2022/01/16 のログ
ご案内:「落第街 閉鎖区画」にフィーナさんが現れました。
■フィーナ > 「面倒事に顔突っ込んじゃったなぁ」
閉鎖区画での活動は二度目になるフィーナ。
本来なら1回でおさらばするつもりだったのだが…個人の戦闘能力、そしてこの状況に適応できる性格、そしてこの状況に於いて活用できる能力があるが故に引き止められ、多大な報酬…及び、学生証を餌として吊り下げられ。
結果として、また首を突っ込むこととなった。
契約としては、落第街閉鎖区画の沈静化までの活動。
さて、無線から聞こえた情報……戦闘能力もなしに独り歩きしている人物が居るとの報告を受け、それを探しに空から探すフィーナ。
それらしい姿を捉え、前へと降り立つ。
「えーと…暁さん?念の為、護衛として馳せ参じました。」
その姿は、子供のように小さく…大きい杖に、漆黒のドレス。
よく見れば、漆黒のドレスには赤黒い血がいくつも散っているのが見えるだろう。
■暁 名無 > フルゥ、と肩に停まっているミネさんが囁く様に囀る。
それは何かが近づいている、という警告にも満たない様な報告。
流石に敵意とかそういうのは判別出来ないので、『何か来る』程度のものだけれど。
「ん、何か……と、ホントだ。
確かに暁さんだけども、護衛……は大丈夫って入るときにさんざ風紀に念押しした筈だけど……?」
そしてその通りに一人の少女が宙から降り立った。
護衛、というには仰々しい装備もなく、杖を携えただけの小柄な少女。
うーん、戦闘能力が無いという自己申告と単独行動はやっぱり矛盾してたか。
再三の注意を受けても、「ま、何かあったらなりふり構わず逃げるから」と躱しきれたと思ったんだけどなあ……ダメだったか。
「別段危ないところに踏み込む気も無いけど、どうやらそっちも言われたから来た感じだし……」
にべもなく追い返すのも少し心苦しいな、さてどうしよう。
ミネさんも肩に停まったまま、くるりと首を傾げている。
■フィーナ > 「念には念を、っていうことでしょう。戦闘能力を持たないのなら…あれらに見つかったらまず逃げられないと思いますし」
カツン、と。杖で地面を打ちながら、話す。
ひゅるん、と。目を閉じたまま杖を振り…炎を纏った矢が数本形成される。
そして、地面へと……正確には地面に落ちる種へと放たれる。
種は砕け、燃え散る。
「危険性に関してはまだ情報が出揃って居ない為、どこが危険でどこが安全かはまだ判りかねております。個人の判断で危険か否かは判断してはいけません」
そう、この地べたに落ちている種でさえ、自分たちに牙を向きかねない――――それこそ、ただ体に埋め込まれただけで、取り返しがつかなくなってしまう可能性が高い。
「正直に言えば戦闘能力があっても非常に危険なんです。それを理解していただければ」
■暁 名無 > 「あっはい……すいません……」
あれ?何で俺説教食らってるんだろう?
