2020/07/12 のログ
ご案内:「◆黄泉の穴周辺、廃棄区域」に---さんが現れました。
違反組織構成員 >   
思えば妙な依頼だった。
馬鹿みたいに高額な報酬を前払いで半額ぽんっと渡してきたうえに、支給された武装まで最新のもの。
そのくせ「理想の世界を提供する」とかいう胡散臭い追加の依頼報酬。
こちとら金に困っていたし、内容もめったに来ない風紀委員がぼろビルに近づかないように見張るだけ。
楽な依頼だと思っていたが蓋を開けてみたらなんだかでかい組織が動いてるみたいで何人も見知った顔に会うわ、その割には依頼人は顔ださないわでとりあえず依頼通り時間に合わせて警備を始めたわけなのだが……

「カー……やってらんねぇっすねぇ先輩」

最新式の対能力者銃を構えたまま割れた窓からそっと外を眺めて隣に座っていた小男がぼやく。
窓の外にはこちらをに向かって防壁を組み、睨みつけるようにこちらを見ている風紀委員の面々。

違反組織構成員 >   
「旨い依頼にゃ裏があるってよく言いますけどこりゃその典型例っすかね」

「うっせぇ。今俺だってそれを思い出して頭抱えてんだよ。
 どうすんだよこれ。逃げれたもんじゃねぇぞ」

男は煙草を取り出そうと懐を探り、ライターがないことに気が付き忌々し気に顔をゆがめた。
散発的に発砲音がする。他の奴らが風紀委員に向かって牽制しているのだろう。
今のところは突入を避けられているが、突入されて捕まったとなれば当分煙草はお預けだ。
捕まるつもりはないが今のうちに吸っておこうと思ったのに全くままならない。

「風紀嫌いの馬鹿共と無理心中するつもりはねぇぞ。
 悪だの正義だの言って盛り上がってるけどもおれはその日暮らしが出来ればそれでよかったんだ。ちきしょぅ」

「その日暮らしに風俗行くって含まれるんすか。知らなかった」

「うっせ。良いだろ別に」

吸えないたばこを八つ当たり気味に握りつぶすとトランシーバを手に取る。
偵察向けの異能持ちの仲間がそろそろ帰ってくるはずだ。

『おぃ、抜けれそうなとこ見つかったか。』

『いや、駄目だね。地の利はこっちにあるけどさすが風紀委員。そう簡単には逃がしてくれないみたい。』

『マジかよ。お前でも無理なんか。』

『あたし一人で逃げていいならいいけど?』

『馬鹿おまぶっ飛ばすぞ』

『そう思って連絡してんでしょ。感謝しなよ』

『わーったよありがとさん。とりあえず帰ってこいや』

頭を掻きむしりながらトランシーバを置く。
状況は最悪だ。受けなきゃよかったこんな依頼。

違反組織構成員 > 「マジで誰だよこんなとこまで風紀委員ひっぱってきた馬鹿はさぁ!?」
「あー、なんか違法薬物売買してたやつららしいっすよ?
 この以来ついでにブツ売りさばこうとしてて持ってたのを偶然見つかったとか」
「マジか。死なねーかなそいつら」
「下手すりゃ怖い人たちに今頃殺されてると思うっす」

今回の依頼にはそこそこ色々な組織がかかわっている。
そいつらが高額依頼ってだけでのこのここの依頼を受けに来たとは思わないが……
その邪魔を結果としてしたわけだ。
制裁されていてもおかしくない。
そりゃご愁傷様とつぶやきながら握りつぶした煙草を投げ捨てる。

「……というかなんで受けたんだろうなこの依頼」
「あ、兄貴もそれ思います?うっさんくさいことこの上ない依頼でしたよねぇ」
「まー……昔結構でかいヤマおこしたってその筋じゃ有名だった奴らが依頼主だったしなぁ。
 知ってっか?例の研究所摘発の際に大騒ぎになった奴ら」
「あ、一応。
 なんか摘発されたとき死人が3桁行ったとかいうあれでしょ。
 ボスが何回か愚痴ってましたもん。」
「そうそう、胸糞悪い話だよな。」

