2020/09/20 のログ
マルレーネ >  
「そういうことです。
 ドン底で、まだこうやっていられるなら。
 後は上がるだけですよ、きっとね。」

その手を握ったまま、今度はもう片方の手を伸ばして、頭を撫でる。
本当に心が壊れた人は、それはもう私の手は届かない。
こうやって届くのだから、きっと立ち直れる。


「………器用ですよねえ。
 それだけ器用なら、それこそ今だからこそ、工具とかを使って直すことから取り組んでみるとか。


 私が思うに、能力とは………。
 不意に与えられた授かりものです。 天稟とも言えるかもしれません。

 それは、あまりに強すぎるもの。
 ………それだけに頼って生きていくのは、人間歪んでしまいます。

 それだけやっていたのなら、物を作ったり、直したり。
 好きとか嫌いとか、そういう感情も無くなってしまっていると思います。

 まずは、それが本当は好きだったのか、嫌いだったのか。
 それを探すところから始めないとですね。」

微笑みながら、相手の手を握ったまま。
 

角鹿建悟 > 「――その這い上がる最初の一歩がどうにも、なんだが……まぁ、焦っても仕方ない…か。」

精神が折られても、どん底でも、心は壊れてはいない…どのみち、このまま朽ち果てる末路は――きっと、色々な何かを蔑ろにしてしまうだろうから。

頭を撫でられれば、照れも嫌がりもしないが…何処か不思議そうに瞬きを数度。
そういえば、誰かに頭を撫でられる、なんていうのは幼少期以来だろうか。

「――ああ、まぁ…服務規程違反、というか独断専行も目立っていたから…今はどのみち能力は使えない。
…確かに、能力に頼らずに直す事を地道にしていくしかないかもしれないな」

――俺の原点は何だっただろうか?

――直す事は俺は好きなのだろうか?嫌いなのだろうか?

――俺は…どう生きていけばいいんだろうか?


疑問が浮かぶ、不安が覗く、先は見えずどん底から見上げる空は遥か高い。
――能力に頼り過ぎない。だけど、その力が無ければ自分に何が残るんだろう?


