2019/05/11 のログ
ご案内:「学生通りアンダーソン宅」にアリスさんが現れました。
ご案内:「学生通りアンダーソン宅」にアガサさんが現れました。
ご案内:「学生通りアンダーソン宅」にアイノさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン!
今日は土曜日。アリス・アンダーソン宅でのお泊り会にて。
私はアガサとアイノの前で椅子にもたれかかってぐったりしている。
すぐにガバッと起き上がって。
「もうママったら!」
と、抗議と苦悶の声をあげた。
それもそのはず、初めて友達が遊びに・かつ泊まりに来るという椿事に舞い上がった私。
私のママはアガサとアイノに『この子ったら今日のために新しい服とケーキを買っちゃって』とバラした。
即・轟沈したのだ。
まだ夕方。今は部屋に三人。楽しい女子会の始まりだ。
■アガサ > 私の名前はアガサ・アーミテッジ・ナイト。
常世学園に通う、多分何処にでもいる普通の学生。
普通の学生だから、普通に友人が居て、休日ともなれば普通に遊びにも行く。
ただ、その行先が親友の家と言うのは経験が無い。
この島に来る以前にも、誰かの家に行くと言う事は馴染みが無くって、
ついつい案内された部屋を観光客みたいに右往左往と視線を泳がせてしまうのも無理からぬ事。という事にしたい。
「うーん此処がアリス君のお部屋かあ。流石に、というか当たり前だけど、寮の部屋よりは広いねえ!」
起き上がりこぼしみたいになっているアリス君を他所に感嘆の声。
他所にするのは何を隠そう、私も新しい装いで来ているからに他ならず、
ここでつついて「そういえばその服みたことないね」なんて言われたら誘爆死でしかないんだもの。
「アイノ君もそう思うよね?」
それとなく、後輩にも同意を求めておこうっと。
■アイノ > 自己紹介の流れに乗っていくことができる私はアイノ・ヴィーマ。
言語・成績・異能の扱い・容姿、全てにおいてパーフェクトであり、天は二物どころか、天にあるものを全部かっさらって生まれてきたような天才美少女だ。
「そりゃなー、ただ、寮は自分の部屋にキッチンとかついてるから狭さは感じないけどさ。
……ほらほら、アリス先輩ももういいだろ。
ほら、私だって新品新品。
いつもの恰好で着たら不良って思われるだろ?」
ケケケ、と笑って、明るくあけすけに新品であることをバラしていく。
まあ、最近はお尻がちょっと見えるくらいのジーンズホットパンツやら、胸の部分を覆っただけのチューブトップやらでうろついているのだから、当然と言えば当然だが。
友達の家なんて久々だから舞い上がっている? それはきっと彼女は否定しよう。
言い訳を自分で作るのだって上手いのだ。
ベッドに我が物顔に深く腰掛けながら、足をぷらんぷらんと揺らすリラックスムード。
■アリス >
「あ、そういえばアイノはいつもの格好はビビッドだけど今日はスイートね!」
「アガサもいつもと違う格好………」
察した。
全員、おろしたての服で臨んでいる。
私の背景に宇宙が出た。気がした。
「さ、トークもパーティゲームも望むがままよ」
流した。この話題は危険だ。
部屋にはカピバラちゃんシリーズのぬいぐるみ。
そしてVRゲーム用のスペクトラルギア。
ゲーム機にパソコン、学習机なんかがある。
掃除こそしてあるが雑多な部屋。に、してある。
物が多ければ多いだけ、視線が分散する。
学習机の引き出しに隠した乙女ゲー『フォルトゥナ・ファミリア』が見つからないわけだ。
「今日は二人とも楽しんでいってね」
にっこり笑って立ち上がる。
■アガサ > 「なーんだアイノ君も新品なんだ。実は私もなんだよ……」
雲一つ無い夏空のように装いの行方を明らかにするアイノ君に対し、
言葉を低く澱ませるように吐露する私は宛ら梅雨空のようなもの。
勿論冗談めかしてわざとらしくしている事は言うまでもなく、
床にぺたりとアヒル座りの姿勢で、ビビッドに黄色いスキニーパンツを示すかのように自らの腿をたたく。
叩いた所でアリス君を視ると何ということだろう。
宇宙の深淵に潜む大いなる何かとチャネリングしているかのような顔をしている……
……ように視得たけど、直ぐにいつものアリス君に戻った。きっと気のせいだったんだろう。
「トークにゲーム。そうだなあ……んーと、流石にVRゲームは勿体無いし、
此処はやっぱり王道が、いいんじゃないかな……?」
アリス君の部屋は片付いて雑然としている。
物が多いのだ。私の部屋とはまるで違くて、ついつい彼方此方に視線が再び彷徨いかけて、
しかして親友のゲームという単語に反応し、鞄から取り出すものは──
「そう、ジェンガだよ!」
マイ・ジェンガ。
今なら何処からともなくラッパ音が聴こえんばかりの晴れやかな笑顔もセットしようってものさ!
