らない足が向いたのはすこうし注文のややこしい喫茶店。
儀式めいた注文様式に勝とうなんてつもりは更々無く、私は臆面も無く新規商品という文言で注文する。
春らしく、サクランボと生クリームがふんだんに盛り込まれた、半ばスイーツと言っても良い飲み物だ。
「……ん、いやいや店員さん。名前が違う違う!」
褐色の肌に彫の深い顔。少し濃い目だけれど爽やかな印象の、好青年な店員さんが豪快に名前を間違えて思わず吹き出しそうになる。
正確な名前は憶えていないけれど、少なくともブラックハウラーニャルガシャンダダークエキストラなんて名前じゃあない。
勿論クレームなんて語調な筈も無く、商品名称のややこしさにお互い苦笑しての和やかな注文風景。
それが済んで、商品を受け取ったら私は窓際の席に着いてシラバスを開いた。
2年になったら何を履修したものか。未だ決めきらない部分をのんびりと決めようって腹積もり。
■アガサ > 「魔術系、もうちょっと取るのもいいかもしれないけど……んー……でもなあ」
カップに盛られたベリーソースのかかった生クリームをスプーンで掬いながら言葉が濁る。
魔術。読んで字の如く魔的なる術。私が生まれる以前は秘匿され尽くされていた事柄らしいけれど
当時のいざこざは近代史の一部くらいの認識しか無い。
ただ、バスケットボールの上手い人がバスケットボールの選手を目指すような
歌唱力のある人が歌手を目指すような
そういったものとはまた違う系統だと感じる。
「将来魔術師に……魔術師ってどうなんだろう」
生計、立つのかな。
なんて俗っぽい事で悩んだりもしよう。
勿論選択肢を広げる意味でなら来年度から採る事は十分にアリで魔術学応用論Ⅰとかは興味が深い。
問題は、担当の教師が物凄く顔が怖い上に、怖い噂もあるってことなんだけど。
「いやでも魔術師ってそういうイメージ……あるほうがいいのかなあ」
太い眉をひしゃげて、10人が視たら12人くらいが渋い顔って言いそうな顔になる。
まるで飲んでいる飲み物がやたらめったらに濃いブラックコーヒーなんじゃないかと錯覚されるくらいに。
■アガサ > 「魔術方面がダメ。じゃあ特技を活かそう……となると、異能?でもなあ……」
私の異能。『道往独歩《ルールブレイカー》』はほぼほぼ無条件で壁や天井を自在に歩く事が出来る。
じゃあそれが活きる将来設計となると、とストローを咥えながら悩み顔を継続する。
「………登山家?いやそれってちょっとレギュレーション違反な気がするなあ。となるとー……大工さん?」
断崖絶壁を異能でするする歩いて行ったらロマンもへったくれも無い。
さりとて建築途中の建物をするする歩いてお仕事する未来の自分を想起するなら
そのあまりの女子力の無さに遠い目にもなろう。
「……あ、いえいえ大丈夫大丈夫。変な味がするとか、そういうのじゃないから!」
余程変な顔をしていたのか先程の店員さんが声を掛けてくれたものだから慌てて否定をし、手を振って見送る。
■アガサ > 椅子の背凭れに脱力し、プラスチック製のカップを手にして甘酸っぱい飲み物を啜る。
願わくば、私の将来も甘酸っぱいものでありますように。
ご案内:「フタバコーヒー」からアガサさんが去りました。