2021/10/23 のログ
ご案内:「違反部活のドラッグ加工場」にエボルバーさんが現れました。
エボルバー > 欲望というものは止まるところを知らない。
欲望が金を生み、金が欲望を生み出す。
すなわち欲望が渦巻く場所には、様々な物が吸われるように集ってくる。

落第街の中には違反部活が数多く密集している地帯がある。
欲望と争いが一際絶えない場所ではあるが、
今日に限って異様な程、激しい銃撃戦の音がこの地域を支配していた。

その発生源は大きな倉庫のような施設。
そこは、落第街に広く流通している薬物の製造を担っている施設で
中々力のある違反部活の所有物というのは有名な話。
だからこそこんな施設に殴り込む奴なんている筈がない。
誰もがそう思っていた。そんな矢先の異変。

エボルバー > 施設の中では、ボディアーマーと軍用の小銃で武装した
違反部活生というには潤沢な戦力が何かに対して応戦していた。
激しいマズルフラッシュと共に、フルメタルジャケット弾が
物陰から2階から様々な地点から一点に向けて放たれる。
その十字射撃の中心にいたのは特に武器等持っていない
スーツを着た細身の男。その顔に表情など感じられず、虚ろな瞳が
小銃を構える彼らを唱える。

間もなく放たれた小銃弾が雨あられのように男に着弾し
全ての銃弾を受ける男の身体に、穴あきチーズの如く
数百の弾痕が一瞬にして開けられる。
その男は言葉を発することなくその場で倒れ伏す事になる。

なのに、違反部活生達は小銃を下ろそうとしない。
目は血走り、息は荒いまま。
施設内をよく見れば足場は不気味な黒い砂で覆われ
壁や天井、設備のあちこちに削られたような、喰われたような穴が
数多く開いていた。
施設としてもはや機能不全であることは言うまでもない。
戦いは続いていた。

エボルバー > <力の弱い存在が集合し、連携することで力を増幅させる。
なるほど、合理的だ。>

銃殺されたはずのスーツ男は何時の間にか
2階から狙撃していた違反部活生の背後で立っていた。
その姿は先程銃撃されたとは思えない
奇妙な程に汚れ一つの無いものであった。

<しかし、不十分だ。>

男の不気味な挙動を目の当たりにした狙撃手は
ホルスターから拳銃を抜いて応戦しようとする。
それに対して男は常軌を逸した速度で距離を詰め
拳銃の引き金に指を掛けようとする狙撃手を殴り飛ばしたのだ。
飛ばされた違反部活生は窓から外へと放り出される。

異常な移動に追いついた構成員から再び銃撃を男へ浴びせようと試みる。

エボルバー > 違反部活生達も効果が見られない銃弾をただばら撒くほど
馬鹿の集まりではなかった。
小銃を構える構成員が前衛に位置取り、
後方から何か別の武器を重々しく構えた構成員が姿を現す。

その武器はどこから入手したのか
なんと装甲車も撃破し得る威力を持つ無反動砲。
所謂ロケットランチャーを構えた射手がその引き金を引けば
激しいバックブラストと共に空気を揺るがし
84mmのロケット弾が銃弾を超える速度で飛翔してゆく。

<なるほど。>

静止していた男にそれは直撃した。
強力な爆発が周りの設備ごと吹き飛ばす。
その熱と爆風から逃れるべく小銃を持った違反部活生は
物陰へと身を隠していた。
今度こそ始末できただろうか?
根拠のない撃破を違反部活生達は感じていた。
いや、信じたいだけであるか。

エボルバー > <学んだ事を反映する、それが進化だ。>

爆炎が晴れた所に立っていたのは
吹き飛ばされたはずの男の姿。
構える様に立てている右腕はまるで盾のような形状に変化しており
それが装甲版となってロケット弾を防御したという事だろう。

違反部活生達がざわつく。いざという時のために温存していた
装甲目標を吹き飛ばすための火力を受けてなお、そこに立っている男に
少なからずの構成員達が恐怖を感じていた。
冷静な照準を失い、半狂乱的に銃弾をばら撒く者が現れる。
組織の一員が正気を失えばたちまち連携は脆く崩れ去る。

同時に施設の足場を埋め尽くす黒い砂丘から
おびただしい数の触手が姿を現す。
それらは小銃を振り回す違反部活生を容易く打ち飛ばして壁へと打ち付ける。
銃弾を触手へ撃ちこむ者、逃亡を図る者、
統率を失った部隊は散り散りとなる。
彼らの持つ手段が男、いやこの場では怪異に通用しないと分かれば
逃げていく者が圧倒的多数だった。

<君達は僕に敗北した。君達はこの経験を糧に成長するだろう。
その君達によって僕はさらに進化できる。>

逃げてゆく構成員達に追い打ちをかけるようなことは無い。
ただその背中を虚ろな瞳が捉え続けるのみであった。

エボルバー > <進化し、変化し、適応する。>

施設を支配する黒い砂漠が脈動する。
男の姿はもはやどこにもなかった。
轟く砂群は異常な勢いで何かを形成してゆく。
最後に逃げていた違反部活生はソレをしっかり目で捉える。


<ボクの進化は止まらない。>


男の本質を、怪異の本質を、機械の本質を。
それは六本の脚を持つ大きな蜘蛛のような漆黒の怪物。
しかし、生物のように感じさせない無機的で鋭利な機械的なフォルム。
随所を幾何学的にマラカイトグリーンで灯すその物体は
金属質の咆哮を周辺へ響かせる。


そこからの詳細を知る者は誰も居ない。
ただ無残に喰い尽くされ、朽ちて、建造物であった事実ですら風化してしまう程の
加工場の残骸がこの場で異変があった事を知らせるシンボルになる。
只、これだけの異常事態にも関わらず負傷者は居れど
死傷者は一人たりとも出ていない事がまた奇妙な事実の一つであった。

ご案内:「違反部活のドラッグ加工場」からエボルバーさんが去りました。