かの組織は報復も苛烈と聞く。
噂ではとんでもない化け物を飼っているとかいう話もある。
こちらとしては嘘でも本当でも断れない話ではある。
けれど……

違反組織構成員 > 「でもあれっすよね。
 やっぱ、”願い事を何でも叶える”ってのはデカかったっすよね。」
「お前あれ信じてるの?」
「兄貴だってそうでしょ。
 わざわざ個人あてにあんなもん送られちゃぁね」
「……」
「昔無くした恋人さんにあわせてやる、でしたっけ。
 兄貴の分だと」
「なんでお前俺の読んでんの!?馬鹿なの?俺のプライバシーどこ行った!」
「多分兄貴のベッドの下っすね。……居乳ものばっかりで正直ひくわぁ」
「お前一回死なない?」
「嫌っす」

そう。依頼文ににはこう書かれていた。
例え死人でも会わせてやると。
それがこの島に来た目的だということを手紙の主は知っていた。
しかもそれが全員だ。
……どこでそれを知ったというのだろう。

「……不気味でしょうがねぇよ」

独り呟く。
この島でも死人を生き返らせたりなんて言う行為は禁忌だ。
聞く話によるとそれを成した奴がいたらしいが……
確保されて以降それっきりだ。話すら聞かなくなった。
それでもあきらめられずこうしてこの島に隠れ潜んでいたわけだが
とんだ厄介ごとに巻き込まれてしまったものだ。
 
「でもまぁこうなっちゃ依頼も無理な話だわなぁ」
「そうっすねぇ。もう逃げ出そうとしてるやつもいるでしょうし。
 そいつらが事態を動かしてくれるのに乗じて何とか逃げるしかねぇっすね」
「んだなぁ」

以前あった会合とやらで旗色を鮮明にしたとか鼻息を荒くいている組織も多い。
”風紀”嫌いの連中は明確に”悪”であることを前面に打ち出している。
依頼主のおかげで武装は十分だ。そいつらはこれ幸いと風紀相手にドンパチするだろう。
人質もいるとか聞く。無理に突入すれば風紀にも少なからぬ被害が出る。
……風紀の連中がそんなものを気にするかはあまり保証できないが。
とはいえ最近人質を守ろうとした風紀がいたとも聞く。今のところ突入はされていない。
時間を稼げるのは地の利があるこちらに有利だ。
あいつらの騒ぎを利用させてもらうしかこの場を切り抜ける方法はなさそうだ。
馬鹿共と無理心中なんて御免だ。

「そろそろあいつも帰ってくる
 状況が動いたらすぐ脱出すっぞ。
 見逃すなよ」
「おっけーっす」
  
男達は息抜きの会話を切り上げると再び窓の外を伺い息を潜める。
来るべき”きっかけ”を待つために。

……その切欠が彼らの思わぬ形で来るなどとは知る由もなく。

――――sideA、違反組織群

風紀事務担当員 >  
「あーもー!あたし明日休みのはずだったのに!」

制服の上に風紀委員の腕章をつけ、机の前に座っていた少女は眼鏡を放り投げ机に突っ伏した。
先程から通信機器が鳴りやまない。
最近大きなトラブルがあったばかりであわただしい日々がやっと落ち着いたと安心していたらまーたこれだ。
少女でなかろうと突っ伏したくなろうというもの。