■アイノ > 「でしょう? こうやって黙ってればお嬢様に見えるって寸法よ。
まあ黙ってるわけじゃないけど。」
言いながら、勝手にカビパラぬいぐるみを膝の上に置いて、ぱふんとその上で溶ける少女。
部屋をぐるりと見まわしながら、ふーん、と鼻を鳴らして。
「ところでパソコンのパスワードは何になってる?」
にひひ、とアリスに速攻で意地悪な言葉をふっかけていく。
全部検索してみてやると言わんばかりの悪辣な顔を見せているが、どぉん、とジェンガを出すアガサに、ちょっとだけ笑ってしまう。
「VRはVRで、やってるところを脅かすとかいろいろあるからおすすめだよ。
足の裏とかくすぐり放題だし、あれ。
まージェンガでもいいけどー! 私得意だからナァー!」
はっはっは、と、勝負が始まる前からドヤ顔をしつつ、アガサのマイジェンガを床に組み立てて積み上げて。
組み上げつつ、早速こんなことを言う。
「じゃあ、崩した人は罰ゲームな。 罰はまだ考えてないけど。」
■アリス >
アイノからとんでもない発言が飛び出した。
「いやパソコンのパスワードを教えるわけないでしょ」
教えたらあんな検索ワードやこんな検索ワードまでバレてしまう。
それは多感な十五歳少女にとって死を意味する。
「へー、ジェンガね。イギリス人は猫一匹に至るまで全員ジェンガが得意よ」
「私も練習したことがあるわ」
友達ができた時のために。
アガサもなんだかんだで色々と今日に向けて考えていたのだなぁ。
私一人が張り切っていたのではないのは正直、安心する。
「アリスフィンガーは機械より精密な動きをするわよ」
震える手でジェンガを引き抜いてささっと上に乗せる。
「次はアガサどうぞ」
ふふんとドヤ顔で54本積みジェンガの一本を抜いただけでない胸を張る。
■アガサ > アイノ君が私を見て笑っている。
アリス君は安心したような顔をしている。
これは良い選択をしたな。と心裡でにんまりと笑うものだから、きっと表情にも出ていたに違いない。
尤もそういう顔は直ぐに消えてしまったんだけど。
「……あー、いや。驚かすのは無しにしよう?うん、それはダメ──って積み速度が速い……君、慣れているね?」
器用にジェンガを組んでいくアイノ君に、私は少しだけ、本当に少しだけ言葉を濁してからその素早い所作に驚こう。
そして得意だと言うアリス君にも、判り易い驚いた顔を、きっと向けてしまったに違いない。
「アリス君もかい?ううん、これはしまったなあ……と、そういえばアリス君はイギリスだったんだ?
そういえばそういう話はした事が無かったなあ……アイノ君はどの辺り?ちなみに私は生まれはウェールズらしいんだけど、
あんまり憶えて無いからほぼほぼ日本な感じかな」
ジェンガの基本は真ん中を抜いていくこと。私は触診するように重心の掛かっていない所を調べ、
慎重な手付きで1本を抜き取り、積み上げながら生まれ話を振っていく。
■アイノ > 「ちぇ、いろいろ調べようかと思ったんだけどなぁ。」
にひひ、とアリスに笑って見せて。本気ではないけど、まあ一回はやっておかねばなるまい。
パスワードは誕生日とかかな、なんて浮かぶけど、実際に試すことはなさそうだ。
「こういうゲームはビビったら負けでしょ、知ってる。
大胆に一気に積み上げて、抜くときは一気に抜く、だろ。
あー、国?
