2020/10/31 のログ
白亜 愛 > ふぅと一息をつき。同じように眺める。
山を登りながら見上げてきた木々を、今は見下ろしていた。

「綺麗だな……秋って感じがすごい。
へへ。ここに来てよかったぁ」

同じ赤でも色んな赤がある、という話を道中でしたが、遠くから見ると、その小さな差異が景色をより華やかにしている。
これが自然。

「連れてきてくれて、ありがとうございます」

今日という思い出を忘れないように、目に焼き付ける。

阿須賀 冬織 > 「ああ……ほんと。綺麗だし、なんて言うが心が清められるって言うか……。」

こうやって自然の中に立っていると、常日頃の嫌なことなんかも忘れて晴れ晴れとした気持ちになれる。
そして、そうした広く静かな場所だからこそ、隣にいる彼女のことをより感じられる気がして。
こうして、一緒に居られることが何よりもうれしくてたまらない。

「……俺の方こそありがと。…ふふ、そう言ってもらえるとほんと、次へのモチベ上がるな。」

こういった楽しい時間は、彼女無しでは成り立たないものだから。
……景色を堪能して、その様を目に焼きつつも、同時に次は何がいいだろうかと気がはやる。

白亜 愛 > 「へへ。それじゃぁ次を楽しみにします」

さっきのやりとりが逆になってるのが楽しくて笑みが零れる。

(……今度は、私から誘ってみようかな?)

行く場所の選択肢は無いに等しいけど、自分で調べる、というのも楽しそう。
遊ぶのも、歩いたりするのも楽しかった。
なら、次もきっと楽しいだろうし、楽しくしたい。

そんなことを考えていたら、景色よりも彼を見ることの方が多くなっていた。

阿須賀 冬織 > 「おう! こっちも期待に応えれるようにまた色々と探しとくな。」

さっきの彼女と同じようなことを言ってこちらも笑う。
どこがいいだろうか。この島は狭いようで広く、それこそ色々な場所が、自然がある。
あれもいいかな、これもいいかな、と考えが広がる。

「…………ん?」

そうやって思考の海に浸っていると、ふと彼女がこちらを見ていることに気が付く。
どうかしたか?と思って首をかしげる。

白亜 愛 > 「へへへ。何でもないです。
春になったら、またハイキングして桜を眺めるのもアリかなぁとか思ってただけですよ」

そう言いながらにっこりとそちらを見つめている。

「……いつの間にか、結構時間が過ぎてますね。このまま夕日を眺めてくのもアリですが、冷えてきそうですしそろそろ帰りましょうか?」

転ばないようにしないとですね、と笑いながら猫のような伸びをする。

阿須賀 冬織 > 「花見…………いいな。うん、春になったら行こっか。」

といってもまあ、それは特に学生の自分にとってはまだまだ先の話だが。
……紅葉もいいけど、愛には桜の花の方が似合いそうだななんて考える。

「あー……。確かに、結構経っちゃてるな。……夕日も綺麗だろうけどそうしよっか。帰るのにも時間かかるし。」

時期的にも夜は寒く、折角の思い出なのだから次の日に風邪をひきましたなんていうのは出来れば避けたい。
そうだなと返事をして。帰りは、今度はこちらから手を差し出す。

白亜 愛 > 「はいっ!!」

彼の手をとり、横に並んで帰路につく。
色とりどりの木々を抜ければ、いつも通りの日常へ戻ってくる。

願わくば、この素敵な日々が続きますように。
そして、いつかきっと……。

阿須賀 冬織 > 手を離さないようにギュッと握って、新しい思い出を抱えて来た道を戻るのだろう。
一歩一歩。少しずつ歩めば、いつかきっと……。

ご案内:「紅葉の山」から阿須賀 冬織さんが去りました。
ご案内:「紅葉の山」から白亜 愛さんが去りました。
ご案内:「空中水族館「星々の庭」 昼の部」に貴家 星さんが現れました。
ご案内:「空中水族館「星々の庭」 昼の部」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
貴家 星 > 異邦人街には少々変わった水族館が建っている。
その名を『星々の庭』と言い、なんでも浮遊種と呼ばれる奇妙なもの魚を展示しておるのだとか。

「ふぅむ…………よもや異邦より来たれりもの……」

そろそろと冬の足音が肩を並べて参ろうか。という或日のこと、私はそんな場所の入口に立っていた。
恰も待ち人を待つようであり、真実その通り。手には入場チケットが2枚。先日福引で当たったものである。