「たっぷり寝て午後に起きてアイスクリームパーラーに行って馬鹿みたいに食べてっていう予定が台無し!
 なんでこのタイミングでこういうことするわけぇ!?」

全く迷惑な連中だ。
好き勝手するならルールの範疇でしてくれと思う。
無辜の市民であるこっちはそいつらに振り回されて碌に休暇も取れないのだ。

「あ、お疲れ。状況どう?
 なんか結構大変なことになってるらしいけど」
「そうなんですよーぅ。先輩変わってくださぃー!」
「オペレーターの役目を私がやってもしょうがないでしょ。
 私は実働部隊なんだから。秒で両手上げるわよ」
「そーですけどぉ」
「はいはい、今度の休みにご飯おごってあげるから今は仕事して。
 それで状況は?」
「あ、本当ですか?絶対ですよ?
 じゃあ状況説明しますね。こちらが概要になります。」

ものすごい勢いで手のひらを反す後輩にため息をつきながら実働組である少女はPDFを受け取る。
そおに記載されている文字数を見て思わず頭を抱えそうになる。情報が多い。

「簡単に言うとタレコミがあったんです。
 外で結構やんちゃしてる組織が島内にいて、あの例の大穴付近でやらかそうとしてるって。
 内容的に無視できない上にやたら具体的だったんで念の為付近にいたC-4班に巡回を頼んだんですが……
 該当地域で本来出会わないはずの人に出会って職質しようとしたら抵抗されたと。
 で、やたらいい武器を持っていたので撤退しつつ応援要請。
 観測班が逃走した人物を追跡したところ、何故か複数組織が集まっている廃ビルに出くわしたと」
「観測班が見つかったの?あの子たち結構な隠密能力があったみたいだけど」
「みたいですね。相手にも結構な探査系がいたみたいです。
 で、何故かその人達は立てこもり、現在われらが風紀委員が複数舞台で該当地域の閉鎖を行い
 日直の主動部隊が廃ビルを包囲中、と」
「……まるで誘い込まれたみたいな話ね」
「でも遭遇戦が発端なんですよね。
 風紀に対抗するために戦力を集めてた最中遭遇してなだれ込んだんじゃないかって言ってた先輩も居ましたけど」
「で、私たちは何すればいいの?」
「先輩の部隊は周辺地域の警戒と近づいてきた一般生徒の保護ですね。
 そうも聞きつけて野次馬に来てる生徒がいるみたいです。」

風紀事務担当員 >  
「え、もうそんなのがいるの?」
「いるみたいですね。すでに数人”説得”して帰っていただきましたし」
「はぁもぅ……仕事が減らないわけね。
 私明日映画見に行く予定だったんだけど。」

実働部隊の少女はポケットからチケットを取り出しながらがっくりとうなだれる。
何処から聞きつけたのか知らないが迷惑な話だとオペレーターと揃ってため息をつく。
あの辺りは立ち入り禁止で住宅街からも結構離れている筈なのに侵入する生徒が後を絶たない。
あの場所で何があり、そしてどんな生き物が蔓延っているのか現場で知っている側からしてみれば
本当に迷惑な話だ。

「装備は?」
「これです。窓口にすでに申請してありますのでミーティング前に受け取っておいてください。
 多分これから混みますからね。」
「防御系装備が多いわね」
「妥当だと思いますよ。なんか立てこもってる方々は対異能者用のライフルとか装備してるらしいですし。
 貫通性が高いので十分注意してくださいね」
「了解。面倒だけど怪我したくないものね」
「それと定期連絡の際には出来るだけ各所の詰め所を目指すようにしてくださいとの通達が」
「え?随分と物々しいわね」
「さっきちらっと話が出たタレコミの話、どうもその組織が関わってるのはほんとみたいなんですよ。
 結構耶馬目な事件を起こしている団体なので……」
「そう、わかった。班員にも伝えておくわね」
「お願いします。あとは逐次オペレーション時に……ってはい。え?」

説明をしていた少女がインカムに割り込んできた通信に慌てた様子を見せた。
説明途中でごめんなさいとジェスチャーした後通信に耳を傾ける。
数秒後少女は手元にあったPCをたたくと転送されてきた情報を読み取り、小声で唸りながら
手元の通信端末を握りこんで少し硬くなった声色で話し始めた。

