2020/08/22 のログ
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"間違いではない"。
その言葉に、龍はニヤリと口角を上げる。

「それじゃぁ、"休日"を設ける事だね。自分の体は、自分が良く知ってるだろうから
 私の口からハッキリ言わない。言って欲しいなら別だけど
 君の弁を借りれば多分、『どうでもいい』だろうしね。そう、"休むだけ"さ」

「私は人のやりたい事を、止めはしない。それが、"本当にやりたい事"ならね?」

使命、生き甲斐、宿業。人の生きる理由など人それぞれ。
言い換えればそれは、生き様。それがなくなった時、人は死ぬ。
龍はそう考える。そして、それを『肯定』する。
誰かが『肯定』しなければ、人間は面倒な事に壊れてしまう。
龍はそれを知っている。だから龍は、建吾の狂気でさえ、肯定する。
元よりそれが人の『善性』だろうと『悪性』だろうと
建吾が"やりたい"なら止める理由はない。
但し、彼に"死んでほしい"訳では無い。
だからこそ、言葉を続ける。

「合間合間をおけば、少しは持つでしょ?
 君の使命は『早急』ではないと、私はミテルヨ。
 何にせよ、少しは直すと決めても、"間を置く"必要はあるんじゃないかなぁ。
 死んでしまっては、元も子もないじゃん。それに君自身、"直すために何でもする"と肯定したばかり。
 それをひっくり返す程、君の"覚悟"が安いものじゃないでしょ?」

「道具も人間も、メンテナンスは必要だよ。君は、自分の異能をどう見てる?
 君の"才能"の一部?それとも、都合のいい道具?ねぇ、建吾君。どう思ってるの?」

揚げ足取りに近い言い分ではある。
とは言え、その辺りは誰かが言わねば休むこともないのだろう、この少年は。
口八丁と一蹴されれば終わりだろうが、己の覚悟に泥を付けるのであれば、彼の覚悟の意味が揺らぐ。
はてさて、少しくらい言葉が届けばいいのだが……。
流石の龍も、少しばかり眉を下げた。困り顔だ。

角鹿建悟 > 「――……成程」

そう来たか。自分の体の事はよく分かっている。
先ほど、彼女の不可思議な力?で持ち直したが、根本的に歪みが直らない限り彼は何度でも繰り返す。
要するに、合間を設けろという事だろう―――…だが。

「やりたいかどうかじゃない。”そう決めている”。」

そしてそれを曲げるなど死んでも御免だ。直す以外に自分に出来る事は”無い”。
仮に肯定されなくても、壊れるまで男は直し続けるし、目の前の相手のように肯定されても、結局変わらない。
男は止まらない。直して、直して直して直して直して…直し続けるのだ。

「分かった、――だが、それは休養の時間を指定されてはいない。つまり俺の自由裁量だ」

極論、1,2時間の休養でも”合間”となろう。物凄い屁理屈だが口八丁相手ならこのくらい可愛いものだろう。
それに、覚悟には反していない。休む事そのものは了解したのだ。ただ、時間を決められた訳ではないのでそこはこちらの自由だろう。

「才能?道具?―――ただの”呪い”だろう。こんなもの」

一度目を閉じて一息。ゆっくりと立ち上がる。直すのに有効活用しているだけで、この力を男は過信しない。
まぁ、直すために負荷を掛けてでも無茶は遣り通すのだけれども。

> 人差し指を建吾口元へと突きつけた。
細い指先の向こう側、龍の顔は"笑っていない"。

「──────"呪い"かぁ。君は、"決めた"とかどうとか言ったくせに、良いように利用してるそれを"呪い"というのかな?」

角鹿建悟 > 成程、そっちの表情が真骨頂か。先ほどからずっと笑顔で意図が読めなかったが。

「――呪いを利用して何か問題が?少なくとも才能だとか奇跡だとかそう思う気にはならないな」

指を無造作に払い除け様としながら淡々とした口調で言い切る。
相変わらず笑みの欠片すら見せない無表情。

そもそも、言い方をどう取り繕っても利用してる事に変わりは無い。代金は己の命だろうが。

>  
「勘違いしてもらっては困る。さっきまでの君なら君を笑顔で祝福した。
 君は、"呪い"を使うのか。少なくとも、狂気とは言え矜持を感じていたんだけどなぁ……」

少なからず落胆したと言った雰囲気だ。
真骨頂なんて、とんでもない。
人間、残念と思えば笑顔位消えるものだ。
別に人を食うような女ではない、畢竟普通の人間と感性は変わらないのだ。

「道具位の価値として思ってくれれば、少しはその狂気も納得できたんだけどねぇ。
 まぁ、"呪い"に"狂気"、おあつらえ向きと言えばそう言う組み合わせだ。
 君は、"自分で決めた道"と言っておきながら、異能を"呪い"と誹った。」

「────それって、本当に君が決めたのかい?呪いにそう言われただけじゃないのかい?」

「或いは、それを"呪い"と誹った誰かの仕業か」

「私と君は初対面だ。だから、全部この言葉は所感でしかない。
 違うなら違うと否定するといい。いや、どうかな。
 君の事だ、なんでもかんでもそうだと『思い込んで』否定してしまいそうだ。ねぇ、建吾君」