まあ、相手からしてみれば注意するのも尤もだと思うので素直に謝罪するしかない。
うーん、これなら多少盛ってでも戦闘能力に関しては申告しておくべきだっただろうか。
「い、一応言い訳をさせて貰うと。
それなりに植物に関する知識もあるから、一般の生徒や先生よりは危険かそうでないかの判断は出来ると思う……かなあ。」
こと生物、動植物に関しては教室を持っていた身でもある。
情報が出揃ってないとはいうものの、既に得ている情報だけでも事足りるといえば事足りる。
とはいえ頑なになる理由も無いので、心配は無用だというのが伝わってくれれば、程度の気持ちで言い訳をしてみた。
■フィーナ > 「…であれば、なおさら独り歩きはされないほうがいいですね。
そういう知識があるのであれば、知識の無い者への教授も出来ますし。
情報を持ち帰るのであれば万全を期した方が良いでしょう?」
カツン、とまた杖で地を叩く。
「…まだ、大丈夫かな。貴方の見解を聞かせて頂きたいですね。この地で、どういう脅威があるのかを。
その情報は、とても貴重ですから。今の所、生還率が良くないので知れることは知っておきたいですね」
カツン、カツン、と。定期的に杖で地面を叩く。ぴくり、ぴくりと長い耳が動く。
目は、未だに閉じられたまま。
■暁 名無 > 「万全を期したと、言われたところでなあ……
一応これでも万全なんだ、俺の場合は。
……って言っても多分納得はして貰えないと思うけども。」
見ての通り、と言おうとして言葉を変える。
少女の行動から、どうやら目が見えていないのだと思い至ったからだ。
うーん、となると尚更納得してもらうのは難しいな。
と、軽く頭を悩ませていると、
「どういう脅威、と言われても既に起こっている事がほぼすべてだよ。
心配するとしたら、人に限らず生き物の身体ってのは大抵水分が豊富だから、
肉体深くに潜り込んだ種子があれば、ただ死体を焼いただけじゃ不完全かもしれないってことくらい。
ただ焼け切らなかったならまだしも、そこから火に耐性がつくよう進化されたらいよいよ手が付けられないぞってとこかな。」
正直、燃やすよりも凍らせる方が万一の飛散も防げて効率的だろうとは思っていた。
とはいえ区画全体を凍結させられるか、となるとかなり難しいと判断せざるを得ないのも分かるけど。
■フィーナ > 「…なるほど、たしかに火の耐性がついてしまったら厄介…ですが。そこまで早く進化するものと考察してますか」
たしかにこの植物の繁殖サイクルは著しく早い。
そのサイクルの中で火の耐性を持つものがあれば、それだけが生き残り耐性を持つものが多く繁殖する可能性はある。
「…ただ。この植物は行動を支配し…且つ、その身体能力を向上させているようです。そういった脅威は感じなかったですか?」
起こっていることが解っているのなら、なおどうして一人で探索しているのかがわからない。戦闘に覚えがあるならまだしも…戦闘能力無し、と聞かされているのだ。
つまりは、フィーナは目の前の人物が惚けているように見え、疑いの目を向けている。
起こっていることが全て――――といっても。自分たちが目撃しているものは一つの側面でしかない。
その側面だけを知っても。本質が解らなければ、根本的解決には至らない。
「貴方は、その脅威と接触した場合、どういう対処を取るつもりだったのですか?」
■暁 名無 > 「そりゃね、これだけサイクルが早ければ危惧しとくに越した事は無いと思うよ。」
繁殖サイクルが早いというのはつまり、世代交代が早いということ。
しかしながらこの植物は単為生殖に近い形で繁殖しているようなので、果たして既存の植物に当てはめて良いものか一概には決められない。
実物を見るよりも風紀委員が押さえてるであろう違反部活からの実験データを精査する方が、情報としては有意だと思うなあ……。
「うーん、身体能力を向上って言っても……結局は宿主が出来る事以上の事は出来ないんだよ。
たとえば人間に寄生したからといって空を飛ぶようになるわけじゃないし、鳥に寄生したからといって腕が生えるわけでもない。
であれば対処なんて特に難しいものじゃないだろ?」
果たしてこの説明で納得して貰えるかどうか。
とはいえ俺からすれば今言った通りの事で片付いてしまうのだ。寄生したからといって宿主が別の生き物に変化するわけではない。
更に言うなら、身体能力がいくら高まろうと思考能力は向上するわけではない。
むしろ低下してすらいると思う。冷静に対処すれば、まず一対一ならどうとでも出来るだろう。
「うん?接触したら?
