2021/11/24 のログ
ご案内:「夜の街」にダスクスレイさんが現れました。
ダスクスレイ >  
夜を往く。闇など恐ろしくはない。
この手に閃刀『虚空』がある限り。
この私に敵などなのだから。

道行く者が振り返る。
夜とはいえ、そして落第街とはいえ。
大通りを堂々と違反学生が歩いているのだ。
さぁ、呼びたいなら風紀を呼ぶがいい。
何ならその手に武器を携えて来るがいい。

どう足掻こうと貴様らは無力だ。

ダスクスレイ >  
今までの私なら。
落第街など来ようとも思わなかった。
だが、今の私は恐怖を克服している。
強者とは恐怖せぬもの。

私は魂の解放者、斬奪怪盗ダスクスレイなのだから。

屈強な男と視線が合う。
仮面なのだから視線が合うというのもおかしな話だが、確かにそうなった。
相手は視線を逸して舌打ちをした。

そうだ、弱者は頭を垂れろ。
私という存在を恐れろ。
それが私の心を高揚させる最大の礼となろう。

ダスクスレイ >  
また銀行でも襲うか。
あるいは、金持ちの家にでも盗みに入るか。
どちらにせよ、世間は私という存在を面白がるだろう。

これはエンターテイメントだ。
お前らのつまらない世界を騒がせてやっているんだ。

それを理解しない奴を何人だって斬った。
私の正気を疑う者も大勢いる。
だが、正気でないのは。

貴様らだ。

日常に埋没し、社会の歯車となり、人の顔色を見て斟酌する。
二束三文のダイム・ノヴェルよりつまらない人生を漫然と生きる。
貴様らこそ狂っているんだ。

ダスクスレイ >  
フラフラと目の前をボロボロの少女が歩いている。
目でも悪くしているのか?
それともラリっているのか。

少女は私にぶつかって転んだ。
どうやら悪いのは両目らしい。
哀れな。

這いつくばったまま。
状況が理解できず木を削っただけの杖を探す彼女の顎を。
刀の柄尻で引いて強引に私のほうへ向けた。

ダスクスレイ >  
「哀れなる少女よ、お前の幕を引くもいっそ慈悲」
「盲いたまま生きるのは苦しかろう……」

男も女も。大勢斬った。
だが子供を斬るのはなかなか不慣れ。

「はて、どうやって斬れば子供は苦しみなく死ねるんだったかな……」

少女がようやく剣呑な気配を察して、倒れたまま後ろへ下がる。
だがお前に立ちはだかる存在を。
お前は知覚できまい?

私の恐怖の伝説を語り伝えない者に生きる意味はあるのか。

ハハハ、愉快愉快。
周囲が息を呑む音が聞こえるかのようだ。

ご案内:「夜の街」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
芥子風 菖蒲 >  
街を吹き抜ける一陣の風。
夜の街を吹き抜ける一陣の黒い風。
黒衣をはためかせ、青空の様に青い軌道が宵闇に描かれている。

少年はとにかく急いだ。
緊急命令を受け、現場に急行。
何でも違反者が大通りを闊歩してるとのこと。
異能をフル活動し、しなる筋肉に建物から建物へと飛び移りとにかく急いだ。
急いできたので正直確認など微塵もしていなかった。
ただ、大通りへと突き抜けた瞬間、そんなものは一目でわかる。

「……!」

両の青空を見開き、風が黒衣を瞬かせ一直線。
その仮面目掛けて、漆塗りの鞘を突き出し全身で飛び込んだ。

ダスクスレイ >  
折れず、曲がらず。一直線に来る雷鳴。
それがコイツの第一印象だった。

突き出された鞘を魔導金属拵えの鞘で受け止める。
虚空はこの鞘以外に収まらない。
鞘走るだけで鞘を斬るからだ。

さて、今はそんなことはどうでもいい。
ショータイムだ。

「……正義の味方かね?」

鼻で笑うと後方に跳んで納刀されたままの刀を構えた。
くだらない。正義などと。
この街で何の意味も持たない。

「自殺志願者でもあるのかな」

芥子風 菖蒲 >  
鞘と鞘がこすれ合い、金属音が大通りに響く。
飛び退いた仮面の男から目を離さず、刀を振るえば刃が鞘を飛び出した。
宵闇を吸い込む鈍色の刃。寸分迷うことなく、両手で柄を握り締めた。

