2022/08/01 のログ
ご案内:「ライブハウス『クレスニク』」に麝香 廬山さんが現れました。
麝香 廬山 >  
ライブハウス『クレスニク』
歓楽街の何処かにあるライブハウスであり
既に会場はとあるバンド組によって盛り上がっており
それなりに人は集まり悪くない雰囲気だ。
今日はそんな壇上に立っているのは一人の好青年と黒服数人。

麝香 廬山。
秩序に縛り付けられた男だ。
この壇上に立つのだってそれはそれは許可とか色々大変だった。
しかしまぁ、思い立ったらなんとやら。
色々言いくるめて直の監視付きで丸く収めた。
今日は所謂、ゲストバンドメンバー。結成日は今日限り。

素敵なメンバーは揃ってアンニュイな感じ。
そりゃそうだ。監視役なのにまさか、演奏させられるとは思わなかっただろう。
そんな姿をしり目に青年はにっこりと笑顔を浮かべ、人差し指を立てる。
盛り上がる歓声。場が温まっているおかげで、新顔にもまぁ優しい事。
ちょっと感覚で歌いに来ただけだ。挨拶はいらない。
歓声に合わせてギターが鳴り、ベースが唸り、エレクトーンが盛り上げる。
青年がマイクを近づければ、ライブハウスに暗闇の帳が落ちる。

──────さて、始めようか。

麝香 廬山 >  
帳は赤で暴かれた。
何処となく不気味な光が青年たちを不気味に照らし出す。
先程のバンドマンたちとは違ったおどろおどろしい雰囲気に
一部の観客はざわめきを隠せない。

「──────。」

そんな姿に、青年は口角を上げた。

『The line of fact and fiction's blurring(現実とフィクションの境界線は曖昧で)』

『to the point that you can't even tell(区別がつかなくなる程にね)』

そんな不安を掻き立てる滑らかな歌声。
素人の歌声ではなく、その声は思うままに表現する。
自らの異能を使って、演出さえも忘れずに

『What is real?(どれが"本当"?)』

青年姿が闇に霞み

『What is false?(何が"嘘"?)』

そして観客たちの中心に表れる。
更にどよめく観客達。一部の観客はその演出に驚きと興奮を隠せない。

『What is anything at all?(結局何が正しいの?)』

青年もまたその反応を楽しみ、するりと観客たちの間へと消えてしまい

『My favorite kind of living hell!(そんな生き地獄が大好きさ!)』

煌々とした赤と紫のネオンライトが世界を照らし、青年が壇上で諸手を広げる。
掻きならすサウンドと神出鬼没の演出が舞台を盛り上げていた。

麝香 廬山 >  
『Now you see me(今ボクの姿が見えるでしょ?)』

『Now you don't!(さぁ消えな!)』

『Now I'm in your head!(今ボクはキミの頭の中にいる!)』

一際成り立つギターの音に姿も音もぶれていく。
現実とフィクションの境界なんて誰が決めつけたのか。
果たして、数分限りの集まったこの音楽集団だっていたものなのか。

『Complicated superstitions hanging by a thread!(糸でぶら下がった複雑な迷信のようにね!)』

叫ぶような歌声と共に壇上から飛び立つ青年の姿は
観客たちにぶつかる前に消えてしまった。
代わりに金切り声と共に壁を照らすレッドライトが不規則に広がった。
何を示唆するかはさておき、青年はそのライトを背に何事もなかったかのように立っている。

