2020/10/03 のログ
ご案内:「エアースイム体験会会場」に杉本久遠さんが現れました。
ルーム説明 >  
 居住区の南に位置する海岸は、今はいくつものテントと、砂浜に敷かれたシートとビーチパラソルで彩られている。
 設けられた実況席、海上に四角く浮かぶフィールド、出張しているいくつもの店舗。
 大会会場には人が集まり、賑わっている。

 体験会は誰であれ自由に参加することが出来る。
 初めてでも飛べるように設計された、競技用ではないS-Wingが用意されている。
 走る程度の速度しか出ないが、初心者でも空を泳ぐ体験をしやすくなっている。

 体験用S-Wingは、スニーカーのような形状で、起動時は白く小さな羽根が踵に展開する。
 制御は非常に容易だが、それでも慣れるまでは上手くいかない場合もある。

 観覧エリアには『杉本ドラッグ』の出張店舗があり、軽食やドリンク、お菓子などを中心に販売している。

【シェア設定エアースイムについて】
http://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/wiki/index.php?%E8%A8%AD%E5%AE%9A%2F%E7%AB%B6%E6%8A%80%2F%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%83%A0

【イベント:スカイファイト秋季大会および体験会について(大会ログもこちらです)】
http://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/pforum/pforum.php?mode=viewmain&l=0&no=191&p=&page=0&dispno=191

杉本久遠 >  
 一時間ほど前まで、選手たちが激戦を繰り広げていた大会会場は一転。
 子供から大人までが集まり、賑わいを見せている。
 エアースイム体験会が間もなく始まるため、その準備が行われていた。

「体験会Eグループの方はこちらでーす!
 参加する人、飛び入りの人はこっちに並んでください!」

 大柄な青年の大きな声が会場に響く。
 そんな青年の隣で、少女がテーブルの上で受付を行っていた。

『はーい、こちらにお名前と連絡先の記入お願いしまーす。
 あ、こちらが体験用S-Wingと参加証でーす。
 参加証は腕に着けてくださいねー』

 と、スニーカーのような靴と、リストバンド型の参加証を渡していく。
 ここのグループは人がかなり少ないが、他のグループは随分と賑わっているようだ。

杉本久遠 >  
「飛び入り参加する人はこちらーEグループでーす!
 こっちに並んで――あ、はい?
 え、解説よかった、ですか?
 あ、ありがとうございます!
 いや、すごく緊張したんですが、褒めてもらえてうれしいです!
 あ、どうですか、体験会――ああ、そうですか、いえありがとうございました!」

 参加者への声かけなどを続けるが、訪れる人はそう多くない。
 他のスタッフは見るからにインストラクター、と言った人が多い中で、ここは子供二人。
 実況解説を担当していたとはいえ、少しばかり人気がないのは否めなかった。

『いやー、実況が面白かったーとか言ってもらえるのはいいけどさー。
 こう人が来てくれないのもちょっと寂しいもんだねー』

「だはは、なあに、他が賑わっているなら問題ない!
 これだけエアースイムに興味を持ってくれた人がいるって事だからな!
 オレたちはオレたちで、のんびりやればいいだろう」

『んまあ、それはそうだけど。
 まあ、途中からやってくる人もいるだろうしねー。
 っと、時間だからほら、兄ちゃんも行った行った』

「おう、そうか!
 と言っても、そう教える事も無いと思うけどな」

 体験用S-Wingは初心者でも簡単に空を泳げるように作られている。
 競技用の場合と違って、あまり細かく教える必要もないだろうと。

 そうして、人の少ないEグループもまた、静かに体験会が始まった。

ご案内:「エアースイム体験会会場」にリタ・ラルケさんが現れました。
リタ・ラルケ >  
 出遅れた。

 もとより体験会に行く予定ではあった。しかしエアースイムの決勝戦が終わって、真っ先にしたのは決勝戦に出ていた友人の姿を探すことだった。
 意識喪失。その言葉が実況席から聞こえた時、血の気が引く感覚がした。
 その言葉の意味を、知らないわけがない。
 はっきり言おう。
『スパルナ』の――迦具楽の姿を探していた。命に関わるような大ごとにはなっていないだろうが、一目見て安心したかった。それから、たくさん話したいこともあった。
 だけれど、自分は単なる一観客でしかない。頭のどこかで会うのは難しい――そうとわかっていても、足を動かさずにはいられなかった。

