2022/11/05 のログ
ご案内:「病院」に言吹 未生さんが現れました。
言吹 未生 > 面会謝絶、とも何とも付されていない個室。
常世島ならではの、ヴァーリトゥード――当然、法に触れない範囲内の話だが――な集中治療ののち、
丸二日の昏睡を経て、少女は洋上――もとい養生の人となっていた。あるいは牀上。

「…………」

かしかしと。
重い表情のまま、プラスチックのれんげで、粥の入った皿を掻く。
食が進まない。が、食欲は――ある。
パラドックスに弩突かれた腹は、身体強化が切れておればそれこそ、胃切除を免れない運命にあったが、
幸いにして健在である。痛いもんは痛いが。
重要なのはそこじゃあない――。

言吹 未生 > 「っ、クソ――」

常ならぬ苛立ちも露わに毒づいて、れんげの無為なリズムを止める。
過ぎ去りし日々。『皇国』でも幾度となく味わった苦い経験。感覚。
――やんぬるかな!“此処”でもか!“此処”もまた、己を苦しめようと言うのか!
打ちひしがれたようにかぶりを振って。

「何で――どうして――」

敵意さえ孕む一つ眼が、忌々しげに睨むのは――

「どうして病院食は、どこも不味いんだ……ッ!!」

粥である。おなかにやさしい流動食。保存料含。
少女は切実だった。幻視の稲光を背に負うほどに。

言吹 未生 > 少女は決して“そこまで”偏食家ではない。
しかし、粗食を敢えてよしとするほどストイックでもない。
そも不慮の事故で流れ着いたとは言え、異世界に来たのだ。
ぶっちゃけ異文化交流とかワクワクした。いやアカデミックな方でなく。もっと俗な方面で。
そう、食事とか。料理とか。スイーツとか。
学生街のスーパーで水ようかんを目にした時は、懐かしさや安心感を覚えると同時に、
この島の懐の広さに期待感を弥増しもしたものだ。

なお『皇国』の主な甘味は“こちら”で言うところの和菓子である。何たる天の配剤か。

閑話休題。
ともかくも、そんな異界文化の坩堝たる常世島の病院食であるからは、
何呉と期待してしまっても責められる謂れはない。
少女の脳内ではそう既にして完結している。僕が法だ。
そこへ来ての――この仕打ちである。
言吹未生は激怒した。
患者を心身共に癒すべき病院食を、このような味気ない“またお前か”的メニューに制定した邪智暴虐の存在に。

あとこんなところに己をブチ込んだパラドックスに。