2022/01/27 のログ
ご案内:「常世第三電波塔」にダスクスレイさんが現れました。
ご案内:「常世第三電波塔」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
ダスクスレイ >  
常世第三電波塔……か。
風紀の猛追から逃げているうちにいつの間にかここに辿り着いたらしい。
忌々しい風紀委員どもめ、とうとう私を潰しに来たか。

それにしても喉が渇く。
全身に熱傷を負っているからだ。
閃刀『虚空』を使い続けて肉体を賦活しなければ、死ぬかも知れない。

そのことが私を焦らせていた。
おのれ紅龍め、私に無礼な言動をするばかりでなく焼夷弾を撃つなどと。

空を見上げる。不思議と暗さを感じない。
夜に活動しすぎて、眼が慣れてしまっているのか。

全身に巻いた包帯が緩んでいる。焼け爛れた肌を夜風が撫でる。

芥子風 菖蒲 >  
電波塔の上を、"青空"が舞う。
夜空の一部を染めた青空は
流星の如く塔を瞬き怪盗の前に着地した。
その正体は黒衣を纏った少年だった。
その手には抜き身の刀剣と、右目に宿る青い炎。

「見つけた」

その一言は、待ち焦がれたかのような一言。
刀剣の切っ先を向け、寒風に息を切る。

「……随分と変わった格好になったじゃん」

包帯塗れの体が、その傷の深さを物語っている。
恐らく此処に逃走するまでに多くのダメージを受けたのだろう。
だからこそ、今此処で、今でしかない。

「──────今度は逃さない」

青空が、より一層濃くなる。

「オレが、アンタを"捕まえる"」

ダスクスレイ >  
ああ、この青空は。
霹靂は。流星は。不吉なる黒は。

この忌々しい影は。

「芥子風菖蒲………!!」

落ち着け。私は私だ。
斬奪怪盗ダスクスレイなんだ。
こいつを亡き者にして逃げ切る。それも、鮮やかにだ。

さぁ、ショータイムだ。

「捕まえる? 大きく出たな、風紀委員」
「そう意気込んだ仲間を何人喪った?」

「お前らに、私は、捕縛などできはしない」

大仰な身振り手振り、電波塔のバランスの悪い足場を物ともせず。
これだ。これが私なんだ。
理解しろ、芥子風菖蒲………

「思えば……最初にお前に敗北してから私は心に瑕疵があるように感じる」
「死の恐怖を刻まれたんだ」

「それを今宵………お前の血で贖い、恐怖を克服してくれる」

二人の間を夜の風が通り抜けた。

芥子風 菖蒲 >  
そのぶつけられた生の感情は多分
初めて仮面が無いようなストレートなものだった。

「オレのせい……?」

要するに、ケチの付き始め自分が最初らしい。
なんとも自分勝手な物言いだ。
そんな身勝手な殺戮で犠牲になった人間がどれだけいる。
喪った命はお前のせいだってわかるはずだ。

「お前が皆を語るなよ……」

静かな殺意が口に漏れた。
見開く瞳孔、最初に在った時と同じものだ。
だがしかし、決定的に違うのは……。

「……そうだよ。だからアンタを"逮捕する"んだ。
 斬奪怪盗ダスクスレイ。アンタは、『ただの悪党』だ」

どれだけ煌びやかに魅せようと
尊大に振舞おうと、ただ一人の違反者に過ぎない。
何処にでもいるような小悪党と言ってのけた。
そして、悪が栄えた試しはない。
如何なる経緯を辿ろうと、最後には必ず秩序が持たらされた。

……まぁ、少年にとってその辺りはどうでもいい。

問題ないのは、コイツのせいで傷付く"皆"がいること。
だから、『止める』。己の役割を果たす時だ。

「アンタを飾る新聞は、今日で最後だ」

互いの間を夜風がすり抜けた刹那
黒い風が青空を纏い一足、大きく踏み込んだ。
互いの間合い、死線。先に動いたのは少年。
素早く銀の刃で、足元から斬り上げる。

ダスクスレイ >  
ワナワナと震える。
塵芥の如き命がなんだというのだ。
私は特別だ。この私こそが尊重されるべきものなんだ。
 
       ナメ
「貴様まで私を無礼るか、芥子風菖蒲ッ!!」

 
斬り上げを虚空の抜き打ちで切り払う。
相手の斬撃の勢いで後方に逸れる刀剣を握ったままの右手。
それを背中側で左手に持ち替えて横薙ぎ一閃。

「ただの悪党と侮った相手に敗死するも運命だッ!!」

左手側にあった電波塔の鋼の骨子が鋭利な断面を晒す。

芥子風 菖蒲 >  
金属が擦れあう金切り音。
今回は少しだけ"コーティング"を施してある。
流石に三度も一撃で此方の刀が斬れる事は無い。
だが、流石の切れ味と言った所か。
斬り払う一回で、僅かな刃こぼれを身を以て知る。

