2020/07/25 のログ
ご案内:「狐の嫁入り」に日月 輝さんが現れました。
日月 輝 > 俗に、島の天気は変わり易いなんて言われたりする。
理屈をそこまで考えたことは無いけれど、昔から言われているのならそうなんでしょう。漠然とそんなことを思う。
なお、常世島に於いては雨以外にも様々なものが降ることもあるみたい。まったく、全き不思議がこの島には満ちている。

例えば、今も。

「晴れているのにねえ……」

雨が降っている。
雲一つ無い晴天に太陽が輝かしく坐しているのに、あたしの呟きが消えそうな程の雨が。

「こうなると何時頃止むのか見当もつかわないわ。一体どういう原理なのかしら?」

常世公園に在る、方形造りの東屋の下で悩まし気に溜息を吐く。
広場の一角、背に森林を望む場所で独りきり。
ある意味風情がある……とも言えるから、それはそれでと満足気。
服、割と濡れたけれど前向きな心ってものは人生に大事よね。
だから、少し得意気に鼻が笑ったりもする。

ご案内:「狐の嫁入り」に宇津木 紫音さんが現れました。
宇津木 紫音 > さらさらと雨が降り落ちて、彼女の髪が濡れる。
特に嫌がることも無く、ああ降ってしまったか、なんて気楽に考えながら公園を歩く女性姿。

己の思うがままに人生を歩んできた、イレギュラーの無い女。
異能の発露ですら己の道を彩るイルミネーションとしてしまった女が、のんびりと公園を歩いて。

「雨宿りの最中かしら。」

東屋の下、一人ぽつんといる少女に声をかける。
雨宿りなどするタイプでは無い。 濡れたら濡れた、それだけのことと言いそうな女。

なんで雨宿り? そりゃ少女がいたからよ。
にっこりと微笑みかけようと。

日月 輝 > 「狐の皆さんの嫁入りラッシュ。想像すると……ちょっと、面白いわね」

狐の嫁入り、天気雨の別称の一つで、他には涙雨だの天泣だのとセンチメンタリズムな名前がついている。
とはいえ、期末テストで散々な結果となった生徒だってこうは泣かないだろうと思う。

「──ん?」

思索に耽る最中の声に振り向く。あたしよりも幾分濃い緑色の髪をした、背の高いプレッピーな誰かが居た。

「ええ、そうよ。雨宿りの最中。でもこんなに変な天気だもの。眺めるのに退屈しなくて助かるわ」

見た所随分と濡れてしまっている。思わず見かねて、ハンドバッグからタオルを差し出すくらいには。

「良かったらどうぞ?そのままじゃあ風邪をひいてしまうでしょう。咎めたら大変だわ」

口元を緩め、和やかさを示した。

宇津木 紫音 > 「ふふ、ありがとう、使わせてもらいますね?」

差し出されたタオルを受け取って自分の髪を拭きながら、そっと隣に腰掛けて。
艶やかなフリルとリボン。可憐で華奢な姿。
何より異才を放つのはその眼帯。

「……少し冷えてしまいました、隣、もう少し近くにいてもよろしいです?」

狩猟する側の気配を殺しながらするり、と近づいて微笑みを向ける。
その上で、改めて首を傾げて………。

「目を悪くされているのですか?」

素直に尋ねてみる。
………杖を持っている様子も無いから、ただ素直に目を怪我している、ではないと踏んでの質問。

日月 輝 > 「どういたしまして。折角の夏休みに病気でダウンだなんて悲しいもの」

水濡れた誰かはスタイルが良い。可愛いよりは格好いい、綺麗と言った言葉が似合う。
いっそクラシカルな御召し物が似合いそうね──なんてことを考えていると、近くに良いかと問われたので頷く。

「それだけ濡れたら冷えるでしょうね。ああ、でもまだ良かったんじゃない?ほら」

視線を外して外へを向ける。

雨が激しくなってきた。
とは言え大きく取られた屋根が幸いしてか、東屋の内に吹き込むことは無いわ。
雨垂れの音が耳に煩く、水煙る様相と合わせて外界から隔絶されたかのような錯覚を齎すけれど。