「中々盛況な御様子であることだし、これは噂も真と期待できようか」

家族連れ、団体客、睦まじそうな二人組、種族も豊かに老若男女様々な人々が入場していく様を観て瞳を細める。
噂とは則ち島民向けSNSにて語られし言の葉。曰く『星々の庭内のレストランは美味しい』というもの。
美味いと聞けば興味もあるが、しかして別途入場料がかかるとなれば二の足踏むのが人情というもの。
私は妖だけど。

「いや、勿論浮遊種とかも気になるが……決して食い気だけではないのだが」

閑話休題。
ともあれと入場チケットがロハで手に入った以上はこうして訪うものであり、
それが2枚あったとなれば誰かしら誘うものであり、
今はしきり一人にぶつくさと呟きながらに待ち人を待つのである。
携帯を開き時間を確認すると、待ち合わせ時刻にはまだ少々の時間があった。

芥子風 菖蒲 >  
星々の庭、入場ゲート。
何時ぞやと出会った同じ風紀委員に誘われた場所だ。
此の異邦人街に立っているだけでも物珍しいが、少年は興味が無かった。
視野が狭い、というよりは単純に娯楽に対して関心が薄いのだ。
とは言え、誘われたら無下にするわけも無く、遊ぶ事自体は嫌いではない。

「此の辺りだっけな……。」

確か、待ち合わせの場所は此の辺りだ。
やはり、こういう場所には家族連れや、友人と遊びに来るような場所らしい。

「…………」

思えば、そう言うものとは無縁だった。
望郷、時既に遅し。余り思い出したくない、封じ込められた記憶が刺激される。
……いや、今は関係ない。
邪念を振り払うがごとく、強く首を振った。
それよも、待ち人は何処に……。

「……あ、いた。星、こっち。」

早速発見。
ひょいひょいと人込みをかき分け、近づいていく。

貴家 星 > 折しも常世渋谷ではハロウィンのイベントが催されている。
その所為か道行く人々の中には仮装をしたままの御仁も多い。
こうした時期は要らぬ騒擾も巻き起こるものではあるが──生憎と本日は非番である。

「学業も無し、委員も無し、であれば島生活を満喫するのが正しき学生生活というものであろうよ。
 学園祭も近いが……はて、其方は何事が出来するものか──」

尾をゆらゆらとさせながらに周囲の様子を見回していると、猫耳と尾を着けた化け猫仮装の女性に声をかけられた。
曰く、良く出来た耳と尾だけれどメーカーは?との問い。緩やかに笑んで自前であると告げる一幕を経て、
次には見知った声が近づいて来た。

「おお芥子風殿。ほぼ時間通りあるな、善哉善哉。此度は急な誘いを快諾して頂き感謝である。
 では此方がチケット。そして折角ゆえゆるりと内部を観覧するのも宜しかろうと思う次第」

『水族館の中に美味しいお店があるから序に参らぬか』などと誘った手前。直で食事は花より団子も転がり落ちる。
流石に風情が無さ過ぎようものであるし、何より先の言のように浮遊種に興味もあった。

「ちなみに其方は浮遊種について何か諳んじておられるかの。
 なんでも水が無くとも生きて行ける水棲種であるそうだが」

チケットを彼に渡し、いざいざと入場しながら訊ねを一つ放りもし。

芥子風 菖蒲 >  
「星。……うん、約束は守るよ。誘われたんだし、待たせるのも悪いでしょ?」

律儀と言うか、真面目と言うか。
何事にも真摯、ある意味頭の固い所があった。
星を見上げる青空の双眸は相も変わらず真っ直ぐで、表情も余り……。
いや、今日ばかりは彼女を見つけて、何処となく安堵したようにも見える。

「あんまりこう言うの、オレよく知らないんだけどさ。
 見てるだけで面白いのかな、魚とか。それとも、水族館ってそのまま魚とって食べるの?」

少年の脳内ではまさに生簀から直接魚を分捕り
目の前で調理される絵面が展開されている。
実際、最初の誘い文句が『食事』だったせいか
そう言うものという認識が強い。物を知らないものが仇となっている…!
が、食べる事は好きだ。ゲートの向こう側を一瞥した目は、空もやや輝いていたわ。
今すぐ魚たちは逃げて欲しい。