「各位、緊急連絡です。
 作戦予定範囲で巨大な光柱が観測されました。
 立てこもっていた違反部活群によるものか、固有結界のような術式が展開されたようです。
 領域は廃ビルを中心に約3㎞ほどの円柱状に展開。
 ビルを包囲していた風紀委員と付近を捜索していた複数班とは連絡が取れなくなりました。
 該当地域周辺の警備、または巡回を行っている班は直ちに帰投してください。
 解析班は直ちに第三ミーティングルームに集まってください
 繰り返します。
 各位、緊急連絡です」

俄かに慌ただしくなるオペレータールーム。
そこある大きなモニターには黄泉の穴付近の映像が映し出されていた。
真珠色の光を放つ巨大な柱は無音のまま島の一角を照らし出している。

「……これは忙しくなりそうね」

実働部隊の少女はそれを見てそう零すと踵を返した。
彼女の部隊にこの事態を伝えなければならない。
しばらく休みを返上することになりそうだ。

「どこの誰かは知らないけれどこのつけはたっぷり払ってもらいますからね」

ミーティングルームへ向かう廊下に置かれたごみ箱にチケットを丸めて叩き込みながら
少女は恨むようにつぶやいた。

sideB 風紀委員

--- >  
――時は僅かに遡る。

「……やっと見つけた。っていうべきかな」

廃ビルの一角で一人の女を眺めてそれは小さくつぶやいた。
喪服を身にまとい、白い仮面をつけたそれはゆっくりとその仮面を外し、足元へと投げ捨てた。
足元を転がっていく仮面に等頓着せず、目の前でモニタを眺める研究者風の女をじっと見つめながらそれはゆっくりと歩きだす。

「……今まで散々逃げ回ってきたのにどういうつもり?
 誘うような真似までして。」

これまでは情報が徹底して隠蔽されていた。
自分の元に来る情報はそのいずれも切り捨てるための物で
喰らって記憶をそのまま回収し、それを持って追いかけても
必ずどこかでぷつりと糸が切れてしまっていた。

「ここ数か月、明らかに貴方は”私”を誘っていた。
 わざと痕跡を残すような真似をして」

しかしここ数か月のうちに事情が変わった。
大事な情報だけ隠すように意図的に隠蔽そのものの影は匂わせながら
様々な場所から除法が伝わってくるようになったのだ。
極めつけにこれだ。このビルには多数の違反部活が集まっている。
その周りを風紀委員が固めるという物々しい状態で。

「……まぁいっか。
 あなたに聞きたいのは一つだけ」

それはゆっくりと首をかしげる。
”こいつら”を追いかけてきたのはたった一つの理由だけ。

「”答えろ。妹達は何処にいる”」

これを聞くためだけだ。

白衣の女 >  
モニタの前で椅子に座った女は椅子を回し、ゆっくりと振り返る。
翡翠色の瞳が佇む人影を捉えると同時に女は邪悪な笑みを浮かべた。

「おや、ずいぶんとつれないじゃないか。43号。
 久しぶりの再会だというのに」

絶望的といっても良い状況だというのに、女に恐怖の色はなく、むしろ満足げな気配すらあった。
足を組み、白く細い指を組んだまま、その女は満足げに吐息を漏らす。

「ああ、本当に長かったよ。よくここまで来たね。
 クラッカーでも如何かな?美味しいヴァインが手に入ってね。祝杯にはちょうど良いと思うのだが。」

パチンと指を鳴らすとその横に沸き立つように人影が現れる。
グラスとワインを持った少女は目の前に立つ少女と酷似していた。

「飲めないわけではないのだろう?
 そういう風に作ったはずだ」

--- >  
「うるさい。私の質問に答えて。
 妹達は何処にいる。」

苛立ちを込めた言葉を吐きながら手を払う。
背後に無数の白銀の輝きが煌めいた。
その切っ先を女に向けたまま、それは女をねめつけた。

「貴方たちにたどり着くまでの間どれだけの数の”私”が貴方達に破棄されたと思っている?
 ”切り離した私”を情報操作に利用していることはずっと前から知っている。
 そんなことは今更だし、争いになったら”私達”が勝つ。
 最も……楽に死ねるとは思わないほうが良い。
 期待に添う予定は過去にも未来にもなかった。」