「アンタは逃げなよ。オレから離れるように、早く」

結果的に背後に庇うようになった少女へと警告する。
盲目などと、今は気づいている余裕は無い。
人を庇いながら戦える程器用じゃないし、目を離せば"やられる"と直感が警告する。

「正義の味方……?」

低い声音が訝しんだ。

「さぁ、よくわからんないけど、アンタの"敵"なのは間違いない」

正義を語れる程、其方側に立った覚えはない。
たった一つ明確なのは、違反者(はんざいしゃ)の敵だと言う事だ。
全身を包む青い光が揺れ、一直線に黒の風が踏み込んだ。
その仮面を叩き割らんとするかのように、一閃の唐竹割り。
当たればただでは済まないが、加減できる程器用でもないし、何より加減できそうな相手じゃない。

ダスクスレイ >  
敵。敵ときた。この私の。
斬奪怪盗ダスクスレイの。敵であると。

「わかりやすくていいじゃないか」

刃を抜いて、切っ先をぶつけた。
防御というにも雑な、軌道を逸らすだけの横振り。
普段ならそれで相手の刀は斬れる。

だが。

凛ッ!と金属音が鈴のように鳴り響くに留まる。
ほう、虚空で斬れぬ刀。面白い。

私の敵である資格を得たぞ、少年。

「簡単に死ぬなよ、興が削がれる」

左右からの袈裟斬りと逆袈裟、交互に最速六連閃。
格子状に敵を切り裂く、ファフニィル・グレイシア。

芥子風 菖蒲 >  
一擲を込めた一撃は見事に受け流された。
甲高い金属音と火花が、互いの間で弾けて混ざる。
宵闇を照らす、文字通りの火蓋が切って落とされたのだ。

「(コイツ……何かヤバいな……)」

格好はふざけてるけど、出来る。
同じ剣を握るものとして、一太刀交えるだけでその太刀筋の素晴らしさを理解出来た。
嫌な雰囲気だ。あの男も、あの刀も。
直感的だが、特にあの刀はとても危険な匂いがする。
鉄すらなますにする刃が、少年の刀を斬れなかったのは名刀であるが故か、或いは……。

「……!」

刹那、左右を迫りくる斬撃の応酬。

「早……!」

太刀筋は見えないが、異能で強化された体が動く。
全て避けきれないなら、"無理にでも攻める"。

「ッ……!」

袈裟に刀身を構え、逆袈裟を撫でるように受け流す。
逆サイドは、受けるしかない。被弾は"最低限にする為に"。
刀で言う茎、なるべく付け根で斬られれば真っ二つにはならない。
それでも逆サイドは肩が、足が、腹部が、鋭い痛みと共に鮮血が舞い散る。
擦れあう金切り声はまるで悲鳴のようだ。痛みと苦痛は、奥歯と一緒に噛み殺す。
だが、まだ倒れない。仮面と青空が交差する超至近距離。
その足元から頭頂部に沿うように、空を薙ぐように刀身を強引に斬り上げる。