麝香 廬山 >  
演出の自由もまた音楽、創作の一部だ。
それが受けるかはさておき、サビの盛り上がりでも手は抜かない。

『There's nothing wrong with a bit of traumatizing(少し位トラウマを植え付けたっていいじゃないか)』

悪びれる事もない。

『Small pinch of fear shouldn't be that paralyzing(ちゃちなピンチに慣れるのはよくないよ)』

寧ろ開き直って楽しんでいる。

『Unless I fell like it shouid be─────。(そうなると思わなければね─────。)』

性根の悪さを唱えた歌声と共に、青年たちの姿は黒の帳が隠してしまった。
後には何も残らない。本当に彼等がいたのかさえ、一時の静寂は何も肯定してくれない。

麝香 廬山 >   
ただ、それを打ち破るもまた音楽だ。
帳を切り裂いたのは軽快なギターの音。
180度違うロックサウンドが静けさを喧噪へと変えるだろう。



───…。

────……。

────────……。



「……ふぅ、久しぶりに歌ってみると気持ちいいものだね。」

なんて、青年は呑気にしていた。
既にライブハウスの外、熱帯夜の月が青年を見下ろしている。
生憎飛び込みのバンドメンバーがそんな長々と、おまけに急遽入れるわけもない。
ただ、"当て馬"位ならやらせてくれる。
敢えて場に合わせないような音で少しばかり冷やした会場を盛り上げるための前準備だ。

「ま、受けてた人もいたみたいだけどね。皆腕良かったし」

少なくとも毛色が違うだけで、これもまた音楽に相違ない。

麝香 廬山 >  
「にしても彼女、いなかったなぁ」

流石に連絡先も知らないし、何時もいるわけじゃない。
あのバンド少女にちょっとした"刺激"をするつもりだったが、当てが外れた。
まぁ、それでもいい。観客たちの表情は、それはそれは楽しかったから。

「……さて、帰ろうか。皆もお疲れ様。わかってるよ、時間は守るから」

蒸し暑い空気でも爽やかな声で青年は踵を返す。
そのタチの悪い歌は、果たして現実のフィクション。
どちらの側にあったのだろうか────────……。

ご案内:「ライブハウス『クレスニク』」から麝香 廬山さんが去りました。
ご案内:「ライブハウス『クレスニク』」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
 
 
そこにいた。
 
 
 

ノーフェイス >  
「いまの誰?」

どこかで見たような気がする女に肩を叩かれた最後尾の観客は、
邪魔をするなとばかりに「知らない」とだけ答えて、ステージに視線を戻して喚き始めた。
腕を突き上げて飛び跳ねる彼をよそに、女はまた定位置の壁へと背を預ける。

「なるほどね」

ただの演出か。
そう理解して、安っぽい紙コップに満たされた炭酸飲料で喉を潤す。
透き通った味だ。あっち側の性質の悪いアルコールとはひと味もふた味も違った。

これはこれでと感じても、物足りなく感じてしまうのが、

ノーフェイス >  
「人の性ってやつなのかな。
 ボクにしてはつまんない冗談だな」

たとえば動画配信を見て、気になったバンドができて、
それを見に来たら奇妙な出来事に遭遇した、なんていう出来事のほうが、
飛び入り参加でチケット(ダフ屋が転売してた定価よりだいぶ高額なもの)を買った甲斐があると思える。

どこか無軌道で無秩序な演目だった。
いま、ステージで輝いている者たちの印象に、
塗りつぶされてしまっていくのだろう。

いま響いている楽曲だって、いいものだ。熱がある。
聞き入ってしまう程度には心地よい重たいビートに下腹を揺るがされながら、
ひっそりと防音扉を押して、その場を後にする。

ノーフェイス >  
ポケットから取り出したるは携帯デバイス――もちろんモグリの。
薄暗い廊下で画面がほの青く発光し、女の微笑が照らされていた。

「ちょっともったいなく感じちゃうんだよな」

赤い唇を舌が濡らした。
空中に指先が踊った。

自分の"相棒"と"仲間"を探す旅のさなか、ふと行き当たった望外の余興に、
ちょうっとだけ、個人的におひねりを投げさせてもらうとしよう。

ノーフェイス >  
 
 
「拡散しちゃえ~」
 
 
 

ご案内:「ライブハウス『クレスニク』」からノーフェイスさんが去りました。