 そんなこんなで、いつの間にやら体験会の時間になっていた。結局、彼女の姿を見るのは叶わなかった。
 場所に着いてすぐ、「飛び入り参加はこちら」と聞こえてきた。そちらにいくと、どうやら既にあらかた準備は終えているらしかった。

「ちょっと、待って……! 参加するっ……!」

 息を切らして走りながら、そちらの方に行く。

杉本久遠 >  
 体験会の駆け寄ってくる少女の姿を見つけると、大きな青年が手を振った。

「おお、そんなに急がなくても大丈夫だぞ!
 永遠、その子も受付してやってくれ」

 そう青年が言うと、受付テーブルに居た少女が手を振ってこたえる。

『はいはーい。
 受け付けはこっちでどうぞー。
 用紙に名前と連絡先をお願いね。
 で、これが体験用のS-Wingと参加証だよ。
 使い方の説明はこれからだけど、他に何か質問とかあるかな?』

 と、靴とリストバンドを用意しながら確認する。

リタ・ラルケ >  
「はーっ……ギリギリセーフ、かなぁ」

 致命的に遅れた、というわけではなさそうだった。爽やかそうなお兄さんが、手を振って迎えてくれる。
 そうして間もなく、受付役なのだろう、少女がこちらにと誘ってくれた。
 二人とも先ほどまで、実況席にいた人だった。働き者だなぁ。

 さて、受付と。用紙に必要事項を書いて、S-Wingと参加証を受け取る。

「んー、質問かぁ。今はあんまりないけど……強いて言うなら、こういうのは初めてだから。飛び方のコツとかあれば聞きたいかな」

 S-Wing――確かエアースイムに必要な飛行機器の名前だったか――を観察しながら、そう応える。

杉本久遠 >  
『ふむふむ、コツと来ましたか。
 じゃあそうだね、なるべく遠くを見る事かな。
 足元を見たり手元を見たりは、慣れてないとバランスを崩しやすいからね。
 まあでも、これならすぐに飛べるようになると思うよ』

 頑張ってね、と言いながら、永遠はリタを見送る。
 そして、青年――久遠がリタを手招いた。

「ようし、そしたらまずは靴を履き替えてくれ。
 履くだけなら普通の靴とあまり変わらないからな。
 一応ある程度、サイズは自動でフィッティングされるが、あまり小さかったり大きかったりしたら言ってくれ」

 と、体験用のS-Wingを見せて参加者へ、履き替えるように指示する。
 履き方がわからない、サイズが合わないなどがあれば都度、対応する事だろう。

リタ・ラルケ >  
「遠くを見る、と。なるほど。ありがと」

 ならば普通に飛ぶのと、思うほど感覚は変わらなさそうだ。
 何分――精霊纏繞という行為を挟む必要があるとはいえ――、生身で飛行できる自分からすれば、『道具を使って飛ぶ』ということ自体が初めてである。普段と勝手は違うだろうが――そういうことなら、あまり気負わずに行ってもよさそうだ。
 手招きをする男の人の方に行くと、自分がさっき貰ったS-Wingと同じようなものを指して、履き替えるように言われた。

「……これを? わかった」

 指示に従い、靴を脱いで、貰ったS-Wingを装着する。少々普通の靴よりも硬く、重く、少し手間取ったとはいえなんとか履くことに成功はした。
 直後、硬いものが足元に纏わるような感覚。フィッティング、というやつだろう。

「うわぁ……不思議な感じ」

 実際に履くとこんな感じなのか、と。面白い感覚ではあるけど。

杉本久遠 >  
 参加者が無事にS-Wingの装着が出来たのを見ると、久遠は大きく頷く。

「よし、みんな大丈夫そうだな。
 そうしたらまず、一番最初。
 S-Wingの起動の仕方を説明するぞ」

 そう言いながら、自分は競技用のS-Wingを装着して起動させる。
 久遠の踵からは魔力の羽根が展開されていた。

「S-Wingは起動すると、こんな風に羽根が展開されて、10cmくらい浮かび上がる。
 最初はこうして身体を起こしているのも難しいもんで、よく倒れてしまうもんなんだが。
 安心してくれ、安全装置が付いてるから、地面にぶつかったりはしないからな」

