2019/08/05 のログ
ご案内:「伊都波家・道場」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  

ドダンッ……ばだんっ、バキャ――

音が響く。何度も何度も、音がする。
稽古場に視点をあてれば、そこには――

転がる――”モノ”

「はっ、はっ」

伊都波悠薇。伊都波の継承権が、ほぼ、ない彼女。
なのに、これほど”なにかに”打ち込むのはなぜか。

対峙、している男は、眉を潜める

――もう、やめないか

何度目かの問答だ、いや、何度、なんてもんじゃない。

ここずっと――ずっと。

時間がある限り、彼女はこうして――

稽古を申し出る

「やめない」

立ち上がり、構える。
そして特攻する――

かわされる、なぶられる、投げられる

娘、だからといって加減はしない。してはならない。

彼女は凡夫。天才ではない。
姉とは比べ物にならない。後継者としても――

なのに

――絶対に、この娘は

「まだっ」

意識を落とすまで、辞めない

それか、自分が認めるまで。
もしくは――

どだん、ばだん――

ひどい音ばかりが、山にこだまし続けた。

ご案内:「伊都波家・道場」から伊都波 悠薇さんが去りました。