2021/12/23 のログ
暁 名無 > 「………ソ、ソウダネ。
 まあ苦手なら無理強いもさせらんないな、このシュトーレンは俺一人で食おうっと。」

自慢じゃないけど交友関係は広くない。広くないどころか、狭い。
というか私的な付き合いのある先生って、一人か二人か……あ、ちょっと哀しくなってきたぞぅ。

「可愛いだろ、それ。
 異邦人街で売っててさ、時期的にも丁度良いしと思って買っちゃった。
 と、そうそう。むしろバイトの話はついでだったんだよついで。」

本題本題、と俺の普段使いの机へと向かう。
確かずっとコートのポケットは危険が危ないってんで抽斗のこの辺に……あ、あった。

「まーな、誰かさんが絶対最初に登録するんだって息巻いてたかと思えば、いざ登録したら凄い勢いで爆撃してくるもんだから。
 ほぼ毎日目にしてたらすっかり頭に入ってたよ。」

ニヤリ、と笑いながら机からソファへと戻る。
まあ最近はすっかり最低限の連絡にしか使われなくなってたけど。……ちょっと寂しいなんて思ってないし。全然。

「そしてそんな誰かさんへ。日頃の手伝いの感謝も込めて。
 ほい、ちょっと早いけど、メリークリスマス。」

と、今度は綺麗にラッピングされた手の平大の箱をセレネの前に置いた。

セレネ > 「…私は食べてはいないので、お口に合えば良いのですけれど。」

彼の交友関係に関しては己はどうとも言えないので今後彼自身に頑張ってもらうとして。

「えぇ、可愛らしいですね。
……?」

ジンジャークッキーに蒼を向けては、相手の言葉に顔を上げて。

「……だって、本当に嬉しかったのですよ?
初めての居場所を作ってくれたのは貴方なのですから。」

湯気立つ紅茶を蒼が見下ろしつつ、告げる言葉。
今でこそ連絡は滞っていたけれど、感謝は忘れていた訳ではない。

「……。」

目の前に置かれたラッピングされた小箱。
手に取るのに、少し躊躇いを生じた。

「…こういうの、貴方はあげないものだと…思っていたのに…」

他者の繋がりなど、忌避していたきらいがあったから。
だから、己も形として残らないものを贈ったのに。
浮ぶ表情にも、蒼にも、困惑を。

暁 名無 > 「今までお前さんが口に合わない物勧めてきたかよ。
 以前貰ったチョコも美味かったしな。」

食べられる物なら何でも美味いと言うと思われてたら少し癪だけども。
まあそれはそれとして、これまで勧められたものが外れなかったのは事実。だから今回も期待して良いのだろう。

「はは、そりゃあ冥利に尽きるってもんだ。
 ……あの時はホントに、お前さん心細そうに見えたからな。」

そのままこの学校を、この島を嫌いになって欲しくは無かった。
むしろ好きになって貰うためにどうしたら良いか、割と苦心したのも今となっては懐かしい。
その切っ掛けとなれたのなら、これほど嬉しいことは無い。
自分が好きな物を、他の誰かも好きになって貰いたいのはきっと普通の事だろうし。

「……ん、どうした?」

やっぱりサプライズでプレゼントなんて贈るべきじゃなかっただろうか。
明らかに困惑している様子のセレネを見て、俺は少しばかり不安を覚える。
が、続く言葉に、得心がいった。ああ、そうか。そうだよな。

「……あー、まあ、そうだな。
 その認識は……間違っちゃいない、いなかったよ。」

少しだけ居た堪れなく感じつつも、俺はセレネの隣、ソファに腰を下ろす。
ちゃんと話しとかなきゃな、と前置きして、

「うん、こうやって形に残るものを贈るのは確かに避けてた。
 ……いずれ未来に帰るときに、俺の事は誰も覚えていなくなる筈、だったから。」

セレネ > 「そうですか?…それなら、良かった。」

相手の言葉に、少なくとも嘘はないと。
そう思って安堵するのは内心。

「そう見せてしまったのは、私もまだまだという事か…
もしくは貴方の観察眼が良かったのか、ですね。」

今現状も、この島を好いて居るかと言われればそれは否ではあれど。
それでも来た当初よりはマシだと思う。

「……。」

己は過去、相手に形に残る物を贈ろうと思っていた。
けれどそれは様々な理由で断られてしまって。
だから、形に残らない物を、今回も、食べ物を手土産に持って。

「……貴方は未来人だと、仰っていましたね?」

隣に座る彼に、蒼は向けず。
カップに揺れる紅茶に蒼を下ろして、そう告げる。

「……プレゼントの中、見てみても?」

静かに告げては、置かれた小箱に手を掛けて。
了承を得られたなら中身を暴いていくだろう。

暁 名無 > 「そりゃあ観察眼だけが取り柄みたいなもんだもの。
 ……なんてな。ま、観察眼なんて経験則みたいなもんだ、他にも同じように不安がる生徒が居なかったわけじゃないからな。」