「空飛ぶ魚かぁ、美味いのかな。……ん。」

さて、まだ見ぬ味に思案を巡らせていたら
如何にも今日は目立つ格好をしてる人が多い。
異邦人街だから、という訳でもなさそうだ。
そう言えば、先ほども誰かが星に話しかけていた。

「なんか、星みたいな人多いね。やっぱり、皆異邦人なのかな?」

当然、ハロウィンなんてものは知らない。

貴家 星 > 「ぬはは、そうさな。約定を違えぬのは善きことに相違無し。
 見え参ることについては……うむ、まあ。私もただの魚であれば然程……ではあるのだが、
 この地は浮遊種を取り扱うものであり、また内部の食事処で食べる事も出来るそうな」

ゲートを通り際に情緒の類が団子のように転がり落ちる言葉が交わされる。
内部は忽ち鮮やかな調度の別世界。水が無くとも生きて行けるものどもであるだけに大掛かりな水槽は無く、
一見すると自在に煌びやかな魚が宙を漂うように視得、けれどもきちりと魔法障壁で区切られている。と云う塩梅。
昼の部はいわゆる熱帯魚系とでもいうのだろうか?色彩鮮やかな魚が多く、余り食用には適さぬよう視えた。

「味はとんと判らぬ。というか詳細も解らぬ。曰く空中を泳ぎ回る水棲生物の総称であるらしいが、
 その性質は様々であるらしいことくらいだな。完全に水が無くとも生きて行けるもの、水が無くばダメなもの。
 両生類や爬虫類の別種であるように見えて、その姿は真実飛び回る魚であると。
 けれどもまあ……存外期待できるものではないかなと」

館内を行き交う人々の風体もまた様々だ。
異邦人街に建っていることもあり、また時節が時節だからでもありだ。

「ん?異邦人街であるゆえ、それもあろうが今時分はハロウィンの時期もあろうもの。
 常世渋谷など連日仮装する者の姿で賑やかしく、青垣山の紅葉も斯くやの有様。
 芥子風殿は存じぬかな。ほれ、『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』という童の謳い文句など」

何やら難しい名前がつけられているらしい、鮮やかに真青の体色を持つ魚の飛ぶ姿を見上げながら、
芥子風殿に仮装模様を語り行く。

芥子風 菖蒲 >  
「やっぱりそう言う場所なのか……切り身でも泳いでるのかな。」

浮遊しているのは飽く迄魚であって切り身ではない。
かくも、色気より食い気なのは間違いなく
すっかり頭のなかはまさに飛び交う切り身パラダイス。
ついでに姿のまま踊り食いも出来ると来たものだ。
しかし、疑問に思うだろう。ん、と疑惑に眉を顰めた。

「……でも、飛んでたら食いづらくないか?」

飛んでたら食べづらいけど、そもそもそこからとりません。
お子さんはなるべく、魔法障壁の奥に進ませない様に
保護者一同、注意してください。切り身から離れろ。

「まぁ、行けばわかるか。……はろうぃん?全然。
 そう言うの、あんまり馴染みなくてさ。親とかも、やってはくれなかった。」

故に定着する事は無かった。
親御の話をするときだけは、少しばかり視線が泳ぐ。
いい思い出なんて、あっただろうか。
いや、今は良い。溜息と共に、思案を吐き出す。
其れよりも今は、彼女と楽しむべきだ。
それにしても、お菓子が貰える催し物と来たか。
そう、やはり食い気が色々勝る。じ、と星を見上げた。

「紅葉の方も、見に行ったりするの?ねぇ、それはそれとしてさ。」

「お菓子くれないなら、星にもイタズラしていいって事?」

……早速乗っかってお菓子をねだりに来た!

貴家 星 > 「芥子風殿は不思議な御仁よのう。異邦から参られたなら兎も角、ハロウィンを存じぬとは……
 あと飛んでるままは喰わぬと思われる。うむ、柵から離れるが宜しかろう」

故郷が山野の私ですらも聞き及んでいる事柄を、知らぬと断じる彼に眉根を寄せもする。
しかし以前、芥子風殿は父御に鍛えられたと言い、狸鍋など良く拵えて貰ったと仰っていた。
脳裏に浮かぶは山深い場所に住み暮らす親子の姿であり、概ね想起通りであろうかと太平楽に予想するのだ。
予想しながら彼の袖を引っ張るのは、よもや水槽ならぬ空槽に入り込みやしないだろうかと案ずるが故。

