2019/04/24 のログ
ご案内:「伊都波家・自室」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
いつものように流れる時間、いつものように過ぎてゆく時間
学園から帰って、家の手伝いと、道場での稽古をして、
夕飯の支度を手伝い、食事をとって、お風呂に入って、
学校での講義のおさらいをして、課題を済ませて…

「っん~~~ ………はふ」

ぎっ、と椅子を軋ませながら背伸びをして、小さな欠伸
ちらりと時計を見れば十時を過ぎた頃、自室で寝巻き姿ともなれば多少は気が緩むもの
やることも終えたし、明日の準備をして…軽くストレッチをしたら床につくのも良い時間
しかし…

「(もう少しして…30分ぐらい寝たら、出ようかな)」

深夜に出て、朝には戻る…
睡眠不足?いいや、圧縮睡眠の鍛錬も意外なところで役に立つ

ご案内:「伊都波家・自室」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > コンコンっと、ノックの音。

そして返事が返ってくる前に。
 
「--今日”も”、お出かけ?」

そんな声が、扉の向こうから聞こえた

伊都波 凛霞 >  
椅子に腰掛けたまま、視線を部屋のドアへと向ける
ノックの音の持ち主も、かけられる声にも驚かない
この部屋へ向かう気配だとか、足音だとか、
そんな微細なものがそれを報せていたから

