2020/09/08 のログ
黒髪の少年 > 触れることで、はっきりとわかる。
その震え、自分だけに対するものというよりは…寧ろ、もっと…
それだけのことが、彼女にはあったのだろう。
彼女の過去は、彼女の体質は、もう思い出せたから。

「………そのつもり、だし?」

告白か、と問われれば、首を傾げながらそう返す。
…目深に被ったフードの下側、覗く口許は少し微笑んでいるようにさえ見えるだろう。

「……ああ、でも、そうだなあ………―――」

よくよく考えれば、今日は彼女にまだ顔を明かしていない。
…そのことが、とても失礼に思えたから。
もう片手で、フードを取る。

ご案内:「逢魔時を過ごしたもの」から黒髪の少年さんが去りました。
ご案内:「逢魔時を過ごしたもの」にレナードさんが現れました。
レナード > 「……うん、これは告白だし。
 この前は、きみから言われたから。
 今度は僕から言いたかった。
 ……ダメ、かな?」

あの時の、逢魔時を共に過ごした顔が、そこにあった。

五百森 伽怜 >  
「……やっぱり、そのつもりッスよね。
 それ、本気なんスよね?」

頬を赤く染めて、少しばかり相手を見る目を一瞬逸らしながら、
それでも再び彼を見つめて。

「そんな風に本気で来られたら……あたしだってやっぱり、
本気で応えるしかないッス。いや、応えたいッス」

相手がどうしようもなく本気なら、こちらだって。
それはあの逢魔が時の日だって、同じだ。
そうしてあの日に気持ちに応えてから、自分の中で
芽生えた気持ちがあった。

それは――


「……良いッス、よ。じゃあ、あたしからも――」

それは――

「――もう、離さないッス」

あの日、彼を見送って。
あの日、彼から離れて。
寂しいと、思った。
卑怯だと、思った。

あれから、何度もここへ来ていた。
悩んだ時、困った時に来る筈のベンチはいつしか、
その意味を変えていた。
いつしか、あの日の夢を追っていたのだ。

「全部を全部受け入れるのは時間、かかるかもしれないッス
 けど……それでもよければ……良いッスよ。
 恋人、もう一回やるッス?」

困ったように、しかし爽やかな笑顔を向けて、
彼の方へ身体を寄せた。

レナード > 「………ん……。」

穏やかで、小さな笑みを浮かべながら、彼女の覚悟を聞き届ける。

「生憎、時間ならいくらだってあるし。
 ……全部飲み干すまで、隣にいるから。
 それが……居場所、ってやつなのかな…ってさ。」

生憎、不老だから。
…尤も、いつまでそうあれるか。なんて、ぼんやり考えてしまう自分もいたが。

「……始まりも終わりも、同じか……
 うん……また、始めよう。今度は、逢魔時を越えても…ずっと。」

互いに握った手はそのままに。
傍に寄ってきた彼女の身体に、もう片手を回して抱きしめようとするだろう。

五百森 伽怜 >  
「……そうかも、しれないッスね。
 全部飲み干すまで隣に、居てくれるなら。
 それは、とってもありがたいッス」

薄っすらと目を細めて、彼の言葉を受け入れる。
彼の苦悩は、いつかまたしっかりと聞くことになるのかも
しれない。自分の苦悩もまた、彼に改めて告げることが
あるのかもしれない。

そう、苦悩はいくらだってある。
それでも。

「……よろしくお願いするッス」

抱きしめられながら、少女は紡ぐ。
自らの名を夜空の下、吹き抜ける風とともに。

「五百森 伽怜。それがあたしの名前ッス」

レナード > 「………僕は、レナード。
 レナード・ウォーダン・テスラ。
 …一度は逃げた蛇だけど、もう……迷わないし。」

彼女は彼女の苦悩を。
自分は自分の苦悩を。
…それぞれを分かち合うときは、きっと来るのだろう。
でも、もう、逃げたくないと思ったから。
あの時告げられなかった自分の名前を、今ここで明かす。

「……ありがとう、伽怜。
 これからも、よろしくね………」

彼女の肩に、顔を寄せて。
ぎゅっと抱きしめてしまえば、きっと、高鳴る鼓動が伝わるだろうか。
穏やかなようでいて、どこか緊張しているようにさえ。
…ああ、思い出した…林檎が好きな理由を。
自分は、彼女のような優しい香りが好きだったんだ。

心の内が、きゅっと締め付けられるような気がする。
それでいて、じんわりと広がるような…不思議な感覚。
あの時も、こんな感情を覚えた思い出がある。
…それを、自然な言葉で口にするなら、きっと……