それに、居場所の無さに不安を覚えた経験が無い訳でもない。
まあその当時は自分で居場所を半ば無理やりにでも作る行動力のあるガキだったけど。俺は。

「……自分が誰から貰ったかも覚えてない物を貰っても不気味だろう?
 それに、相手が渡した事すら覚えていない物を持ってても……やっぱ辛いだけだ。
 と……そう、思ってたんだよ。」

だから残る様な物は避けた。避けざるを得なかった。
今思えば保身だったのかもしれない。
いずれその意味が、そのときあった気持ちが残らない事から逃げたのかもしれない。

「……ああ。と言ってもそんな遠い未来じゃないけどな。
 せいぜい十数年……今はもう数年かな、それくらいの、近い未来だ。」

それでも未来は未来。過去に影響を与えることは許されない。
自分でもそう納得はしていた、のだ、けれど。

「ああ、どうぞ。確認もしないで突っ返されたら流石の俺でも泣くぞ。」

と冗談交じりに了承する。
小箱の中身はシンプルながらも細かなジュエルが散りばめられた、一つのバレッタ。
割と装飾品を多種纏うセレネが身に着けてるのを見たことがなかった、髪飾り。

セレネ > 「…観察眼や洞察力は経験で培われるものですからね。」

相手に見破られる程己は分かりやすかったとも言えなくもないが。
そこは改善せねばなるまい。

「…自分の存在が消える事を恐れていたからこその行動だった訳ですね?」

彼が他者との交流を避けていたのも。
自分の記憶が、消え失せてしまうかもしれないと、
恐れていたからなのかと。

「…未来から来た貴方は、何が目的だったのです?」

わざわざ過去に飛んでまで来た目的。
それが一体なんだったのか、知りたくて。
無論、言えないのならそれで構わないけれど。

「…流石に、見ずに突き返す事はしませんよ。」

苦笑しながら開けた小箱、中に入っていたのはシンプルなデザインながらに美しいバレッタ。

「……綺麗ですね。なかなか良いセンスをしているではないですか。」

暁 名無 > 「そういうこと。
 動物に比べたら人間なんて主張の塊みたいなもんだしな。」

元々肌感覚で相手の嘘や虚構は見抜ける方ではあったけれど。
それを軸にしてるから、これだけ観察眼が養われた、というのは否定しない。ある種の才能、ではあるんだろうな。

「恐れていた、というか……いずれ消えることを前提にしてた、って方が正しいかもな。
 誰の記憶からも居なくなるんだから、それなら俺が居た痕跡はそれこそ何もないくらいで、って。」

忘れられるのは、相手が親しければ親しいほど辛いから。
まあ、その辛さは意図しなかった形で思い知ったわけだけども。
女々しいだろ、と思わず自嘲が零れてしまう。

「目的、か。あまり人に聞かせて気持ちのいいもんでもないけどな。
 俺は……俺が俺になる未来を潰したかったんだ。
 かつて愛した女性を自分の手で――……まあ、そんなクソッタレな未来をさ。」

見つめるのは虚空、俺にとっては過去の『現在』。
まだ大人になり切れてない俺自身と、誰よりも大切だった人と過ごした、今。
こんなことを聞かされたところで、面白くも何ともないと思うけども、と横目でセレネを盗み見る。