 と、証拠を見せるように勢いよく前に倒れるが。
 砂浜から綺麗に10cm浮かんだ状態で静止している。

「とまあ、こんな感じだからな。
 それじゃあ、実際の起動方法だが」

 身体をまっすぐにしたまま起き上がり、笑いながら指を立てる。

「まず、頭の中で自分が空に浮かぶ姿をイメージする、それだけだ。
 S-Wingはそのイメージを読み取って起動するんだ。
 ただ、上手くイメージできない事も多い。
 そう言うときは、何か掛け声を付けて意識を切り替えるといいぞ!」

 そう説明してから、「さあ、やってみてくれ!」と参加者に指示をした。

リタ・ラルケ >  
 S-Wingの装着を終えると、説明が始まるらしく声がかかる。
 男の人の踵から、実体のない羽根が形成されたかと思うと、目の前で浮かび上がる。

「おぉー……浮いた。こうなるんだね」

 実際に起動するところを間近で見るのは、これが2回目か。もっと言えば、あの時は纏繞で人格が変わっていたのもあって、よく覚えてはいなかったりする。意識して起動するのを見るのは初めてだった。
 それから、男の人のが急に倒れ込む。突然のことでびっくりしたが、安全装置があることを見せたかったらしい。心臓に悪くないだろうか、その証明方法。

 そして、起動方法を聞く。どういうものかと身構えたが――、

「……へえ?」

 自分が空に浮かぶイメージを、読み取る。そんなこともできるのかという驚きと、そんなことでいいのかという呆気なさが同時に来た。

「それなら、簡単」

 そう呟く。空に浮かぶイメージも何も、自分にはいくらでも実体験があるのだ。
 そして、

「――集中……なんて」

 軽く掛け声。踵に魔力の羽根が生える。程なくして、自分は空に浮かび上がる。
 このままの姿で空を飛んでいるのが、不思議な感覚だった。

杉本久遠 >  
 それぞれが危うさを見せつつも、何とか浮いてるのを見まわし。

「背中を伸ばして軽く顎を上げると起き上がっていられるぞー。
 まあ、最初は慣れるまでうつ伏せになったまま飛ぶのもだからな――おおっ!?」

 バランスを崩したり、倒れそうになって四苦八苦している参加者が多い中、軽々と体を浮かばせているリタの姿。

「おおー! すごいな君は!
 うむ、エアースイムの素質があるぞ!
 浮かび上がれたなら、後は、体重移動と姿勢や手足の動きでコントロールできる。
 ちゃんと監督はしているから、色々試してみてくれ」

 体験用に用意されたS-Wingは安全面も、制御面も初心者向きだ。
 速度こそ物足りないだろうが、生身で飛ぶのとはまた違った、それこそなにかに『乗っている』感覚に近いだろう。
 そしてリタの様子に大丈夫そうだと思えば、他の参加者一人一人の様子を見て回っていく。

「お、前傾姿勢でも安定してるな、それなら大丈夫、直立するのは意外と難しいテクニックだからできなくて問題ないぞ!
 おおっ、高度が上げられてるじゃないか!
 なあに倒れたままでも上出来だぞ、水泳と似たようなものだからな」

 なんて、それぞれを褒めたり、アドバイスしたりとせわしなく動いている。
 他の参加者を見ても、リタはかなり『できている』方だと見てわかるだろう。

リタ・ラルケ >  
 浮いて周りを見渡すと、自分以外の参加者はなかなか苦戦しているようだった。
 そりゃあ、そうだ。生身での飛行経験のある自分とそうでない人では、そもそも飛ぶイメージの鮮明さに差が生まれるのは当たり前である。
 空中での姿勢制御の感覚、重心を意識したコントロール、ほぼデッドウェイトとなる足の扱い方――これらは自分の飛び方で意識することではあるが、いずれにせよ普段飛べない人が慣れていることではないだろう。

