2020/06/24 のログ
セレネ > 「教える側は教える物事を倍以上理解していないと上手く教えられない、とも聞きますし…
一人で何かに没頭している方が性に合っていたりします?」

見た目は軽薄そうでも、中身は案外真面目というか。
そんな印象を受けた。今の所。

「えぇ、また来たいと思います。
先生とのお話も楽しいですし、折角の縁を無駄にはしたくありませんから。」

それに、本棚に詰められている蔵書。
読んでも良いのなら是非とも読みたい。

「日没後なら問題ないですね…。
どうせ寮に居てもやる事は読書(魔術書または医学書)か勉強ですし…友達も居ないので。」

お一人様同士ですねーなんて自嘲。
高時給なのは嬉しい。

「皆が扱える訳でもないのでしょうし、だから隠していたんです。
まぁ、所謂医者…女医ですよ。開業はしてませんでしたけど。」

先程の喫煙に対しての発言もそれが原因なのだと語る。

「そこはもう生まれ持ってのものでしょうから仕方ないでしょうね。
得意な属性とかはあるのでしょうか?」

魔法の話になると俄然やる気が出ます。
相手を見上げ、首を傾げる。
寄せられた胸元が上から拝めるやも。

暁 名無 > 「俺の場合、習うより慣れろとかそんなノリだしなあ。
 座学よりも実習多めだし、まあ、毎年リタイアは出してるんだけど。」

まあ生き物好きか高じた奴らしか来ないから、俺んとこは。と自嘲気味に笑ってみる。
かくいう俺自身が趣味が高じたタイプなのでしょうがない。

「ああ、おいで。セレネならいつでも歓迎しよう。
 ……って生徒には大体言ってるんだけどさ、あんまり誰も来てくれなくて。」

しょんぼり。時たまふらりと手伝いに寄ってくれる生徒は居るけれど、小遣い稼ぎが目的で純粋に遊びに、とか世間話死に、とかはない。
まあ、ここまで来なくても普段の授業中とか廊下とかで済むからなんだるけども。

「そ、日没後。
 なら今度一回お試しでやってみるか?
 一応夜遅くまで学校に居ることになるから、その辺りの許可取れたらだけど。」

編入したてだから上手くいくかな、と首を傾げる。

「まあ、そうだけど。ここじゃ割とメジャーな方だな、魔法・魔術ってのは。
 へえ、女医さん!なるほどそれは、なかなかに人気の出そうな……」

女医さん、って響きがもうなんかだいぶ艶めかしい。
現物よりセクシーさ三割増しくらいにした女医セレネを想像して、慌ててかき消す。

「得意な属性ってのも、そうそう無いんだよな。
 大した事が出来ない分、広く浅く器用貧乏ってやつだ。」

そう答えながら見下ろせば。
うむ、なかなかの絶景。汗で透けて貼り付くシャツはいつ見ても良いものだ。

セレネ > 「実際、机上で勉強をしてもイレギュラーな事は多々起こり得ますからね。
現場でないと分からない事も多いですし…。」

経験をする事も大いに重要である、という事は理解している。
だから己は、出来得る限りの事に挑戦したいのだ。

「あら、そうだったのですね。
…だから今も誰も居ない訳ですか。」

今の現状に納得した。
逆に言えば、人見知りと警戒しやすい己にとっては居心地の良い場所になりそうだけど。

「……流石に許可取らずに抜け出したら不味いですよね。
いくら空間転移魔法を使っても。」

扉から扉への移動なら、座標さえ特定できればこの世界でも行けると思う。
けれど、無許可というのはリスキーか。

「……今変な想像しませんでした?」

何だか嫌な予感がした気がする。ジト目で見上げ。

「――ん?
そうなると、属性を満遍なく扱えるという事ですか…?」

そうなのだとしたら、それはとても凄い事だと己は思う。
目を真ん丸にして驚いた。
驚きすぎてまた目の保養にされている様子など抜けていた。

暁 名無 > 「そうそう。勉強で、知識だけ身に着けてても教科書通りに行かないのが自然ってもんだからさ。
 だからなるべく俺の授業では外に出す様にしてるんだ。
 生徒が外行ってる間俺も他の仕事しやすいし。」