「分かんないじゃん!
『今までそんな素振りも見せずにいきなり渡されても貰えません』とかしれっと言いそうじゃん、今のセレネ!」

自分で言っといて背筋が寒くなった。もし本当に言われてたらマジで泣いてたかもわからん。
いや、言われてもしょうがないな、とは思わなくもないけど……。

「え?……そう?ホントに?何か気を使ってたりしない?
 ……そっかぁ。……良かった。」

セレネの感想に、思わず表情が緩んでしまう。
寒い中さんざん悩んだ甲斐があった。が、それ以上に素直に嬉しい。

セレネ > 「…そうですね、なまじ意思疎通出来ますからね。」

本能に忠実な動物達とは違い、人間やその他意思を持つ者は各々の主張が強いものだろう。

「ふむ、成程?…そうなると、私のように頻繁に連絡や会いに来る存在は厄介だったでしょう。」

そう思うと、結構辛い事をしていたのだなと反省。
しゅんと下がる蒼は申し訳なさそうに。

「……貴方は、その方を愛していたのですね。
もしかしたら今でも。」

己だったらどうだろうか。相手程の感情を持ちえるだろうか。
そこまでは分からないけれど。

「……正直貴方の行動は予想がつかなくて、困惑する事も多いですよ?」

話を受けたのも、今までの諸々があったからで。
こうして贈り物を貰っただけでも、十二分な衝撃ではあるのだ。

「今回に関しては本当です。」

気を遣うのなら、もっと色々言葉を選んでいる。
今回、という事は、過去気を遣った事があると言っているようなものであるけれど。

「…大切にしますね」

暁 名無 > 「だからまあ、何と言うか……分かりやすい、よな。人間って。」

隠し事も下手というか、悟られることをどこか期待して隠すというか。

「まあ、最初の内はな。そこは否定しないよ。どうせ忘れるのに、ってさ。
 ただ、何つーか……お前さんに忘れられるのは殊更嫌だな、って思うようになってさ。
 いや、違うな……忘れられたくないって思うようになったのか。俺の方は、向こうに帰っても覚えてるわけだから。」

それってかなり不公平じゃん、と思わず口を尖らせる。
何が不公平なのか分からんけど、いや分かってるけど。
それなら尚更不満を覚えずにはいられなかった。

「愛してた……どうだろ、ただ……そうだな、多分向こうは俺の事はこっぴどくフると思う。
 こんな大人になるとは思わなかった――って。ああ、うん。間違いないなこれは。」

容易に想像がつく。多分今の俺は、あの人にとって気に入らないタイプの人間だろう。
……だからこそ、俺は過去を変えて、未来の俺を……俺自身を潰してしまいたかったのかも。

「えー。そう?セレネが鈍感なだけじゃねーかなあ……。」

鈍感というか、視野が狭いというか、頑固というか、人の心が分からないというか。
……まあ、俺も俺で言動が解り難いというのは、否定は出来んけども。

「そっか、ありがと。
 おう、大切にしてくれ。あと、それは今年の分で。
 これは去年の分。包装間に合わなくって、剥き身でごめんだけど。」

そう言って俺は懐から一つのペンダントを取り出した。
真鍮のチェーンに繋がれた、小指の先ほどの大きさのタンザナイト。

セレネ > 「隠す事が上手な人もおりますけれどね。」

どうだろうか。そこは一概には言えないと思う。

「…それ、は…。
その、何というか。…ごめんなさい。」

相手の言葉を。不公平だと唇を尖らせる仕草に、
蒼を泳がせて。何も言えず、結局謝罪しか出てこなかった。

「人がどうなるかなど、生きていく過程で変わるものでしょうに。」

晒される環境や、自身の意思で。
人は如何様にも変わるものだ。尤も、根本的なものは変わらないかもしれないけれど。
相手の言葉を聞いて蒼を細めて。

「……そうですか。まぁ、貴方がそう思うならそうでしょうね。」

己自身、他者は気をつけて見ているつもりだし、
観察眼、洞察力もそれなりにはあるだろうと思っては居たのだけれど。
そこまで否定されるのなら、己はまだまだなのだろう。
父の背に追いつくにはまだほど遠い。

