2020/08/24 のログ
ご案内:「常世総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
『異能殺し』との戦闘と、その後施療院にて受けた治療の後。
勇ましく警邏シフトに名前を書き加えようとして『診断書貰ってからに決まってるだろう』と追い返されてしまった。おのれ穏健派。
確かに、若干筋肉痛めいた鈍痛は残るものの、それも日増しに弱くなっている。健康体であることは、己自身が分かっていると熱弁したが――
「……まさか、同じ派閥の者にも止められるとは思わなんだ…」
世話になっている小太りの風紀委員すら
『手駒は完全な状態で動かしたいんだよねえ』
とか何とか言ってきやがった。というか手駒ってもう隠すつもりないなあの男。
伊都波先輩は、此処数日の活躍によって『黒い灰被り姫(シンデレラ)』と落第街から恐れられる様になったらしい。
ラムレイ先輩と山本が未だ入院中である事を鑑みれば、彼女の負担を減らす為にも早い所前線に復帰したいのが本音。
「……であれば、とっとと終わらせてしまうに限るか」
検査結果を待ちながら病室のベッドでぼんやりと。
というか、検査待ちで一々この病室に案内されるのは如何なものなのだろうか。此の侭一晩此処で過ごさせるつもりなのか。
別に構わないのだが。
ご案内:「常世総合病院 VIP個室」に神名火明さんが現れました。
■神名火明 >
「は~あい、こんばんは~♥」
普段の怪我人病人にくわえて夏場ならではの期間限定の患者も増えてしまっていて、隈がますます濃くなった気がする…。
でもお医者さんが疲れました~なんて顔を見せられないから、高級ホテルみたいな病室には笑顔で入っていく、患者さんを不安にさせちゃいけないからね。
「検査おつかれさま~、理央くんさいきんよく会うね~って私が患者さんに言いたくない台詞トップ5に入ってるんだけどそこはわかってくれてるかな~? 具合、どう?」
お医者さんの言うことを聞いてくれない人は風紀委員には本当に多いのでちょっとお小言を言いながらも傍らに立って、診療録をひらひら振る。自分が担当した彼の分だけでもちょっとした量になっちゃっているのはとてもかなしい。
■神代理央 >
扉を開く音に視線を向ければ、其処には入院の度に世話になっている女性の姿。
確か、医学部の生徒ながらその卓越した技術や技能で様々な医療機関の助手を務めているとか。
此の常世総合病院でも、彼女の名前は度々耳にしているし、実際に担当になって貰っている。余り詳しく彼女の事を知っている訳では無いのだが。
「おかげさまで、具合の方は元気いっぱいですよ、神名火さん。
明日にも現場に復帰したいので、出来れば此処に長居したくはありませんがね」
自分よりも一回り背の高い彼女を、ベッドの上から見上げつつ苦笑い。
検査結果も恐らく問題ない筈だ。既に仕事道具一式持ってきてしまったので、検査入院になるなら此の侭仕事に励もうかと思っているくらい。
■神名火明 >
「それで新しく怪我作ってまた会いましたね~ってのはやめて欲しいな~、風紀さんたちには難しいお願いだっていうのはわかってるんだけどね~。英治くんもいま怪我してるんだって?」
VIP相手にはあれこれは言えないのもあるし、それなりに馴染みの患者さん。気安い感じに会話をする。デスクワーク用のあれやこれやを見てから診療録に視線を落とす。
「身体のほうは概ね大丈夫。一応今日はここで寝ててもらうけど、明日の登庁時間には出られるようにしておくから。何でくるたびに新しい胃潰瘍ができてるのかな?とは思うけど今回もちゃんと治してあるから安心してね。あとは~」
身体をかがめるとずいっと理央くんの綺麗な顔を覗き込んで身体を寄せる。じーっとみつめながらすんすんと匂いを嗅いじゃうんだ。
■神代理央 >
「…まあ、どうしても警邏や現場に出がちな委員は、怪我だのなんだのが絶えなくなるのは致し方ないのかなと。