そうだなあ……まず何が何でも接触しないよう細心の注意を払うのを前提として。
それでも接触した場合……逃げるよ。なりふり構わず。どんな手段を以てしても、逃げて生き延びる。
出来れば相手の移動は封じたうえで逃げるかなあ……」
それくらいの事は出来る準備はして来ている。
ただ生存することに全振りしてるから、戦闘能力は無し、と申告してきた。それだけの話なんだ。
■フィーナ > 「…そう、出来ることが増える訳ではない。ただ、その延長上に来られるのが厄介なんですよ。私が空を飛んでいたときも幾度かヒヤリとしましたし。何より相手は多彩であることが問題なんです」
身体能力が向上しても、たかが知れている。というのは…正直に言えば甘い考えだ。
空を飛べるわけではない…が。その高度へと飛び跳ねる事は可能かもしれない。
鳥に腕がないからと甘く見て…その羽で殴り殺されるかもしれない。
フィーナは楽観することを最初の戦闘で止めた。
植物が生えていれば敵であり。
その植物は理不尽な力で殴り殺してくる。
そこに動植物も混じってくる。
「犬とかコウモリでさえ脅威なんです。何人も犠牲者が出ている以上…過小評価するのは危険だと考えますが。」
たとえ思考が鈍ったとて…犬には人では感知し得ない嗅覚があり。
コウモリには人では感知し得ない聴覚がある。
「貴方が連れている梟が寄生されたら…と思うと。怖くなりませんか?」
人は全周を警戒出来るわけではない。
もし梟に寄生された場合…無音で、視界の外である空から奇襲を受ける可能性だってあるのだ。
■暁 名無 > 「過小評価なんてしてないさ。
それにほら、護衛を付けた状態で戦闘状態になって、脇目もふらずに護衛を放って逃げるわけにもいかんでしょ。
……だから単独行動の方が適してるんだよ、と言えば理解して貰えるかい?……まだちょっと厳しいかな。」
過小評価している、と見做されるのは些か心外ではある。
言葉としては出来る事以上の事は出来ない、と言うほか無いけれど、
裏返せば出来ることであるならばパフォーマンスを最大限使える、ということだし。
だからその生物の種として可能な行動を最大限把握するのは当然のことだし、前提も前提だ。
そしてその上で俺は断言する、身体能力の向上程度ならば然したる脅威ではない、と。
だって種として桁違いの身体能力を持つ生物なんてゴロゴロ居る訳だしね、俺の専門分野は。
「むしろ俺からすれば。
その程度を脅威だ、危険だって警戒する程なのに、態々その真っただ中に踏み込んで来る方が正気の沙汰じゃないと思うね。
それこそ徒に被害の拡大をするのが目的かと思うくらいにね。」
新鮮な宿主候補を逐次投入してるようなものじゃないか、現状って。
そう告げて肩のミネさんを見る。ミネさんが寄生されたら……?
「ああ。そっか。
そうだね、ただの梟だったらちょっと困るだろうなあ……」
肩の上で首を捻るミネさんと一緒に、俺も小首を傾げた。
■フィーナ > 「過小評価していないのであれば、情報を持ち帰ることの意義を理解してほしいですね。
それこそ、多少の犠牲はやむを得ない程に」
暁さんが言っていることは最もだ。
現状行われていることは戦力の逐次投入であり…確かに犠牲者は増えつつある。
多少の知見があれば簡単に出てくる、一つの答え。やるなら一挙に壊滅まで持っていくのが常道だ。
しかし―――――
「『味方を殺さなければならない』。そんな覚悟が出来ている人って、どれだけ居るんでしょうかね」
現状として、敵味方として区別が出来るのは、『寄生されているか否か』だ。風紀や公安の制服を来ていたとしても…たとえそれが知人であっても。植物に寄生されている時点で殺さなければならず。
たとえ理由が何であれ、そういった行動は士気に関わる。
だからこその箝口令であり。逐次投入とも呼べる少数での殲滅活動が行われているのだ。
「私も最初は大所帯で居たんですけども…半数以上が潰走しました。救援に向かった所を、『味方だったモノ』に襲われて、ね」
■暁 名無 > 「うーん……情報を持ち帰る事の意義、ねえ。
正直、有意な情報は既に風紀委員の方にあると思うよ?