「………あぁ…………
 好きだなぁ…………」

五百森 伽怜 >  
「レナード・ウォーダン・テスラ……それが、君の名前なんスね」

お互いに名前を知って。
この広い世界の中で、改めてお互いを認識する。

「……こちらこそ。
 よろしくお願いするッスよ、レナード」

ぎゅっと抱きしめられれば、鼓動が二つ、重なり合う。
緊張が伝わってしまうな、と。
恥ずかしく思いながらも、でもそんなことくらいはもう良いか
と、伽怜はそのまま身を任せた。

「……あたしも、好き……」

本当に幸せだと、思った。
待ち焦がれた夢の君と、こうしてまた会えたのだから。

レナード > 「……っ…………」

好き…なんて、言われてしまうと、
どうしようもなく、心がきゅっと縮こまって。
熱い感情がじんわりと中に広がって。
目をぎゅっと瞑る。
噛み締めるように、溢れる感情がつい漏れ出ないように。

「……ふー…っ………」

肩からゆっくり顔を離すと、見つめ合う。
眼はどことなく潤いを帯びていて、その頬はすっかり朱に染まり切っていた。

「………さっきから、君のことを感じると…心が熱いんだけど。
 でも、きっと…好きって、こういうことなのかな……」

五百森 伽怜 >  
「……きっと、そういうことッス」

少女もまだ、そんなに恋に詳しい訳ではない。
彼女の恋は、失恋ばかりだったからだ。
でも、今ここから紡がれる物語は、きっと。

「心が熱くなって、それがどうしようもなく
 心地よくて。それがきっと……」

見つめ合いながら、そう口にする。
やっぱり少しだけ震えは残っているけれど、それでも。

この震えすら、心地いいと感じることができた。


「……もう少し、こうしてて良いッスか?」

そうして、自分から再び彼に身を寄せるのだった。

レナード > 「……恋も、愛も…僕は知らなかったから……
 …驚いたなあ……僕でも、感じられるなんて……」

人を排して生きてきた。人と必要上に関わらず、関係を作らず生きてきた。
だから、そういう感情を抱くこともなかったのに。
…今は違う。そのことに、驚きさえ覚えてしまうほど。
だけれども、不思議ととても、居心地が良かった。

「……うん。いいよ………
 でも、ちょっと待って……」

ローブが、邪魔だな。
もう要らない。姿を隠す理由は、もうなくなったから。
抱きかかえていた片手を戻して、器用に脱ぎ捨てる。
…下には旅支度を整えた格好、ある腕章をした姿。
あの時のままに、もう一点加わっているものだった。

「……おいで、伽怜………」

後はもう、どちらともなく互いを抱きしめ合うだけ…

五百森 伽怜 >  
「あたしも、まっとうな恋は知らなかったッスよ。
 だから、これからじっくり本当のところ、
 教えて欲しいッスね。
 あたしの恋人になったなら、ちゃーんと責任は、
 とって貰うッスから」

浮かべるのは、向日葵のような笑み。
まだまだ迷いはあるけれど。
まだまだ怖さはあるけれど。

それでも、恋人になったのなら。
きっと乗り越えていける。

「……分かったッス、レナード」

そうして、
壁がなくなったレナードの身体に、自分の身を寄せたのだった。

レナード > 「……いいじゃん。
 お互い、じっくり知っていけば。
 僕も今度はちゃんと、責任取るから。
 もう、逃げ出さないから。
 ……離れないから。」

自分が眩しいと称した、彼女の向日葵のような笑み。
それを一身に浴びながら、こちらも破顔する。
これから知っていけばいい。
これから分かち合っていけばいい。
大変なことはこれからあるのかもしれないが、
まずは二人、再び惹かれ合ったことを喜び合い、そして結びついた。

「……うん、頑張るし。伽怜……」

…もう、門の先を潜る必要はないだろう。
何故なら、居場所を見つけてしまったから。
"探して"、見つかったのだから。
魂の友との約束も、これで果たした。
……今後の身の振り方は、これから考えていこう。
ただ、今は、泡沫ではない悠久の彼女を、感じていたかった。

そうして夜は、まるで人の眼から隠すように闇の帳を屋上に降ろす。
しかして二人分のぬくもりは、ここを発つまで離れないまま……―――

ご案内:「逢魔時を過ごしたもの」から五百森 伽怜さんが去りました。
ご案内:「逢魔時を過ごしたもの」からレナードさんが去りました。