フィンランド。こっちに来て、最近の暑さにちょっと驚いてるわ。」
手を軽く揺すって、ここだ、とあえて横腹をぶち抜くように端の一本を引き抜いて、ちょん、と上に乗せる。
度胸があるのか、怯えの全くない手つき。
「そうだな、崩したらリクエストで何か他の服に着替えて、写真でも撮るか。」
■アリス >
「いろいろ調べられてたまるかー!」
両手を振り上げて猛抗議。
PCの中身は恥ずかしいものでいっぱいなのだ。
「ええ、イギリスよ。《大変容》が起きた時に大事件が起きた国だから、私が生まれたトコはちょっと治安が悪かったわね」
「でも、日本に来たらいじめっ子のターゲットになったから日本はそれ以下だと思ってるフシがあるのも私だ」
イギリスは『闇の紀元』『時代の再反復』そして『不思議の国』事件が立て続けに起こって国が荒れていたことがある。
それらの幾つかの事件を“少女”が解決したという噂から、女の子にアリスと名付ける親が多い。
という話を二人にしながら震える手でジェンガを引き抜こう。
「アガサはウェールズでアイノはフィンランド……でも名前は三人ともア発音ね」
「あ、いいわねその罰ゲーム。私がどんな衣装でも錬成してあげる」
にひひっと笑って数十分後。
死ぬほど高くなり、チーズのように穴だらけになった不安定なジェンガを前に唸ってる。
「……ここね」
それでもギリギリで一本抜いてタワーの最上にそっと積んだ。
「アガサ、そういえばこの前…ラーメン食べに行ったら食券式でさー」
「ウズラの煮卵食べたくて三枚食券買ったら一枚3個ついてくるやつで9個入りウズラーメンが爆誕」
アガサが引き抜く番になったら笑い話を始める。真顔。真剣。
■アガサ > 「アイノ君は遠慮が無いなあ……!?」
主にアリス君とジェンガに対して容赦が無い。
とは言え、少なくともアリス君に対してのそういった態度は、仲の良さを示すものにも感じられて不快感は無い。
そして、こういうのを竹を割ったような性格と言うんだろうか?なんて考えながらも、
一気に不安定になったジェンガを見詰める視線は外さない。
「ワオ、アイノ君は森と湖の国か!未だに神秘が色濃く残る国だって魔術の座学で習ったよ。
うーん、いいなあ。一度は行ってみたいね……それと私の所は、治安は良かったみたい。
昔ママが言ってたんだけどね。貴女のパパはコンウィって静かな街で時計職人をしていたのよーって。
日本は確かに静かじゃあ……無いね、うん。無い無い。この常世島もそうだし」
生まれの国から治安の話。まるで世間話のように虐められていた事を話すアリス君に、
知っている事とは言え、どう相槌を打つかが判らず、私は意地悪な魔女のように笑う親友に苦笑した。
──それから少しの時間が経ち、目の前には激戦区となったジェンガが聳え立っている──。
「……いや、これ、そろそろ不味いんじゃないかなあ」
不味い、具体的にはもうすでに斜めになっている気がする。
土台の下の方は既に1本ずつ交差した骨組みしか残っていない部分もある始末で、
何処を引き抜こうかと思案する手付きに一つのミスも許されない状況って奴。
しかも罰ゲームが待ち構えているとなれば猶更──
「──」
いざ引き抜かんとしたその時、耳朶に染み入るウズラーメン。
その語感の良さに乙女に相応しくない、くぐもった笑い声をあげてしまう。
幸い、ジェンガの崩れる音が誤魔化してくれたんだけど、どういうわけか幸せの気配が全くしない。
■アイノ > 「うちは治安は良い良いってよく言われるけど、そんなことねーよ。
まあ、治安が良かろうと悪かろうと、私の周りでは私がルールだから大丈夫だけどさ。」
ほほほ、とかるーく笑って、足を組んで。
先ほどから堂々と引っこ抜いては上に置く、乱暴な所作でゲームに臨んでいるが、ギリギリ崩れないところを攻めてくる。
バランスが悪くなるのは、大体こいつのせいだ。
「遠慮をしてたら勝てないしなー?