既にある情報以上の進化……いや、変異の方が適切か。
変異が起きていないか、その有無を俺は確かめたかったんだけど。」
正直、犠牲を払ってまで得るようなものじゃない。
そしてただの変異の有無が一般的に見て意義のある物であるとも思わない。
それにどうも、現状に対する認識の違いを感じる。まあ、それは良いとして。
「どうせ大半は報酬目当てだろ、幾ばくも居るわけ無いんじゃないか。」
まあ、『それも已む無し』で来る覚悟決まり過ぎてる人が居ないとも言い切れないが。
俺からしてみれば、先に言った通り、危険を承知の上で誓約書まで書かされてなおこの場に来る事自体が正気の沙汰じゃないと思う。
そう考えると現地で風紀委員から得られる情報もあまりにも偏り過ぎな気もしないでも無いな……
「うんまあ……生き物に寄生する植物が蔓延してるよ、気を付けてね!程度のつもりで居たらそうなるわ……。」
当人には悪いが然もありなん、というか。
自業自得じゃないか、と言いかけて流石にあんまりだからそっと口を噤んだ。
■フィーナ > 「本当に有意な情報があるのならば。この騒動は沈静化されていなければおかしいのですよ。
変異に関してもそうですが…現状確認されている種だけでも、その行動様式や危険性、対処法。
手段はいくらあっても良いんです。その中から出来る限り『リスクのない方法』を探し出す。
風紀委員も公安委員だって頭を抱えてると思いますよ。投入出来る戦力は限られている……いえ、正確には『投入し得る人物が少ない』ですから。誰も彼もが『味方殺し』を許容出来るわけじゃないんです。」
味方を取り込んだ敵と、戦った事がある。
そいつに銃を向けて、引き金を引けなかった者を、知っている。
撃った者も居た。そいつを咎めた者も居た。
『救える可能性』というあるかどうかもわからないものに縋り付こうとして死んだ者を、沢山知っている。
「たとえ知っていても。いざという時に覚悟出来るかどうかは別問題なんですよ。いざという時に少しの迷いが生じれば……それすなわち死を意味しますから」
たとえ報酬目当てであったとしても。隣に居る人間を手に掛けなければならないリスクを考えれば。
「なので情報が必要なのです。沢山の情報が。裏付けを取れる情報が。絶対的な情報が。
報酬を目当てにしていても生還が必要です。生還すれば…その者から情報が取れます。
そうすればその情報を元に作戦を立てることが出来ますし。何より対処法が判れば死人も少なく済みます。
情報は、一人や二人の命よりも価値があるんですよ」
■暁 名無 > 「……ただ鎮静化するだけなら、さほど難しい物でもないだろうに。
虫一匹通さない隔壁を展開、密閉した後にエリア内を超高温か超低温のどちらかに持って行く。
これが一番簡潔に事態を納める方法だよ。」
横目でミネさんを一瞥し、小さくため息をついてから口を開く。
今まで誰も考えなかった訳じゃないだろうけれど、実行は出来ない理由があったのだろうとは思う。
しかし、それが一番確実な方法だ、これだけは間違いない。
侵入に対しては強固な障壁が築けるんだから、決して不可能な話ではないだろう。
「これだけ明快な解が既に出てる上で、それを実行しないだけの理由があるわけだろう?
そしてその理由は多分、寄生植物に関する情報なんてほとんど無関係みたいなものじゃないだろうか。
その時点で『事態の鎮圧』なんて旗印は崩壊してるんだよ。」
それこそ、多少の犠牲を覚悟する必要のある事じゃなかろうか。
「……そのうえで再度言うけども。
現状必要な情報は、風紀委員が既に持ってるって。
今回の寄生植物は自然発生した未知の生命体じゃないんだ、
人為的に造られた兵器としての側面を持たされたモノなんだから。
その研究データを基にした情報以上に有意な情報なんて現場じゃ得られないし、それだけの情報を得といて友好的な戦略が立てられないのは最早人間の問題だ、っていう話。」
一気に捲し立てる様に言ってから我に返る。
流石に語気が荒くなり過ぎたかもしれない。が、他に上手い言い様も見つからないのも事実。
必要だ必要だと言われたところで、俺から見れば既に十二分な情報は開示されてると言わざるを得ない。
「むしろ、必要な情報ってのは、この区画に居る人間の物のじゃないのか?