「そう、かな。まあ一応、飛ぶだけなら経験はあるし。色々やってみるよ」

 エアースイムの素質がある、か。チームに所属するとか、そういったことは考えてはないけど、言われて悪い気はしない。
 とはいえ、自分にとってはこれからが難しいところである。浮くだけなら大したことはないが、それでもやはり、足に機器をつけて飛ぶというのは普段と感覚が違う。具体的には、足の方に重心が傾いている。
 "風"を纏繞している時ならば、ある程度風の流れで姿勢をコントロールできるが、今回はそういうやり方はできない。
 とりあえず、前に進もうとして――

「――うわっ」

 バランスを崩し、前の方に倒れかける。ギリギリ姿勢制御が間に合ったが、やはりまだ慣れないようだった。

「……やっぱ、普通に飛ぶのとは感覚が違うね。慣れないなぁ」

 若干のもどかしさを感じながら、少しずつS-Wingの扱いに慣れようと、体重のかけ方や姿勢の制御を試していく。

杉本久遠 >  
「――ははは、直立で動くのは、君でもきっと難しいぞ!
 そうだな、最初は少し前に倒れた姿勢で安定させて、そこから進みたい方向に視線を向けるといい。
 そうすればとりあえず直進は出来る。
 止まりたいときは、背中を伸ばして顎を上げる。
 今度は背中側に倒れるイメージだな。
 身体を倒し過ぎると後ろ向きに進んでしまうから、気を付けるんだぞ」

 そう、言った通りリタの方もしっかり見ていたのか、そうアドバイスする。
 要は、倒れ気味な姿勢が自然な飛行姿勢で、体を倒した方に進んでいくという事だ。
 先ほどの大会を思い出しても、早く泳ぐ選手ほど体を前に倒していたのを思い出せるだろう。

「他の人も、最初は倒れ気味の姿勢でいいからなー。
 そうだな、これくらいの角度が一番楽になるはずだ」

 そう言って、70度程度の角度に前傾して見せる。
 足から頭まで、ピシッと軸が通っているように真っすぐな姿勢だ。

「体をまっすぐにできれば一番安定するが、多少姿勢が崩れても大丈夫だ。
 ふらついたりしないように安定すれば、そこから動き出すのはそう難しくないぞ!」

リタ・ラルケ >  
「前に倒れた姿勢で安定、それから、視線を進みたい方向に……」

 言われるがままにやってみる。未だぎこちない動きではあるが、少しずつ前に進んでいく感覚がある。

「……ブレーキは、背中側に倒れるイメージ」

 ゆっくりと、速度が落ちる。わずかに後ろに動きながらも、なんとか止まることはできた。
 他の人に指導を行う男の人を、横目に見る。綺麗な姿勢だなと思いながらも、見よう見まねで角度をつけてみる。
 思ったよりも、急だ。だがそれで姿勢を整えてみれば、なるほど確かに安定する。

「……これなら」

 これくらい安定すれば、移動はそう難しくない。
 前に進む。少し行ったところで曲がってみる。右に。左に。たまに円を描いて、右回り。左回り。

「――ああ」

 少し、コツをつかんだ気がする。なるほど飛び方こそ異なるが、ここまでくれば後は普段との違いを意識すればそう難しいことはない。

「楽しい、なあ」

 自然と、そんな言葉を零していた。

杉本久遠 >  
 気づけば、リタの動きに周りから声が上がり、拍手が鳴っていた。
 他の参加者もリタを真似するように動き始め、ぎこちないながらも泳げるようになり始めている。

「だはー、本当にすごいなー君は!
 うむ、それだけ動ければもう高度を上げても大丈夫だろう!
 前に進む要領で、背中を少し弓なりにしながら上を向いてみると良い。
 下りるときは、少し不格好だが腰を落とすようにするとゆっくり下りれるぞ」

 久遠もまたリタの動きに拍手を送りながら、次のステップへと言うように伝える。
 そして嬉しそうに笑顔を向けて、ぐっと親指を立てた。

「楽しんでくれているなら何よりだ!
 まだ時間はあるからな、じっくり泳いでみるといいぞ」

 そのまるで曇りがない、少しばかり暑苦しい笑顔からは。
 純粋にエアースイムが好きなのだと、見て取れるようだったろう。