2021/02/06 のログ
ご案内:「幻生研究室」に暁 名無さんが現れました。
ご案内:「幻生研究室」に藤巳陽菜さんが現れました。
■暁 名無 > 「んー……今日は割と暖かい日で助かった。」
穏やかな午後の昼下がり、窓際に据えたデスクに向かいながら俺は大きく伸びをした。
窓から入ってくる日差しはこの時期にしては暖かく、休日というのも相俟って少しだけ眠くさえなってくる。
とはいえ、仕事はてんこ盛りなので午睡なんて取る余裕はないのだけども。
「はあ、便宜上の学年末試験も近いし、それ以前に中間試験があるし、休まる暇ねえなあこの時期はな。」
本土の大学等に進学予定の生徒たちの入試もあるし、進路相談にも乗らなければならない。
進路指導担当というわけでもないのに、ぼちぼち俺に相談に来る生徒が居るのは一体どういうことかね。
──と、そんな風に俺は本日もわりと忙しい一日を送っている。
■藤巳陽菜 > ……本当は特に急ぎの用事があるわけではない。
直接会うような必要がある用事でもない。
ふと、その部屋の近くにやって来た時に久しぶりに会ってみたくなった。
衝動的にそんな事を思って扉を叩く。
「……失礼します、暁先生おられますか?」
そう尋ねながら試しにドアノブを回せば動いて、返事を聞く前に部屋に入る。
「こんにちは暁先生。あー……もしかして今忙しかったりします?
後にした方がいいでしょうか?」
入ってきたはいいもののそのデスクの前の教師を見て急にくる不安。
■暁 名無 > 欠伸を噛み殺しながら一先ず自分が担当する授業の成績表をつけていく。
今年は目立った負傷者もなくまずまずの成績を残せている生徒が多い。ひとえに俺が体を張ったリモート授業の賜物だと思おう。
「まあ授業も軌道に乗ってきたってことかねえ。
教員はほどほどに、出来れば研究の方をメインでやっていきたいんだけど──と?」
ノックの音に顔を上げ、中へと入ってきた生徒を見やる。
馴染みのある女生徒が静かに部屋へと入ってきていた。
「ああ、藤巳か。別に今日はそれほど忙しくねえけども。
どうした?何か悩み事か?」
特に事前に連絡もなく、唐突に来るとは珍しいな、と思いつつ訊ねる。
まあ藤巳が抱えるような悩みなんて下半身絡みだと思うが……なんか嫌な言い回しだなこれ。
■藤巳陽菜 > 「そうなんですね……良かった。」
忙しくないと聞けばひとまず胸をなでおろしてデスクの前まで進む。
日差しがあって温かい。この蛇の身体は寒い時期を生きるのにあまりに向いていない。
「いえ、悩みっていうわけではないんですけど。
今、薬の素材を集めててもしかして先生なら持ってないかなって思いまして……。
こういうのなんですけど……。」
スマホの画面にリスト化された色々な素材、転移荒野に生息する幻想生物の素材も載っている。
「前、作ってた変身の薬の改良版なんですよ。
ラピス先生っていう先生に色々教えてもらいながら作ってるんですけど……。
もし、必要ならお金とかも出しますから!」
■暁 名無 > 「ふうん?薬の素材ねえ。」
示された一覧に目を通してみる。
なるほど、確かに俺の分野の物が見受けられる。
とはいえ誰が指示をしたんだろうか、藤巳が独力で調べるには専門的すぎる気がしないでもない。
魔術というよりは錬金……
「ああ、ラピス先生か。なるほどな。
幾つか転移荒野に行かなきゃならないが、それ以外は工面できる物もある。
金なら要らんよ、どうせ副産物みたいなもんだしな。」
ラピス先生の指定なら納得がいった。
そういえば夏頃にタバコの代替品の試作を受け取るような話をしてた気がする。
だいぶ遅くなったけど、行かなきゃなあ。
■藤巳陽菜 > 「ありがとうございます凄く助かります!