誰が生きてて、誰が寄生されてて、誰が焼けてるか。そしてそれらが何処に有るのか。」
■フィーナ > 「生存者の有無を考えれば無理ですね。風紀と公安が主導している以上…無差別攻撃は不可能ですよ。
万が一があった場合…その腕章に傷が付きますからね。まぁ…一部の強硬派はやりそうではありますが。」
落第街殲滅作戦があったからそういう手段も勿論考案はされたはずだ。
それを行わないのは…先に言ったこともあるが、実際に効果があるか否か、という問題もある。
「何にせよそれだけの規模で事を成すなら事前準備も大掛かりになります。その間に情報収集や救助活動を行うのは、当然のことです。
現在解っている特性を考えれば…こうやって内部で動くことは、陽動にもなりますから」
寄生体は寄生されていない動物を目標とする。万が一隔離外へ目を向けられた場合…突破はされないだろうが、犠牲が出る可能性は否めない。水際ということもあり、できるだけ近づけたくはないはずだ。
「…………なんですって?」
そうして口論する上で、フィーナが知り得なかった情報。
風紀が知っていて、フィーナが知らされなかった事実。
「研究データを風紀が持っているんですか?」
風紀は、此処を隔離した時点で、寄生体について殆どの事を知っていた、ということになる。
つまり、自分が参加した、義勇軍による救護活動は………『モデルケース』?
「……胸糞悪いですね。いえ、貴方に怒ってる訳ではないのですが」
漸く暁さんとの齟齬がわかった。情報の齟齬が、噛み合っていく。
「つまりは…私達義勇軍は、『実地検証』という訳ですか。」
■暁 名無 > 「俺だって直接そうだと確認を取ったわけじゃ無いけどな?
でもそう至れるだけの手掛かりは既に開示されてる情報から十分推測可能だろうに。
違反部活から脱走した実験体、生物兵器、細かくタイプ分けされた宿主の情報、寄生された際の性質。
それに迅速な封じ込めを成立させたこと。
これらを踏まえて、既に風紀はある程度の情報は押さえてると見て違いないだろ。
わざわざ宿主を生け捕りにして、風紀ないし公安で検証でもしたわけでもなけりゃ、既に研究データかそれに類するものを押さえてると見るのが自然だ。」
逆に既にこれだけ情報が開示されていて気付かない方が無理だと思うけどそれはそれ。
情報とはこうやって使うものだ、というのを提示するには丁度良いだろうか。
仮にデータを風紀が押さえてなかったとしても、違反部活から流れた実験体、というのが分かっていてなおその出どころを抑えてないとなれば、それはそれで怠慢だし……。
「まあ単純に寄生されていない人間を救助するために人手が足りなかったって事もあるとは思うけども。
それにしたって、既に出てる情報が詳細に過ぎるとは思わなかったのか?」
それとも情報の開示が始まったのが、彼女の言う義勇軍が既に現地入りした後なのか。
どちらにせよ、今回の有志を募る理由がいまひとつ掴み難い。
それは前から思っていたことだけれど、今回現場に来て殊更強く感じたのは確かだ。
■フィーナ > 「…私が持ってる情報と貴方が持っている情報の齟齬がすごいですね。
私は何も知らされてませんでしたよ。最初立ち入った時は『暴動鎮圧のため、有志を募っています。』とだけ。
何かしら異常事態が起きていると思っていましたし、情報封鎖なんかもありましたから、そういう事情なのだと考えていましたが。
寄生体についても、私が話したのは『自分で現地で集めた情報』でしかありません。
もし、本当に『研究データ』とやらを風紀委員が持っているのなら、この騒動を抑える手段があるはずなんです。
生物兵器に対してのカウンター。ワクチンや特効薬等のデータがあるはずなんですよ。
それが出てこないというのは…………物凄く、胸糞悪い推測ではありますが。
私達は『実験体』にされてる可能性があります」
通常、こういった生物兵器には対策が用意されているものだ。
万が一自分にその生物兵器が危害を及ぼす可能性があった場合に、沈静化出来るように。
しかし、今回はそういった手段もなく…人の手で情報収集や救助活動、殲滅等が行われている。
取得した研究データに不足があった可能性もある。
用意するのに時間が掛かるという可能性もある。
「外れている事を願いますよ」
少なくとも、自分の知っている風紀委員はそんな事は許容しない。
そんな事は無い………とわかっていても。可能性として頭の片隅に残る。
あらゆる可能性を模索しなければ、死ぬのは自分だ。
■暁 名無 > 「初動で事に当たったが故か、それとも……
ともかく、一度外に戻って外の風紀委員を一人二人とっちめてみると良い。
何なら俺の名前を出しても良いや、調査協力を取り付けたから、とか適当な理由を添えてな。」
そうすれば少なくとも俺が得た物と同等の情報は彼女も得られるはず、だ。
この開示される情報の差について俺も思う所ないわけじゃないが、一教員が強硬な態度を取れる理由にはならない。
ともあれ、彼女が現地で自力で情報を集め回った事には正直畏敬の念さえ抱くぞ……。
「ワクチン、といってもこれは細菌やウィルスといった感染症じゃないから特効薬みたいなものは難しいぞ?