「まるで別世界のよう。ちょっとテンション上がって──ああ、これ?そうね、視線が悪さをするのよ」

率直な問いに再度誰かに顔を向ける。
そうして己の目隠しを指差し、人差し指で軽く叩いてみせた。

「これ、着けてもちゃあんと見えるから不便は無いけどね。着けていないと誰彼構わず重圧をかけてしまうのよね」

重力関係の異能。そういう眼である。
そんなことを簡潔に説明をし、如何にも困っている。とでも言いたげに肩を竦めてみせたりもする。

宇津木 紫音 > 「濡れることに忌避感はありませんが、流石にこれ以上濡れてしまうのは。」

雨で外の世界と隔たれる。分厚い雨の層が東屋を包み込んでしまえば、ある種の密室状態。
視線が悪さをする、という言葉に一度首をひねって……重圧、という言葉に納得したように。

「………では、とても困っていらっしゃるのですね。
 私も困っているのです。 ついつい、可愛らしいお嬢さんを見ると我慢ができなくなってしまう。 私は視線だけではなく、手も口も悪さをしますけれど。」

んっふふふ、と笑いながら、もう少し座り直して近づけば、肩にそっと手を回してくる女。
ぺろり、と自分の舌を舐めながら。

「可愛らしいフリルとリボン。ここを引っ張ったら服がはらり、とかにならないのでしょうか。」

なんて冗談めかしながらも、リボンを引っ張って引き寄せようとする。
エマージェンシー。

日月 輝 > 「そりゃあね。制御出来るようになる為にこの島に来たんですもの」
「と言っても別に焦ったりはしないけど──」

それは大なり小なりの困りごとの一つ。何も人生に絶望するようなものじゃあない。
だからあたしは気楽に言葉を彷徨わし、次には名前も知らない誰かに引かれて言葉が止まる。

「………可愛いって言ってくれるのは嬉しいけれど。それ以上はやめときな」

可愛いと言われて嬉しくない訳じゃあない。けれど心が躍る訳でも無い。
あたしが可愛いのは、あたしの為に可愛いのだから。
引き寄せられた時に、反射的にその顔に手が飛ばないくらいのもの。

「はらりとはならない。生憎とあたしも手癖は結構悪いのよね」

ゆうるりとした所作でリボンに触れようとする手指を取る。
恋人同士がそうするみたいに指を絡めて、あたしたちの座る木製の長椅子に降ろして。
"緩やかに体重をかける"。

「綺麗な指、咎めたら大変でしょう?」

まるで岩にでも押さえつけられたかのように片手を封じ、雨に濡れた反射で高まる体温とて伝わる距離で笑顔を見せる。

宇津木 紫音 > 「あら怖い。」

笑う。くすくすと笑いながら手指を絡ませて。
ずしり、っとその手が重くなる。 ああ、重圧。 ストレートなんだから。

「………私そのものであればともかく、私の指程度ならば貴方の方がよっぽど。
 そして、この力もまた、猶更興味を惹かれます。」

指を絡めて寄り添いながら、片方の女の額に汗がにじむ。
それでも、表情は変えないまま。

「……せっかくですから、眼帯も外して、私に全てを頂けません?
 私は宇津木紫音と申します。
 この島にはあなたのような方と知り合うために来ましたから。」

滲む汗。指を絡めながらも苦痛からか、耐えているからか、汗が滲んで両の掌にへばりつく。
その汗からもふんわりと甘い桃の香り。

日月 輝 > 指にかける力は抑えつける程度。
その気になれば、このまま指だってへし折ってやれるけれど、まだしない。

「あのね。初対面でいきなりナンパする方がよっぽど怖いんじゃない?」
「しかもこんな島で、誰も彼もが魔術だの異能だの持っている所で無理強いだなんて」
「気を付けないといけないわ?ああでもお名前はありがとう。これに懲りたら──」

香水か何かか甘やかな香りがする中で囁く。
豪雨の音に消えてしまいそうな声を、決して消える事の無いよう囁いてあげる。
冷や汗をかいたって遅い。目隠しを取れだなんて減らず口、今に叩けなくしてあげるわ。

「───?──?」

"体重がかからない"
続く言葉が言葉にならず、意味不明の音となって零れた。
汗ばんだ紫音と名乗る女の手を、抑えていられずに離れて、視界が空転し、肩を抱く手をすり抜けるように床に倒れる。