「…まさに自分探し…だな。一番向き合わないといけないのは自分自身、か」

シスターの微笑みを見遣りながら、握られた手のぬくもりを感じながら。
銀色の瞳を一度閉じて…ゆっくりと息を吐き出す。

火種は悪友から貰った。そしてシスターから言葉を貰った。

――まだ、立ち上がれないけれど…少なくとも、立ち上がろうとする気持ちは沸いてきた、。

「ああ、そうか――誰かと向き合う、というのはこういう感じなのか」

マルレーネ >  
「もしかしたら、建悟さんはすごく真面目なんじゃないです?」


相手の言葉を聞いて、首を少し傾げて、覗き込む。

「………人と向き合うことを、向き合おうと思ってやっている人はいません。
 難しいことは分かりますけど、焦らないでいいと思いますよ。

 それに、今までずっと狭い空しか見ていなかったのでしょう。
 狭い空しか見ていないのに、こうやって室内で"何処に行こう"と悩んでいても答えが出ないに決まってます。

 建悟さんにもしも私から言えることがあるとしたら。
 ゆっくり、どっちに一歩目を踏み出すことを考えるところから始めればいいんです。

 図書館に行かずに、どんな本を読めばいいか悩んでいても、分からないですよね。」

にへ、と笑いながら、大丈夫、大丈夫、と、二回言葉を繰り返す。


「いろんな本を読んで、知らないことに挑戦してみて。
 その上で、一歩目を踏み出す方向が決まってから歩けば、別にいいんですよ。」


大丈夫、大丈夫。

耳に残るように、頭を撫でながら。 何度も声をかけていく。
 

角鹿建悟 > 「どうだろうな…真面目かどうかは自分では正直よく分からないが」

自分の体や心の悲鳴さえ無視して直す事に費やしてきた身だ。無茶はするが、そんな有様で真面目かどうかはよく分からない。

だから、首を傾げてこちらの顔を覗きこんでくるマリーに、正直に自分ではよく分からないと答えよう。
自分自身の事すら、今の自分はきっとはっきりと分かっていないのだ。

「――焦ってもしょうがないのは分かっているし、正直…まだ能動的に動く気分にはなれなくてな。

悩んだ事が無かった事に悩んで…先は見えなくて。どう踏み出せばいいのかも分からなくて。
――ああ、本当に……俺は何も見えていなかったんだな」

必要なのは時間、なのだろう――だが、何処かでこのままではいけないから、と焦る気持ちは正直ある。
じっとしている、何もしない時間は苦手だ――直す事に費やしてきたのなら尚更に、だ。

どうやら――精神が折られても、ゆっくりとした歩みを自分は何処かで拒んでいるらしい。
生き急いでいる、というか…そういう生き方を色々無視して続けてきたからだろう。

(――本当に、先が見えないな…)

マリーの言葉はありがたいけれど…中々、歩くような速度で自分を見つめ直すのは自分は難儀しそうだ。

とはいえ、今は腰を据えて取り組むしかない。再起するにしても時間が必要だ。

「大丈夫――か。」

頭を撫でられ続けながら呟くように。俺は――まず、俺自身を救えるだろうか?

マルレーネ >  
「ええ、大丈夫。
 心が焦って、逸って、それが当然です。
 ………それでもきっと、明かりは見える。

 何も見えないことに絶望しないことです。
 何も見えないと感じるということは、己の意識は生きている。

 何も見えないことに、何も感じなくなった時こそ、本当に焦るべき。」

ぽん、と頭を撫でて、微笑みかけ。

「………また困ったら修道院に来てくださいね。
 きっと、何でもお話をお聞きしますから。」

「あ、でも、その時までにパズル、できるようにしときますからね。
 私の汚名を返上する機会もありますから、いつか必ず来てくださいよ?」

ふふーん、と腕を組んで、威張ってみる所作までして。
 

角鹿建悟 > 「――成程な、そういう事か…。」

ぽん、と頭を撫でて微笑むマリーに、無表情ながらもそうか、とゆっくりと頷いてみせて。
きっと、自分を見つめ直す良い機会でもあるのだから、焦らず、ゆっくり、そして着実に立ち上がっていくしかない。

「――ああ、いずれまた顔を出しにいけたら、と思っているさ。…その時にはしっかり立ち上がれているといいが」

だから、少しずつでもいい、このままでいるのではなく、必ず立ち上がる為に。

「――ああ、パズルに付いては…力押しは厳禁だぞ」

と、少し冗談めかして言える程度の気力は沸いたらしい。
そうだな――それもある。腕を組んで威張るような仕草をするマリーに、無表情ながらそう告げながら。

「――さて、そろそろ良い時間だ――お互いそろそろ部屋に戻る時間だろう、行こうマリー」

今日のリハビリはもうお互い一段落しただろうし、部屋に戻らなければ。
彼女が良いのならば、そのまま立ち上がって、二人で休憩室を後にしようかと。

きっと彼女のほうが先に退院するのだろうけど――また、必ず会う為に今はゆっくりと――。

マルレーネ >  

知恵の輪?
ああ、うん。
聞かないでくださいね。


ねじ切れた金属の輪をこっそり隠して、彼女はしょんぼり眠るのだ。

 

角鹿建悟 > ――ちなみに。捩じ切れた知恵の輪については気付いてはいたが何も言わなかった。

いずれ、彼女の修道院を訪れたら――その時に、実は気付いていたとこっそり指摘してみるとしよう。

その夜は――また飛び起きてしまうのだろうけど、存外ゆっくり眠れたとか。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院・休憩室」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院・休憩室」からマルレーネさんが去りました。