ちゃんと一人一人の校外での様子もチェックしてるけどな。

「基本的に閑古鳥がねー、大量に。
 ていうか納得するんじゃない。虚しくなるだろ。」

んもう、と口を尖らせる俺である。
これでも突然の来客に応じれる様に小奇麗にしてるって部分もあるんだけどなあ。

「そゆこと。ちゃんと許可はとらんとねー……

 うん?まあ、満遍なくっちゃ満遍なく……かなあ。
 試したこと無い属性もいっぱいあるけど、あ。それこそ空間転移も出来るぞ。」

非常に部分的なやつだけど。とそっと胸中で付け加える。
具体的には下着だけ飛ばしたり、とか。

セレネ > 「生き物だと猶更ですものね。」

個々によって性格も体格も違うのだ。
知識のみでは到底解決出来ない場面も多いだろう。

「ふぅん…。
なら、先生が寂しくて泣かないように暇な時来てあげますよ。」

生徒の癖に上から目線。

「そっか…。」

きちんと許可は得なくてはならない。
それはそうだよなと渋々。

「ぇ、本当ですか?」

それって凄く勿体無い事だと思うのです。
満遍なく出来るのなら、それは、

「属性変換って、魔力消費の割りに変換効率が悪くて普段扱えない魔法は使わないようにしてるんですけど。
私から見れば…羨ましいんですが。」

他の属性の魔法は一応覚えては居るものの。
効率が悪いので普段は適性のある属性魔法を使っている。
空間転移については

「それは物体、生物共に可能ですか?
それとも物体だけでしょうか?」

話に喰いついた。

暁 名無 > 「その通り。
 種ごとの特徴のみならず、個体ごとの違いも多種多様だ。」

うんうん、と肯く。だから生き物は面白い。
人間と同じ様な個性を持ってても、人種なんかと較べものにならない位に種類が多い。

「そりゃ嬉しいね。
 嬉しくてセレネの事が好きになっちゃうかもだ。」

何を偉そうに言ってやがる、と笑いつつ。

「へ?へえ、そうなの?
 なるほど、魔力をそれぞれの属性に変換……へぇー……。」

知らんかった。
そもそも魔術に関して真面目に勉強したという記憶が無い。
時間移動して、異能を失って、その結果少しだけ出来るようになってた、という代物だ。
自分の事ながら、まだまだ未知の部分が多過ぎて怖いくらい。

「え、ええと……調子が良ければ両方とも?
 そんなに長距離は無理だと思うけどな?

 えっと……試して、みる?セレネで。」

なんかすごい食い付かれた!
しかしこれはチャンスでは?久しく行ってなかったあの禁断の魔術を使用するチャンスでは?

セレネ > 「えぇ、そうですね。
それに異世界からの生き物や植物ならば余計に多様でしょうし。」

一つの世界ですら、何百何千何万とあるのだ。
全てではないにせよ、他の世界からくるという事は今以上に増えるという事。
当然、予測不可能な事態も充分起こり得る訳で。

「はぇ…っ?
へ、変な冗談言わないで下さい…!!」

そういう事言うから、また身体が火照って来たではないか。
熱を逃がす為グラスの紅茶を飲む。

「あー、ぇと、その。私の知っている魔法では、ですけどね?
もしかしたらもっと効率の良い変換方法もあるかもしれませんし。」

ただ、それが己の体質等と合うかは分からない。
だからこの先も色々と魔術書を読み漁るつもりだ。

「私、ですか?
………。
分かりました、やりましょう。」

大分悩んだ。
けど、決めた。

暁 名無 > 「そう、だからこの幻想生物学は普遍とはほど遠くて、学問として成立が難しい。
 それまで常識だったものがある日突然引っ繰り返される。
 そういう意味じゃ、物理学の先生も同じ様な悩み持ちだな。」

