2021/02/16 のログ
ご案内:「拘留所」にさんが現れました。
ご案内:「拘留所」に神代理央さんが現れました。
> ――――……そろそろ、かな

ここ数日、尋問に来る者の様子が変わってきたことを焔は感じていた。
だからこそ、助けるなら近いうちに、とボスに伝えておいた。
自分が酷く害されてからでは、無茶すぎる作戦でも実行するであろうことは予想できるから。

だから、従順に。
弱い、何もできないことを装って。
情報を垂れ流し続けてきた。

けれどそれも怪しまれ始めている。
どうしても、騙し続けるのは無理が出るものだ。

何故かはわからないが、今日は湯浴みが許された。
とは言ったものの外されたのは体の拘束具のみ。
眼はやはり塞がれたまま…声音から判断すれば女性に身体を洗われた。
閉じ込められていた汚れと匂いが落とされただけでも、女としては嬉しいが。

これが処刑される前の禊というのなら、それはそれで笑えない。

とはいえ。
さて今日は誰が来るのだろう。
できれば、あの『悪魔』は来ないで欲しいのだけれど。

神代理央 >  
そんな少女の耳に、何時もと同じ様に牢の扉が開く音。
重々しい金属音と――何時もと違う、革靴の音。
そして、キャスターを引く様な、からからと渇いた滑車音も耳に入るだろうか。

「やあ、四蔓。元気にしていたかな?」

尊大と傲慢さを、穏やかさで押し隠した様な声色。
"優等生"の皮を被ったかの様な、涼やかな声と問い掛け。
一度尋問――と言えるようなものでもなかったが――を受けた彼女なら、直ぐに分るだろう。その声の主は――

「私も暫く此処には来れていなかったからな。部下が無礼な事をしていなければ良いのだが」

かしゃん、と少女の近くで滑車音が止まる。
足音も止み、少女の真正面から穏やかな声が紡がれているのだろう。

> 「…………」

最悪だ。
それが、扉が開かれて聞こえてきた声に対する、感想だった。

名前もあまり呼ばれたくはないが、反抗心は見せない。
どちらにしても、湯浴みの後は再び新しい拘束衣を着せられたばかりだ。
何も抵抗できる手段などあるはずもない。

「元気。…無礼な事?…特にされてない。私がいい子だから」

従順であることは間違いない。
質問には答えるし、反抗する様子もない、と報告は既に上がっているだろう。
拷問、尋問とは、何かを強く隠す者に対して苛烈になるものだ。

従順であれば、それは単純な質問に落ち着いていくのは自然だろう。
それが、嘘交じりとはいえ。

「…今日は、何。もう色々話したと思うけど」

唯一自由になる口を開き。
尋問で聞かれるようなことは大抵聞かれた。
なら、この『悪魔』がここに来たのはどういうわけか。

神代理央 >  
「いい子、か。確かにな。反抗する事も無く、此方の質問に従順。
捕虜の見本の様だな。他の者にも見習わせたいくらいだ」

彼女の言葉を肯定する声に、不機嫌、とか上機嫌、とか。
そういった感情は感じられない。
事実を確認し、羅列する事務的な声色。

「しかし、貴様の言う『蛇』とやらには一向に辿り着かぬ。
貴様の証言に基づいて幾ら違反部活を叩き潰しても、情報は微塵も出てこない。
それどころか、私の部下…特務広報部を狙った襲撃迄相次ぐ始末。
我々の質問の仕方が下手なのか。それとも、他に原因があるのか。」

声色は変わる事は無い。
視界を奪われた少女にとっては奇妙な程に、少年の声には感情が灯っていない。

「…まあ良い。今日聞きたい事は其処まで難しい事では無いからな。既に聞かれた事かも知れないが、私からも直接聞いておこう、と思ってな」

「『蛇』の本拠地。予備の拠点や避難場所も含めて全て。
我々が突入し、貴様達の組織に確固たる一撃を与えられる場所。
それと、首領の名前、性別、身体的な特徴まで」

書類を読み上げる様に『質問』が投げかけられる。

「それだけだ。その情報を元に『蛇』の壊滅と首領の捕縛に成功した暁には、貴様の釈放と『表』での不自由ない生活も約束しよう。
悪くない条件に、簡単な質問だろう?答えてくれると嬉しいがね」

