2022/02/01 のログ
角鹿建悟 > 「……すまない、清水…さん?俺は料理は空腹を満たすもので、楽しいとは思えないんだが。」

この返答である。そして、芸術というものは多分男はさっぱり分からないだろう。
何かを『直す』、『創る』事ならもしかしたら話が意外と合うかもしれないが。
むしろ、芸術的な観点や視点はまだ悪友の方が全然豊富だと思われる。

「――いや、仕事疲れはあるが別にそういう疲れは無いな。
会話をするのが嫌い、という訳ではないし…。
…ただ、こういう場と今まで無縁だったから…なんと言うか…慣れない、というか違和感が強い。
…自分が『異物』みたいに感じるというか……大袈裟かもしれないけどな。」

と、自分の言葉に小さく吐息を零して肩を竦めて。あと、悪友の言葉に「そうだな」と頷く。
…否定しない、突っ込みしない、自覚はあってこれである。この男の仕事フリークぶりはかなりアレだ。

「…お前は俺にサラリと無駄に高いハードルを設置するのをどうにかしてくれ。
あと、哲学じゃなくて素朴な質問のつもりだったんだが…。」

この悪友は語彙も豊富でユーモアもある。色々とそこは尊敬も出来るが、こっちがピンと来ない事も多々ある。

「…トルコ料理…羊飼いのサラダ……。」

後で調べてみるか、と。料理に付いては本当にサッパリだ。
最低限、ちょっとやれば作れる程度のものが限界で、凝ったものはまず無理。
そして、サラダに関してはやっぱり美味しいかどうかというより栄養素方面で考えてしまう。

山本英治 >  
「料理を楽しいと表現するのはなかなかにユニークっすね清水さん」

いや、楽しいけど。
人が作ってるって言ったらそれより前に表現するべきものはある気がする。

「羊飼いのサラダ…チョバンサラタスですね」
「レモンの風味香る、トマトが美味しいサラダです」
「常世学園の学生の間でトルコ料理が流行らないかなぁ……」

「そして先駆者としてちやほやされたい」

ぐ、と拳を握って真顔でジョーク。

「会話に場違い感を覚えるのか……」
「そいつはもうちょっと“人間”に慣れないといけないな」

素朴な質問だったら言うことは簡単だ。

「みんなで美味しい食事、みんなで楽しい会話、みんなで交流、トテモタノシイ」

な、簡単だろ?
と言って腕時計を見る。

「そろそろ片付けを手伝ってくる」
「テーブルを片すなら、俺のパワーの見せ所だ」

じゃあな、ごゆっくり。そう言って二人に手を振って去っていった。

ご案内:「【イベント】常世大ホール 新年会会場2」から山本英治さんが去りました。
清水千里 > 「よろしければ、今度一緒に二人で料理を作ってみませんか?」

料理というものはそれ自体が文化である。
単純に栄養のためだけに食べるのなら、熱を通したり、適当に切って盛り付けるだけでも良いはずなのに、
人は驚くほど多様で手間のかかる複雑な調理法を、頼んでもないのに創り出してきた。
それは結局、いつの時代も、料理が人間の生活と幸福を離れては存立しえなかったからであろう。
料理が文化であり、ひとりの人間の生活がとその人間の文化と切り離せないものであるのなら、
料理とはすなわちその人間の人間性の核なのだ。
清水は人間の食文化の奥深さを知っていたし、
それをどうにか角鹿と共有できないかと考えたのだった。

「料理というのは、どれだけお金をかけるかでも、どれだけ良い食材を使うかでもないんです。
ただ単に、『”創る”ことに真剣であること』が一番大事なんです」


そして、場の雰囲気に慣れない角鹿には、

「なら、いいじゃありませんか。
話すのが好きなら、いつまでだって話していられます。
周りの目なんか、気にすることありません。
私は角鹿さんとなら、いつまでもおしゃべりできますよ」

と、彼を言葉でエスコートするように振舞う。

角鹿建悟 > 「……は?…アンタとか?」

流石に予想外、というより全く考えてもいなかった提案をされて僅かに目を丸くして。
彼女の意図や考えはサッパリ分からない。そもそも唐突過ぎて理解まで微妙に間があった。

それから、彼女の言葉を改めて吟味するように沈黙を挟んでから。

「…まぁ、機会があれば俺は構わないが…。」

と、頷いた。渋々、といった感じでもなく真面目な顔で。
彼女の語る『創る』という言葉に、少し反応したのも了承した大きな理由だ。

――何故なら、男の思いや執念は『直す』事につながりつつも。
その本質――本当の願いは『創る』事なのだから。形は違えど創るという言葉には反応もしてしまう。

「…まぁ、好き嫌いより単に俺は話題を提供したりするのが苦手だし、口下手だからというのもあって…。
…と、いうよりアンタ――…清水さん、割とお節介焼き、というやつなのか?」