──毒?いいえ、あいつは何も持っていない。
──魔術?いいえ、そんな所作は見えなかった。
ともあれ不味い。急激な風邪の症状にも似て、具合が悪い。
身体を起こそうとすると、ひどく頭が痛んだ。ひどく視界の隅が青白く霞むのがわかった。

宇津木 紫音 > 「怖い? まさか、多少の痛みは織り込み済み。
 それに、何より自分が後悔する方がよっぽど痛いのですから。」

微笑みながら、己の"汗だった液体"が掌に付着した少女を見下ろす。
甘い甘い液体が掌越しに相手を侵して。
思い通りに行くことを、ひたすら楽しそうに笑う。

「………それで、お名前を頂いても?」

動きが遅くなっていることをいいことに、輝の身体を起こして、自分の膝の上に抱えようとする。
腹話術の人形のような姿勢にしようと、その体を抱きかかえ、起こして。

日月 輝 > 外界から途絶されたかのような路地の裏だったら
暗がりに何もかもが紛れるような所だったら
まさか、こんな公園の一角でだなんて。

「あんた……」

警戒をするべき場所で警戒をし、警戒をしなくても良い場所で警戒をしなかった。
偶々、珍しい雨模様で周囲に誰もいなくて
偶々、珍しい雨模様が周囲に音を漏らさず
偶々、出会ってしまっただけ。

忌々しげな呟きもきっと雨音に消されて届かない。
息を数度吐く。桃にも似た香りに、水に濡れた木の匂いが混ざる。
今はそれが心地良いと思った。
少しだけ頭痛が和らぐ。
少しだけ視界が明瞭になる。
少しだけ腕に力が戻る。

だから"不自然にいともたやすく"宇津木紫音に抱き抱えられて、頭を凭れる。
再び、雨音にも消されない言葉の届く距離。

「誰が言うか……!」

軽くした体重を戻す
戻した体重を増やす。
十全じゃあないから速度は遅く、けれども加減を知らずの異能の行使。
最大で1t。そこまではいかなくたって、ふざけた女に悲鳴の一つ、上げさせてやるわ!

宇津木 紫音 > めきり、っと音がした。

抱きかかえた少女の重みが一気に増える。
自らの膝に載せようとしたそのか細いはずの身体が、腕で支えきれずに太ももに落ちて。

「…………………っ……!!」

流石にそのままでいられずに腕を話して、東屋で二人、まるでぶつかりあったかのように離れ、倒れ伏す。
ベンチは見事に真ん中から折れて、倒れ伏した女の太ももは赤く変色し。

「………凄まじい威力。
 ああ、こんなにも、容赦の無い。 ああ………………素敵ですわ。
 そう、こういう力を見てみたかった!」

女は頬を抑えて、ふふ、ふふふ、っと笑う。 笑いながらむくりと上体だけ起き上がり。
動かない足をそのままに、ぺろり、と唇を舐めた。

日月 輝 > 再度身体が床に転ぶ。
その音も雨音に消える。

「あっぶな……ああ、もう、異能症例の本も、もうちょっと読んでおくべきだわ……」

多分、恐らく、きっと。体調を悪化させる何かが宇津木紫音の異能なのでしょう。
雨音にも負けじと感嘆の声を挙げる相手を見る。
立ち上がれない程のダメージを受けているだろうに、平然としている奴を見る。

「あんたさ……見てみたかった。だなんて言ってるけど、自分の心配した方がよくない?」

立ち上がり、床に落ちていたタオルを拾い上げる。

「その足じゃ逃げれないでしょ。その綺麗な顔。二度と見れないようになるかもとか、考えないのかしら」

そのタオルを紫音の顔に、呆れた声と共に投げる。

宇津木 紫音 > 「私の能力が分からない以上、貴方は私に手を出すことができない。

 足は本当に傷ついているのか、折れているのか。
 傷ついたフリである可能性は?

 こうやって周囲を隔絶された"空間"にいることが条件であったら?
 声が聞こえることが条件ならば?