「(……!)」

それ位、"想定内"だ。
少年の小さな体は斬り払われた反動を生かしバク転。
横薙ぎの一線を避け、黒衣の端が両断される。

「悪いけど……」

着地すると同時に更に一足、刀剣の間合いよりはるかに近い。

「舐めてるつもりはな、い……!!」

黒風の突進、その頭部目掛けて"頭突き"だ。
不意に繰り出される石頭の一撃は、ダメージではなく
憤る事が分かる相手だからこそ、そこに"油を注ぐ"意味もある一撃だ。

ダスクスレイ >  
「!!」

明らかに踏み込みが近い!!
暗器か、寸鉄でも隠し持っているのか!?
零距離(キル・ゾーン)に踏み込まれてからの判断ッ!!

「が……ッ」

頭突きを受けて後方に一歩後退り。
仮面にヒビは……入っていない、貴様ッ!!

「うおお!!」

ショートレンジに切れ味のありすぎる虚空を使うのは危険。
懐から取り出した短剣を逆手に持って相手の喉を狙って斬る。

芥子風 菖蒲 >  
「いって……」

ぼやく割には意外と表情は変わらない。
意外とあの仮面、硬かったな。
夜目が利くのはお互い様だ。
懐から取り出した"光物"のおかげで、いち早く反応出来た。

首元を素早く傾け避けた手元。がら空き。
少年の片手が飛び出し、その手首を掴んだ。
互いの視線、デッドゾーンで得た生殺与奪の権。

「ねぇ」

仮面の目前、その奥の瞳を青空が覗き込む。

「……アンタはこんな事してて楽しいの?
 どんな理由で楽しんでるかは知らないけど、ただの迷惑行為」

「……もう止めときなよ。戦うのが好きかは知らないけど
 アンタは"楽しい"より、オレにあった時に"怖い"になってるじゃん」

「ヤケになるよりも、投降した方が"補習期間"は短くなるよ」

────但し、決定打では無い。

少年が選んだのは、飽く迄"言葉"。
少年は勘が良く、自身の感情は乏しくても
人の感情には機敏だった。この至近距離
そして、初めてぶつけられた生の感情で、何となくわかった。

そう言えばあの時も本気で自分を殺しに来た時もそうだ。
コイツはきっと、そうやって力を振り回すのが"楽しかった"んだ。
だけど、自分をきっかけにきっとボロボロになってきた。
対等や、それ以上の相手と出会ってきたんだと思う。
そう、戦う事において"当たり前"の事を自覚してしまったんだ。

それを飲み込む事も出来ないし、きっと後には引けなかったんだと思う。
全部勝手な憶測だ。けれども少年は、そんな彼さえも"許そうとしていた"。

ダスクスレイ >  
手首を掴まれる。
力が拮抗する。
振りほどくには………!!

そこでかけられたモノは。
私に対する許し………闘争の果ての死よりも。

大人しく地下補習室に入れという言葉。

「フ…………」

仮面の下の目が芥子風菖蒲の双眸と合う。
喉は乾く、舌に出来た熱傷からの水疱が痛む。
だが。

「フハハハハハ………」

お互いにとって、一瞬の判断で死ぬような。
そんな足場で。そんな距離で。
私は言葉を選んだ。

「人に牙はなく、力も衰え、素手では獣一匹解体することもできない」
「それでも人は殺意を抱く」

「演繹的証明の必要のない自明的な事柄」
「即ち他者を害するアプリオリ────」

「私の行いをニュース・ペーパーで読んで楽しんでいない奴が一人たりともいないとは言わせん」
「私こそが……」

「人の抱き得る殺意そのものなのだ」

虚空を握る手に力を込める。

「貴様に勝つためなら、私はそうあろう」
「恐怖を克服するため、私は怪物になる」

魔剣同調。
虚空から金属が腕に這い上がり。
金属に覆われた腕に幾何学模様の光のラインが浮かび上がる。

「いつまで私の腕を掴んでいる?」

全身に漲る力、理外の膂力に任せて引き剥がした。

「無礼者ッ!!」

離れるついにで短剣を投げて。

芥子風 菖蒲 >  
「─────ッ!?」

少年の言葉は虚しく、力により文字通り一蹴された。
振りほどかれた体は鉄骨に背中から叩きつけられ
バウンドする小さな体。痛みと衝撃に肺が押しつぶされ
息が全部押し出される圧迫感に、ダメ押しで短剣が腹部に刺さる。
悲鳴を上げる事も無く、鉄塔から真っ逆さま。
一瞬の油断が、本来なら決着を招く。

──────はずだった。

落下する体は不意に、途中の鉄骨を蹴り上げ、跳躍。
再びその不安定な足場の上に、魔剣の前に再び降り立った。

『───────。』

青空が煌々と炎のように黒衣から迸る。
その体中に張り巡らされる青い糸。
その背後に映る聖母の様な女性の幻影。
恐怖の元凶たる聖母が降臨した。

子は親に逆らえない。
そう言わんばかりにその体は嵐の如く鉄骨を軋ませ再び互いの間合いへ。
魔剣の怪物目掛け、放たれるのは相手が得意とする六連撃の刃の嵐。
人智を越えた技は、少年の体を軋ませ、辺りに血潮が飛び散る事になった。