ダスクスレイ >  
確かに斬っている。
並の人間の覚悟なら。
既に戦闘不能だ。

だが。こいつは覚悟の量が違うらしい。
覚悟さえしていれば。ヒトは斬られても戦える。

強引な斬り上げ、人間が二本の足を持つ以上。
効率的な破壊を齎す斬撃だ。

ひらりと後方に跳躍して攻撃を回避する。
勢い余って遠巻きに眺めていた男の屋台を巻き込んで着地。

「!!」

胸元が斬れて血が滲んでいる。
確かに回避したタイミングだったはず。
魂……そうとしか思えない。面白い。

中華の屋台だったのか、花椒の匂いをぶちまけたその場で。
近くにあるモノを斬る。

篆刻の看板が、柱ごと少年に倒れ込んでくる。
虚空での戦闘を楽しむ上で欠かせない。質量攻撃。

芥子風 菖蒲 >  
痛みが、苦痛が、まるで足かせの様に地面から生えてくる。
どくどくと半身の至る所から血が滲み出て、全身の熱迄抜け落ちていくようだ。

「ハァ……ッ!……ッ、ハァ……!」

息が途切れる。
この痛みの鎖と重い瞼に身を任せれられるならどれだけ楽だろう。
知っているとも、倒れる訳にはいかないって。
此処で倒れたら、本当に役立たずだ。自分のやるべきことを精一杯やる。

「ッ─────!」

それが、己の存在価値だ。
息を整え、覚悟を以て強く柄を握る。
此方とて突進しか能の無い馬鹿じゃない。
仮面の男が飛んだ矢先、翻す黒衣から取り出したのは鉄針。
針と言っても小さな杭の様に太く、投擲の為の武器では在るが……。

「あ……」

ごとり。
鉛の塊が、真っ二つになって地面へと落ちた。
先程の閃刃で、衣服に仕込んでいたものが丸ごと"斬られた"。
これのおかげで予想より手傷を負わずに済んだのかもしれない。

「……ヤバいな」

素直に"拙い"。
バターの様に鉛すら斬る。異常な斬れ味だ。
やはりあの剣は、何かある。
当然だが、相手は思考する事もましてや"待った"なんて聞くはずも無い。
自分の姿が陰ると、音を立てて柱が、看板が倒れこんでくる。

「チッ……」

舌打ちと同時に、ダメになった鉄針を投げた。
だったら使えるものを使う。暗器はこれだけじゃない。
石畳を踏み鳴らし、サイドへと飛び退くと同時に黒衣の裾から飛び出す糸。
像すら宙づりに出来る特別頑丈なワイヤーだ。
それを倒れてくる看板に引っ掛ける。

「返すよ」

みしり、と腕の筋肉がしなる。同時に半身から血が噴き出た。痛みなど、構っていられるか。
身体強化の異能の力。少年の小さな体躯からあり得ない力で
ひっかけた看板をそのまま宙で振り回し、仮面の男へと投げ返した。

ダスクスレイ >  
「!?」

並の人間なら避けるか死ぬか。
だが、目の前の少年はそれを超える。
篆刻の看板を、柱ごと。
私に投げ返すなどと。

「笑止ッ!!」

こちらへ来る柱と看板を寸刻みに切り刻む。
斬。斬斬。斬斬斬斬斬。
瞬間的に分解されて飛び散る質量。

だが。

「……ッ!!」

粉塵を立てすぎたか!?
少年を見失った……!!

周囲を見る。注意深く。私は恐怖しない。
闇を恐れるなどッ!! 弱者のすることだ!!

芥子風 菖蒲 >  
その太刀筋、まさに神業。圧倒的斬撃の物量により瞬く間に看板は細切れになった。
だがその結果、視界を覆う砂埃がその破壊力をまざまざと見せつけてくれる。
覆われた視界に、相手の姿が見えない。
だが、それは相手も同じはず。

「…………」

既に動ける風紀にある程度連絡は言っている。
時間を稼げば、此方が物量で押し勝つことも出来るかもしれない。
だが、時間稼ぎの間に"犠牲"が出る事を考えれば、少年のやる事は一つだけだ。

「──────此処で……」

──────……アイツを倒す!

