2021/11/19 のログ
ご案内:「◆送電塔」にO RLYさんが現れました。
O RLY >  
ただ雨を待つ。腰掛けた廃棄された鉄塔の上で。
凍てつくような冷たさをはらんだ風を受け、舞う髪を片手で抑えながらまだ雲の気配すらない空を一瞥する。

「……ああ、相変わらず糞みたいな光景」

そう呟き再び視線を戻すと、それに応えるように少し離れた場所にとまっていた烏が飛び立っていった。
耳をひっかくようなその鳴き声が遮るものも何もない空間を走って消えていく。

「…………」

それを見届けると僅かに視線を下ろした。
……この島は人間だけじゃない。
人に似た別の生き物も数多く存在する。
獣や鳥、虫、魚、それらに似たものやそれのいずれとも似ても似つかないモノ達。
それら多種多様な生物達が独自の生態系としてこの街を作り出している。
……今や私もその一つだ。

O RLY >  
今や多くの者達が特殊な能力を持ち、溢れたその終着点……掃き溜めというものもいるが
それらの共存、そして共生などという甘い理想の下に作り上げられたのがこの島。
異なるもの、異なる事、それらが当たり前になった世界で、モデルケースとなりうる存在というのは
実に夢と理想に満ち溢れた桃源郷を追い求めているように聞こえる。

「……ま、実際の所、無理だって結論は出てるんだがね。」

世界平和は理論的に成立しえない。そんな古い論文を見たのはいつだったろうか。
確か19世紀ごろに記された随分と古いものだったように記憶している。
そこに記された”人間”は同一存在に耐えられず、かといって僅かな差異も受け入れる事は難しい
そんな悲しい生き物だった。
そして個人の経験からもそれは事実だと思い知らされていたように思う。

「結局形を変えるだけでちっとも進化しやしねーんだ。
 そういう意味ではあたしも同じか。」

いつからだったろう。
私は……少なくとも”私”が生まれた時から既に命の価値というものを感じられない存在だった。
それが故に生きることに執着しない。
というより今この瞬間も暇つぶしに過ぎないのかもしれない。
こんな世界なんてどうなろうと知ったことではない。
……だから何度でも傷つけるし簡単に捨てられる。
それに気がついた時、自分が酷く歪んでいることを自覚した。

「かといってそれだけってのも”つまんねー”しなぁ」

誰からも必要とされなくても私は生きていける。むしろ明確に生きたいと思う理由がない。
死んででも成したい事などというものはなく、死ぬ気で成したい事があるわけでもない。
ただただ、怠惰と享楽に溺れているだけ。
……生きる以上に死ぬのはめんどくさいんだ。

O RLY >  
「結果として一時設定した目標は達成したわけだけど……
 あー、これからどーしよっかなぁ」

アタラシイカタチ。それについて考えておく必要が出てきた。
色々な意味で、今自分の立ち位置を保留している。
元々アタシは別に誰かみたいに”何かを変える”なんて大きな考えは持っていない。
そんな風にはもう、期待できない。期待するのは疲れるし、それに無意味。
だって仮にその大望が成されたとしよう。アタシの立ち位置が変わるだろうか。

「……うん、言うまでもねーなぁ」

変わらないだろう。過去の歴史が示すように
世界をひっくり返してもアタシみたいなタイプは結局誰かと仲良くギロチン行きです。
……それはそれで楽しめるけど。

「とはいってもなーぁ。あー……」

足を遊ばせながら言葉にならない口になりきれない音をこぼす。
目標点を新たに設置する必要がある以上今までと同じ手段は使わないし使えない。
単純な手品なんてすぐに陳腐化する。とはいえ元々、できることなんて限られているわけで。
……いっそ首でも狩りに誰か来てくんないかなぁなんて思考放棄に流れそうになる。
そうすれば一時の暇ぐらいは紛れるのに。

O RLY >  
そんな風に考えていたら遥か遠くからこちらに向かう足音が聞こえてきた。
音の大きさ的に……数人か、こりゃ。
手にしている武装はそれほど良い物ではない。
こちらに当たりそうなのは北国製対物ライフルが数丁、
あとは量産品のARがいくつか。鉄塔の足元から撃ったって大して脅威にはなりはしない。
……どこかで顔でも見られたかな。

「んんー……ふぁ。
 ま、今日はそういう日かねぇ」

軽く伸びをして気持ちを切り替える。
さてどう来るやら。……さすがにノープランってことはないだろうけど……
まぁそれにまともに付き合うつもりもない。
相手が配置につく前にさっさと退散する事に致しましょう。
パーカーの裾を軽くつまむと零れ落ちる黒い小さな”筒”をキャッチしダイヤルを捻る。
極小粒子充填型の奴は安くて助かりますね。
そのままふたたびぐぐっと伸びをして……そのまま体重を後ろに預けた。
耳元でごうごうと鳴る風切り音と、逆さになった景色にぽっかりと浮かぶ、真珠色の月。

O RLY >  
基本自分の能力は隠しているけれど、身体能力位はこんなところに登ってる訳ですし……OKでしょこの位。
もーいーよっと。小さく浮かぶ月に小さく投げキッスと飛ばして身を捻る。
そのまま足元に向かって筒を投擲。
一瞬後、吐き出された金属粒子が空気と反応して爆音と閃光をまき散らした。

「……っと」

それに紛れるように繊維布を投げ、一瞬だけブレーキにして勢いを殺しながら地面に着地。
……僅かに放射状に走った罅は見ない事にする。アタシはか弱い乙女です故。

「んじゃね」

小さく呟くとすぐに走り出す。
獲物的にはそれほどでもないけれど、追跡能力を持つ相手かもしれない。
とはいえそれはまたその時という事で。そうして近くの建物の陰へと滑り込んでいく。
良い感じの現実逃避にちょうどいい。そんなおいかけっこはまぁ、楽しむという事で。

ご案内:「◆送電塔」からO RLYさんが去りました。