2020/09/26 のログ
ご案内:「捜索記録2」に貴家 星さんが現れました。
ご案内:「捜索記録2」に宇津木 紫音さんが現れました。
貴家 星 > 先だって行き方知れずとなっていた女生徒が転移荒野で発見された。
何でも購った魔術的道具と当人の魔力が云々の末、暴走して件の地に転移してしまったとのこと。
巡回中の生活委員会の方々が無事に保護したため事無きを得た。

「一難去ってまた一難。此度はどうなるものかな……」

事件(と書いてヤマと読む)が解決したのだから次の事件である。
常世渋谷の一角に何ゆえか取り壊されもせずに建つ廃病院。
雰囲気ばかり存分にあるのもあってか、興味本位で訪れる生徒もそれなりに居るらしく
今回はそういった生徒のうち一人が、内部で行方知れずとなった為の参上である。

悪戯か、それとも街に呑まれたか。それはまだ判らぬ。
判らぬので、一先ず入口周りをうろうろと視察中だ。

「割れ硝子に落書き。酒盛りの痕と思しきもの。他etcetc……日暮れの参上は中々趣があるものだな」

手にした懐中電灯で彼処を照らし、入口を経てかつての受付を見た。

宇津木 紫音 > 面白い物。
面白い人。

それらを眺めては、興味を持ったら手折っていくクソ女が、日暮れの病院前をぷらりと歩く。
見た目だけは穏やかな、いいところのお嬢様風貌なのだから手に負えないが。

「………おや。」

廃病院の前をうろつく怪しげな少女。
可愛らしい尻尾がふりふりと振られていれば、ああ、これは誘っているんだな、という恐ろしい理解力を持って現状を把握。
ゆっくりと近づいて、お嬢さん、と声をかけましょう。

「……肝試しか何かですか? ここは本当に今は何もありませんが。」

濃い、黒に近い赤色のブラウスは少しだけ透け、その下の薄いシャツと素肌だけが透けて見える。スカートは茶色の、ふんわりとしたロングスカート。
そんな恰好でにっこりと微笑む女。
少しばかり年下だろうか、と見下ろしながら。

貴家 星 > 「行方知れずになったフリをして仲間を騙してからかう。
 ……のは狐がやりそうなことだがー」

スカートのポケットから革装丁のメモ帳を取り出し、開く。
行方不明になった生徒──男子生徒の特長が細かに記されており、
其処には彼がこの世界の純粋な人類種であることも示されていた。
なので、言葉の通りとは行かないのは確定であり、私は逞しい眉を悩まし気に寄せ──

「うお"ぅ!?」

──次には背面からの声掛けに逞しい声/悲鳴を上げて振り返る。
廃病院の入口。エントランスとも言うべき場所。
差し込む夕日を背景に、柔和に笑む長身の誰かは、中々どうして驚きに足るものだ。

「と、失礼した。いや肝試しでは無い。私は刑事部に所属する風紀委員であり、
 委員会活動の一端で此方を訪うものである。其方こそ如何なされた?
 間も無く日も落ちる。夜に女子の一人歩きは危なかろうものだ」

見上げる相手は挙措正しい恰好をした、御行儀の良さを感じさせる方だ。
年上だろうか?ともあれ、私はパスケースを取り出し、学生証を提示して諸々の理由などを開示するばかり。

宇津木 紫音 > 声をかけてびくりと驚くのを見て、くすくすと楽しむ。
驚かしがいがある、と見る。

「………ああ、なるほど。 風紀委員。」

最近彼女は、風紀委員に大変興味を惹かれている。
物理的に圧倒的な強さを誇るメンバーが多数所属しており。
それぞれの誇りを持って動き、それぞれの悪を排除する組織。
敵に回すには恐ろしいが、根を張るには美味しい場所。

「風紀委員が、委員会活動で動くということは……何かあったんですか?
 いえ、その。
 この病院に友人が行くと言ってはいたので………。」

もちろん嘘だ。ただし、確かめようがない嘘だ。
向かった、ならば嘘になるが。 行くと言っていた、ならば確証はとりようがない。
優しく言葉を操りながら、心配そうな顔をして。