> 「…どうせ、抵抗する手段無い。なら、答えた方がマシ。
痛いの何て、誰でも嫌いだし」

僅かに棘のある声で、簡潔に答え
見つからないという言葉には僅かに顔を上げて。

「蛇って、賢いんだよ。蛇は、私が捕まってることを知ってる。
だから、今ある拠点を引き払って、新しくそこを使った違反部活が、潰された。
きっと、それだけ。―――――?」

嘘の予想を告げる。
本質は…『蜥蜴』にとって邪魔な組織を体よく潰させるために情報を流しただけだ。
それを基にでたらめを言っているだけ。

ただ、続く質問には首を僅かに傾げる。
それは誰しもが知りたいこと。
だから、幾人かから受けた尋問でも、同じことを聞かれた。
それを、条件を良くするからまた話せ、というのもおかしな話だ。

「……。約束?、意外。情報を吐き出し終わったら殺されるのかと思っていた。血も涙もない『鉄火』だから」

けれどそれでも…逆らう訳にはいかない。
今はただ、生きることだけを優先する。

「……、これも、もう誰も居ないかもしれないけれど。
拠点は、落第街の―――――」

落第街やスラムに、明確な住所が付けられている場所を焔はあまり知らない。
だから、周りの建物だとか…『表』からどう向かうかを伝えるしかないが。

訥々と、練習したかのように。
本拠地や、その予備の拠点を伝えていく。

「首領の名前…、私は、通り名しか知らない。
それと、二人いる。『羅刹』と『神楽』、男と女。
体格はそれぞれ、『やせ型』と『豊満』」

体格などに、嘘と本当を混ぜる。
羅刹というのが首領であることは本当だ。
ただし、蛇ではなく『蜥蜴』の、だが。
神楽はでっちあげ。単なる目くらましの名前。
嘘を吐くには、真実の中に混ぜるのが一番である。

「…報告書とかに、書いてあると思うけど」

最後に、不思議そうに。
これらは何度か話したことだ。
嘘がバレている様子も無いため、これはまだ『信じられている』情報だろうと

神代理央 >  
「…そうか。成程、良く分かった。報告書にも記載されている通りだな。それに、貴様の言う理由も納得出来る。
『貴様が捕まっている事が知れているから、引き払っている』か。
だから、拠点の場所を話す事も別に躊躇いが無い。報告書の通り、聞いた事には従順に答える。躊躇う素振りも無ければ言い淀む事も無い」

少女の答えた内容では無く。
答に至るまでの態度。時間。表情や声色の変化を、観察する様に眺めていた。その視線は、少女には決して見えなかったかもしれないが。

「血も涙もない、か。そう思われているのなら重畳だ。とはいえ、私だって人間だ。無抵抗な人間を殺す事には、多少の躊躇いだってある」

かしゃん、と金属が触れ合う音。
そして、こつり、こつり、と少女に近付く足音。

「しかし私は心配性でね。こうして従順な貴様の答えを信用していない訳では無いが……つい"答え合わせ"がしたくなる。
ところで…貴様が話した違反部活の連中は、実に悪辣でね。
生徒達に有害極まりない薬品を、表に流通させようとしていた。
実に嘆かわしい事だ」

そこで漸く、少年の声に感情が灯るのだろう。
それは、少女には直ぐに理解出来る。きっと、嫌悪感を催すものだから。
少女に紡がれる言葉には――傲慢と愉悦が、纏わりついている。