ケラケラと笑いながら遠い目をする俺。皆苦労してるんだ、先生は。

「はっはっは、ごめんごめん。」

からかい過ぎたか。とまあ、反省はしてないけれども。
何か俺もちょっと喉が渇いてくるなあ。後で何か飲もうっと。

「へえ……セレネのとこでは、そうだったのか。
 まあこっちもその道理が通用するのかは分からんが……俺もちょっと調べてみるかね。」

ふんふん、と自分が扱える力への無知さ加減に今更に気付かされた俺である。
図書館に良い本あるかしらん、と。

「ほう。そうかそうか。
 じゃあその場で立って貰おうかな。座ったままだと危ないし……
 あ、まんいち失敗しても意識だけどっか行ったりとかは無いから安心して。」

まあ失敗しないんだけどね。

セレネ > 「…異世界では全く常識が違う事もありますしね。
色んな世界に行っていると、本当にそれが身に沁みますよ。」

あぁ、先生の目があらぬ方向を見ている…。
己からして見れば見ている空間にも浮遊霊が居たりするけど。
しかも今回は人じゃなく、何かの生き物だ。
え、何あれ…?

「……もし、もしですよ?
そんな事言って本気にしてしまったらどう責任を取るんですか。」

グラスから口を離せば、何だか暑そうにしている相手に。
少し逡巡した後持っていたグラスを差し出した。
中身はまだ半分ある。

「そう、です。
調べて損という事は恐らくないと思います。
少なくとも、新しい知識は得られる訳ですから。」

何も得られなかった、と落ち込むのではなく。
新しく何かを得られたのだとプラスに捉えた方が精神衛生上宜しいし。

「…?
はい、立てば良いんですね?」

きょと、と首を傾げるも疑う事なくソファから立ち上がり。

暁 名無 > 「へえ、セレネは他にも幾つか別の世界に?
 それは割と貴重かもしれないな、文字通り世界を股にかけるってのは。」

はたと我に返ってセレネを見れば、何だか虚空を見つめてきょとんとしている。
そういや図書館でも何だか目の焦点が合ってなかったようだけど、何か……見えてるのか?

「うん?もし?
 そうだなあ、その時は卒業までその気持ちが続くならその時改めて真剣に考えるさ。
 ……あるいは。みんなに秘密のお付き合いってのも、まあ、悪くないとは思うけど。」

どちらも下手打ちゃめちゃくちゃ怒られるやつー。
差し出されたグラスを静かに手で断わる。それは、お客様用だから、な。

「まあ、一理ある。
 まったく、お前さんのその知的探究心には驚かされるな。
 俺の方が先生なのに見習いたい気分だ。」

ふはは、と笑いつつ反射的に頭を撫でようとして手を止める。
下手に女子の頭を撫でない方が良い、とは時々女生徒から言われる言葉。

さて、と。

「んじゃあ、このソファ前から後ろの扉前にセレネを転移させてみよう。
 ちょっと眩しくなるから目を瞑って、なるべく気を楽にしてくれ?」

そう呟きセレネの周囲を僅かな魔力で包み込んでいく。
魔術の心得があるセレネには、もしかすると少量ながら緻密に術式が編まれている事が分かるかもしれない。

セレネ > 「――え?
あ、あぁ…まぁ、そこまで沢山って程ではないのですけれどね。」

なんかよく分からない、触手みたいなものがうようよして気持ち悪い。
そっと目を逸らしては相手へ視線を戻そう。

「…そうですか。」

制止されれば大人しくグラスを引っ込める。
要らないのならば無理に押し付ける物でもない。
相手の言葉には、何か考える仕草を。

「私、知りたい事があるととことんまで知りたくなるタイプなんです。
気分じゃなくて見習った方が良いのではないですかー?」

なんて言えば伸びてきた手にちょっとびっくり。
そして自ら撫でられに行こうと頭を近づけようか。

「…はい。」

己を包む魔力は糸のようで、さながら繭か蜘蛛に捕らえられた獲物の気分。
なるべく平常心を保とうと深呼吸を数度。

暁 名無 > 【続きはまた明日:To be continued…】
ご案内:「幻想生物研究室」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「幻想生物研究室」からセレネさんが去りました。
ご案内:「幻想生物研究室」に暁 名無さんが現れました。
ご案内:「幻想生物研究室」にセレネさんが現れました。
暁 名無 > 「──へえ。」

