2021/02/10 のログ
ご案内:「幻生研究室」に暁 名無さんが現れました。
ご案内:「幻生研究室」にセレネさんが現れました。
暁 名無 > ──冬だ。
つい先日は穏やかな春の様な陽気に満ちた天気だったのに。
その時と同じくらい良く晴れた空模様なのに。
なのに、外気温は一桁を示している。冬だ。間違いなく、2月だ。

「いや冬が寒いのは良いけども。せめてもう少し寒暖差をだな……」

窓際のデスクに陣取って業務を遂行しつつ、俺はぶつぶつと愚痴を溢す。
室内は空調が利いているとはいえ、窓際はやっぱり外からの影響を受けやすく有体に言ってしまえば寒い。

「……ココアでも入れるかなー、でも今血糖値上がったら多分寝るなー」

セレネ > 己は寒さには強い方だ。
けれども、それでも暖かな室内に居た方が快適である。

寒い廊下を歩き切り、ノックも無しに扉を開けて。

「――あぁ、寒い。こんにちは先生。遊びに来ました。」

冷たい手を擦りながら研究室の主へと声を掛ける。

今日も仕事だろう、デスクの上で作業中だ。
見かける度に仕事をしているように見えるがそんなに忙しいのだろうか。
…まぁ、基本は独りだろうからそれもそうかと内心で納得。

何の作業中なのか少し気になって、相手の傍へと近寄り手元を覗き込んでみたり。

暁 名無 > 「んー、おう、セレネか。」

突然の来客に顔を上げ、訪問者を一度確認して視線を手元のパソコンへと戻す。
遊びに来た、と言われても大したもてなしも出来ないのがほぼ常態みたいなものだが、まあそれでも顔を見せに来てくれるのは有難い。

「こら、見るな。他の生徒の成績関係だから。」

毎年篩に掛けてはいるものの、どういうわけかそれなりな人数が幻想生物学を履行してくる。
俺としては両手の指で足りるくらいが丁度いいというのに、何やかんやで毎年新規だけで教室一つ埋まりそうなのが悩みの種だ。
近寄って仕事を覗こうとするセレネへと注意を飛ばし、そのままパソコンの画面を切る。

丁度いいしこのまま休憩にしてしまおう。

セレネ > 覗き込もうとした瞬間、消された画面。
成程成績関係なら確かに個人情報でもあるし己が見るのは宜しくない。
少なくとも此処では生徒の身分なのだし。
真っ黒な画面を見ては失礼しました、と一応の謝罪。

「休憩も兼ねて少し貴方にお聞きしたい事があるのですけど、宜しいでしょうか。」

くるりと背を向け、応接用のソファへと座り脚を組んで問いかける。
彼は幻想生物学の教師だ。
なら、少なくとも何かしらの情報は知っているかもしれない、と。

態度は凡そ相談する側のものではないけれど。

暁 名無 > 「聞きたいこと?
 珍しいな、お前さんがそんな改まって物を聞きに来るなんて。」

意外に思いつつも、思い返してみればそうでもないような。
何はともあれデスクから離れマグカップを取りに戸棚へ向かう。

「紅茶切らしてるからココアで良いか?」

コーヒーも切らしてる。緑茶もない。麦茶ならある。
でもさすがにこの時期に麦茶を出すわけにもいかないから、とりあえずココアを飲むか尋ねてみた。
どちらにしろ俺は飲むんだけども。

セレネ > 「殆ど情報は出揃ってはいるのですけど、一応の確認と言いますか。
…基本は自分でどうにかしますしね、確かに珍しいかもしれません。」

相談する人物は此処でも少数だし。
デスクから離れ戸棚に向かう相手を蒼が静かに眺めて

「……はい。」

むしろコーヒーと言われなくて良かった。
ココアはあまり飲まないけれど身体が暖まるなら良いか。

「で、聞きたい事というのは龍族…ドラゴンについての事なのですが。」

己が調べた限りだと此処と己の居た世界とではそう認識に差がないというのは分かっている。
が、改めて聞いてみようとまずは一つ。

暁 名無 > 「──ふむ、ドラゴン」

また大層な種族が出て来たな。
マグカップを二つ用意し、市販のココアパウダーをカップに放り込みながら考える。
ドラゴン、と一口に言っても多種多様ではあるが、まず大きく分けて二種。

「それは生物としての竜種のドラゴンのことか?
 それとも、権威や力の象徴、概念としてのドラゴンのことか?」

そのどちらかによって回答も変わる。どちらにせよ人並みの知識は持ち合わせているけれども。
カップにお湯を注ぎ、マドラー代わりのスプーンで溶かしながらセレネを見る。
んまあ、龍族、と前置きしたからには前者の事を聞きたいのだろうとは思うが。