ええ。彼は知り合いの施療院に入院中ですね。この間お見舞いに行きましたよ」
情報が早いな、と思いながらも。
様々な患者を診る医者という立場ならそんなものだろうか、と世間話めいた会話は続く。
「明日から現場に出るつもりなので、登庁に間に合うのは助かります。胃潰瘍……ですか?いや、これといって原因は……」
胃潰瘍。主な発症理由はストレスや疲労。
思い当たらない事も無いな、とちょっと溜息を吐き出しながらも、此の病院の設備と彼女の『治す』という言葉には安堵の表情を浮かべるだろうか。
と、此方に近付き、匂いを嗅ぐ彼女に。
僅かに身動ぎしながら、怪訝そうな瞳を向けて――
「……あの…何、か?」
汗臭かったかな、とちょっと気にしながら。
困った様な表情で首を傾げるだろうか。
■神名火明 >
「施療院、確かアッチのほうにあるんだっけ~。応急処置できるとこがあると便利なんだけど場所が場所だからな~、機材とかそういうのも充実すれば結構、あー。どんなところ? そこに居るお医者さんとか~、今度視察がてらご挨拶行ってみようと思うんだけど」
堅気の医者を嫌う人らがいるかもしれないからという気遣いもしちゃう。余計な争いはしないに限るからね、怪我人がでちゃうし。
「煙草吸ってるのとか調べればわかるからね?」
にっこり笑っちゃう。ストレス性胃潰瘍にニコチン中毒となると彼の身体の今後にも強い影響が出るというか実際すでに出ている感もあるので牽制はしておいちゃう。
「環境が変わらないと単なる禁煙じゃ逆効果になったりもするからやめろとは言わないけどね~、ちゃんと休まないとだめだよ理央くん。彼女さんできたらしいじゃない?
あーっ、はぁ~。そっか~彼女できたんだよね~。狙ってたんだけどなあ~~!!」
一応お医者さんとして言うことは言っておくけど多分聞いてくれる手合いじゃないよねってなりつつ、言葉にしたらすごいダメージが来た。可愛い子なのに!
■神代理央 >
「あそこは機材を搬入するのも一苦労ですからね…。どんなところ、と言われると…修道院を改装した場所なので、規模的には大きめの診療所、というべきなのでしょうか。清潔ではありましたが、医薬品や機材が充実している様には見えませんでしたね。
知人のシスターが責任者ですので、気になるなら今度話をしておきましょうか?」
医療関係者ともなれば、やはり争い事の多い地区での医療、というのも気になるものなのだろうか。
つらつらと言葉を並べながら、内心首を傾げてみたり。
「………本数は、控えているつもりなのですが」
隠し立てしても仕方がない。
苦笑いを浮かべつつ、溜息を一つ。
「良く言われますよ、『休め』って。私も休みたいとは思っているんですけどね。今暫くは、踏ん張りどころかなと。というか、神名火さんこそちゃんと休まれてますか?目の下、隈凄いですよ」
「……ええ、まあ。こんな私の何処を好いてくれたのか分かりませんが、お付き合いさせて頂いてます。
神名火さんなら、色んな男性から引く手あまたでしょうに」
一応、彼女の言葉には否定の言葉は返さずとも。休める様になるのはもう少し先だろうかと、小さく肩を竦める。
彼女云々の言葉には、にっこりと笑みを浮かべて社交辞令。
まあ、実際彼女はモテそうではある。というか、モテるだろう。
自分への言葉も冗談めいたものだろう、と浮かべる笑みには少し呆れが混じるだろうか。
■神名火明 >
「高級機材や資材なんかはうっかりすると盗まれたりする場所だし、速やかにこっち側に運べる導線が作れるだけでもいいんだけどそのあたりも、分かりやすいと抗争とかも起きやすくなるから難しいよねー。出来ればうまいこと協力したいんだけど、…シスター?シスター。…もしかしてマルレーネとかいう?」
ちょっと指がピクってなっちゃう。あの子ならやりそうだな~、って首を傾げて聞いてみちゃうよ。