ほらほら、アガサ先輩の番ですよ、と。」
こちらもじい、っとそれを見ていたが、こちらもぷ、っと噴出してしまい。
「アリス先輩それはズルいって!」
けらけらと笑いながら、崩れて散らばったジェンガに手を伸ばす。
ひーふーみー、と数えながら部屋を四つん這いで歩いて。
「……ベッドの下にも入っちゃったかなー?」
なんて言いながら、ベッドの下にも手を突っ込んでもぞもぞ。
そう、遠慮は無いのだ。
■アリス >
「アイノみたいに私がルールだからと言い切れたら私も陰キャ暦短めにカットできたかしら」
髪をカットするみたいに言う。
そしてアガサが崩したのを見るや、両腕を上げてガッツポーズ。
親友を裏切って飲むアイスティーは格別ですナ。
「ふふふ……アイノさんどうします?」
「私は前々からアガサにフリッフリのゴスロリファッションを着せたいなって思っていたのだけれど」
そう勝利の美酒気取りでアイスティーが入ったコップの液面を揺らしていると。
ありえないことが起きた。
「えっ」
アイノがベッドの下を探ったではないか。
まさか女子が男子の部屋に来てやることを私に対してやるとは思っていなかったわけで。
ベッドの下からは乙女ゲー『フォルトゥナ・ファミリア』の影のある黒髪美青年の等身大ポスターが出てきた。
島のアニマートで買ったやつ。
沈黙の後、ゆらりと立ち上がり。
「アガサ……見た? 見たなら………あなたの口も封じることになるわ…」
「アイノの次にねぇ!!」
異能バトルモノで本性を現した三下みたいな台詞を言った。
■アガサ > 「アイノ君はなんというか……逞しいね……所で、もしかして異能でジェンガを操作したりしてない?
してるって言ってもいいんだよ。怒らないから」
アイノ君の異能は先日見せて貰ったから知っている。所謂念動力と呼ばれる超常の力による物体操作だ。
当然やろうと思えばジェンガが倒れないようにする事も出来るだろうし、その逆もまた然り。
私は彼女がそういった不正を好まないだろうと、予想した上で負け惜しみを述べてベッド下に手を伸ばしているアイノ君の足を引く。
すると芋蔓式にアイノ君がベッドの下から何とも耽美な雰囲気のポスターを引き摺りだしてくる。
わあ、睫毛が長くてきらきらしている。
「わあ、睫毛が長くてきらきらしている──はっ!?」
思考がつい言葉に出た。
瞬間、殺気を感じて振り向くとそこには罰ゲームの行使に意気軒昂としていた親友の姿は無かった。
「う"わっ、アリス君落ち着きたまえ!ちょっとしか見てないからちょっとしか!
大丈夫大丈夫、ほら、やっぱりそういう秘密ってあるものだし?でもどうやってこういうの買ったのかな!」
ポスターに描かれたキャラクターを私は知らないし、ゲームのタイトルも知らない。当然内容も知らない。
ただ、ベッドの下に隠されていたのだから、所謂R-18的な代物だろうと察しがついて、宥めながらの話題転換を目論むんだ。
■アイノ > 「いいねぇ、思いっきり可愛い奴にぬいぐるみも持ってもらって。」
アリスの言葉に、にしししし、と意地悪に笑いながら同意をして。
アガサの言葉には、こちらも意地悪に笑いながらこうやって言い返すのだ。
「ハッハ、私が能力を使うなら、二手目で先輩の手がズレるようにするけど?」
ころころと笑いながら崩れたジェンガを拾い集めて、拾い集めて。
ずるずると大きなジェンガ………ポスターも引っ張り出す。
おお、こいつは、………。 大物を引き上げたぞアガサパイセン! っていい笑顔で振り向いて、流石の彼女の笑顔が一瞬引きつる。
「待った待って落ち着こうアリス先輩、悪意はそんなになかった! そんなになかったから!」
あわわあばば、これはまずい死ぬかもしれん。
しゅるるるるー、っと床を滑るようにアガサ先輩の後ろに隠れて、えいや、と背中を押してアガサを前に出す。
「アガサ先輩、私の盾になってくれるんですねありがとう! とりあえず落ち着いて落ち着いて!
