2019/05/12 のログ
■アガサ > 「加減が難しいと言いながらやるなんて器用だなあ君……」
まるで髪の毛自体が生きているかのように蠢き、何時ものアイノ君らしい髪型になっていく様子は中々見応えがある。
感嘆とした声に小さな拍手が添い、相好を崩して笑っているのはアリス君のツッコミが的確だったから。
「私の?私のは少なくともヘアーセットには使えないかな。んー……ん、壁、大丈夫?ありがと」
それからのアイノ君の問いに私の笑顔はくるりと消えて、少しばかりの思案顔。
けれども部屋主たるアリス君から許可がおりたら破顔して、私は卓上のお茶が入ったコップを手にして立ち上がる。
「私の異能はアリス君やアイノ君みたいに凄いものじゃあなくって地味なんだけれど──」
そのまま部屋の隅まで歩き、壁に足をかけ、恰も壁が床であるかのように平然と歩く。
長い髪の毛も、手にしたコップも、その中身も。
全てが正しく壁が床であるかのように動き、私の足は更に進んで天井へ。
勿論、足が天井に着いても何一つ変わらない。
「私の異能はこれ。『足の着いた方向を地面と認識する』異能。名前は『道往独歩《ルールブレイカー》』。
随分と御大層な名前だと思うでしょ?でも、重力操作とも違うんだよ、これ。……ほらっ」
天井に足が着いた姿勢で飛び跳ねる。すると私の身体はたちまち床に落ち──たりはしない。
綺麗にきちんと、天井に着地をして何事も無かったかのように平常に異常を顕し続ける。
■アイノ > 「いーだろ、割と便利なんだ。
でもまあ、ほら、加減を間違えると自分で自分の髪の毛を持ち上げて宙に浮くとかそういうわけわかんない状況になるからさ、他人の髪の毛では怖くてできないよ。」
あっはっは、と笑いながら、自分の髪の毛、ツインテールを動かしてアリスの耳をこしょこしょとくすぐりだす。
まさに自由自在の手足のように髪の毛を操り。
「………かべ?」
はて、壁でも壊すのだろうか。
なんて思っていれば、お茶を持ったままいきなりアガサが壁を、天井を歩き始めて思わず口を開き。
「………こりゃまた。変わった能力だなぁ。
ほほー、重力とか全部無視か。ルールそのものを変えてる感じと………。」
口を開いたまま見上げて、ほへぇ、と感心したかのように。
「じゃあ、アガサ先輩は天井で寝る?
……見上げたらちょっと怖そうだな、それ。」
ほほほ、と笑いながら冗談を口にしつつ、せかせかと布団を敷いて。
後輩らしい働きもちょびっとはするのだ。
「今日は三人布団でいいよね。真ん中はアリス先輩?」
■アリス >
ドライヤーを片付けてアイノの隣に座っていると、耳にツインテールが。ががが。
「ひゃおう!?」
全くカワイくない声を上げて急に立ち上がる。
これだからアイノは油断ならない。
「……今のはさすがに録音してないわよね?」
慈悲を求める視線を後輩に向ける。
ああ、どうして私という生き物は咄嗟に可愛い声が出ないのだ。
アリス・アンダーソン。お前に人生は重荷。
上を見上げると、アガサの異能は続行中で。
「アガサの異能はいつ見ても見事ねー」
と、まるで自分で披露したかのように満足げに頷いた。
こうなると私が見せないわけにはいかないか。
右手を開くと、ポコポコと大小様々なマトリョーシカが湧いては地面に落ちる前に消える。
「物質創造系異能、空論の獣(ジャバウォック)。ご存知の通り、面白手品ね」
そこまで言ってから中央の布団にシュバッと潜り込み。
「真ん中とーった!」
と、子供のように占有権を主張した。
「あー……電気、どうする? 私とアガサは例の事件以降つけっぱなしで寝てるけど…」
「……ううん、三人いれば大丈夫よね。消して寝ましょう」
■アガサ > 「それ眠りに落ちた瞬間に床にビターン!ってなる奴じゃないか。アイノ君の真上で寝てもいいならやってあげるよ」
床の二人を見上げながら、判り易く唇を尖らせて不満そう、な感じを装うけれど言葉がどうにも笑っちゃう。
アリス君の素っ頓狂な悲鳴を聞くなら尚の事。でもあんまり笑うのも程々にしないといけない。
またいつ可愛い服がミサイルのように飛んでくるか判ったものじゃあないのだから。
「見事って言われると何だかちょっと恥ずかしいな……本当に地味なんだもの。