普段よく行くお店ではちょっと高くて困ってたんです。」
幻想生物の素材というものは高い。
危険を伴うし貴重だし……。
「副産物ってああ……この前の爪みたいな……。
大分過激な集め方ですね。」
以前のリモート授業。
この教師の突き刺さっていたワイバーンの爪を思い出す。
ああいう感じで集まるのかもしれない。
「ええ、そんな悪いですよ!
何かお金以外でも何か手伝えることとかないですか?」
流石にただで貰うというのはあまりいい気分ではない。
いくらなんでもこの教師に頼りすぎてる。
■暁 名無 > 「まあ、そりゃあな。
一般流通させるようなもんでもないし、そういう物は得てして定価という概念はないし。」
仕入れが安定しているのならともかく、この手の素材の入手は安定しないだろう。
自分で採集に行けるのが何よりだが、藤巳にはさすがに危険が過ぎる。
「あー、いや、あれはたまたまで。
もっと安全な集め方とかもあるからね、うん……」
あれは襲われたらどうなるか、が前提だったから傷だらけになっただけで。
本来なら襲われないどころか、ワイバーンなんかと遭遇しない方法を取るのが普通である。
無論、俺もそういう手段は取れる。本当だぞ。
「別に回収に金がかかる訳でもないしなあ。
売りに出すのは気が引けるし、かといって棄てるのは手続きが必要な場合もあるし。
貰ってくれる奴が居るなら貰ってもらうのが一番手っ取り早いというか……」
貸しにもならないような事だから、別に気にしなくていいのになあ。
■藤巳陽菜 > 「需要が追いついてないんですよね、どうしても。」
この島にはあまりもそのような素材を必要とするものが多い。
需要と供給のバランスが追いついていない。
流石に家畜化するのも難しそうではあるし……。
「……安全っていっても生き物相手ですし。
無事に帰って来てるので今更特に何もいいませんけど……。」
肩の方に視線をやる。
前に受けた傷は無かったみたいに普通に動いている。
「……そうですか。そこまでいうなら貰いますけど。」
そう言われてしまえば話はそこで終わって……。
「……何か久しぶりに会った感じしませんね。
いや、私だけかもしれないんですけど……。」
そう、陽菜は自身の身体の性質上一時期はオンラインの授業を主に履修していた。
この幻想生物学の教師ともこうして直接顔を合わせて話すのは久しぶりで……。
■暁 名無 > 「いや、追いついてないのは供給の方な。」
とはいえそういった素材の代替もある程度研究が進んでいるはずだ。
それでも需要に追い付けていないのが現状なのだろう。
「生き物の方が規則的な行動をすることだってあるんだぞ?
まあ、その辺は授業で扱ったりもするが。」
それを間違ったらこうなるぞ、というのが件のリモート授業だったりする。
まさか生徒に危険な生き物の前で間違った行動を取れ、なんて言えるわけもない。
「ああ、貰ってくれ。
とはいえあるのは飼育場なわけだが……ふむ。」
自力で採集して貰うのも良いかもしれない。
簡易フィールドワークにはなるだろうか。危険な生物も居ないし。
「ん?……そうか?
はは、そう思うならもっと気楽に来てくれて良いんだぞ?
それともまだ学校に来るのは不安があるか?」
頬杖をついて藤巳を見ながら笑う。
とはいえ自主退学未遂までした生徒が、こうしてまた復学して顔を見せに来るだけでも十分過ぎるとは思うくらいだが。
■藤巳陽菜 > 「……言い間違いです!!!