「あはははは!見りゃわかるでしょ~寝不足だよ寝不足。彼氏が淹れてくれるハーブティーでさ?だいぶ疲れは取れるんだけどさ~、だからお互い様なの。うん、でも言えるのはそれくらいかな?怪我はなし、病気も所見なしだし、あとはお大事に。これは本当に守ってね、理央くん。こうなるとお医者さんこれしか言えないの」
ね?そんな風にまじめーに顔を覗き込みながら笑うんだよ。お医者さんの仕事なら増やしても良いってわけじゃないんだからね。
「男の人とも女の人ともね~、それなりに仲良くはさせて頂いておりますとも。
でもそれで理央くん狙わない理由にはならなくない!?美味しいスイーツのお店とかリサーチしてさ~、暇があったらナンパしようかと思ってたのに全然暇がなくてさ~」
えっ、それなりに本気だったんですけど!って心外な気持ちになっちゃうよね。
「どう?彼女とはうまくいってる感じ?」
■神代理央 >
「余り設備を充実させれば、不逞の輩からそれを守る人員が必要になりますからね。神名火さんの言う様に、応急処置を施した施療院から此方側まで迅速に搬送出来る様になれば良いのですが…」
「ええ、シスター・マルレーネです。御存じだったのですか?」
へえ?と言わんばかりの視線を彼女に向けながら。
医療に携わる者同士、繋がりがあるのだろうかと思いながら頷くだろう。
「私の健康状態よりも先生の方が気がかりですよ。彼氏さんと、偶にはゆっくり過ごされたら良いんじゃないですか?
……ええ。私も、怪我や病気で仕事に穴を開けたくはありませんからね。健康第一で、過ごさせて頂きますよ」
と、此方も穏やかに笑い返そうか。相変わらず距離感の近い人だな、とかちょっと苦笑いも交えつつ。
「おや、先生は中々色多き御方な様で。…む、スイーツですか。それは…むう…」
この間、久し振りにスイーツ部の同級生と甘味に舌鼓を打ったばかりではあるが。いや、だからこそ。
甘味への誘惑には、結構、弱い。
「…おかげさまで。私が不甲斐ないので、余り構ってやれないのが情けない限りですが」
恋人は、色々と今は大変な時期。己も、仕事仕事で構ってやれていないのも事実。
そんな憂慮を飲み込んで、社交的な笑みの儘、肩を竦めてみせようか。
■神名火明 >
「いやあ~実はね、私、医者になるのやめようかと思ってて。
それ考えるとこう今休んじゃうの申し訳ないなあ~って言うかさ、卒業しても教員として病院に残らないならあれ、その後にたくさん休めるし?というか今更休めて言われてもちょっと逆に身体壊しそうでさ、この前なんて急な休みもらった時はファミレスで寝ちゃって」
仕事中毒というわけではないが仕事人間なのでした。休み方が下手といえばそうで、休日にも恋人に時間を使っている。健康管理はしているけど寝不足だけはどうしようもなくて、結局理央くんに言えることってあんまりないんだよね。
「アレ~?じゃあ今度行く?ふ・た・り・で♥いきたそーだし。そしたら素敵な時間、たーっぷり過ごさせてあげちゃうケド~」
スイーツへの反応が良かったのでぐいぐい押しちゃう。まあ~幸せを引き裂くつもりもないから適当なとこにしておこう。
「私もまあ~大切な人って言うのかな、あんまり会えてなくてさ~。彼氏とはこんどデートするけど、時間感覚とかが合わないと色々難しいよね。
たまに会うだけでも通じ合える仲っていうの?キモチイイことだけ共有してさ、こーゆーのあんまり良くないのかな~とは思うんだけど、私そういうふうにしか多分人と触れ合えなくて。理央くんはどう?相手との歩調っていうかなんていうか」
呼び出しかかるまでの世間話にしてはちょっと重くなっちゃったかな~なんてなりながら。
「あ。またその施療院行くことあったらさ、行きたがってる医者が居るって私の名前出してもらっていいかな。正直この病院に居るよりは休めそうな気がするし」
■神代理央 >