「入んなよ」

なので、そうドアに向けて声をかける
白とチャコールブラウンで整った、女の子らしいというよりは落ち着いた、片付いた部屋
そんな姉の部屋へと、妹を招き入れる

伊都波 悠薇 >  

「--ううん。いい。”見られたくない”」

それは、かつて。姉に彼氏ができて
独りで、扉の奥に投げかけた時と、同じだから

だから、拒否した

「--否定、しないの?」

伊都波 凛霞 >  
帰ってきた言葉には、小さく溜息
椅子から立ち上がって、自室の入り口へ
迷うことなく、ドアへと手をかけ、開ける

「お話するならちゃんとお互いの顔を見て、でしょ」

伊都波 悠薇 >  
「…………」

そうして開けて見えた妹は
一昔前を思い出すような――

そんな雰囲気を纏った

「--嫌だって言ったのに。いつも強引だね?」

伊都波 凛霞 >  
「いいから、入って。
 父様や母様には余計な心配かけさせたくないの。
 …質問には、ちゃんと答えるから」

ね?と微笑んで、もう一度…部屋へと招き入れる

伊都波 悠薇 >  
――話す意味なんて、やっぱないんじゃん

そう思いながら、足を踏み入れる。

そうだ。これは二人にとって

ただの”確認作業”に近いのだから

「--……」

ちくたくっと時計の音を聞きながら。扉の近くで立ち
座ることもせず。

答えを待っているかのように、じっと姉を見つめて

伊都波 凛霞 >  
立っている妹と対比するように、自身はベッドへと腰掛けて
ただただ、その答えを待っている、妹へと視線を向ける

「…そうだね。今日も、お出かけ。
 0時前には出ようかな、朝には、帰ってくるけど───」

特に、隠すことはなく…
そのままの事実だけを、質問の答えとして、返して

「座らないの?」

伊都波 悠薇 >  
「--どこに?」

じぃっと見つめる。
前髪で隠れた瞳が、じぃっと姉を見ていた

「うん。座るほど、長い話でも、ないから」

伊都波 凛霞 >  
「立ち入り禁止区域になってる廃寺。
 …っていうのも回りくどいね、出雲寺のおうち。
 悠薇も子供の頃に、何度か行ってるよね」

問いかけには、正しく応え、答えを返す
次の質問は、何をしに?なのか
それとも、なぜそこに?なのか
それとも、もう全てを悟るのか

伊都波 悠薇 >  
「そっか」

一つ、うなずいて――

「--鬼退治に行くんだよね?」

その言葉が何を意味するのか
そも、なぜ、妹が鬼という単語を知っていて

なおかつ、退治なんて言うのか
それは。

昔ではなく、現状を知っているからに他ならない

「--お姉ちゃん、熊も退治しちゃうんだもん。仇討ち?」

そうでしょ? と決めつけるような。そんな言い草。
そこにはそうであれ、と――願いが込められているのが
明け透けだった

伊都波 凛霞 >  
「………」

じ…と、妹の顔を見る
長い前髪で、その表情をしっかりと見てとれこそはしないものの
声や、言葉に現れているそれは…

「お姉ちゃん、悠薇とちゃんと約束したよね。
 危ない場所には一人じゃ行かない、悠薇と一緒に行く。
 だから、危ないことはしない、熊退治も鬼退治も、しないよ」

伊都波 悠薇 >  
「--じゃあ、何しに行くの?」

視線が、鋭くなったように感じる

「--なんで、お寺に行くの。あそこには、鬼、いるの、知ってるよね? 鬼がいるのに、危なくないって――どういうこと?」

伊都波 凛霞 >  
「うーん……お勉強を教えに…?かな…?」

口元に指をあてて、ちょっとだけ考える仕草の後にそう答える

「悠薇も行ったんでしょ?あそこ。
 鬼は、悠薇のことを襲った?危ない目にあった?……あってない、でしょ?」

鬼は危険なもの
それ自体の認識は、正しい
けれどあれは、あの鬼は…鬼というよりも───

「お姉ちゃんは全部正直に答えてるよ、悠薇。
 ……だから、探るようなことはしなくても大丈夫。はっきり言えばいいと思う」

伊都波 悠薇 >  
「--変な妄想に取りつかれるのはやめて。”アレ”は、お姉ちゃんの”希望”じゃない」

はっきりと、告げた

「あれは、鬼。人殺し、寺を破壊して人を食う、魔物」

だから

「--どうにかして”元通り”なんて、ならない。私たちみたいに、”何かが変わってる”んだよ、お姉ちゃん」

伊都波 凛霞 >  
「…妄想?
 あれが私の妄想でしかなかったら、それはそれで私って大したものかも。
 出雲寺が廃寺になっちゃったのは、出雲寺の人達がいなくなっちゃったからであってあの鬼がやったわけじゃないと思うよ。
 ──本当にあれが悠薇のいう魔物だったら、一人であそこにいった悠薇は無事で済んでない、でしょ?」

一人で行ったことを咎めるつもりはないし、危険な場所でないという前提ならなんの問題もない
だからこそ、咄嗟に逃げる準備だけはしていたとはいえ、自分もあそこへと訪れたのだから

「あの鬼は、姿形が変わっちゃっても、誰も待っていない、元いた場所に帰ってきた。ただそれだけ。
 何かが変わっちゃってても、変わってないところがあるのなら、それを見ないふりはできないよ」

はっきりと否定の意思を突きつける妹に、困ったような、苦笑を浮かべていた

伊都波 悠薇 >  
「……姿形が変わっても?」

何を言っている――というように、目を見開き。一歩後ずさる

もうその発言だけで”仮説”、”推論”がすべて合致するのを感じる

「今は、でしょ? それに鬼をそこまでする必要性は? じゃあ、お父さんとお母さんに相談しない理由は何? 絶対そうだって言いきれないからでしょ?」

どう考えたって。子供がどうにかする枠を超えていた。
これは、一年前の、姉妹喧嘩とは訳が違うのだ

「見ないふりをできないとか、そんな綺麗事じゃないじゃん……」

そんな話じゃない。ただ姉はそうあってほしいと思っているだけだ
もしそうじゃなかったとき。例えそうであったとしても、”被害を受ける”のは

「冷静になってよ――、どう考えても”都合がよすぎる”って。おかしいって、どうして思わないの?」

同じ経験をしたのに――どうして――……

「なんで……?」

伊都波 凛霞 >  
「……私も、実際に見て、触れるまではそう思ってたよ。
 所詮推論、あの時に何も知らないまま目を背けてた自分への負い目、とか…
 多分に、冷静さを欠く理由はあったと思うし……」

妹の反応も、無理はない
異常に映るのはどうかんがえても自分の行動なのだから

「父様と母様に秘密にしてるのは、伊都波の家としては彼を放っておくわけにはいかないから。
 父様達はちゃんと話せばわかってくれると思うけど…話が伝われば分家の人達はそうもいかない。
 だから、これはいたずらに広めるべき話じゃない。
 打ち明けるにしても今は未だ。…もう少しだけ、時間が必要かな……」