首を緩く傾げつつ、これまた率直な問い掛けを。変わらず悪気や他意は一切無くて純粋な疑問だ。
悪友の言葉にも、少し思うところがあるのか僅かに一度目を閉じて。

「――そうだな。俺はもうちょっと人間にならないといけないな。」

ある少女にも指摘されたのだ。角鹿建悟は『人形』じみている。
感情はある、思いもある、人間味もある。でもその生き方は…日常のズレは矢張り人から少々遠いものだ。
だから、彼のシンプルな言葉に「そういうものか…」と、呟くように口にして頷く。

「…ああ、パワーはいいが調子に乗って出しすぎるなよ…またな、英治。」

軽く手を挙げて悪友を見送る。そういう所は年齢相応の少年ではあろうか。

――つまり、アンバランスなのだ。人らしい所と人形じみた所が混在している。

清水千里 > 「ありがとう!」

と清水は角鹿の言葉にまるで子供のように喜び、微笑む。

数千年の人類史の時間の中で、
このイース人は多くの人と付き合い、多くの苦難に直面してきた。
有限な観察者に過ぎぬ彼女にできることには限りがあり、
一人の人間を超えたところのものを人々に与えることはできなかった。

それでも。

彼女は”独り”ではなかった。

自分の正体を明かすことができなくとも。
助けることのできる命を助けられなくとも。

彼女は信じている。
人間の力を。

「”人間”になるだなんて、そんなことを考えるのはおよしになって! 全然考えないことです!」

と、思わず清水は叫んだ。

「それに、”人間”に見えないからどうだっていうんですか?
人なんて、いつ他の人に人でなし扱いされるか、わかったものじゃありません。
それなのに近ごろは、皆が大きな奔流に流されるままに、ただ他人に認められたいがために、”人間”になろうとしてるんです!
私から見れば、皆さん人間以外には見えませんよ、もちろん、角鹿さんもです!」

お節介。そうかもしれない。
清水はどんな人間にも心を開く。
それが人間である限り、
目の前の人間が、たとえどんなに心を閉ざして、時に彼女に危害を加えようとしても。
なぜなら、彼女は人間の信仰者だからだ。

角鹿建悟 > 「…あぁ、うん……。」

気圧されているのか引いているのか。どちらもおそらくは違うがやや引き気味に頷いた。
そこまで嬉しい事なのだろうか?男にはよく分からない事だ。
それがズレなのか、単に彼女の事情を知らないのかは謎のまま。

「……!?……あ、あぁ…分かった。」

その叫びに今度ははっきりと気圧されたように。
彼女の感情と言葉の勢いに付いて行けていない、というような感じだ。
正直、彼女の言葉や思いを男は殆ど受け取れて居ない。伝わっていない。
初対面の相手からそんな事を語られても、意味は分かっても理解が追い付かない。

それが、今まで蔑ろにしてきた数多くの取りこぼしたものの清算だ。
きっと、一朝一夕でどうにかなるものではない――まだ、ちゃんと人になるまでの道のりは遠く。

「…悪い、俺にはアンタが何を言いたいのか正直よく分からないんだ。
ただ、アンタが人間というものを愛している…が、正しい使い方なのかは分からないが。
ともあれ、そういう気持ちを抱いているのは何となく理解した。」

何処か申し訳無さそうに、気を取り直してゆっくりと息を吐き出しながら口にする。
残念ながら、今の男には彼女の伝えたいその意味がまだ上手く理解出来ない。
今までが今までだったから、他の連中なら理解できたり感銘を受けたり、気付く事もあっただろう。

――だが、今の『直し屋』にまだそれをちゃんと理解するだけの土台や下地が足りなかった。

「…すまん、俺もそろそろお暇する…この格好ではやっぱり目立つみたいだからな。
…料理については、まぁその機会があればお願いする事にする。」

軽く会釈をしつつ、彼女に背を向けて一足先に歩き出す。
冷たいようだが、そっけないようだが、ちょっと慣れない場所の相俟って落ち着かない。

(――つくづく、自分が”欠けている”のを思い知らされるな。)

欠けているのではなく、それを実感できる事が今まで無かっただけ、なのかもしれないが。

やがて、彼の姿もそのまま会場から消えることだろう。

ご案内:「【イベント】常世大ホール 新年会会場2」から角鹿建悟さんが去りました。
清水千里 > 「ごめんなさい、私ったら……」

また、熱が入りすぎてしまった。
人間への信仰は、制御することなどできぬように思える。
それは常に人間の本性に対して大きな疑念を投げかけるがゆえに、
狂信とほとんど変わらないものとしてしか存在しえないからだ。

相手を傷付けることは、望むところではない。

この愛を、人間に理解してもらう日は訪れるのだろうか?

「また、よろしくお願いします」

彼の去り行く背中を見ながら、
彼女は『もっと探究しなければならぬ』と考えた。
それこそ、彼女がイース人である証でなのだ。

ご案内:「【イベント】常世大ホール 新年会会場2」から清水千里さんが去りました。