「……。
有難う、御座います。」

取り出されたのは美しい青い色のタンザナイト。
己の身につけているペンダントは、物が物のため外す事は躊躇われる。
ペンダントを受け取っては、

「私に贈るより、貴方自身につける装飾品を見繕った方が良いですよ。」

とはいえ、動物を相手にする職だから、難しいのは以前聞いた話だけれど。

暁 名無 > 「そうかな?そうかもな。」

くつくつと笑いながら肯く。
セレネがいうと説得力が今一つ欠ける気がするのが、何だかおかしくって。

「ん、分かれば宜しい。
 まあ、俺の方こそそんな理由で素っ気無くしたりした気もするし……
 一方的に謝られるのはそれこそ不公平だよな……ごめん。」

今思えばもっとやりようがあった気もする。
気もするが……でもやっぱり上手い事出来なかっただろうことも想像に難くない。

「まあ、そうなんだけどさ。……まあでも、傍若無人を人の形にしたような人だったから……
 そういう理屈は通じなさそうなんだよなあ……」

そもそも人間じゃ無いのだから無理もないのかもしれないが。
ともかく、今もあの人を愛しているか、という言葉には少しだけ疑問が残った俺だった。

「そうなんですー。
 まあ、そこがお前さんらしさというか、可愛いとこだと思うけどな?」

嫌いじゃないというか、見てて飽きないというか。
我ながらちょっと性格が悪いと思いつつ、ニヤリと口角が上がるのは止められなかった。

「いーのいーの、渡したかったからだし。
 俺は装飾なんて無くても、顔がいーし。ふふん。
 それに一応アミュレットとして使ってた石でさ。ある程度環境適応させる効果を持たせてるから。
 本来は極地でも活動できるレベルだったんだけど、今はもう暑さ寒さを軽減するくらいしか効き目も残って無いんだわ。
 お前さんには丁度良いだろ?」

これから先、寒い中外に出る事も多いのだろうし。

セレネ > 笑む彼に不平を抱いた訳ではない。
けれど、なんだかおかしそうに笑う彼が、少しばかり憎らしく思えて。
不服そうに膨らませる頬は小さく。

「貴方の、他者との関わり合いを拒否する姿勢は何というか、
ちょっと悲しかったりもしますけれどもー。
…今後は、そういう事はないのですかね?」

己には色々友人を作れだとか何とか言ってた癖に。
まぁお陰様でそこそこ友人と呼べる人は増えてきたけれど。

「……あぁー。居ますよね、そういう人。」

普通の理屈では通じないような人、あるいは種族。
そういうものはどの世界でもいるものなのかと納得。

「可愛いとかそういうの、そう簡単に女性に言うものではないですよ?
…貴方ならよくご存知かもしれませんけれど。」

やっぱり褒められるのは慣れてない。
少しばかり頬を赤らめては、ぷいと顔を逸らしてみせて。

「装飾品があれば尚その顔の良さが引き立つでしょうに。
寒さは兎も角、暑さが軽減できるのは有難いですね。
…これ、元のレベルまで修復出来る事は可能なのでしょうか…。」

極地でも、となるとそこまで高度な魔術または魔法的な付与がされていたとなる。
己の持ちうる技術でも、それに類するような事は出来るだろうかと。
学者的な興味がわいた。

暁 名無 > おや、どうやら不興を買ったらしい。
まあ無理もないか、と思いつつそんな様子もどこか愛らしくて。
ああ、やっぱり――

「今後?んー、そうだな。
 前ほどは無いと思う、が。半ば癖みたいになってるからな……
 ま、そのプレゼントで証左とならんかね?」

まあクリスマスプレゼントを渡した相手なんてセレネくらいだけど。
論より証拠、しかも物証となれば説得力もあると思いたい。

「ホント、この時間軸の俺……よく付き合ってられたよ。」

少しだけ遠い目をして振り返る。今の俺じゃ絶対途中で力尽きる。

「ああ、そうだな。軽率に可愛いとか言うもんじゃなかった。
 ……んじゃ言葉を変えよう。セレネのそういうとこ、俺は好きだよ。」

頬杖をつき、顔を逸らしてしまった隣の女生徒を見据え。
ともすれば追い討ちになりそうだけれど。

「別に俺は今のままで充分満足してますしー。
 寒さも少しは和らいでくれた方が良いだろ、公園で会った時のお前さん、鼻赤くなってたぞ?
 元のレベル?……どうだろな、何せ20年近く先に発揮した効果だから……」

未来の術式を過去で最盛まで持って行くのは難しい気もするし、そうでも無い気もする。
俺は魔術に関してはあまり詳しくないから、断言することは出来ないが、ともすれば……どうだろう。

セレネ > 「人間性が合う合わないはあるかもしれませんが、
邪険に扱う人はそうは居ないでしょうし…。
今後、もっと色んな人とお話出来る機会があれば良いですね。」

少なくとも一年前までよりは確実に良くなっている。
己自身、相手から贈り物などされないものだと思っていたから。

「……そこまでの方なのですね…?」

恋は盲目というのだろうか。なのだとしたら、その気持ちは分からなくはないけれど。

「――っ!
そ、その言葉の方が余程、女性に言うものではないです…っ!」

彼の誑しは健在なようだ。我慢していた羞恥がぶわりと広がり、
耳まで赤くなる。
紛らわせるよう、紅茶を一息で飲み干して。

「そうですかーそれならいいですー。
……それは大変見苦しい顔を晒してしまっていましたね。いや、此処の気温のせいにしてしまいましょう。
――ふむ。解析魔術で少しは理解出来るくらいなら良いのですけれど。
とりあえず色々やってみますね。」