幾つかの異世界を行き来する能力を持つものは思ってるよりも少なくないと聞く。
生憎俺にはそんな力は無かったが、そんなに珍しいものでもないのかもなあ……。
等と感心しつつ、セレネの表情が少し歪み、こちらに焦点が合わせられる。
………一体何を見たというのだろう。ちょっと不安になるから止めて欲しい。


「探究心が強いのは良い事だが、あんまり人の知られたくない事までずかずかと踏み込んだりするんじゃないぞ?
 まあ、言われなくても弁えられる奴だとは思うけどな、お前さんは。」

行き場を失いそっと下ろそうとした手にセレネの方から頭を納めて来た。
驚くと同時、随分と懐かれたもんだなと妙に感心してしまいつつ、その頭を軽くぽふぽふと撫でる。

……そんなやりとりがあったのが術式発動前。

今はと言えば細くも煌めきを宿した魔力の光芒にセレネの体は包まれ始めている。
風の様に渦を巻いて彼女の体表を奔り、情報を魔力化して別の場所へ転移させると言うプロセス中だ。

セレネ > 視界の端に蠢く触手。
あ、此方に気付いたのか寄ってきた…けど、無視だ無視。
私は何も視えていない。視ても居ない。
だからこっちに来ないでくれと、最早念を送る。
相手に対し己の視た事を話せばどんな反応が返ってくるのか気になるけれど。

「流石にデリカシーのない事は聞きませんよ。
私にだって言いたくない事の一つや二つはあるんですから。」

場合により情報を秘匿する事はあれど、何の対価も無しに他者からの情報を得ようとは思わない。

頭を撫でられるのは昔から好きだったので、つい癖で撫でられに行ってしまった。
気付いたのは頭を優しく叩く感触を覚えてから。
嬉し恥ずかしな感情に満たされ、えへへとはにかむ笑みを。


やり取り後、大人しく目を閉じて立っていたがどうにも術式が気になり目を開ける。
入ってくる光に思わず顔を顰めるも身体を這いずる式を読み取ろうと視線を走らせて。

暁 名無 > 「──うん?気になるのか?
 なに、難しい事はしねえさ。
 セレネの情報を魔力で走査して読み込み、あとは転移先の座標へと魔力を介して飛ばす。簡単だろ?」

もしセレネが見ただけで術式解読が出来る程魔術知識に長けているのであれば、俺が今言った通りの反応が行われている最中だ。
もっとも、走査に必要な魔力が圧倒的に不足している状態。
これだと肉体は無理、制服にはお守り程度の魔術的保護が掛かってるのでそれを乗り越えるのが難しい。
飛ばせるとしたら精々大きさも無く複雑さも無い下着が関の山だろう。

「そろそろ転移が発動するぞ、目ぇ瞑っとけ――」

俺の言葉が終わるか終わらないか、という頃。
セレネの身体を包む様に突如突風が巻き起こった。

セレネ > 相手の言葉を聞きながら、脳内で読み取れる情報を拾って解析していく。
――成程。己の持つ転移魔法とは違い、対象の情報を核としているのか。
原理としてはテレポートに近いのかもしれないなと一応の結論をつければ、脳の回転を緩やかに――しかけた所で気付いた。