貴家 星 > 笑われてしまった。
ちょっと恥ずかしいもので耳が萎れて尾が垂れる。
負けるな私。頑張れ私。

「うむ、風紀委員」

ともあれ学生証を見せた事もあり信任は得られたようだ。
満足気に何度も頷き、垂れた尾が床を掃くように揺れ埃が立つ。
しかし、面前の長躯の少女の次の言葉には身を乗り出すようにもなってしまった。
なんと危険な!

「なんと!?いやいやそれは危ないので止めたほうが宜しかろうもので……
 廃墟は当然として保全されぬものであり、何処に危険があるか解ったものではない。
 よしんば安全であったとしても、行方不明事件の地となれば──」

友を案じる様子に詰め寄り、口角に泡と言葉を連ねる勢いで、うっかりと口が滑る。

「…………」

暫しの沈黙。

「……うむ、まあ……この廃病院に興味本位で赴いた生徒らがおってな
 その内の一名が行き方知れずとなった為、である。
 ゆえにな、其方の友人が訪れるのは二重の意味でお勧めしかねるのだ」

からの、理由明かし。
新たな被害者を増やさぬ為の措置である。緊急避難的なアレである。
叱られは発生しないと思いたい。

宇津木 紫音 > 「………その話を聞いたのが、3日前なのです。」

真面目な顔で、相手に告げる。
ええ、本当に行ったかどうかは分かりませんし、昨日学校で見た気もしなくもないのですが、ええ、肝試しの話を聞いたのは本当ですから、別に構いやしないでしょう。
さらりと嘘を混ぜながら。真実にも色をつけて。

「今から、この中を捜索されるんですか?」

廃病院を見回しながら、目を細める。
ああ、ここなら何があっても、誰も助けに来やしないだろうなぁ、なんて。
ぼんやりと考えながら、目の前の真面目そうな少女に目を向けて。

「………事件のことは知らずに、"偶然"やってきたことにして、一緒に行きませんか?」

沈黙した理由を、完璧に理解したまま。

貴家 星 > 「げえっ!?」

三日前、嗚呼三日前、三日前。
分署に今回の第一報が入ったのは四日前であり完全に別件である。
一人で訪れ一人で行方不明になられたのでは、成程露見は遅れようもの。
思わず芝居小屋の大根役者めいた所作と声を示し、廃病院に声が染み入るも応じる誰かは居ない。

「うむ……いや二名も行方不明とあらば捜索しない訳に行くまいが。
 思った以上に悪所であるやもしれんな。報告書にも記しておかねば……」

少なくとも一人より二人、二人より三人である。
視線は自然と面前の少女へ。けれども、些か射るようなものだ。

「……申し出は有難きことなれど……いや、しかしことは急くものであるし。
 偶々の協力者。うむ、そういう感じでゆこう。しかしくれぐれも無理のないよう。
 ……と言う訳で其方の名を伺いたし。私は先程示した通りに貴家 星という」