「物作りの楽しさを、大変さを、知る心を覚えている少年よ。
 ──────君のそれは、誰に"呪い"と言われたのかな?」

そう、初対面。
だけど、初対面からでもそう感じる。
余りにもぎこちない狂気、自己矛盾。
いっそう、それは何かの思い込みなのか。
何がその狂気を支えるのか、龍には忖度を測りかねる。
だからこそ、その内を図る。そうでなければ……
自分自身にさえ、彼は"嘘"を吐いているのかもしれない。
既に、己の大部分を抑えている節はある。
何処まで抑えているかはわからないが
少なくとも、彼は"思い出"を抑え込んでいた。
だからこそ、問いかける。

角鹿建悟 > 「――狂気に矜持も何も無いだろう。落胆するのはそっちの勝手だが」

別にどう思われようと、やる事は結局変わりはしないのだから。
――本当に?そうだとも。誰かに何か言われた程度で揺らぐ・曲げる理由がそもそも無い。

「――俺が決めた道だ。それ以外に答えなど必要ないし意味も無いだろう」

淡々とそう答える。呪いに言われた?誰かの仕業?そんなのは知らない。
そもそも、思い出も故郷も家族も全部”捨てて”この島に来たのだから。
捨てたモノを振り返りはしない。自分にはもう直す事だけしか必要ない。
――それしか出来ないのだから。

「―それを、初対面のアンタに言う義理も無いと思うが」

ゆっくりと息を吐き出しながら静かに口にする。思い込みだろうと直す糧になるなら幾らでも。
迂闊に”呪い”と口走ったのはこちらの落ち度だが――そこは押し殺す。

「――別に、誰かに言われた訳でも何でもない。思い込みと取るなら好きにしてくれ。
――俺のやる事はどう捉えられようが変わらない」

直すと決めたのは自分だ。これからも直し続ける。ボロボロになろうが、打ちのめされされようが。
後ろ指を差されようが、殺されかけようが、直し続けるのだ。そうじゃなくちゃ――俺が俺である意味が無い。

「――体の礼は言っておく。ありがとう――だが、アンタがどう思おうが俺は俺だ。ただ直すだけの存在でいい」

呪いも、狂気も、思い込みも、矛盾も。どう捉えられても男の揺るがなさは変わらないのだから。

「――だから、その思い出”とやら”も俺には必要ない」

そのまま、彼女の隣を通過するようにゆっくりと歩き出そうか。もう”仕事”は終わった。長居する理由も無い。

>  
「……中途半端な事言うねぇ、どうせ狂気ってわかってるなら、喋る必要も生きてる必要もないだろうに。
 君は一体何のために……あー、いや、いいや。コレの答え、耳にタコが出来そうだもの」

どうせ、『直す為』って言われて終わりだ。
ちょっとうんざりしたように顔をしかめた。
しかし、しかしだ。これは何というべきは。
向こう見ず、というべきかなんというか。
そう、中途半端に人間をしている辺り"らしい"と言えばらしい。
それは所謂未練なのか、なんなのか。

「……君は物を直す以前に、もう少し自分の事を知るべきだと思うなぁ。
 人という文字の成り立ちを知ってる?……そうでなければ、物以前に
 『命を治す』なんて言葉、とてもじゃないけど口に出来るものじゃないと思うよ」

<何でも出来たらそもそも生物の治癒や蘇生も出来ているから、それは無いな>

ちゃんと相手の事を見て会話してるんだ。
彼の言った事位覚えている。
ある意味の後悔にも似た、そのぼやきを。
少なくとも、彼は『思い込みが過ぎる』
精神病か何か…なんだろうか、実際。
生憎医者では無いのでわからないが
少なくとも龍には、彼は"分からず屋の思い込みが激しい男"にしか見えなかった。
気づいたら、困ったかのように肩を竦めた。

「神様じゃないんだからさ、高望みしすぎじゃない?
 それとも、『過去』に直せないものがあったからそういっちゃうの?
 あ、これただの憶測。人が狂気に囚われるのは、喪失か付与位なものだしねぇ」

歩き出す建吾の歩みに合わせて、歩き始める。

「或いは元々、だったりね?君がどれかは知らないけど……
 まぁ、たまには"メンテナンス"はするよ、建吾君。
 君が死んだら、泣く人だっているだろうし、ね?」

「君だって、お友達の一人や二人、いるだろう?
 帰りの間際くらいは、ボディーガードしてあげるよ。大工さん」

ともあれ、彼女の『肯定』は嘘ではない。
落胆しようと、飽きれようと、龍は人の事が好きだ。
だからこそ、『善性』を以て接しよう。
建吾の隣で、柔らかく微笑んでいた。

角鹿建悟 > 狂気か思い込みか、はたまた精神病か。どう捉えられようとやる事は実際変わらない。
直して、直して、ただ直すだけだ。悪友も居る、知人も居る、”約束”を交わした相手も居る。

――ただ、やっぱり男にとって直す事がまず大前提で優先されるべきものだ。
既に自分の人生など見切りを付けているのだから、後はどれだけ直せるか、だろう。

中途半端に人間性が残っているとしたら、むしろそれこそが色々捨ててきた男の良心にも似たものなのかもしれない。

「――自分の事?必要ないな。今更知ってどうにかなる訳でもない。
あと――俺が死んで誰が泣くんだ」

何だそれは、ピンと来ないし”よく分からない”。
そういう涙というのは別の誰かの為に取っておけといいたいくらいだ。
ゆっくりと歩き出せば龍も付いてくる。そちらを一瞥しつつ。

「そもそも、過去なんて捨ててきたから知らないな。今更興味も無い。
…別に必要ないぞ。そういうメンテナンスはもっと他の奴にしてやってくれ」

ついでに言えばボディガードもいらないのだが。結局、安全な区域までは護衛されたのだろう。

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