……ん?待てよ、これは…。

「…あれ?でも先生、これでは魔力不足では――」

相手の言葉と被る。
言い終える間際、突風が起こり思わずスカートを抑えた。

暁 名無 > 突風に押し出される様な感覚をセレネは受けるかもしれない。
しかし、それだけだ。お察しの通り魔力不足な術式は半端な結果しか齎さない。

「……あー、えーと……うん?何かな?」

──それでも、それでもだ。その中途半端な結果がいわば想定通りの結果。
セレネの背後、ソファから少し離れた最初に入っていた扉の前にふぁさりと落ちた物があった。

俺は敢えて気付かないふりで何か言いかけていたセレネへと首を傾げてみせる

セレネ > 突風により少しよろめきかけたが何とか踏み止まった。
風が完全に収まるとスカートから手を放し…。

「――先生。」

胸元に違和感。
今まであった物が途端になくなったような。

「……指先から徐々に壊死していくのと蜂の巣にされるのは何方がお好みですか?」

胸元を片腕で隠しながら、魔法を展開した。
己の背後からいくつもの魔法陣を生成し。
そこから鏃を覗かせる光の矢が、無数に相手へと向く。

暁 名無 > 「ぎゃー、待って待ってセレネ事故事故、多分事故ー!!」

ていうか選択肢意味あるのそれ、蜂の巣一択じゃねえ?
そもそも地味に怖いな指先から壊死してくの!?

「術式はちゃんとしたものだったでしょ、見たよね?ね!?」

とりあえず一度セレネを落ち着かせようと必死の説得を試みる俺。
下手すれば蜂の巣だ、文字通り必ずの死が待っているのだ。
──と、そんな命が風前の灯になった俺はふと気づく。

セレネの頭上、天井から小さな影がまっすぐ落下してきた。
あれは……多分今朝から行方不明だった幻想生物、カメレオントビゲッコーだな、間違いない。天井に居たんだー……

セレネ > 「仮にも教師なのに碌に魔術も扱えないなんて風上にも置けないです。
私が教えましょうか、”懇切丁寧”に。
えぇ、それこそ身を以て体験して頂くのが宜しいでしょう。
習うより慣れろって貴方も仰っていましたし。
知識より実践の方が大事ですものね。」

回る口と今にも襲わんとばかりに向いている矢達の代わり、
先に飛ばすのは言葉の矢。

「術式自体は悪くなかったです。
ただ、魔力不足ならば予め言っておいて欲しかったですね。
それとも何です?まさか自分の魔力の残量も分からずやったか、若しくは敢えて伏せたかの何方かですか?」

下着を回収するより先に、相手の息の根を止めたい。
ゆらり、一歩踏み出した所。
突如頭上から降ってきた存在に悲鳴を上げた。

「きゃっ…!」

頭の上に落ちるかと思いきや、直前で半歩後ろ下がったせいで胸元に落ちる小さな生き物。
ぽよん、と柔らかな緩衝材に軽く弾むカメレオン的な生き物に、目を丸くさせて。

固まった。
そうしたら、暑さの為に胸元のボタンを少し開けていたのもあってか。
いそいそと服の中に潜り込むではないか。

暁 名無 > 「いや、ホントあの、魔術を扱えない事に関してはぐうの音も出ないんすけど、その。
 多分慣れても習ってもどうにもならない気がするというか、取り敢えず落ち着こう?な?」

凄い勢いで辛辣な言葉が手加減なく突き刺さってくる。
いやまあ悪いのは全面的に俺なので甘んじて受けるけども!
それにしても、もうちょっと手加減というか……

「魔力の出力不足は言ってあったと思うんだけど、なー……
 ああウソウソごめんなさい自分の魔力残量も分からないポンコツですいません……ごめんなさい……」

敢えて伏せてました!!!!と言ったら確実に教師生命どころか生命そのものが終わりかねない。
こうなったら飽く迄不手際による事故を貫くしかない。死にたくない。
だってどう見てもセレネ俺の息の根止める気だもの……!

と、どうにか穏便に事を済ませられないかと思っていたが。

「あっ、落ち……あ、あ、えーーーーー?」

カメレオントビゲッコー。
名前の通り、カメレオンの如く体色を変え周囲の風景に同化し、
脇腹に備えた皮膜で空中を滑空可能な小型のヤモリ。
冷暗所を好むから放飼中にどっか涼しいとこへ逃げてるんだろうなと思っていたが、さっきの突風で驚いたんだろう。
普段なら自分のシェルターに勝手に戻るんだけどね!
……解説終わり。