セレネ > 生物としてのドラゴンか、概念上のドラゴンか。
如何せん”彼”を見たのは一瞬、普段は友人である人物を介する事で初めて意思疎通が可能なのだ。
だが自身で調べた限りだと。

「今回は前者についてですね。」

後者のドラゴンも気にはなれど今はいい。
また別の機会に聞くとしよう。
マグカップにスプーンでココアを掻き混ぜる音を聞きながら思考を纏める。
何を告げ、何を噤むべきか。

暁 名無 > 「なるほど。
 とはいえ、生物としての竜種なんて今日び珍しいものでもないだろうに。」

マグカップをセレネの前に置き、テーブルをはさんで向かい合うように俺もソファに腰を下ろす。
そう、生物としてのドラゴンなんてものは今や珍しくも何ともないと言える程に満ち溢れている。
転移荒野はもちろん、貨物運搬にさえ飛竜種が使われることさえあるくらいだ。
なのに態々俺のところへ聞きに来る、というのはどうにも腑に落ちない。

「まあ、珍しいか珍しくないかは今は置いといてだ。
 それで、何を聞きたいんだ?」

湯気の立つカップで指先を温めながら、向かいのセレネを見つめる。
改まって何を聞きの来たのやら、だ。

セレネ > 「ココア有難う御座います。
此処では頻繁に龍種はお見掛けしますね。
世界によってはドラゴンは伝説上の生き物だったり仕留めれば英雄になれる種族であったりしますのに。」

己の前に置かれたマグカップに礼を言い両手で包むように持ち上げる。
此処まで龍種を手懐け使役している世界もあるまい。
…少なくとも己が知っている限りでは。

「…『貴種龍』、という龍族をご存知でしょうか。」

己は相手へ蒼を合わせず、湯気立つココアへ落とす。
興味があって現在情報を集めている事の一つだ。

暁 名無 > 「貴種龍。」

セレネが口にした単語を復唱する。
貴種龍、きしゅりゅう。貴龍種ではなく、貴種龍、か。

「話に聞いたことがある、程度でしかないが。」

そう名乗る存在が在る、というのを公安や関連する組織の資料で見聞きしたことはある。
が、まあ、何といえば良いのやら……

「──俺に聞きに来た、ということはだ。
 ある程度自力で調べてみた末のことだろう。お前さんの性分からして。」

ココアを口に運び、少し甘くなった息を吐き。
向かいに座るセレネを静かに見据える。

セレネ > 「えぇ、それでも構いません。
詳しい情報を得るのはどれも難しいものでしたから。」

ここ最近図書館や禁書庫を巡って探した情報も、全てわかるようなものでもなかったし。
相手の言葉に一つ頷く。

「ご名答。
無知のまま聞きに来るより、出来る限り自分で調べてから整合性を取りたいので。」

己は未だマグカップには口をつけず。
相手に問うたのは情報の純度を高める為だ。
己が集めた情報が間違いではなかったと確認する為だ。
だから新しい情報が得られるとは期待していない。

暁 名無 > 「だったら──」

そこまで口にして一度口を噤んだ。
そもそもセレネがどうしてそんなことに関心を示したのか、を考える。
人づてに聞いたのか、あるいは。

「だったら、聞いてることの矛盾にも気付けるだろうに。」

カップを口に運び、湯気に目を眇めながらココアを啜る。
少しばかり熱くし過ぎたか、舌先がヒリヒリする。

「お前さんは生物としての竜種について俺に聞きに来たんだろう?
 まあ情報が少なかったであろうことは察しが付くが、それでもある程度の推測は立てられるだろう。

 ──セレネは、貴種龍を生物だと思ってるという事で良いんだな?」

セレネ > 相手が口を噤んだ。
何かを言い淀んでいるか、それとも考えを巡らせているか。

「…矛盾?」

蒼を相手へ向け、緩く首を傾げる。
手を暖めているマグカップはじんわりとぬくもりを返すだけ。

「――あれは生物ではないので?」

実際どうかは分からないが、意見の一つとして聞いてみる。
正解は”本人”に聞いた方が手っ取り早いが、教えてくれるかは未知数だ。

暁 名無 > 「そもそもだ。
 生物とは、何を以て指す言葉だと思う?」

一つ問いを投げかけてみる。
勿論正答を欲しているわけでもないし、即答を求めてるわけでもない。
なので訊くだけ訊いておいてすぐに続ける

「生物とは文字通り、生きている物だ。
 分かりやすく言えば生命体。生命活動を行う物。
 それは裏返せば、必ず死ぬ物と言っても良い。
 どれだけ強固で強靭で強大であろうと、何らかの手段により生命活動を停止せしめることが出来る存在、それが生物だ。」