言い間違えました!そういうのは誰にでもあると思います!!」
顔を隠して手をブンブン振る。
純粋に間違えた、間違えてしまった。
「あっ急いでないのでいつでもいいですよ。
今度寄る時にでも……。」
急いで他の素材が手に入るわけでもない。
「最近は体の方も落ち着いてきましたけど……
ちょっと寒くて……もう少し温かくなってきたら本格的に復帰しようと思ってます。」
蛇の尻尾その先を揺らす。
……この身体は冬に行動するのにあまりに向いてない。
■暁 名無 > 「はは、少しは成長したかと思えば中身は中々変わらんもんだなあ。」
少しだけ微笑ましく思いつつ。
それはそれとして相応に成長もしてるようだ。ゆさゆさしている。
「今度来た時には転移荒野にある素材を用意しとくから。
手に入るものは手に入るときに手に入れとく方が良いだろ。簡単に腐るようなものでもないしな。」
この後何か用事があるなら荷物は少ない方が良いだろうけども。
善は急げというか、思い立ったが吉日というか。事は早い方が良いとは俺は思う。
「まあ、身体的な事よりも精神的な事の方が心配だが。
ともあれ、だいぶ落ち着いたようで何より何より。俺も立ち回った甲斐があったってもんだ。」
藤巳の蛇体へと視線を向け、一度大きく背伸びをする。
やっぱり知ってる生徒にはちゃんと卒業して貰いたいと思うあたり、俺もだいぶ教職に染まったと思う。
■藤巳陽菜 > 「……先生もずっと変わらないみたいで何よりです。」
視線を感じれば腕で隠すように。
……隠れてはない。
「ありがとうございます。
じゃあ貰っておきますね。」
一気に持ち帰るとなると確かに少し多い。
今は丁度袋もあるし。
「あの時は本当にありがとうございました。
私としては凄い恥ずかしい思い出なんですけど……。」
あまり思い出したくない記憶。
追いつめられてた時とは言えかなり短慮だったように思う。
■暁 名無 > 「はっはっは、流石にこの歳になるとちょっとやそっとじゃ変わらんわ。」
隠せてないない、と手を振って笑いつつ。
うん、こういうやりとりもだいぶ久々だ。
「おうよ、持ってってくれ。
んじゃ摂りに行くか。気分転換も兼ねて、藤巳も自分で回収する方が勉強にもなるだろ。」
よっこいせ、と椅子から腰を上げる。
何だかんだ座りっぱなしだったから、少し腰が痛い。
「まったくだ。
ま、今になって恥ずかしく思えるなら大丈夫だろ。
ほれ飼育場行くぞ。あ、汚れるかもしれないから上着や荷物は置いていきな?」
ソファの上にでも、と応接用のソファを指差して。
■藤巳陽菜 > 「……うう。」
……一応隠してみたものの逆に恥ずかしい。
「はい、お願いします。
……実際に生物に触れる機会も少ないですし。」
勉強になるというのは確かだし。
どうやってとれるのか興味もある。
「荷物は特に……上着も脱いだ方がいいです?」
そこまで汚れないとは思うけども素直に脱いで。
畳んでソファの上に置く。
■暁 名無 > 「汚れるかもだし、今から行く飼育場は此処よりだいぶ気温高めだから。」
あと単純に俺の眼の保養。とまでは言えないが。
特に疑いもせず上着を脱いでソファに置いた藤巳を見て、俺もワイシャツの袖を捲る。
「さて、まずは何から行くか。
んー……羽根とかなら拾うだけだし、そこから行くか。」
藤巳からすれば薬の素材の採集、俺からすれば飼育場の掃除である。
ひとまず研究室から隣へ続く扉へと向かい、開けば廊下が続いていて。
「羽根羽根、3番の飼育場だな。」
■藤巳陽菜 > 教師の後ろに続いて進む。
「まずは羽ですね!」
ぐっと伸びをして気持ちを切り替える。
……羽を拾うくらいだけだからそこまで気合を入れる必要はなさそうだけども。
「……床の上も汚かったりしますよね?
ちょっと汚れないような保護の魔法使ってから入りたいんですけど。」
扉の前で立ち止まって尋ねる。
生き物を飼っているという事はどうしても汚れてしまうだろうし。
汚い床の上を素足……というか生身そのままで行くのは流石に憚られる。
■暁 名無 > 「ああ、羽根だ。
他には卵と爪……薬草とキノコくらいなら採れるはずだ。」
藤巳の言葉に頷きながら振り返る。
ううん、やっぱり上着を脱いできてもらって正解だったかも……。
「え?ああ、床?
まあ汚れてるかどうかと言うなら、汚れてる……かなあ。
実際見てもらってから藤巳の判断で決めてくれ。」
3の番号が振られた扉の前で足を止め、ふぅ、と息をついてから扉を開ける。
その先は───密林が広がっていた。