まだそっちの方が対処も楽だったんだろうけどな……」
単細胞生物ならともかく、植物はそこまで単純に出来てはいない。
植物に対して効果的な手段は、得てして人間やその他の生物にも有害だ。
だから現状、燃やすのが一番、なんて手段が罷り通ってるんだろう。
「まあ真実はどうあれ、現状はどう見ても後手後手だしジリ貧だ。
更に事前情報を踏まえたうえで画期的な打開策、というのは望めそうにないな……というのが、“俺が”実際に現場を見ての結論だ。」
まあ、それだけでも収穫と言えば収穫か。
長い事腰掛けていた瓦礫から腰を上げると、肩に居たミネさんも静かに飛翔する。
「とりあえずお前さんも戻る理由が出来たところで一度引き返そうか。
それまでの護衛は頼むよ。まあ、何もない道を選んでいくけども。」
頭上高く飛翔したミネさんが、その周囲に淡く蛍火を灯す。
フクロウは森の賢者、ましてや幻想生物学者が連れる個体とあれば魔術の一つや二つお手の物だ。
■フィーナ > 「そうさせてもらいます。全く、死人が出るから情報の共有はちゃんとしてほしいですね。無駄な死人が増えます」
肩を竦めて。
初動で大所帯だった義勇軍も、大半が戦死、もしくは行方不明だ。もし、風紀が情報を秘匿していたのならば…この大人数を風紀が間接的に殺したことになる。
「出来てない、ということは風紀の手札には無いんでしょうね。今この現状を打破するものは。
虎の子の特務広報部もまだ出てきていないみたいですし。
あぁ、必要であれば送りますよ。『最も安全且つ最速』です」
折りたたんだ紙を取り出す。
それを地面に広げると…魔法陣――――それも、そこそこ高度な『空間転移術式』が展開される。
目標地点は、封鎖区画の検問所。事前にそこに術式を設置し、万が一の場合に離脱出来るようにしていたものだ。
■暁 名無 > 「まったくだ。やれやれ、ついでに要らん時間も食っちゃったな。」
そも情報の差が無ければ言い合う事も無かったろうに。
まあ前向きに捉えれば、ここで共有できたお陰で、この少女も今後多少は危険を回避出来る様になったと考えよう。
更には彼女から他の有志へと情報が拡がれば尚良しだ。
「まあ、一朝一夕でどうなるものでもないのは確かだろうな。
半月からひと月、それくらいすれば打開策も実行段階に入れるんじゃないか?
それまではまあ……地道な草の根活動をするしかないだろ、生存者がいる可能性が払しょくされるまでは。」
実際居るのかどうかは置いといて。少なくとも今回俺は見かけなかったし。
「あ、転移出来るの?それは助かる~。
じゃあミネさんとは検問所で落ち合うことにしようっと。」
頭上のミネさんからも魔法陣は見えている事だろう。
知恵を司る聖鳥、陣を見てどのような術式か解説するのも訳無い筈だ。
「それじゃあ、ご苦労さん。
今後、あんまり無茶しない様に立ち回るんだよ。」
最後に少女へと労いの言葉を掛けて、俺は術式によって検問所へと転移したのだった。
■フィーナ > 「そちらこそ。じゃあ、転送しますよ」
そう言って、転移術式を起動し、脱出する。
そして、転移するなり風紀委員を締め上げるのだった。
ご案内:「落第街 閉鎖区画」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「落第街 閉鎖区画」から暁 名無さんが去りました。