「今日は押収した物を幾つか持ってきたんだがね。中々どうして、厄介な代物ばかりだ。

例えば…此れは、大脳上皮に過剰に作用して催眠状態に陥らせる。ふむ、自白剤の亜種かな。

これは……おお、これは怖い。製薬の際に催眠系の魔道具を粉末状に加え、疑似的な飢餓状態に陥らせる……悪辣だな。

こっちは…ああ、此れはよくある薬だな。卵胞ホルモンに神経過敏の薬物と睡眠薬の亜種を混ぜたもの。媚薬、というカテゴリーかな」

すらすらと台本を読み上げる様に言葉が紡がれる度に、かしゃん、かしゃん、と金属が触れ合う音。
――少年が持ち込んだ小さなカートに、無数の錠剤や液体。注射器。そして、水が注がれたピッチャーと空のグラス。
それを鳴らしている音なのだが…少女には、どう伝わるだろうか。

「……注意事項…ああ、成程。これ等は全て精脈への注射で使用する事。口腔などから直接摂取は厳禁、か。注射の方が効き目がありそうだがね。量の問題かな」



「……ところで。喉が、渇いただろう?」

> もう慣れた暗闇の中。
鋭敏になった耳が、嫌な音、言葉を取り入れてくる。

「―――………」

こうなるか、と。一つ息を吐く。
相手が言う薬物のうちいくつかは、娼婦時代に使われたことのある効果のものだ。
けれど、その時のことは思い出したくもない。
嫌悪する『男』に媚びを売り、餌を求めるひな鳥のように舌を伸ばし、発情した獣のように腰を突き出していたなど。

だから、多少は耐性があるだろうが…薬というのは、それだけで耐えられるほど優しいものではない。
効能を知っているからこそ…それを飲んでしまえば、まともな…自分の意志に沿った受け答えができないだろうと思う。

「…。答え合わせ。そんなものまで使って?
…やっぱり。『解放するとは言ったが、無事でとは言ってない』『不自由かどうかは本人が決めるため、本人が自由だと言うなら、それは自由だ』
……ってことね。」

こんな場面で嘘を吐く様な相手でも、プラシーボ効果なんてものを狙う相手でもないだろう。
使うなら、本物を使う。そういう相手であることは既に理解していた。

そしていくら薬漬けにしたとしても、『生きている』なら無事というのだろう。この悪魔は。
散々聞いて辟易した、『正義』の言い分だ。

「…喉は乾いてない。さっきシャワーも浴びたし、乾燥もしていない」

はっきりと、拒絶。
情報は吐くが、それを飲む理由がない。
ただし。
その程度でこの相手が止まるとは思えない。

(……大丈夫だよ、ボス。…私が私でなくなっても、恩は返すから)

『あちら』から低い声が聞こえるが。
それに甘えるわけにもいかない。
彼の目的を果たすため、足を引っ張るわけにもいかないから。

神代理央 >  
「………ふむ?勘違いをしているのではないかね。
私は約束は違えぬよ。"答え合わせ"の結果、貴様が真実を話していたのなら、私が持ち得る全ての手段を使って貴様を治療し、万全の状態で解放する。解放した結果、貴様が再び私に刃を向けようと構わない」

愉快そうに笑いながらも、その言葉に嘲りや侮蔑は含まれていない。本当に、少女が薬物によって廃人と化したとしても、資金力に物を言わせた治療が、きっと施される。

「そして、貴様が嘘を話していても、治療はしてやるとも。
薬物中毒か廃人の儘にしておくなど…"可哀相"じゃないか。
治療して、投与して、治療して、投与する。それを繰り返すだけだ。
最後は必ず"治療"してやろう。私にだって、溝鼠にかける情けと気紛れくらいは持ち合わせているさ」

そう。少女はきっと治療されて"しまう"
忌まわしい記憶を。薬物による辛苦と享楽を。何度も何度も――

「おや、そうかね。ならば別に冷水は必要ないな」

ところが、必要無いと告げる少女の言葉に――あっさりと引き下がる様な言葉。
グラスを取る音。水を注ぐ音。そして、ナニカを、混ぜ合わせる音。

「ところで、私は違反部活を狩るばかりだから余り接点は無いんだが…やはり、友人や知人をこういった薬物で失いかけた、或いは失った方々も居てね。そういった方から、風紀や公安に陳情書……いや"オーダー表"を戴く事が有る。
『連中に、同じモノを飲ませて、同じ目に合わせてやってくれ』とな」