ほ、ほら、私もなんでも服着るから!」
■アリス >
「そんなになかったって言ってる時点で有罪だし二審はないわよ!?」
「アイノ、あなたの分もゴスロリ錬成してあげるわ…!!」
アガサを盾にされて跳びかかることもできずグルルと唸る。
チラ、と引きずり出されたルカさん(キャラクター名)のポスターを見る。
まずは誤解を解くのが第一か。
「ええと、アガサさん。フォルトゥナ・ファミリアはR-18ではないわ」
「そう……プレイヤーはマフィアのボスの一人娘。そしてボスは言うの、『娘を娶った者を次のボスとする』ってね」
「それからは事件と恋と揺れる感情の物語よ?」
「R-15程度だから私は普通に買えるし、何よりこう……」
「……なんで説明してるんだろう、私…」
心の中で女泣き。死んだ目で体育座りをした。
手をパンと鳴らすと二人のサイズにぴったりのゴスロリ衣装を錬成。
■アリス > 「これを着ろー!!」
■アリス > 私は突然キレた。
■アガサ > 「ちょっと待ちたまえ君、そこは天才なんだから何とかしてくれないかな!?」
アイノ君はまるで兎のように素早い。
文字通りの脱兎の勢いで私の後ろに隠れてしまうのだから、私は何事もなければその運動神経を称えたに違いない。
何事もある今は悲鳴のような声が出るばかり。
「あ、やっぱりそこは忘れていないんだねアリス君!いやしかしちょっと落ち着いて落ち着いて!」
これは大人しくさせる為に低威力のガンドの一つも当てねばなるまいか。
……と、私がアリス君に右人差し指を差し向けた所で、意外にも落ち着き払った声でアリス君がゲーム説明をしてくれる。
それを正座姿勢で聞く私。
「そ、そうだったんだ……うん、君が好きならきっと素晴らしい話なんだろうなあ。
何も隠すものでもないと思うし、うん……大丈夫大丈夫。私は親友だもの。それくらいで呆れたりなんか──」
幻覚も幻聴も這入り込む余地の無い、ある意味での緊迫した空気。
私は親友を懸命に宥め、徐々に落ち着きを取り戻しつつあるように見えて安堵をしたその時。
「あ、やっぱりそこは忘れていないんだねアリス君!?」
柏手を打つような音と共に現れた、どうやって着るのかも判然としない気合の入ったフリフリ衣装に、
私の悲鳴のような声がもう一度響く。丁寧に言葉まで同じな事から、私の混乱ぶりが判るかもしれない。
■アイノ > 「しまった本音がバレた! アガサ先輩助けて!
いくら天才でも先輩と後輩の関係をひっくり返すことは流石にできないってもんだし!」
アリスがアガサに丁寧に説明をするのを、その後ろから興味本位で聞く悪戯娘。
ほうほう、なるほど。
話には聞いたことがあるが、これが実物か。
むしろこの話に対して理解のあるアガサ先輩は大物だった。信頼感あり過ぎだろ、なんて一人思う。
「あ、ははは。………わ、悪かった、悪かったから!