 安心してください。
 拒絶されてしまったのですから、そのうちまた挑戦しますよ。
 ご学友に戯れが過ぎましたわ。」

ころころと笑いながら、タオルを受け取って額の汗をぬぐう。
事実を述べて、謝意は口にしない。 にっこり。

日月 輝 > 「────」

紫音の言葉にあたしの言葉が止まった。
雨音だけが煩い。雨音にも負けずに通るその声も。

日月 輝 > 「しゃらくさいんだよ」
日月 輝 > 「脅せば止まると思ってんのか?おい、あたしを舐めてんのか?その顎叩き割って暫く喋れなくしてやろうか?」

あたしは、そういう奴が好きではない。
ゴミ捨て場を這いずる害虫を視るような気分になる。
一歩、近づく。クエスチョンの度に蹌踉めく足が近づき行く。

顎を砕いて指を砕こう。
殺しはすまいが後悔をさせてやろう。
そう思ったのに、脳裏に御人好しの金髪碧眼の顔が浮かんで立ち止まる。

「……けど、あたしはあんたと違って善良な生徒だから。御免なさいが言えたら話は別」
「……そうしときなさいよ。謝る誰かを攻撃するのは可愛く無いもの」

立ち止まって、溜息を吐いた。

宇津木 紫音 > 「なんて優しい子。」

へえ、成程。
この島では脅し透かしは通用しない相手もいる。
理解出来ないことに対しての耐性ができている人間もいる。
そこを理解すれば、ほくそ笑み。

「………ではこうしましょう。」
「私は貴方の友人となりましょう。 私が、己の利益のためではなく、お互いの利益のために動くと誓いましょう。
 欲望の矢印も向けません。 清廉な友人であるよう努力致しましょう。

 そんな友人相手ならば、私は心から謝れる。」

乱暴に言葉を投げかけてくる相手に、朗らかに笑顔を向けて、むくりと立ち上がって。
赤く変色はしていても、まるで痛みは無いような所作。

日月 輝 > 「はあ!?」

ふざけてるの?じゃあなくて、何を言っているの?の方の驚き。
提案の順序が何だかおかしい気がする。いや、でも、此処まで堂々と言われると正しい気もするような、しないような。

「………ちょっとたんま。ステイ、ストップ」

右手を掌を見せるように突き付けて暫し停止を促し──たら、何事も無いように立ち上がられた。傷付いたフリをされていた。
あたしはきっと、上背の高い相手を見上げるような形で、呆気に囚われたように口を開けていたことでしょう。

「あー……あんた、ええと。宇都木紫音とか言ったけど……もしかして異邦人?」

日本人のような名前の響きと容貌だけれど、もしかしたら挨拶の形式だとか、親愛の表し方が違う世界からいらっしゃった?
そんなことを思う。だとしたら異文化コミュニケーションを思いっきりアレしてコレしてってことになる。
それは不味い。よもややらかしてしまったかしら?と顔に熱が上がるのが解る。
少なくとも、友達になりたいと言う相手を殴るのが不味いことも、解る。

「いやでも、どっちにしても同じよね……いや、別に無理に清廉とかは求めないけど」
「あたしはあたしのしたいようにしているしね。それに友達って条件付けするもんじゃないでしょ」

話がこんがらがってきた気がする。雨音が輪をかけて集中力を乱している。
あたしは落ち着こうと、一先ず長椅子に座り直した。
座り直して、考える人。のような格好となった。

宇津木 紫音 > 「人間ですわ?
 私のしていることは非常識で不作法、本来ならば顎を割られても仕方のない行為。
 純度の高い下心で動いておりますが。」

相手の疑問を優しく溶かしてあげる優しい変態。
にっこり。

「………とはいえ、友人でいたいと思っていてもそれを認めない、ということはあります。
 私が友人でいたいというのを許容していただけるのであれば。

 私は敵ではありませんよね。」

同じようにまた椅子に座ろうとして、自分の座っていた椅子が折れていることを理解すれば、やっぱり輝の隣に腰掛ける。

「敵であるなら謝れない。 敵ではなく友人であるならば、己の行為を反省して改善する余地がある。
 せめて謝るならば、貴方のお名前を正しく口にしながら。」

日月 輝 > 「非常識で不作法って言ってる傍からド正論を言われると混乱するわね……」
「つまり……やり方は兎も角、あたしに危害を加えようってハラじゃあない。それでいいの?」