ちゃぷ、と水音が近付く。
少女の顎に、手が添えられる。

「……これは、私からではない。貴様達が散々食い物にしてきた者達からの"奢り"だ。
味わって飲みたまえ。オーダーは溜まっている。幾らでも、何度でも飲ませてやるさ」

そして、少女の唇にグラスを近付け、無理矢理飲ませてしまおうと――グラスが、傾けられる。
首を振る。或いは、唇を閉じ続けていれば、きっと抵抗は出来るだろう。その程度の力しか、込められていない。

> 「それが聞けてよかった」

結局は同じなのだ。
いくら嘲りや侮蔑が感じられなくても。
こいつは。こいつが率いる組織は正義などとは程遠い。
むしろ、方向が違うだけで…性質としては落第街の更に暗部に近い。
それが『正義』を騙っているなど、やはり吐き気がする。

「――そ。…そうやって『責任転嫁』しないと薬も使えないなんて」

当然、拒否する。
名前も知らない相手から承った『オーダー』など知った事か。
薬物を投与するのは自分の意志ではなく被害者から頼まれたから仕方なく、などと予防線を張る『正義』などに簡単に口を開かせてやるものか。
無理矢理投与する気が無い力なら、唇を引き結んで拒絶する。

傾けたグラスに入ったクスリ入りの水は、ぼたぼたと垂れていくだろう。

「…ぷっ。ぺっ、こんなことしなくても。まだ隠している情報ぐらい、ある。
ぎりぎりまで隠してたけど…、こんなことされるなら、治療されるとしても私は私で居たいから、話す。
きっと、聞かないと…後悔するよ?」

唇についた水を振り払うように息を吐き。
情報を餌に…薬の投与をやめさせようとする。
治療があるとはいえ、それがまともな治療か。
あるいは、治療があっても…多量に薬を投与された後に完全に戻れるとは限らない。
医療が進んだとはいえ、薬が影響するのは主に脳や下腹部の奥底だ。
完璧に治療できると、保証できる理由もない。

…ボスからの報告では鉄火は殴り合いなど出来そうもない少女じみた少年。
なら、少しは抵抗も続けられるだろうが…最後には呑まされてしまうであろう
であればそれを少しでも引き延ばしつつ…ボスの計画を進めようと。

神代理央 >  
「まあそう言うな。生徒の声に応えるのも委員会の務めだ。
貴様をこうして厚遇しているのも、偏に『表』の目があってこそだ。
宮仕えの辛さというものを御理解頂きたいものだがね」

責任転嫁、という侮蔑には愉快そうな笑みと言葉。
強ち間違いでも無いがな、と言葉を締め括る。

さて、少女が唇を強く引き結んでいれば、拘束服を濡らしながら水は滴り落ちていく。
尤も、抵抗されれば直ぐにグラスは少女の唇から離されるのだろう。
抵抗される事も、承知の上だと言う様に。