「うむ、行けば解る。浮遊種の様々も行けばわかるのではなかろうか。
 変わった色彩の魚以外にも……おお、あれを見よ。浮遊するウニではないか?」

溜息や思案、行き違う思案顔の諸々と経て、袖を引き彼方を指差す私に向き直る空色の眼差し。
成程ウニがお好きか。と思う間もなく、芥子風殿の問いは些かに場違いで、けれども時節に合っていた。

「む?むむむ……?うむ、まあ文脈的にはそうなろうものだが、生憎と今は菓子は無いのう。
 ほれ、パンフレットにも飲食物の持ち込みは御遠慮下さいとある。
 道中に軽食を扱う店があるそうゆえ、そちらを御利用くださいと云うことかと思われる。
 しかし悪戯……ちなみ、芥子風殿の思う悪戯とは如何に?」

芥子風殿の印象は実直。言葉に衣を着せぬが、其処に悪意は無きように思える御仁だ。
故に彼の行う悪戯とは?と気にもかかって夕焼けの眼差しが問い返す。

芥子風 菖蒲 >  
「……教わらなかったから。母親も、オレに興味はなかったみたいだし。
 親父も、武術以外の事はあんまり喋らなかったし、そんなにヘンかな……ヘンか。」

何も知らない、と言う訳ではない。
だが、未だに両親の事は大よそ理解出来なかった。
ただ、言われるままに言う事ばかりを聞いてきた。
どちらも、もしかしたら自分に興味が無かったんじゃないんだろうか、と思う位だ。
それ位、先達者達との関係は冷めきっていた。
ほんの少し、申し訳なさそうに首を振った。
既に蓋された、過ぎた事だ。ともかく、進んでいくとしよう。
一緒に歩調を合わせて、あっちへこっちへ。

「何だか派手な色をしてるけど、確かに飛んでるな。
 ……ん、ウニ?へぇ、アレか。なんか、オレに似てるなぁ……。」

秋の紅葉に負けない鮮やかな色が空を埋め尽くす。
素直に綺麗だ、と思うと同時に、あれを食べるのは手間がかかりそうだと思った。
指される方向の浮遊ウニ。なんだが、針山がそのまま浮いているみたいだ。
そう言えば、と少年は徐に自分の頭を触る。
茶色のツンツンチクチク。この頭もウニっぽい。

「なんだ、貰えると思ったのに。」

実に残念そうに目を伏せた。
そんなにお菓子食べたかったのか。

「……後で考える予定だった。」

悪戯。ノープラン。
勢いだけで行動するのは良くない(戒め)

「とりあえず、尻尾か耳を……あ、デカい。」

ふと、互いの頭上を通り過ぎるのは細長い胴体をうねらす派手な迷彩柄。
さながら、浮遊ウナギとも、ウツボともとれる巨体が悠然と空泳する。
……一体、耳と尻尾に何をする気だったのか。

貴家 星 > 「なになに知らずばこれから知ればよいだけのこと。何しろ此処は学園島だから」

所在なく、いや、どうだろうか?しかし私にはそういう風に芥子風殿が頭を振ったように見えた。
そうしてこの話題は一時これまでとし、私達の足は進んで行く。

「言われてみると確かに似ておるのう。なに私も癖毛ゆえ、目覚めは時折あのようになっておる」

ゆうらりと漂うウニ。
照明を受けて七色に煌めく小魚の魚群。
恰も大空の支配者であるかような姿を見せるのはエイの一種であるらしい。
和やかに会話しながら景観に瞳を細め、彼が髪の毛を触るに倣って此方も己の髪に触れる。

「そうしょげなくとも……いや、しかし芥子風殿の然様な顔は初めて見たやもしれぬ。
 考える暇は──おお、そうだ。軽食でも如何かな。
 暇は与えれど、そこで菓子代わりに馳走するゆえ実行は勘弁願いたし」

耳と尾に何かをする気だったらしく、残念そうな顔を見せる芥子風殿の背を私の尾が叩く。
その頭上を怪異とも見紛う巨体がすずろ流れて行く。
所詮魚、と思っていた気持ちはとうに消えていた。

「食事処に向かう前に軽食と云うのも中々妙な道行きかもしれぬが……
 まあまあ、折角訪ったのだしな。今日ばかりはカロリーを気にするのも野暮というものかと」

相好を崩しながらの道行きを経て至る軽食コーナーの様相は、所謂ファーストフード店のような雰囲気だ。
時節により変わる事もあるらしく、常に同じとは限らぬらしいが、今はそうであった。