驚きのあまり硬直しているセレネの服の中へ潜り込む小動物。
なるほど冷暗所を好む性質。確かに暗くて涼しげに見え……ってアホか。

「お、おい。セレネ……?フリーズしてるぞー?」

セレネ > 「大丈夫です、此処には数多の異界の知恵があるでしょう?
その中に一つくらいはあるはずですよ改善する方法が。」

頭では理解している。
相手は一応注意してくれてはいたし、聞かれた際に是と答えたのは己だ。
10割全て相手が悪い訳ではないのは分かっている。
分かっていても、心はそれを拒んでいるのだ。

「魔法や魔術を扱うにあたって重要なのは周囲への影響力です。
いくら魔術という神秘的な響きではあれ実際は現実に影響を及ぼす訳ですから――。」

己は怒ると口が達者になる質。
そのままつらつらと魔術が何たるか、相手の魔術への姿勢がどうだとか言い連ねるつもりでいたが。


ごそごそ、と己の服の下で蠢く存在に言葉が止まった。
己は低血圧で低体温、常の人より涼しいだろう。
だから猶更涼しそうな場所を探す為に潜り込んだに違いない。
そう、例えば。

「待って、待ってそこは駄目…っ!」

双丘の間とか。
驚きすぎて放つ言語が母国語になった。
潜り込もうとするヤモリ的な存在を阻止しようと、ぎゅっと胸元を隠す腕に力を籠める。
そうすれば自然、寄せられる胸。

暁 名無 > 「あ、はい……
 ええ、全くもって。仰る通りです、はい……。」

一時的なフリーズから解けたセレネは現実から目を背けるように語り出した。
いや、どちらかと言えば突然の出来事よりも怒りが上回っていたのだろう。
それほどまでに怒られると、俺としても大変罪悪感に苛まれるというか……

とりあえず、後でもっと大真面目に魔術の関する勉強をしよう、とぐっと心に誓う。

……が。

「ん?……あー……」

突然別の言語が聞こえ、一拍遅れて輪唱の様に日本語が脳裏に浮かぶ。
叱責されてうつむきがちだった顔をあげれば、セレネが凄いセクシーポーズを決めていた。
寄せられ上げられて強調極まった谷間から、僅かに小さな尻尾が見える。
が、それもすぐに引っ込んでしまった。あー、狭いとこ潜るの得意だもんなぁ、と妙な感心をしつつ。

セレネ > 「ひゃん、ちょっと、そんなに深くまでぇ…っ!」

細い体躯が谷間を通る。
流石に全部入り切ると暑かったのか、方向転換をして頭だけちょこんと谷間からコンニチハ。
円らな瞳と目が合った。

胸元を抑えたまま、つかつかと相手の元へ歩み寄る。
無数の光の矢はサラサラと粉のように消え、虚空に溶けて行った。

「……取って下さい。」

口から飛び出しかけた母国語を寸での所で日本語に変え、涙目で相手を上目遣い。
もうこの際、身体に触れられるなんて考えてない。
ただただこのトカゲを取ってほしい。
それだけの意思。
断られたなら、少し苦心しながら己自身で取るけれど。
勿論相手から背を向けて見えない状態で。

暁 名無 > 「セレネさーん……」

まるで映画のバイリンガル放送の様に彼女の口から母国語が飛び出し、それが頭で勝手に日本語翻訳される。
……ほとんど悲鳴のような喘ぎ声の様なものだけど。

本人はゲッコーの侵入を防ぐべく必死なのだろうけれど、傍から見れば豊かな物を殊更に主張させている様にしか見えない。
さてどうしたものか、と俺が考え始めたところで、胸の谷間から爬虫類の頭を生やしたセレネが此方へと歩み寄り……

「え?……俺が?い、良いのか?」

思わず聞き返してしまう。
爬虫類はと言えば暢気に欠伸なんかしている始末。そうかそうかよほど居心地が良いか羨ましいぞこの野郎。

セレネ > 「貴方が飼育している生き物でしょう?
なら、貴方が責任を持って対応すべきです。」

己が取り出しても構わないが、如何せん扱い方が分からない。
爬虫類ならばまだ平気だ。
虫であれば容赦なく消し炭にしていた処だが。

くぁ、と小さな口をあんぐり開けて欠伸をするトカゲに、複雑そうな顔。
そして早く取ってくれと言わんばかりの目を向け。