「そうか。では、その隠している情報…とやらが、我々にとって有益であり、真実である事を願うばかりだ。
私だって、こんな事はしたくはないのでね」

グラスがカートに置かれる音。
そして、少女が未だ情報を持っている、と告げればそれを促す様な言葉を紡いで――

「……まあ、正直に話してくれる事を期待しているよ。
"そろそろ"だろうしな。遅効性、と聞いていたし」

腕時計に視線を落とす仕草は少女には視えないかも知れないが。
言葉の意味には、気付くだろうか。

「シャワーは気持ち良かったかね?"そういう薬"も、仕込んでおいたのだが」

> 「…………」

そんな立派なものか、と。
眼が自由なら睨みつけていたことだろう。
唇についていた水滴を吐き、拒絶した直後。

『こんなこと』をしたくないという相手の嘘を見抜くのが遅れたことを後悔する。
…どちらにしても、シャワーから逃れる術も無かったのだが。

「…………下衆……………」

飴の中に毒が仕込まれていた、というわけだ。
処刑ではなく、下ごしらえだった。

思考がぐらりと揺れるのを感じる。
どのような薬かはわからないが…私から『真実』を引き出すためのものであることは確実だ。

だが。

「――――――――――っっっ」

がり、などという音では足りない。
唇を自ら引き裂かんばかりに、下唇をかみしめる。
一瞬でも長く、正気を保つために。
ぼたぼたと血が垂れる感触も、痛みもどこか遠い。

かなり、思考に靄がかかっている。
睡眠に入る前の、心地よい浮遊感のようなものが頭を犯してくる。
それに、支配される前に。

(ボス。くすり、いれられた。…でも、……信じて、わたし、を)

盃で伝えるとともに、支えを心に持つ。
かくん、と首が垂れ、びくびくと身体が震えはじめるも。
糸のようにしか残っていない、正気を何とか保つ

神代理央 >  
「……そう、こんな"面倒"な事はしたくはない。
落第街そのものを焼き払ってしまえれば、どんなに話が早い事か。
『秩序』を守れぬ連中すら、最後に奴等を守るのが秩序など。
何と面倒な事だろうな。私が此の島の――」

…それ以上は言葉にしなかった。
どうせ、少女に聞こえているかどうかも怪しい事だし。
何より、今はその言葉は必要無い。

「…さて。今なら、オーダーのドリンクも飲めるだろう。
どれを混ぜたか、もう覚えてはいないが…まあ、死にはすまい。
ああ、心配しなくても良いぞ。シャワーに混ぜたのは、催眠剤と筋肉弛緩剤だ。効き目もそう長くはない」

逆を言えば、薬混じりのシャワーを少女に浴びせ続けていたのだが。些細な事だろう、と言わんばかりの声色。

「……貴様の湯浴みに付き添った者達には、後で別途に報酬と治療を施さねばな…。依存性も中毒性も無い、とは聞いているが……しかし、まあ。大事な部下であるしな。ケアくらいしか出来ないのが歯がゆいが…」

皮肉な事に、少年が部下を思いやる気持ちだけは、きっと少女を率いる者と同じなのかもしれない。
呟いた独り言は、それだけ真摯なものだった。もう少女には伝わらないかも知れないが。

「さて、喉を潤したらきびきび喋ってくれたまえ。私も次の仕事がある故な」

そうして再び。
先程少女が拒絶したグラスが、再び近付けられて――少女の唇に触れて、傾けられる。

> 身体に力が入らない。
指の先にすら力が回り切らない。
正義の支配者がなにやら言っているが…歪んで音が聞こえる。

「――――――――――は……………………」

浅く、息が漏れる。
鼓動が不自然に遅く、落ち着いている。
心というものに作用した薬が、勝手に言葉を紡がせようとする。

顔を上げられ、グラスの中身を注ぎ込まれても。
唇は先ほどよりも緩い。

(―――――――――――『  』―――!!)

だが。
そんな時だからこそ、頭に直接叫ばれるのは、酷く効く。

「―――――――……、ぁ……、ぼす、の、なまえ、は…らせつ、…、か、ぐ………ら。
……、……ふたり、で……「……」に、はんこう、する、ため、の、大きな、作戦を、指揮、する……、…そ…、っ、は…………」

ぐらぐらと頭が揺れる。
まともに言葉が出せているかも怪しいが。
か細い言葉で告げたのは、日付。

強い薬を立て続けに叩きこまれ、脳が溶けるようだ。
強く詰問されたなら、折れていたかもしれないが。
『盃』の気付けが効いた。

「ぅ……、…っ、げぇ…っ」

クスリの多量接種によって、脳が溶ける感覚を味わうという異常事態に、その場で胃液が逆流する。
げほ、げほ、と咳き込み。
血が垂れる唇を半開きにしたまま…少しうつむき、動きを止めて。