ココアが温くなるのを待ちながら、セレネを見据えて続ける。

「そこで俺が最初にお前さんに聞いた質問に戻って、置き換えてみよう。
 お前さんが知りたいのは、死なせる事の出来るドラゴンのことか?」

数少ない資料でも一貫して貴種龍の不死性には言及されていた。
傷を負わせることは出来ても、その生命を停止させるに至ったという例はない。
大変容というターニングポイントを迎え、人間という種のパワーバランスが崩れてなお成しえていないという事は、不死性に関しては確実なものだろう。

であれば。死ぬことがないということは、生きていると定義する事も出来ないだろう。

「思うに、貴種龍というのは、そういう名を冠した限りなく『現象』に近い存在だろう。
 俺が最初に聞いた二つの内の後者、概念的な意味での『ドラゴン』だな。」

セレネ > 生物とは何を指すか。
学問的な事を言えば、生命活動をしている種の事を生物と言える。
思考を巡らせている間だったが答えを待たずに言葉が飛んできた。

「……成程?」

己はこれでも一柱。
ではあるものの、そうだと告げているのは今は一人だけだ。
興味深い意見だと思いつつ、努めて表情は平静を装って。

「意思疎通がある程度出来るという点で生物だと思っていましたが、
成程、その点で言えば確かに概念的ですね。」

脚を組み直し小さく息を吐く。
この目で実物が見られれば是非とも色々研究してみたいものだ。

「そもそもの認識が違っていた感じですかね。
…ではついでに、「神」についても聞いても宜しいですか。」

本当についで、と言わんばかりに微笑んで問いかけてみた。

暁 名無 > 「意思疎通……は一昔前ならそういえたかもしれないけどね。
 電子化が進んだ今、意思疎通が問題なく出来る電子プログラムなんてのもあるし。
 そもそも意思疎通が出来ているかなんて、誰がどう決めるのかって話にもなるからな。」

それはどちらかと言えば人間の定義に近い気がする。
カブトムシとか、意思疎通出来る気がしないけど間違いなく生物だし。

「この世界じゃ古来から人類が太刀打ち出来なかった自然現象を生物のテクスチャを被せて信奉したりする事はざらにあったからな。
 分かりやすく言えば疑獣化、というやつさ。科学の進歩と同時に衰退していったが。」

そのテクスチャが実体を伴い誰の目にも触れられるようになったのが、大変容による変化の一つでもあるだろう。

「──神?
 まあ仕組みとしては今言ったものと同じという認識だな。
 獣の皮を被せたか、より崇め易い様に人間と同じ皮を被せたか、の違いと思ってるよ。」

とはいえ生物としての神、も間違いなく存在しているだろう。
現人神、なんて言葉もあるくらいだ。まあ、少し違う気もするが。

セレネ > 「この世界は大分色々と発達しておりますね。
私にとっては覚えるのも大変ですよ。」

己が育った世界より色々と混じっているから、
似ている部分とそうでない部分とで新しい事を覚えるのが少し大変。

「神として崇めて贄を差し出すというのもありましたねぇ。
……神にとっては有難迷惑な事もありましたけれど…。」

最後の一言は小さく小さく呟いて、

「…ふむ。
まぁこの島なら神格や神族なんてザラに居そうですしねぇ。」

相手の言葉を借りるなら己は人の皮を被せたなにかという事になるか。
良い感じの温度になっただろうココアを一口口に運んで喉を潤す。

暁 名無 > 「まあ元々科学技術が盛んだったところに異世界の技術も流入してきてブレイクスルーが乱発したりもしたみたいだからな。
 学問も細分化に細分化を重ねて、おかげで俺みたいなのも食いっぱぐれないで済んでるわけだが。」

この世界の技術を網羅している人間はまず居ないだろうと思う。
覚えたい事だけ覚えても困ることもあまりない。

「まあ、その辺りは信仰だ宗教だと俺の管轄外だから知ったこっちゃないんだけどな。
 一見非科学的なものでも改めて紐解くと実は……って話も無いでもないが、それは化学屋に聞いてくれ。」

繰り返しになるが管轄外、そして然程興味もない。

「居るだろうな、まあ……幻想生物の括りに入れて良いのかどうか悩ましいところではあるし、『自称』もわんさか居るだろうから。
 旧時代なら神だなんだと騒がれたかもしれないが、こんなご時世じゃあ、な。

 俺個人としては神格や神族というカテゴリに対しても、やっぱり興味はない。
 まあ、一個人として見て関心や興味は湧くこともあるが、それは人間と同じに見做してる様なものだしな。」

相手が『何であるか』より『誰であるか』が肝要だ。
ましてやヒト型であればなおさら。