2022/11/02 のログ
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パラドックス >  
<クォンタムウィズパラドクス……!>

無機質な電子音声と共に、黒街の一角は爆炎に包まれた。
破壊者にとって、この島の表も裏も関係ない。
この島のあらゆる秩序の敵であり、はみ出しものさせ焼き尽くす。
無造作に立っていた廃墟群はあっという間に紅蓮の炎に包まれ
悲鳴と断末魔が木霊する。その中央に居住まうは勿論──────……。

『死ね……!』

<クォンタムバースト!シュートブラスト!!>

対峙する複数の異能者の力と、破壊光線がぶつかり合う。
破壊者のライフルが放つ極大のエネルギー粒子。
恐らく、この一角を根城にする半グレの異能者集団だったのだろう。
エネルギー粒子を防ぐ巨大な肉切り包丁だが、あわやそれを防ぎ切る事は敵わない。
突如現れた破壊者の奇襲に為す術もなく光に飲まれ、異能者の男は燃え尽きる。

『フゥゥゥ……!』

当然破壊者は止まらない。
ライフルの排熱煙が辺りに撒き散らせ
デジタル数字を全身に点滅させた、黒いケーブルを巻き付けた鉄の魔人。
未来の破壊者の「0:0」のデジタル数字の双眸が、赤く煌めいた。

言吹 未生 > 極光と火焔。
闇の巷を瞬く間に彩り、瓦礫と灰とに変えて行くそれを、
また別の頻闇から目の当たりにする一つ眼。

「――――」

最近やり過ぎたきらいのある半グレ集団異能者付。
小耳に挟んだそれに、一つ罰を下してやろうかと。
思い出向いたその矢先で、標的の一人――グループの中でも手練れの男だ――が“文字通り”焼尽する。

「《止まれ》、パラドックス――」

未だ破壊を免れている路地裏から、幽鬼の如く歩み出ざまに。
小手調べとばかりに、【圧魄面説】による拘束を試みる。
予定は変更だ。そうせざるを得まい。
かつて教会や常世渋谷の一角を灼いた男。
遠目に臨みて、いずれ追い詰めてやると呪った厄災が、そこにいる以上は――。

パラドックス >  
<スラッシュ!>

ライフルの形状が変形し、蒼刃のエネルギーブレードとなる。
誰一人として、何一つとして痕跡を残しはしない。
この時代は全て破壊する。眼の前の廃墟にブレードを振りかぶり────…。

『……!』

破壊者の動きが止まる。
いや、止められた。知らない声だ。
川添春香でも安綱朱鷺子でもない声だが、その声音には"力"があった。
自らの動きを止めたその言葉の正体を、破壊者は見当もつかない。
自らの時代には既になかったのだ、"呪い"なんてものは。

『アーマーは正常値。であれば、私自身に掛けられたものか?
 ……魔法の類ではない。此れは……、……お前の技か?』

デジタルカメラアイの映ったのは、路地裏から現れた少女。
風紀か、公安の連中か。どちらにせよ、自らを止めに来たらしい。
破壊者は問いかけ、アーマーに強化された力"のみ"でぎこちなく振り返る。
確かに効果はあるらしい。軋む鉄の音は、効果を実感させている。

『……お前、何者だ?』

言吹 未生 > 怨念にも似た燐光の刃を翳し――しかしそこで停まる怪人の姿は、一箇の前衛芸術のようでもあった。
けれども少女は、それを審美する目も意も持ち合わせていない。
硬質なローファーの靴音を響かせ、彼我を詰めつつ。

「元『皇国』呪術技官、言吹 未生。――呪いの苦味はお気に召したかい?」

風紀でもなければ、公安でもない。
およそこの島に於いて“些かの権能も持ち合わせない”その名を口に乗せ。
ここが愁嘆極まる破壊の場であった事は、官憲としてであれば憂うべきだろう。
しかし呪いを司る狂犬にとっては、誂え向きでさえあった。
恐怖、混乱、悲哀、憤怒、憎悪。それらは呪いを肥え太らせる極上の餌となるのだ。
もっとも、機械の統御部分にはそれが及んでいないようだが。
やりようは他にもある――。

「“お前”に届け物だよ。お前の手で、平穏を、安寧を、命を奪われた――彼らの、声なき声を――」

謳うように上げた両腕に纏う呪詛が、死気を捲いておおおと呻きを上げた。

パラドックス >  
『『皇国』……?知らないな。
 だが、此れが"呪い"か……ああ、成る程。勉強になった』

己の時代にはなかった名の国だ。
或いは、既に滅んでいたのかもわからない。
呪いに対しての知識は存在していた。
破壊者にとっては、最早知識だけの存在ではあったが。
興味深そうな相槌は科学者だった頃の名残だ。

