2019/02/14 のログ
ご案内:「幻想生物研究室」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「ファッ●ーンバレンタイーン!!!」

暁名無の根城こと幻想生物研究室にて。
パソコンへと目を向けたまま名無は力の限り叫んでいた。
本日4度目の絶叫である。聞いてる方の喉が痛くなるような汚い高音の絶叫である。

「まったくよぉ今日と言う日くらいは女生徒にちやほやされてやろうと思ったのに
何で俺は研究室引きこもってコカトリスの動向なんて探ってんだろうなあ
ハイ先生逃がした馬鹿が居るからでーす正解正解ハナマルあげちゃう!!!」

ローを突きぬけたテンションは一周回ってハイになった。
事の処理に追われる羽目になったため本日の試験監督も交代になった。
生徒への深刻な被害を出さないためにと昨晩から泊まりで対応に追われることになった。
そんな状況に置かれた名無にとって、とてもバレンタインだーなどと浮かれている余裕はない。

「ホントにね!!あれほど幻想生物飼うなら二重も三重も管理を徹底しろって授業でも言ってんのにね!!
 まったく意識の低さに頭が痛くなるよあー甘いもの食いてえなあ!」

そんな普段より遥かに鬼気迫る様子の名無に怯えてか、今朝からこの研究室を訪れる者はほぼ皆無だという。

暁 名無 > 「大体このクソ寒い中雛逃がすってどういうことだよ普通死んじゃうぞ!
 って事でね確実にこの辺りに居たら死んでるよなってところを潰してマッピングしてみたら案外暖かいとこが多いんだな学校の中ってな!
 ちなみにこの研究室ですがエアコンが雑な仕事をしてくれやがってただいま室温28℃です!そこにパソコンの排熱とか死ぬわ!!」

喋ってないと気が狂いそう。
三十分ほど前に同僚へ状況報告の電話をした時、彼はそう言ったという。
実際のところ気が狂ったように独り言を続けているわけで、もうこれでは気が狂ったから喋ってるのか、喋ってないと気が狂いそうなのか判断がつかない。

「目撃情報などなど含めて徘徊ルートさえ特定できればあとはローラー作戦が使えるんだけどもなーほんとなー
 やっぱここは情報集めるために待ちの姿勢だろうか。
 そう言ってもう一日半経過してまーすやったね!」

口調はハイテンションだがその瞳は暗く濁り、目の下にはクマが出来始めている。
エナジードリンクは底を突き、煙草を喫う暇もなく、色んな気力が尽きようとしていた。

暁 名無 > 「よし、よし、特にこれと言って新しい報告なし!
 すげーな流石の潜伏力だわ。孵りたてとはいえ幻想生物は幻想生物ってことを思い知るわ!
 頼むよ出て来てくれよお前が出て来てくれないと俺がこの部屋から出られねえんだよマジやめてくれよぉ。」

パソコンデスクからおもむろに離れると、勢いをそのままにソファに飛び込む。
本日5度目の飛込みだ。もうなんかどうにでもなーれ☆というある種の限界を迎えた合図である。

「SNSでも情報提供とか呼び掛けてみたけどー?
 いまいち信用していいか分からないですしー?
 巷はバレンタインだバレンタインだって浮かれてますしー?
 ああもうこれ詰んだ。完璧詰みですわーオワタ。」

ソファに突っ伏したまま、泣き事を繰り返し始める。
傍から見れば情緒不安定極まりないが、当人はそんな事意識している余裕はないのだ。

暁 名無 > 「やだよぅ。おれもバレンタインでうかれたいよぅ。
 けんきゅうしつからでたいよぅ。やだよぅ」

くすんくすん。
終いには啜り泣きまで始めるほどには、暗礁に乗り上げてしまったらしい。
しかしそこは暁名無。
室温が高いお陰で半袖シャツにハーフパンツといった楽な格好でソファに転がった所為か、次第に眠気が勝り始める。

「いやいやいや、流石にここで寝る訳にはいかんでしょ」

見つかったら怒られる可能性は非常に高い。
が、昨日から短時間の仮眠を二度ほど摂っただけで仕事し続けている身なのだから、少しくらいは大目に見て欲しい。
そんな事を考えながら、ぼんやりと手の中のスマホを見つめる。

暁 名無 > 「うん……うん
 特に何も……無い、か。
 おっけーおっけー、じゃあ俺はちょっと……」

次第に目蓋が重くなる。
睡眠不足が深刻過ぎて耐えられそうにないようだ。

「ちょっとだけ、さんじゅっぷんだけだから……」

カツーン、と手から滑り落ちたスマホが床に落ちる音が響く。
しかし、名無はソファに突っ伏したまま、そのまま日が沈むまで動くことは無かった。
研究室を僅かな寝息だけが占領していく。

ご案内:「幻想生物研究室」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「幻想生物研究室」に北条 御影さんが現れました。
北条 御影 > 「―うわ暑っ」

静かに扉をあければ、むわっとした熱気が全身を撫でる。
このクソ寒い中何故この部屋だけ…などと考えながら室内を見渡せば、
力尽きたようにソファで眠る教師が一人。

「……やっぱり」

SNSに不穏な書き込みを見つけて何となく予想はしていた。
予想はしていたが、この惨状は正直それを上回っている。
蒸し風呂のような熱気のこもった部屋に、机に並んだエナジードリンクの空き缶。
床に落ちたスマホに、倒れている教師。
教室内に響く時計の秒針の音に交じり、時折寝息が聞こえることから死んではいないのだろうが―

「……なむなむ」

取り合えず、手を合わせておいた