2022/10/23 のログ
エボルバー > 「強力な力を持つ存在のようだ。
何か学べるかもしれない。」

溜息交じりに呟く少女。
人々にとって惨劇を生み出す存在もソレにとっては
変化を導くトリガーとしてしか認識しない。

「興味深い。死という事象には未知の要素が含まれている。」

感覚質ーークオリアとも呼ばれるそれは
数値化できない感覚、意識を感じるための機構。
ある意味、人の心とも呼べる要素。
機械と人間を分ける一つの絶対的な壁。

しかし死を語る少女もまたどこか人間的ではなくて。
それは機械的という訳でもない。
まるで底が見えない深淵を除く様な・・・。

「...死は生命を次の段階へ進めるために、必要不可欠なものだ。」

ただ、死に対してソレは分からないと言うわけではない。
人間と相容れない考え方の違いがあるだけということ。
機械は『死を思う』のみ。

「もし、死なない存在が居るならば、それは次へ進む事が出来ないだろう。」

長椅子から立ち上がった少女を見つめ、一言ソレは呟いた。

神樹椎苗 >  
 
「――そうですね。
 不死なんてものはただの幻想。
 生きているとは言えない、ただの停滞でしかありませんよ」

 彼の言葉に、同意を示す自嘲を返して。
 椎苗はほんの小さく会釈をする。

「次に会った時、お前がなにかあたらしい学びを得ている事を望みますよ。
 お前はまだ『生きていなくとも』――『停滞』してはいないようですから」

 彼がどのような存在で、なにを行うために生まれたのか。
 椎苗はそこに興味はない。
 ただ――学び進もうとするその在り方に、微かな『生命』の芽生えを感じた。

「――では、またいずれ」

 そう言葉を残して、椎苗は病院の奥へと向かう。
 もちろん見舞いではなく、ただ掃除機を返却するために。
 

エボルバー > 「僕は変化しなければならない。
停滞はやがて絶滅を生む。」

変化しないということはすなわち適応できないということ。
変わることを失ったシステムは淘汰され消滅する。
それがこの世界の基本原則。

しかしソレには彼女の自嘲は理解出来ず。

「変わるためには、学び更なる世代を重ねなければならない。」

生命の進化と同じくソレも一朝一夕で変化できるわけではない。
大いなる変化には大いなる時間が伴う。
得体のしれない知識を持つ少女をソレは見つめる。

「良い人生を。」

機械にとって目の前の少女は、超自然反応こそ検出されるものの
長い人生が待っている小さな子供にしか判断できなかった。
だからこその別れ際の挨拶。
彼女にとって残酷なものであろうとはソレは分からない。

不意に病院に現れた不気味なスーツ姿の男も
いつの間にか姿を消していることだろう。

ご案内:「常世病院・総合待合室」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世病院・総合待合室」からエボルバーさんが去りました。