「……そうなんですか。勿体無いな、とは思いますが…。神名火さんの決めた事なら応援しますよ。色々と御世話になりましたしね。
根を詰め過ぎる様な働き方をするくらいなら、色んな道を模索するのも、良いと思いますよ」
どの口が言うのだろうか、と我ながら自分自身へ思わなくも無いのだが。
それでも、医学部に名高い彼女が『医者にならない』という選択肢を、止めたり非難したりすることは無い。
だってそれは、彼女が自ら選ぼうとしている選択だ。それを否定する様なおこがましい真似は、したくはない。
「神名火さんの様な綺麗な方と御一緒出来るなら何時でも。御誘い頂けるのは、光栄の限りですよ」
スイーツに惹かれているのは事実だし、別にお茶と甘味を一緒にするくらいは何という事もない。
世間話の延長、の様な口調で言葉を返しつつ。
「……中々難しい事を聞いてきますね。私まだ、16歳の男子ですよ?」
と、可笑しそうに笑った後。
「良いんじゃないですか?人は万能ではありません。肉体的にも精神的にも、何方かを満たす為だけの行為というのは、古今東西良く聞く話です。今更、それを責め立てる事もありますまい。
私は…どうなんでしょうね。なるべく恋人と歩調を合わせようと、まだ努力を始めたばかり、というところでしょうか」
人付き合いやパートナーとの接し方は人それぞれ。
故に、彼女の言葉に柔らかく同意と肯定を示しつつ、自分はどうだろうか、と。僅かに首を傾げながら口元を緩めるに留めるだろうか。
「勿論。神名火さんの頼みとあれば。シスターもきっと、人手が増えれば喜ぶでしょうし」
■神名火明 >
「私アレだよ。お仕事でお医者さんやってるの。そういう家だから。
命がけでやっては来てるけどさ~、命がけで救ってお大事にって言ってもすぐに危ないことして怪我したり…死んじゃったり。入院してもルール守らなかったり。抜け出してまた怪我して戻ってきたり。危ないってわかってるのにやって怪我したり。お薬飲んでって言っても飲まなかったり。叱っても笑って反省しない人もいて。それでも続けなきゃいけないんだ。お医者さんだから。そういうお仕事だから。でもそんなこと続けてると虚しくなってくるくらいには私は中身がお医者さんじゃないんだよきっと。
ああつまんない話しちゃってごめんね。私もストレスかな~、お茶が飲みたいな」
年下の男の子にする話じゃないな~って。目頭をもみもみ。ちょっとそろそろゲンカイなのかも。休めかあ。休むべきなのかなあ。溜め息が出ちゃう。
「今度美味しいところ紹介してくれる?一緒に行きたいな~」
両手をあわせてお願い!しちゃう。彼女持ちの男の子に甘えていい話じゃないね。
「16歳の男の子がダメだよ、私みたいな人との付き合い方に理解を示しちゃあ~。
でも案外さ~、誰かひとりに全部委ねるほうが間違いだったりするのかな。カラダとココロ。両方ばっちり満たせる相手って私まだ会ったことないかも。みんな素敵な人だけど、私も多分誰一人にも全部は満たしてあげられてないかもって考えてるからかな。
だからね。もしどっちかが満たされないことがあったら私のところに甘えに来ていいよ?理解してくれるなら、恋人が一人じゃなきゃいけないなんてルールはないわけだし、ね?」
苦しくなったらお薬を求めにおいで、なんて艷やかに笑っちゃうよ。そこでデバイスに通信が入った。おしゃべりの時間はおしまいだし、理央くんにもお仕事があるから立ち上がった。
「ありがと~。あの子けっこう無茶するから、ついててあげたいんだ。理央くんみたいな人が安心してあの子に甘えていられるようにね。
それじゃあ明日、出てく時に受付で診断書貰っていってね。私のサイン付きです。神名火明現役時代、最後の一枚かも、なーんて」
■神代理央 >
「…誰かを救う、という事は、基本的に無償では出来ない事だと思います。誰かを救うために、自分の何かを、リソースを割かなければならない。気が向いたから気軽に誰かを救う、なんて中々出来ないでしょう?