隣に座る紫音を咎めたりはしない。

「あとどんな手かは知らないけど、初対面でアレはびっくりするから止めた方がいいわよ貴方……」

ただ、行為については咎めるわ。具体的には肩を抱き寄せたり服を解こうとしたり、推定異能を思われるものを用いたり。
実際びっくりしたし、結果的に東屋の長椅子が哀れなことにもなっている。
あとで素知らぬ顔で損壊報告を出しておきましょう。そう考えながら呆れ声が雨音に紛れる。

「名前ねえ、あたしは日月輝。お日様の日にお月様の月でたちもり。それに輝くと書いてあきら」
「常世学園の一年生……だけど、そっちが上級生だろうと敬語、使わないわよ」

友人はそういうものでしょう。
そう付け加えて、テーブルに乗ったままのハンドバッグからペットボトルの紅茶を取り出して喉を潤す。
喉乾いちゃったわ。

宇津木 紫音 > 「もちろん。 というか最初から危害は加えるつもりではなく。
 二人で楽しみましょう、というつもりだったのですけれど。」

くすん、と泣き真似はとっても下手だった。

「輝さん。 …ふふ、ありがとうございます。
 大丈夫ですわ、私もただの一年生。 認めて貰えて本当によかった。
 ちゃんと謝罪致します。

 正直、無理やり動かすのは不安もありましたし。」

赤くなった足に触れても感覚が無い。
ああ、便利な能力。 己に麻酔をかけて、まるで怪我は嘘かのように振舞って。
あのまま攻撃されていたら、本当に死んでいたかもしれない。

「……輝さん、また遊びましょう? とっても可愛らしくてお強くて。
 今度遭う時はその眼帯を取ってみてくださいまし。」

そんなことを言いながら、ひょい、と立ち上がる。

日月 輝 > 「…………」

それは一般的にナンパと言うんじゃあないかしら。
泣き真似をする紫音を他所に視線を外す。
雨は未だに降り続けている。
紫音は立ち上がっている。

だからその手を引いて、座らせるようにするわ。

「てことは無理してるんでしょ。足、痛そうだし。……咎めたら大変だわ」
「雨が止むまでは座って休んで行きなさいよ。それが済んだら病院ね。あー面倒くさいったら──」

うんざりしたように呟くと同時、スイッチでも押したかのように雨が止んだ。
元々が夏晴れのもと降りしきる不自然な豪雨。何時止むかもわからないものではあったけれど。

「……面倒臭がったら雨、上がったわね……」

不思議で不自然は、この島に自然なまでに満ちている。そういうことみたい。

宇津木 紫音 > 「いいえ、大丈夫です。
 己がやったことで己が負ったもの。行動の対価は自分でちゃんと抱えます。
 何より、私はこう見えて、物事を誤魔化すことは得意でして。」

手を引かれて一度座ってからも、相手の言葉に片目を閉じて。

「………それに、病院に連れて行って頂くくらいならば、次に出会ったときにお勧めのお店なり何なりを教えてもらう方が、ずいぶんと好都合。
 あ、もちろんベッドの上で教えてもらってもよいのですが。
 お勧めの宿泊施設ならいくつか心当たりがありますけれど。」

冗談がとっても下品だった。
ころころと笑いながら、大丈夫ですわ、と付け加える。

日月 輝 > 「堂々と対価を誤魔化すって言われてるんだけど、あたしは一体どうすればいいのよ……」

ウィンクをする相手に鼻白む。
なんだかとんでもない輩と御知り合いになってしまった気がする。
続く言葉もそう、堂々とセクハラをされて──成程、あたしが恥ずかしがると思って舐めているわね?

「ふぅん、そう。ベッドの上であたしの素顔を見たいんだ」
「そんなことして、動けなくなったらどうなっても知らないわ?」

ころころと笑うその頬に触れて、撫でて、心裡で勝った!と快哉を叫ぶ。
雨上がりの空に鮮やかな虹だってかかろうものだし
颯爽と立ち上がって帰り支度だってし始める。
大丈夫だって言うのだから、病院の付き添いは要らないわね。