ダスクスレイ >  
「それだ」

短剣を手放して空いた手で相手を指差す。

「それを上回らない限り、私は恐怖を克服など出来はしない」

緩んだ包帯が風に靡く。
欠けた月が爛々と覗き込む。

「今の私ならッ!!」
「魔剣同調した今ならぁ!!」

剣戟を合わせて六連閃を捌き切る。
そして。

繰り出したのは人間が放ち得る究極の突き。
竹のように真っ直ぐ。
相手の喉を狙って伸びる直線の刺突。

スキュアエンド。

芥子風 菖蒲 >  
『───────。』

既に少年の意識はない。
その身が亡ぶまで、目の前のバケモノ屠る慈愛の女神。
互いの合間で煌めき弾ける剣戟。
放たれた突きでさえ、咄嗟に刀を盾に逸らした。

当然、その強烈な一撃に刀身が折れ宙を舞う。
但し、今の少年には関係ない。
宙を舞う刀身は既に少年の体に伸びる"糸"が付いており
直角、脳天目掛けて夜空を裂きバケモノ目掛けて一直線。

ダスクスレイ >  
スキュアエンドは相手の知覚の外から伸びる剣技。
青眼に構えた刃が直線に喉元に伸びるのだ。
相手からはいきなり切っ先が膨らんだ程度にしか感じられない。

だがそれを防いだ。
つまり………

「見ているのは幻影のほうかッ!!」

斬り折ったはずの刀身。飛来するそれを切り払う。

「その武器が私とお前との決定的な差ッ!!」

虚空と半ば一体化した右腕。
万力のように力を込める。

「永久に埋まらない私だけのアドバンテージだ!!」

相手の足元に向けて斬り上げ。
鉄骨は轟断され、相手の足場を切り崩す。

芥子風 菖蒲 >  
その見解は事実正しい。
今全ての知覚を司るのは女神の方。
少年の意識など関係ない。
全ては此の慈母が護るのだから。
今は愛しき、息子(あやつりにんぎょう)

『───────!』

それでも如何とも埋めがたい武器の性能差。
確かに今までくらいついてきた肉体の強化も
異能操作による技もその破壊力には敵わない。
弾かれる刀身。崩れる足場。
意識の無い体が奈落の底へ──────。

『─────もういいんだ、母さん』

少年の口が、動いた。


「……オレは一人でも、大丈夫」

その幻影は決して母ではない。
敢えて言うのであれば、深層心理。
きっと少年から見た母の姿。
文字通りの幻影に他ならない。

「……だから、全部母さんがやらなくていいよ」

己をだまし続けた母親だった。
だけど、そんな母親ですら今は"許そう"としている。


語り掛けるその姿は、バケモノには無防備だ。

ダスクスレイ >  
いける!!
殺った!!

一直線に落ちる芥子風菖蒲に向けて跳ぶ。
今の……魔剣同調した私ならあいつを斬り殺してなお、
鉄骨を蹴って生還するは容易い!!

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

魔剣同調した身体能力で放つ兜割り。星断撃。
星の核をも貫く斬撃を、無防備な少年へ放つ。

芥子風 菖蒲 >  
夜空から降ってくる、流星。
バケモノの放つ渾身の斬撃。
青空の双眸は、それをしっかりと見据えて────。

「──────だから一緒に」

今度こそ一緒に。

「──────戦おう……!」

折れた刀を、強く握った。
瞬間、それに呼応するように吹き上げる青空の炎。
最初に放ったあの一撃。青空の一閃。
空を覆う一撃がぶつかり合う。
轟音と衝撃が煙を播いて互いの視界を遮った。

それが晴れて尚、青空はそこにある。
鉄骨の上に立ち、未だに青い光が揺れる少年の姿。
乾坤放った一撃だ。相殺の代償は容易くない。
その両手は既に肉が抉れていた。
右腕は指が飛び、肉がさかむけ血が滴り
左手は中指から真っ直ぐひじに掛けて真っ二つ。

それでも尚、"生きている"。

「悪いね、まだ死んでなくて」

その背に既に女神の姿も無い少年は言葉を放つ。
意識がある。一見、その加護を見失ったようにも見えるが……。

"ボロボロの両手が確かに動く"。

青空に包まれた両手が再び折れた刀を握りなおし、確かに、今度こそ。

ダスクスレイと向き合う。

「……いける」

今度は自分の意思で"自分を動かせる"。
自らの力を、確かなものにした。
折れた刀身から伸びる青白い陽炎の刃。
一度振るえば、青空の閃光。飛ぶ斬撃がダスクスレイを襲う。