ちゃんと着るし、ほらほら、何でも言うこと聞くからさ。
アガサ先輩と一緒に。」
両手を上げて白旗モード。ど、どっち着ればいいかな、なんて尋ねながらもぞりとワンピースを脱いで。
キレた先輩に服を脱がされる後輩。
まあ、虐めたというか、原因を作ったのはあからさまにこっちなんだけど。
だからついでにアガサ先輩も同罪というか、同列に並べて置くことにした。優しいなあ先輩。
■アリス >
それから。
私は二人がゴスロリ衣装を着た姿を罰ゲームと称してめっちゃ撮影し。
みんなでママのご飯を食べて。
順番にお風呂に入って。
楽しい時間もあっという間に夜。
私は長い髪をドライヤーで乾かしている。
「ちょっと癖がある髪に悩んでますって言ったら私でもストレートパーマかけられると思う?」
平々凡々な話をしながら、パジャマで部屋にいる。
つまり、女子会は自然とパジャマパーティに移行した。
■アガサ > 「うぬぐぐぐ……こういうお洋服は、私よりはアリス君やアイノ君のが似合うと思うぞお……」
アイノ君と並んで日頃絶対に着ないだろう衣装に袖を通して視線が泳ぐ。
何せ二人とも金髪碧眼で、それこそお人形さんのように綺麗なのだから
こればかりは私の声にも恨みが籠るし、羞恥に頬が染まりもする。
ただ、アリス君がとても楽しそうに写真を撮っているのだけは、微笑ましく思えたのだけど。
「ん~……髪の毛はどうなんだろう。というかアリス君、悩んでいたのかい?」
オポッサムが可愛らしく描かれたパジャマ姿の私の太い眉がぐんにゃりと曲がる。
良く遊び、良く食べて、良くお風呂に入った後のこと。
先に乾いた自分の髪の毛に櫛を通しながら、私は少し驚いたような顔にもなった。
「……そういえばラーメンって縮れていると良くスープが絡むよね」
言外に、髪の毛が乾かしづらいから?とウズラーメンを思い出させるような言葉も添える。
「アイノ君はどう?もしかしてパーマも念動力で出来ちゃったりする?」
櫛をマイクのようにアイノ君に差し出しもし、意見をちょこっと求めもしたり。
■アイノ > 流石に撮影慣れをしているからか、最初こそ恥ずかしそうにしていたものの、次々と表情を変えて、ウィンクを決めて。
「………結果恥ずかしがるアガサ先輩の方がレア度も高けりゃ可愛さも上ってどういうことだよ。」
くっそ、こういう服装への羞恥心はすっかり昔に捨ててしまった。
ぶつくさ言いながらお風呂に入って、すっかりほこほこになって出てきてから。
障子を突き破る集中線の入った猫の絵つきのパジャマを身に纏いながら、ツインテールは流石に解いて、髪の毛を手で漉きつつ。
「髪の毛? 癖ってほどでもない様に見えるけど。
確かに言えばやってもらえると思うけどさ、あんまり変わりが実感できないかもよ。」
真面目にアリスに答えを返し、アガサの言葉にはうーん、と顎に手を当てる。
「加減クッソ難しいからできないな。 これくらいならできるけど。」
しゅるり、と自分の髪の毛を持ち上げてやれば、手を遣わずに自然と二つに分かれて、ゴムをつけずにツインテールに戻っていく。
念動力ヘアーセット。
「アガサ先輩はそういえばどんなのだったっけ。ヘアーセットに使えたりしないの?」
パジャマ姿で床に座れば、ヘアゴムを自分のカバンから取り出しつつ、話題を放り投げる。
■アリス >
「そっかー、ストパー高そうだし髪も痛むだろうし」
「大して差がないならやめとこうかな……」
アイノの言葉にムムムと唸りながら鏡を見ていたけど、アガサの言葉に笑いを堪えきれず。
「いやウズラーメンのことは悪かったわよ…ふふ、私の髪はラーメンか!」
笑いながらツッコミを入れて、それほど乾きにくいとかはないと続けた。
「わ、手を使わないヘアーセット」
念動力、すごい。私も何か見せられないかな、と思ったけど何も思いつかない。
万能の異能を持っていても髪形ひとつ自由にはならない。
「悩んでるってほどじゃないけど、雨の日とか膨らむのよね…アガサ、壁で異能使っていいわよ」
話があちこちに飛びながら、取り留めのない会話を続けた。
歯も磨いたし。髪も乾かしたし。名残惜しいけど、布団の位置を決めなきゃ。