2022/02/04 のログ
暁 名無 > 『―――行こう、  。』

男子生徒が、彼の背後に声を掛けるともう一つ人影が姿を現した。
嫋やかな銀の髪、鋭く冷ややかな金の瞳の女子生徒。
男子生徒がその女子生徒の手を取り、俺の横を通り抜けて先へと進む。

紅と金が一度だけ、俺へと向けられて、すぐに外された。


離れていく姿に、手を延ばそうとするも半分も腕が上がる前に力なく落ちる。
アイツの言う通り、これは俺が自分で選んだ結果だ。あの二人が、二人で居られるために、俺は停まった。

だから、多分、これで――でも、それでも。

独りは、

暁 名無 > ―――突然の強い衝撃と、鈍い痛み、そしてそれらに対する自分の悲鳴で俺は目を覚ました。

「痛っっったい!」

目を開けると準備室の天井、首を捻れば仮眠用のベッド代わりにしていたソファ。そして背中に感じる冷たく硬い感触はきっと床。
どうやら滑り落ちたらしい、と落ちた時にぶつけたのかじんわり痛む頭で考える。
訂正、じんわりどころか結構痛い。

「あー………最悪な夢見。久し振りに見た夢があんなかよ。」

一緒にソファから落ちたブランケットを手に体を起こす。
時間を見れば仮眠を取り始めてきっかり一時間。思ったより寝てなかった。半日は時間が過ぎた気がしてるのに。
ふらふらと立ち上がるとブランケットをソファの背に掛け、デスクへ向かう。

「俺に言われるとは、俺も焼きが回ったかなー」

チェアに腰を下ろして独り言ちる。
夢は夢、と起きた今では割り切れるものの、漫然とした無力感が残っている。
停まってても、置き去りにされて独りになるとしても、俺は此処に居るしかないのだろう。それしか、もう出来る事は無い。

相変わらず閑古鳥が絶賛増殖中の準備室で、俺は諦めて仕事に取り掛かるのだった。

ご案内:「幻想生物学準備室」から暁 名無さんが去りました。