「ふむふむ……いわゆるハンバーガー屋さんであるな。
 メニューを見るに特別な所はなさそうであるが、芥子風殿は如何なされるか」

歩きながら食べれることを重視しているらしいメニュー群に傍らを見た。

芥子風 菖蒲 >  
そうだな、そうだった。
そうだけど、此ればかりはどうしようもない。
珍しく、噴き出した。目を細めて笑みを浮かべた口元。

「それ、前も聞いたよ。」

前も聞いたよ。覚えてるよ。
わかってるけど、"親子"の事なんて、誰が教えてくれるのやら。
教えて欲しかったんだ、親から。もう出来ないから、口には出さない。
ある種、諦観めいた笑みだった。
尻尾で叩かれると、少しだけ背がのけ反った。
何だか発破でも入れられたような気がした。

「オレも何しても尖るから、髪の毛ウニなのかなぁ……えっ。
 星も尖ったりするの?耳は丸いけど……んー……?」

どの辺に尖っているのか。
耳も丸い。少年は実際、無遠慮なタイプだ。
徐に両手を髪の毛に伸ばしに来た。
触られると、なんかこう耳と一緒にもみくちゃにされるぞ!

「オレは余りカロリーとか気にした事ないけど、いいよ。行こうか。」

悪意はない。決して悪意はない。
太らないし大きくならない。
全国のダイエット勢に謝ってほしい。
そう言う訳でてくてく、と後ろへと付いてきたのはハンバーガー屋さん。
成る程、此れなら確かに食べ歩きしやすそうだ。
ふぅん、と声を漏らしてメニュー群を同じく見やった。

「エアフィッシュバーガー……タルタルフィッシュ……ダブルフィッシュ……どの魚を使ってるんだろ?」

気になる。現地直入(現地ではない)産。

「オレ、エアフィッシュバーガー三つくらいで行こうかな。星は?」

軽食とは。

貴家 星 > 「うむ、前にも言った。大事なことは何度言っても良いもの……かと思う」

煌びやかな館内で珍しく破顔してみせた芥子風殿。
よもやはたいた尾がこそばゆかったのだろうか?いや、それは流石に違いそうか。
ともあれ、少なからず笑顔であることは善い事かと思った。それは何に違うことも無い。

「うむ、中々どうして毛並みが暴れるものでな。尤も私は化け狸。
 怪狸であるゆえそりゃあ多少は化けようさ──」

丸い耳も縞模様の尾も、本当は少し違う。
見目の話に些か得意気に唇を曲げ、次にはへの字に結ばれた。
芥子風殿の手指が無遠慮に髪を梳き耳に触れるからである。

「………ふ、ふふふ。これこれ芥子風殿。斯様に触られたら些か、面映ゆうものであるよ」

運動や武芸に親しんでいる事が知れる手指の様が、不慣れに不躾に触れる様は中々少し、面白い。
結ばれた口も綻ぶもので、傍から見れば奇妙な図であったやもしれない。
だが、誰も彼もが鮮やかな魚達に目を奪われていたから不都合はなかった。

「ほら、その辺にしてくださらぬと。今は軽食を……魚の由来は不明であるなあ。
 少なからず食味が良いから使われておるとは思うが……み、みっつ?
 ……健啖家よの……。では此方はダブルフィッシュで」

そうした様子のままメニューを視、彼の問いに頷いてカウンターへと向かう。
カロリーの話題は置いて行こう。この先ついてこれそうもない。

『ナニニシマスカ』

なんと店員は絡繰り細工──ロボットであった。
卵型のボディに手足が生えたような造形をしており、硝子面の奥にちかちかと煌めく……瞳?がある。
それが発言の度に明滅し、恰も意思があるかのように──

『ナニニシマスカ』

いや、意思あるんだろうかこやつ。
私の背景に些か宇宙が広がり、その星の海を先程の迷彩柄の巨体が泳ぐ姿を想起する。

「え、ええと……フィッシュバーガー3つとダブルフィッシュバーガーを一つ」

ともあれ、注文をするとロボットは無言で動き、よどみない動きで注文を熟し、
そしてトレイにハンバーガーを4つ乗せてくれた。
それに代金を支払い、芥子風殿の元へ戻ろう。