『……"言霊"、とでも言うものか』

遥か昔には、言葉には力が宿るという言い伝えがあった。
この全身を包む圧迫感、圧力。彼女の意志、自らを呪う泥土か。

<ショット!>

無機質な電子音声と共に、ブレードがライフルへと変化する。

『フン、声なき声か……"だからどうした"?
 私はこの時代を蹂躙する為にきた。自らの行いも、全て承知の上』

その行動がどれ程の悲劇を生むかなど知っている。
恐怖、混乱、悲哀、憤怒、憎悪……全てを振りまき、そして踏み潰す。
全てを犠牲にしても救うという絶対的"決意"がある。

『そしてお前も、その仲間に入ると良い!』

力任せに振り払うように半身を振り回し
同時にレーザーライフルから放たれる青白い光弾。
一発一発が破壊力を宿したエネルギー弾であり、それを乱射する面制圧攻撃だ。
混沌の中にある絶対にブレない芯。身を包む呪いさえ跳ね除ける、"意志の力"だ。

享楽や悦に浸りたい訳では無い。
そこには、如何なる介在も許さない絶対的"意志"がある。

言吹 未生 > 「それは結構。――そいつを活かせる機会は来ないだろうけどね」

相槌に皮肉めいた言霊を投げる。そうあれかしと。
刃が長銃へとモーフィングする様を、やや細めた一つ眼が睨む。
かつて聞いたシスター・マリー――マルローネの話に出た得物を――。

「――間に合ってるよ」

蹂躙され、抜け殻と――屍と化した彼ら。
刹那一瞥をくれた彼らの仲間にならば――“もうなっている”。
跳ねのけられた呪いの残滓を掬うように、空を掻く手の中の呪詛が粘つく動きを見せて変質する。
ぐああ、と。地獄の責苦に喘ぐような死念のおめきを従えて、それは眼前に立ち塞がる壁へと姿を変える。

「――『呪界(ダンタグラム)』」

闇すら蝕む昏黒が、意志を得たようにじりじりと怪人を押し包まんと進む。
その奥に消えた少女の声と、破壊の光弾の着弾音とが重なる。
凝結されたマイナスの力が、受け止めた意志の力――その貫き通さんとする力すらも、
絡みつき、呑み込み、喰らって行く――。

どしゅ。と。
地面が軽く爆ぜる音は、その後ろに紛れるように。
もしも怪人が呪力の壁へなおも挑むならば、疾る気配はその死角から襲い掛かろうと試みるだろう。
『身体施呪』にて強化した足で、瞬時のうちに歩を詰めた少女の影が――。

パラドックス >  
放たれた弾丸は、肥大化した黒の泥土に蝕まれていく。
カメラアイの移すデジタルビジョンにもくっきりと映るアンノウン"達"。
よもや、あれは彼女が生み出した怨念の塊だと言うのか。
呪い、恨まれる理由など簡単に思いつく。
今更そんなもので怖気づく訳もない。
光弾が重なり、死念の泥土の中で爆発する。

『そんなもので、私を止められるものか……!』

<スラッシュ!>

変形したレーザーブレードを構え、アスファルトを踏み抜く。
瓦礫を散らし、暴風を舞い上げ一瞬で間合いを迫る。
"そんなもの"とさえ言い切り、ねじ伏せるための決意は済ませているのだ。
貪欲に位屍の、呪詛の壁を断ち切るように蒼の一閃が振るわれ──────!

『何……!?』

死角。
だが、その一撃が仇となった。
振りかぶった直後の怪人の姿。
ヘルメット内にアラートがなろうと、反応が遅れてしまった。
直後、全身に走る衝撃。体躯の差など関係ない。
鉄の怪人の体が吹き飛び、壁に叩きつけられた。

『ぐっ!?速いな……!だが……!』

瓦礫を押しのけ、ゆるりと立ち上がる怪人。
ダメージは与えたが動きを止めるには値しない。
しかし、あの小さな体躯から繰り出される一撃とは思えない。
何かの魔術か、あの細身にそれほどの筋力が隠されてるとは思えない。
赤く光るレッドアイが点滅し、少女を睨むかのようだった。
当然、怖気づくわけもなく再び突風巻き上げ踏み込めば
瓦礫を巻き上げ、レーザーブレードの先端を一直線に少女めがけて突き出す────!