未知の術式が使われているならそれは実に面白そうだし、
最盛までいかずとも充分使えるレベルになれるなら御の字だ。

「ん、そろそろ寮に戻らなければ。
お話有難う御座いました。それに、プレゼントも。」

バレッタが入った小箱とタンザナイトのペンダントを手に立ち上がり頭を下げる。
気持ちは非常に嬉しかった。偽りない気持ちだ。

暁 名無 > 「さらっとデカい壁を提示しないでくれ……まあ、頑張ってはみるけども。
 それよりも、何だ……お前さんとも、前みたいに……あー。
 うん、俺はセレネとも、もっと話がしたい。」

こういう時に咄嗟の言い回しが思い浮かばない程度には。
言ってから何だか非常にこっ恥ずかしくなってきたけれども。

「そこまでの方だったよ……」

神妙な面持ちで頷く。なんというか、嵐の様なパワフルさがあるんだ……。

「心配せんでも、お前さんにしか言わんよ。」

くくっ、と笑いながら赤面するセレネを見る。
釣られて顔が赤くなりそうなのは、どうにか堪えられている……と思う。

「これからもっと寒くなるからなー、鼻だけで済めば良いけど。
 まあ何か分かったら教えてくれよ。いや、そんな義理は無いんだけど。俺もちょっと気になるし。」

今の時代ではまだ開発されてない術式かもしれないし。
まあ今の俺は未来人よりも異邦人の方が強いから、時間に対する干渉なんて気にしなくていいんだけども。

「お、そんなに時間経ってたか。
 うん、どういたしまして。渡せて良かったよ。
 また……いつでもおいで。と言ってもまあ、最低でも週一でバイトに来るか。」

下げられたセレネの頭を、こちらこそシュトーレンありがとう、とぽんぽんと軽く撫でて。
さてそうしたら翻訳の為の論文も準備しとかないと。
まずは簡単な、大学の卒論くらいのものを見繕っておくか。

セレネ > 「大きく見えるのは半分自身の行いのせいだと思って下さいな。
……貴方、以前より随分と素直になりましたね?」

少し前なら絶対そんな事言わなかったろうに、言われた此方が恥ずかしくなるくらいだ。
己で良いなら、と一つ頷くだろう。

「何故私にしか…っ!?」

それほどまでに相手に信頼されているという事だろうか?
己だけとの言葉には、嬉しくもあり、複雑な感情を抱いて。

「えぇ、何か分かったらバイトの時にでもお伝えします。」

同じ魔術師である身近な人物も居るし、彼の力を借りればあるいは。
相手の言葉に頷いて。

「…此処に来た時に初めて出来た居場所ですもの。
まぁ、気が向いたら来ますね?貴方が寂しがらないように。」

頭を軽く撫でられつつ、告げる言葉は悪戯っぽく。
閑古鳥が鳴くくらい寂しい場所なのだ、暇な時に訪れるのはいつもの事か。

「体調崩さないよう気をつけて、良いクリスマスを。」

立ち去る間際、小さく手を振っては扉を開けて部屋の外へと出て行くだろう。

暁 名無 > 「返す言葉もない……
 まあ、色々あったんだよ。今回話す機会逃したから、また今度な。」

うるせーやい、と少しだけ顔をしかめる。自分でも少し気恥ずかしいんだから。
……昔の、学生だった頃の自分みたいで。大変こそばゆい。

「さーて、何ででしょーねー」

ニヤニヤ。そういうとこだぞ、と思う。
まあうん、それくらいで良いんだとも思う。少なくとも、俺は。

「まあのんびり待ってるさ。変に解析し過ぎて割ったりするなよ?
 物によっちゃダイヤより高いらしいぞ、タンザナイトって。」

からかうように言ってはみるものの、そこまでの事はしないだろうとも確信もある。

「いつだってお前の居場所だよ。それは保証する。
 あー優しさに泣いちゃいそう。それまでにもうちょっとマシに紅茶入れられるように練習しなきゃな。」

まだまだ未熟な腕なのは自覚もある。多分セレネが自分で淹れる方がまだ美味しいのでは、と。
いずれは紅茶目当てで来て貰えるようになったらなあ、なんて思いつつ。

「ああ、お前さんも風邪ひくなよ? それじゃあ。良いクリスマスを。」

此方へと手を振られれば応じて見送る。
まあ、うん。渡せて良かった……本当に。

ご案内:「幻想生物学準備室」からセレネさんが去りました。
ご案内:「幻想生物学準備室」から暁 名無さんが去りました。