切っ先を平に構え、腰を落とす。
少年を覆う青空のような光が、刀身に集まっていく。
相手の位置は、気配は、匂いは、この"先"だ。
石畳を強く、強く、足の裏に一擲を込め、跳んだ──!
青い軌道が一直線に、弾丸のように土煙をかき分け跳んだ。

「……!」

煙の先の人影、仮面の男目掛けて水平に刃を振るう。
但し、本来であれば刃は"二歩先"。その切っ先は届かない。
そう、"普通なら"。異能の力を纏った一刀は、宵闇を斬り裂く一閃の青空。
届かない切っ先の先から飛ぶ扇状の青空は、即ち"飛ぶ斬撃"だ。
急接近から急停止、間合いを見誤ったと思い込ませれば目論見通りだが────……。

ダスクスレイ >  
!!
粉塵の向こうからヤツが来る。
突っ切って、最速で。
闇を裂いてアイツが来るッ!!

だが……遠いッ!!

相手の攻撃が空振る。
相手は死に体。
こちらは踏み込んで斬るだけだ。

熱。

その青空は。
私の体を横一文字に斬り裂いていた。

「………何…………ィ…ッ!?」

噴出する血、閃刀の身体強化能力で筋肉を締めて強引に止血する。
それでも、決して無理はできない負傷。

「う、あ………」

一歩、二歩と後方に下がって。

「───なんてな」

わざと。相手に見えるよう。大上段に構えて。
物陰に隠れていた少女に向かって跳ぶ。

お前が護ろうとした命が掻き消える様を見届けるがいい!!

芥子風 菖蒲 >  
当たった。
このまま一気に──────……。

「コイツ……!?……ぁ……、……ッ!」

まだ動けるのか。
普段表情に乏しい少年も、驚愕に引き攣る程に余裕がない。
追従しようとするも、体の方が先に限界が来る。
今迄誤魔化していた痛みが、溢れ出る血液とと共に膝をついた。
特に脇腹が深い。意識していなかったが、自分の足元が一面血の海だ。

「お、前……!!」

狙いは自分じゃない。
跳んだ先に誰かいるのか。視界が僅かに霞む。
見てるだけしか出来ない。……本当に?
本当に、見ているだけしか出来ない?
走馬灯のように、景色がどんどんと遅れていく。
動けなきゃ、自分の価値は無いんだ。
どうやって護る。護れる。否。

「────────やれる」

オレの異能なら、いける。
確信が湧き上がると同時に、眼球の奥が焼けるような痛みが滲み出た。
何かが、誰かが傍にいる気がする。自分が自分じゃないようだ。
きっと、これは彼女に、薫に言われた事を反故するものになるんだろう。

「────────……」

でも、"今はそれでいいと思った"。
瞬間、血だまりから少年の姿が消えた。

芥子風 菖蒲 >  
黒い疾風が、砂埃を巻き上げる。
舞い上がる黒衣は、少女と仮面の間に現れた。
瞬間移動ではない。抉れた石畳が"移動した"事を物語る。
仮面と少女、或いは傍観者は恐らくその姿が分かるだろう。

全身に纏う青い光が、少年の背中から"糸"のようにか細く幾つも伸びている事。
両目の青空から血涙を流し、地面に立つはずの足が"あらぬ方向に曲がっている"。
見えない何者かが、少年を動かした。"人間に耐えようのない速度で、体を動かした"。
その代償は大きい。相手の付けた傷以外にも、衝撃が内臓を、足を、骨を砕いた。
血涙だけでなく、鼓膜が破れたのか耳から血液が噴き出す。
見開かれた目は、最早意識が混濁としているのか光が無い。
だが、"今の少年には関係ない"。

「────────……」

動かしているのは少年ではなく、異能なのだから。
間に入った体が、腕が素早く砂埃を斬り払うように、仮面の額へと切っ先が突き出されるが……。

如何に名刀と言えど、妖刀の切れ味には勝てなかろう。
最初の一撃が"効いた"。それに合わせて無茶に引きずったせいなのだろうか。
切っ先が"無い"。折れた鉄が、突き出されている。殺せはせずとも、鉄で突かれれば十分な威力だ。