だからそれは、報われなければならない。救った人からの謝意でも、自己満足でも。何でも構わないんです。報われてさえいれば。
……神名火さんがそれを報われないと。虚しいと思うのなら、無理に救う必要はありませんよ。だって、そうなった神名火さんを、一体誰が救ってくれると言うんですか?」
穏やかに笑いながら『止めても構わないじゃないか』と囁く。
人に言うのは簡単だ。自分でも分かっている。だが、自分は止められない。
だから、疲弊している様に見える彼女の背中くらいは押してしまおう。それが良い事なのかは、さておき。
「それなら、学生街に良いスイーツを出す店があるんですよ。ラ・ソレイユって言うんですけど。
ええ、神名火さんさえ宜しければ是非。今度御一緒しましょう」
ちゃっかりである。ちゃっかりの宣伝である。
浮かべているのはきっと営業スマイルだ。
「16歳だから、かもしれませんよ?難しい人間関係を理解するより、そうやって割り切って考える事の方が、人生経験の無い私にはまだ理解出来ますから。
甘えに、ですか。 神名火さんのファンや彼氏さんに見つからない様にしなければいけませんね?」
艶やかに笑う彼女に、クスリ、と小さく笑みを返す。
実際、言わんとする事は分からなくもない。身体と心というのは、中々に難しいものなのだ。
己とて、未だ未熟な男子。男性、と成熟しているとは我ながら思えない。精神が揺れ動く事も多々有れば、肉体の熱が有り余る事もある。
人は皆、そういうものなのだろう。
「…神名火さんの中で、私は基本的に甘える側なのですか?其処まで意志薄弱に見えますかね…うぅむ…。でも、マルレーネさんもきっと喜びます。話は、ちゃんとしておきますね。
分かりました。……じゃあ、何時か価値が出る事を期待して、額縁にでも飾っておきましょうかね?」
なんて、冗談交じりの言葉を返しながら。
ベッドから身を起こして立ち上がる彼女を視線で追い掛けつつ、見送る為に姿勢を整えようか。
■神名火明 >
「うーん、誠意かな。
あ~でも、そうなんだよね、ちゃんと誠意見せてくれる人のほうが多いの。それは間違いないの。でもそうじゃない人のほうが気になっちゃうっていうかさ。あはは、やっぱ駄目だね。報われてるかどうか考えちゃうとちょっと良くないかも。
それで~?理央くんがそうなったら、救ってくれる人の宛はあるのかな?って聞き返しちゃうよ~?ちゃんと報われてる?本当に本当の、お大事にだからね。私みたいに感じるお医者さん増やしちゃだめだよ?
ありがと。心配してくれるのすっごく嬉しい。ますます浮気したくなっちゃったな~」
ほっぺを指先でぷにってしちゃう。年下に気を使わせちゃうとかいよいよ本当に駄目だなって。そろそろ潮時なのかもしれない。でも大丈夫、私が辞めてもどうにかなっちゃう。報いが欲しくてやってたなら本当にそろそろなんだろうなってちょっと決心もついた。
「手術の後とかすっごい甘いもの欲しくなるんだよ。いくいく!美味しいのたくさん食べちゃう!