「トレイや包み紙は各所に置き場や専用の屑籠があるそうな。
 食べながらゆるりと参ろうか」

芥子風 菖蒲 >  
「そうかな……そうかもね。」

忘れてはいけない事。この暖かさは、忘れ難いもの。
自分が護りたいものなんだ、こういう他愛のないものだ。
漸く見つけた"居場所"なんだ。
それを強く自覚させてくれる彼女の言葉なら、何度言われても大丈夫だ。

「化け狸、ってそう言うものなのか?よくわからないけど……。
 つまり、星はウニみたいに本当は髪の毛がツンツンしてるのか?」

違う、そうじゃない。
世の中の化け狸と狐とその他畜生に対する偏見が強まった。
彼等は尖るらしい。そんなわけあるか。

「おもは?……恥ずかしいのか。ごめん、気をつけるよ。」

如何やらそういうものらしい。
流石にそう言うつもりは無かったし、恥ずかしいとも在れば気をつけよう。
耳や髪の毛を触るのは良くない事。覚えた。
けど、触り心地は良かったな。ちょっとだけ、名残惜しそうに手を離す。

「そうかな?オレはもっと食べれるけど、三つがギリギリ手に持てるかなって。」

軽食とは。
かくも、壊れたように繰り返す謎ロボットから受け取ってきた星を見やる。

「ありがとう、星。じゃぁ……」

早速と言わんばかりに包みを取り、一つを口に咥え、もう二つを両手に持つ。
此れこそ、食べ歩きハンバーガーの構え。
行儀が悪い。包みは専用の屑籠にポイし、もごもごと口にハンバーガーを食べ進める。
フレッシュな野菜のシャキシャキとした触感と、フライとなったしっとりサクサクな魚の身が溜まらない。

「……ふま。」

食いながらしゃべるんじゃない。
もごもごと食べ歩きながら、ふと視界に留まったのはニュルニュル浮遊する黒い魚。
ウナギらしいけど、頭が三つある。なんだあのウナギ。
近くの看板に、丁度その浮遊魚の説明が乗っている。どれ、と視線を向けた。

「……ふまへろす。あふぇ、ふぁんはーばーのばいりょーだって。」

食いながらしゃべるな。

貴家 星 > 「ああ私の髪質の話であるよ。化け狸は……ほれ、化けるものであるから
 今の私の姿は本当の私の姿とはすこうし違う。ということであるよ。
 ……あ、元の姿と顔が違うとか、そういうことではないぞ」

髪や耳を触られながらにそうした会話をしたのが注文の前。
本性態は早々見せたいものでも無く、言葉を切ってカウンターへと向かっていた。

「──いやなに、童でもあるまいに、人前で頭を撫でられるのはな。
 幸い注目する者もおらなんだが……ってもっと食べたら後が困ろうに」

今の話。
事も無げに軽食の意味を放り捨てる様子に苦笑をし、かくして今は歩きながらの食事模様と相成るのだ。

「も?(※特別意訳:そう?)」

"魚"を用いたハンバーガーの味や良し。
白身で癖が無く、凡そ万人に好まれよう味だが、はて如何な魚類かは判別がつかぬ。
とは言え店で出している品に間違いがあろう筈もなかろう──と思うので、
私は些か御行儀悪く頬張り、御機嫌層に鼻を鳴らす。尾も右へ左へ和やかに揺れるもの。
最中の芥子風殿の言葉にも応じ(?)平穏にしていると、何かがにゅるりと浮遊している。

「…………」

芥子風殿が釣られたのかその説明を見、そして伝えてくれる。
此方も倣うように看板を見、それがウナベロスなる生物である事を知った。
何でも浮遊種でありながら水辺を好み様々な所に生息し、存外人懐っこく、それでいて食味も良いと。

「……成程のう。養殖も行われているそうだ。美味しいものがお手頃に変えるのは善き事に思う」

もぐもぐごくん、と口を空にし感慨深げに頷く。
何れ隆盛を経て水族館の外に店舗展開する日が来るのかもしれない。

「……おや、芥子風殿。今度はふれあいコーナーが」

食事しながらの道すがら。次に目に留まったのは『ふれあいコーナー』の看板だ。
SNS曰く、主に昼の部に催され、危険性の無い安全な浮遊種と触れ合える。との触れ込みである。

「折角だし見て行かぬか。何か面白そうなものを触れるやもしれぬ」

トレイを回収台に置き、空いた手で彼の腕を引いて足を其方に向けるものなり。
しかしてその先に展示されていた生物は──

貴家 星 > 浮遊海鼠
貴家 星 > ──なのであった。