でも、後天的に異能に目覚めたから私はこの島に来て、アリス君にも会えたからね。
そして今年はアイノ君にも。だから、結構気に入ってるんだ」
緩やかに床に戻って布団の上に座り込み、髪の毛を人差し指でくるくると掻き混ぜるようにしながら言葉を選ぶ。
その横ではアリス君の異能が鮮やかに披露されていて、とても穏やかで和やかな空気を感じられた。
「電気は──」
でもそういった空気も一日の終わりが近づくならば終わるもの。
アリス君の提案に、私の視線は今までと違う泳ぎ方をする。
隣の親友の手を握りそうになって、でも彼女を由とせずに握り拳を作る。
「──うん、大丈夫」
■アイノ > 「してないしてない。いやあコントロールが難しいなぁ。」
ひっひっひ、と笑いながら偶然偶然、事故だわぁ、とアピールをする。
これ以上笑うと私一人だけ着ぐるみで寝ることになるかもしれない。口笛と共に視線を反らし。
ぺろ、っと舌を出しながら、今度はアリスの異能を眺める。
「ふぅん、………やっぱり、千差万別っていうか、完全にそれぞれバラバラだよね。
自分の能力が気に入ってるかどうかは大事だって聞いたよ。
だから、便利に使えるように訓練してるってとこもあるし。」
二人が先に布団に入って、穏やかに目線を交わしているのを見れば。
「いいじゃん、明るいままでも。
私どっちでも眠れるよー?
んじゃ、私も横にならなきゃー……ねっ!」
なんて、ずしゃー、っと二人の上、横になった二人を横切るよう、掛布団の上に寝転がる横暴な後輩。
はー、やわらかくてあったかい布団だわー、なんて言いながら、けらけらと笑って。
■アリス >
「アーイーノー…」
偶然? 事故? そんなわけがあるはずがない。
だってアイノは天才美少女だし。
「自分の異能が気に入っているかは微妙なラインね…」
「この異能のせいで命を狙われたことも一度や二度じゃないもの」
そして、アガサの視線に言葉を迷って。
まだ私たちは戦っている。あの恐怖と。
あんな事件は起きてほしくはなかった。
でも、私は今はアガサに、アイノに。二人に救われている。
だから……言うべきは。
「今日はありがとうね、二人とも」
「楽しかったし、それに……ぐえっ」
二人を見ながら感謝の言葉を口にしていると、アイノが私たちの上にどーん。
またもカワイくない声を出して上に寝転がるアイノを睨む。
「アーイーノー……!」
手を出してアイノをくすぐり始める。
報復だ、正義だ、復讐だ。
アガサもアイノをやっちゃえ!!
■アガサ > 「うごっふ!?」
俗に人を呪わば穴二つ。
アリス君の変な悲鳴を笑った私が、今度はとても変な悲鳴を上げる羽目になる。
きっと、とても人様にお見せ出来ない顔にだってなった筈。少なくとも先程までの顔はもう何処にも転がってはいない。
きっときっと、猫みたいに飛び込んできた天才後輩が蹴り落してしまったに違いない。
「アーイーノーくーん……!」
私の上体がうっそりと起き上がる。
起き上がって、アリス君と言葉も語調も全てがシンクロしたものだから
動きもシンクロし、理由が存分にある御礼もとい仕返しがアイノ君を襲う!
2対1の戦いに天才美少女がどう対抗したかは、きっとまた別の話というものさ。
■アイノ > 「そーだなー、私も思いっきり魔女扱いされて火にかけられたことが何度あるか。 まあ天才だからその窮地を華麗に脱出して今に至るんだがな。」
はっ、と鼻で笑いながら悠々と二人の上に転がって、いやーいい気分。
お二人のやられ声にふふーん、と、もう一度鼻で笑ってやるのだけれど。
「ひぇ、ちょ、可愛い後輩の可愛い悪戯じゃなーい。
そんな本気になったら、あひゃっ、ひ、あはははははははっ!!
だめだめだめ、ちょ、腋とか、あはははははっ!!」
可愛い素振りをしてごまかそうとするんだけど、流石に何度目か分からない悪戯は許されなかった。
正義の鉄槌を受けて、じたばた悶絶しながら、最終的には先輩二人に屈服する後輩であった。
息ぴったりすぎるだろ………。
最後まで明るく、しんみりとせず、笑ってから眠れるといいな、なんて思っていたから、きっと彼女の願いはかなう。
………笑ってってそういう強制的なそれじゃないから!?
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