ラ・ソレイユって良い名前だね~。太陽か~。最近出来たところだよね。あ~でももしお医者さんやめた後だと通い詰めたら太っちゃいそ~。おすすめのヤツ教えてね?」
そこがどういうお店なのかもわからないくらいずっとお医者さんだった。そして多分悪い人だった。良くなるかはわからないけど自分にも甘いものとか処方しないと。そんなふうに笑った。こっちも笑顔。お医者さんが辛そうな顔してちゃいけない。あ、またお医者さんのこと考えてる。
「それに遊べるうちに遊びたいもんね~。いいと思う!フフフ~、じゃあ私も理央くんの彼女さんに見つからないようにするね♥楽しみだな~」
どこまで冗談か本気かもわからない感じで、ケンゼンな男の子に期待持たせちゃおうかな。
「あ~、違う違う。マリーが強すぎるだけ。私でも甘えたくなっちゃうもん。太陽みたいな子だから。でもそれでもね。多分、私は、あの子に報われて欲しいって思ってるんだ。
私に優しくしてくれる理央くんにもね。頑張ってるのはよくわかるからさ~。次来る時は私じゃないかもしれないけど、お医者さんのいうことちゃんと聞くように。
じゃーっ、よろしくね。えへへ、報酬はデートとそのプレミア付き診断書ってことで~」
ひらひら手を振って前途多難そうな男の子とは一回のお別れ。次会う時はどんな感じかわからないけど楽しい機会だといいな。クマもちょっと薄くしておかなきゃ。
「お大事に~」
ご案内:「常世総合病院 VIP個室」から神名火明さんが去りました。
■神代理央 >
「別に良いじゃないですか。報われているかいないか、気にする事は何もおかしくありませんよ。
人には誰にだって、自分の行為に対する意味を求めます。それを感じられなくなったのなら、その行為には意味など無いのでしょう。
……私はまあ、風紀委員ですから。救った数だけ、それなりの名誉と自己満足が与えられていますとも。だから、 神名火さんの様な立派なお医者様を虚しくさせないように、健康には留意させて頂きます。
……火遊びも結構ですが、私は高いですよ?これでも、此の個室を抑えられる程度には、お金を持っていますので」
頬に触れる彼女の指を止める事も無く。穏やかな声色と笑みで、言葉を紡ぐ。最後の言葉には、少し揶揄いの交じった色が浮かんでいるだろうが。
「カロリー計算は自己責任でお願いしますね?
あそこは、パティシエも店員も優秀ですから。おススメは勿論、御一緒した時に教えて差し上げますよ」
糖分は、過剰摂取は身体に毒かも知れないが。
それでも、一時の多幸感は与えてくれる。そしてそれは、薬物や酒煙草に頼るより、多少は健全である筈だ。
悩める医者であった彼女に、蕩ける様な甘味で癒されて欲しいな、とは本気で思っていたり。
「……私は兎も角、健全な生徒をその調子で誑かすのは控えて下さいよ?勿論、男女問わず、にね」
意味深な彼女の言い様に、楽しそうに笑いながらも念押し。
此の島の女性医療関係者は、誰もかれも人を誑かしがちではないだろうかと、ちょっと思わなくもない。
「……確かに、彼女は強い人だ。包み込む様な優しさと、強靭な意志の強さを持っている様に見える。だから神名火さんの言う通り、彼女もまた、報われるべきなのでしょうね。彼女の行動に、意味を持たせるべきなのでしょう。
……肝に銘じておきます。入院ばかりでは仕事も進みませんし。
再会した時、神名火さんがどういう道を選んだのかも楽しみにさせて頂きますよ」
医者で有り続ける事を選ぶのも。新しい道を選ぶのも。
全ては彼女自身の選択によるもの。その結果を、今は楽しみにしておこう。
「ええ、それじゃあ。"神名火先生"。御世話になりました」
先生、と。彼女をまた呼ぶ機会があるのだろうか。
そんな事を思いながら、小さく手を振って彼女を見送ったのだろう。
ご案内:「常世総合病院 VIP個室」から神代理央さんが去りました。