最初だけで、後は緩むものなれど。
ともあれと自己紹介をし、宜しくと右手を差し出した。握手の図。

宇津木 紫音 > どうやら、相手に自分の言葉は刺さったらしい。
二人目、ということは………どうやら三日以上前の依頼に来ていたか。

「………私の言った子は、休みの間に行くとか言っていたので、実際に行ったかどうかは分かりませんが。
 心配は心配。 ならば、私でよろしければ。」

そっとその手を握る。
おそらく、風貌やら驚き方からいって、風紀委員の大ベテラン、ではあるまい。
取り入ろう、と悪い微笑みを隠して、にっこりと。

「……宇津木紫音と申します。 常世学園の1年生ですね。
 なんとでもお呼びくださいね。 私はどう呼べばよろしいでしょう?」

首をちょっとかしげながら、手を握り。

「……尻尾が可愛らしいな、と思っておりました。」

ふふふ、と嬉しそうに微笑んで、じーっと眺める。

貴家 星 > 「とは言え斯様な物言いであるならば、連絡付かずだろう。
 近頃行き方知れずが増えておるのもあって……と、今のは忘れて頂きたい」

握手を交わし莞爾と示しパーティを結成す。

「では宇津木殿と。同学年でもあることだし、お気軽に呼ばれたし」

自己紹介も恙無く交わし、それではと通路を懐中電灯で照らした所でかかる声。
振り返ると暗がりに微笑む宇津木殿の顔。

「……そ、それはどうも……。うむ、一族の血にアライグマが混ざっているそうでな。
 ゆえにこうした縞模様であるが、中々鮮やかで気に入っている。
 宇津木殿も背が高くて羨ましいな、と思う」

何処となく場に合わぬ和やかな会話。
ああ、きっと緊張感を解そうとしてくれているのだな。
有難きことだと思い、此方も思っていたことを零しながらに道を往く。
直ぐに扉が目につき、上部には何某かの検査室であることを伺わせる表示があった。

「では私が先行を……ちなみに宇津木殿は何か、得手はあるのだろうか?」

扉を開きながらに問う。
この島の生徒であることだし、同道を申し出たことからして
自信の源があるだろうと思うのは、まあ、当然のことであろう。
 

宇津木 紫音 > 「では星ちゃん。」

直球をぶん投げておきながら、にこやかに隣を歩きましょう。
ふふふ、と笑いながら目を細め。

「……ええ、柔らかそうで。 後で触ってみてもよいでしょうか。
 緊張も何もかもほぐれそうです。
 ああ、……まあ、身長に関しては、こうやって一人で歩いていても舐められないことが多いので、助かってはいますがね。」

歩きながら、………周囲の気配を探って。

「……得意でしょうか。
 まあ、自分の身を守るくらいなら。 詳細な能力は、まあ、口で説明するより実際に見た方が分かりやすいですかね。
 ……後は……そうですね。」

何も持っていない掌を見せて。
くるりと裏返して手の甲を見せて。
もう一度裏返せば、掌に飴玉一つ。

「……はい、どうぞ。 こういうことが得意でしょうか。」

簡単な手品を見せながら、差し出して。

貴家 星 > 扉の先は広さにして6畳ほど、すぐ隣に別室があり、其方も同程度の広さの部屋だった。
床には何かの基部と思しき機械がせり出ていて、人が出入りした気配は無く、落書きなどもない。
埃の匂いがするばかりで、照らされる室内に特別に怪しい所は無い──ようにみえる。

「しょうちゃん」

扉を開く前に危うくずっこけそうになったのは棚上げとてするし、
変な声が出た事もまた棚上げとしよう。

「ふふん、柔らかいとも。日々きちんと手入れをしておるゆえ。
 ちなみにボディシャンプーとシャンプーどっち使ってるの?と思うやもしれんが
 尻尾はボディ用を使っている」

今は平和な会話を交わしながら室内を確認し、異常が無いことを確認しての戻り際。
宇津木殿が見事な手並みを披露するなら、感嘆の声とてあがった。

「おお手妻!見事なものだなあ。成程成程、能ある鷹は何とやら。
 頼もしいことだ。よもや既に何某かの委員会に所属しておられるか?」

差し出された飴玉を遠慮なく口にしながらの言葉は些かに弾む。
反面、夜も近づいた廃病院内は殊更に暗く成り行くものであったが。

宇津木 紫音 > 「なるほど、では後程ゆっくり触らせてもらっても?
 ああ、いいえ、私はまだ来たばかりでもありまして。
 委員会その他も、所属している人をじっくりと見てからの方がよいかと思っております。