伊都波 悠薇 >  
「--お姉ちゃんが言わないなら、私がお父さんたちに言う」

――触った。
つまりは異能が起動して、視えたのだろう。
でもそれが”何かの介入がない”とは言い切れない

そして、それがたとえ本当だったとしても傷つくのは姉であることは一目瞭然。

どう考えたって、姉にはメリットのない話なのだ――

「私は、絶対に、反対だから。あの鬼のために何かをするなんて――絶対、ダメ」

扉の前に立ちふさがるように――

伊都波 凛霞 >  
「鬼じゃない。ううん、正確には…混ざっちゃってる。
 ……だから、それはもう一度彼を殺すことになるよ、悠薇」

父達が知れば、当然分家や繋がりのある退魔の家柄へと知れ渡る
そうすれば…彼を汚点として始末しかねない、古い家にはそんな非道な決断をあっさりと下すところも少なくはないだろう
故に、彼が鬼という漠然とした妖ではなく、個として振る舞える時までは、時間が必要なのだ
協力も必要だろう。散り散りになってしまっただろう出雲寺の人達や…彼には妹もいたはずだ。
どのみち、今はまだ話を広めるには時期尚早だった

「…どうして?
 珍しいね、悠薇が…"絶対"なんて、言葉を使うの…」

伊都波 悠薇 >  
「--それでもいい」

恨むなら、恨むでいい

「殺してでも、止める」

それはかつての、妹と同じで
”死んでも”--と、同じだった。

「お姉ちゃんが、不幸になることがわかってるのに、行かせる妹が、いる?」

伊都波 凛霞 >  
「どうして、私が不幸になる…って思うの? 理由を教えて…?」

語気の強い、妹の言葉

あの気弱だった妹をそうまでさせるもの
そう確信させるものは、一体なんなのだろう、と…

伊都波 悠薇 >  
「なんで、”退魔”の人間が、鬼をかばっていい方向に行くの?」

それは、知らないはずの――そう、まだ、知らないはずの”知識”

でも――

「付けこまれない保証はない。それを皮切りに、何されるか分かったものじゃないよ」

伊都波 凛霞 >  
「……待って、なんで私が退魔の…そんなこと、知ってるの?」

繋がりのある、退魔の家督の影となり共に駆けるは、戦国の世からの伊都波のならい
けれどそれを知っているのは後継者…伊都波の技を次ぐ、つまりは当主候補のみに伝えられること
妹が。悠薇がそれを知る訳がないのに

「──それこそ推論、予測の範疇じゃない?
 大丈夫、お姉ちゃんは不幸になんかならないよ。
 ……って言ってもダメなら、多分理由ってそれだけじゃないよね。悠薇」

伊都波 悠薇 >  
「--今、お父さんたちに話をしない。お姉ちゃんの、その行動が、理由だよ」

なぜ、知ってるのかという問いには答えず。

「不幸にならないのは、先んじて、不幸にならないよう手を打つからだよね? それもお姉ちゃん、一人で」

それならば

「私は、お姉ちゃんを。信じられないから」

伊都波 凛霞 > 「──そっか」

天井を仰ぐ
灯りに照らされた、部屋の真っ白い天井

「残念。悠薇にはわかって欲しかったし、信じて欲しかったな…」

零すようにそう告げて、立ち上がる

「そろそろ行かなくちゃ」

伊都波 悠薇 > 「お姉ちゃん!」

わかってくれない、わかってもらえない

「……なんでっ――!?」

伊都波 凛霞 >  
「もう夜だよ悠薇、大きな声出さないの」

尻目に寝巻きを脱ぎ去り着替えはじめる
動きやすい私服に、厚手のジャンパーを羽織って
長い髪は学校に行く時とは違い、リボンではなく簡素なヘアゴムで纏めて…

「悠薇がお姉ちゃんを信じてくれないなら、問答を続ける意味もないもの。
 私が全部正直に話して、曝け出したところで、悠薇は疑うんでしょ?」

ふぁさ、とまとめた長い髪を靡かせて、妹の隣に並び立つ。もっともそれは互いに逆方向を向いた。すれ違う様だったけれど

「早く寝なよ。明日も学校でしょ」

伊都波 悠薇 >  
――通り過ぎていく
姉が通り過ぎていく様子を、俯いて

「--……」

振り向くこともせず、その場で見送った

ご案内:「伊都波家・自室」から伊都波 凛霞さんが去りました。
伊都波 悠薇 > ――いなくなった、姉。

通り過ぎていく姉のあと――

妹の口端が吊り上がったのを――


だれも、知ることはない

ご案内:「伊都波家・自室」から伊都波 悠薇さんが去りました。