 何、どういう仕事をするにしてもやりがいはありそうですが、
 どうせなら尊敬できる方とやりたいものですからね。」

ゆったりと会話をしながら、飴をあげる。
これをそのまま食べるんだな、と観察する。自分を完全に信頼しているのか、毒や薬の類が効かないのか。

「流石に少し暗いものですね。」

こちらも懐中電灯を取り出して、室内を照らす。

「何の気配もありませんね、もう少し奥でしょうか。」

貴家 星 > 「それはまあ構わないが……宇津木殿は動物好きであらせられるか
 と、来たばかりは私も同じこと。風紀委員も……まだ入って4か月足らずかな。
 どうせなら、は御尤も!であれば私も信任を得られるよう努めねば」

飴玉は所謂鼈甲飴。柔らかく甘やかで気分の落ち着く味であった。
やる気も十分に出るものであり、言外に宇津木殿が風紀に興味を得れるようとも張り切らんばかり。

「いやなに、気配がないのが当然であろうもの。
 当該生徒が悪戯を図ったのであれば此処にはおらぬだろうし
 なにかの被害に遭ったのであれば、やはり此処にはおらぬだろう。
 偶さかに潜んでいた悪漢に拐かされた可能性もあるし、
 街に──」

街に呑まれた。実しやかに一般生徒の間では囁かれ、委員会員の間では事実として知られるもの。
宇津木殿からすれば、都市伝説を真っ当に語るに等しいものである。

「いや、流石にな……と、階段であるな」

ゆえに言葉を切り……暫くと廊下を進むと階段があった。
廊下の先は不釣り合いにストレッチャーが幾重にも積まれ、先に進むには難儀を強いられそうな有様だ。

「ふむ、一先ず上がってみるとしよう。宇津木殿、足元に気を付けられたし」

此方へ行こう。と階段を示した。

宇津木 紫音 > 「動物が好きというか………。」

囁くような言葉で首を振りかけて、何も言わないことにする。
そういう方に興味があるんですけどね。 とは言わない。

「………なるほど?
 つまり、何かしらの理解できる事情があるならば、ここにずっととどまるはずがありませんものね。
 であれば、捜索はしても、………何も無かった、が起こりうる結末で一番色濃いということですか。

 ………なに、直に分かるでしょう。」

相手の言葉を否定はせずに、少しだけ笑い。
正直なところ、その怪異よりも悪辣なことを考えている自分がいるからか、あんまり怖くない。

「ええ、もちろん。
 星ちゃんもお気をつけて。 手を貸しましょうか?」

なんて、そっと掌を向けてみましょう。

貴家 星 > 「おや、それではお言葉に甘えて」

手に手をとって上階へ。
上階に上がり直ぐに目に入るのはかつての看護師の詰め所。ナースステーションだ。
幾つかの机、幾つかの椅子、幾つかの書類──に紛れて誰かが訪ったのだろう。空き缶などが散乱していた。
通路は左右に分かれていて、ぐるりと円を描くように一巡しているだろうことが察せられる。
照らされる先に見える扉はどうやら病室のものであるらしかった。

「何も無い筈。であるのに生徒が行方不明になった。という事実があるからこそ。
 何かがあったら……直にわかると仰る言葉を頼りにしてしまうか」

左手側の通路を照らし、其方に行こうと促したところで右の通路から音が鳴った。
何かが倒れる音。何かが動く音。何かが、遠のく音。

「────宇津木殿」

人差し指を唇に当て、音を出さぬよう示す。
音は一巡せず、何処かで止まったようだ。

「……右手側……聴こえただろうか?」

指し示し、訊ねる。

宇津木 紫音 > 「………聞こえました。
 これは、二人で踏み込むべきか、一端下がるべきか、といったところですが。」

怖がる様子はないが、それでも、瞳が鋭い。
薄く笑うその笑顔は、ちょっとばかり獣のよう。

「………何かいるなら、それはそれ。
 ここはただの秘密基地にするには若干気分が進まぬはず。
 真っ当な人間ではないか、元より人間ではない何者か。
 どちらにしろ、とても"面白い"相手がいると思いますが。」

笑う。 笑いながらぺろりと唇を舐めて。
こういう面白いことを求めていたのだ。

「………一度戻られるなら、私はここで動かないよう、見張っておきますが。」