湧き出す影には一瞥すらもしない。
確かに自分と同じ能力を持つそれは脅威ではある。
戦闘になれば厄介だろう。

「”私”は気が長い方じゃない。
 さっさと答えるか喰われるして」

それが何の理由になるだろう。
こうして会話が成立しているのは”用心”と憎悪からくるものに他ならない。

「最終的には私が勝つ。
 ……そう作ったのは貴方達でしょ」

そう、こいつらがそう作ったのだから。

白衣の女 >  
「妹か。……それを聞いている時点で分かっているだろう?」

女は僅かに思案した後グラスをグイと傾け、ニコリとほほ笑む。
美しいとされたその笑みは形こそ違えど目の前のそれが浮かべるそれとよく似ていて

「”お前の妹なんてもう居ないよ”
 分かっているんだろう?43号。
 お前の家族の大半があの夜、”お前のせいで”死んだことを。
 残っているのはお前が後生大事に”抱え込んでいる”数人だけさ。
 今は”アリス”なんて名乗っている出来損ないと
 ああ、”ダリア”だったか。
 あれは検体28号の体だったな。よくあそこまで兵器として完成させたな。
 実に残酷で美しい。賞賛に値する。」

グラスを投げ捨てると同時にぱちぱちと手をたたく。

--- >  
銀閃が奔る。
音すら追いつけない速度で飛来したそれは宙を舞ったグラスを粉々に砕き

「……」

庇う様に飛来した別の銀閃に阻まれ甲高い音とともにへし折れる。
それを煩わしげに確認しながらそれは苛立ちを隠さずに女をねめつける。

「……煩い。
 お前達が”私達”を騙るな。」

意識のない自分がそこにいる。
そして従属している。それだけでどれほど腹立たしいことだろう。
ずっとそれに邪魔されてきた。他ならぬ自分自身の能力を利用されて。
それをリンクできればこんなにも時間をかけずに済んだというのに。

「私があの子たちを殺したのも今更。
 後悔なんかしてない。あの子たちはあの場所で死ぬべきだった。」

それを生かそうとしてしまった馬鹿な子供がいた。
あの日、あの場所で。

 

白衣の女 >  
「語るとも。お前は私は作り上げた最高傑作だもの。
 そして今夜、私の完成品は世界を変える。
 そうだとも。他の誰も語る権利を持っていなくとも私は語る権利がある。
 何故ならお前は」

「私の娘だったものだからな」


女は笑いながら席を立ちあがる。
僅かに動揺したように見えるそれに両手を広げながら近づき
そしてついには抱きしめて。

「お前の記憶の中の私はどんな顔をしていた?
 ああ、そういえば今のお前はヒトの顔を認識できなかったな。
 思い出せ。お前の母親の顔を。
 お前の創造主の面影を。」

その耳元でゆっくりと囁く。

--- >  
「……っ」

母親。その言葉が耳に飛び込んでくる。
聞き覚えもない言葉に、見た覚えもない顔
けれど何故か体が硬直する。

「貴方は……」

抱き締められ、声を詰まらせる。
母親など、覚えてはいない。
顔も認識できない。こちらを揺さぶるためのウソも十分あり得るだろう。
けれど確信してしまっている。

この女は何一つ嘘を言っていないと。

白衣の女 >  
「今までの馬鹿共はお前の扱い方を理解していなかった。
 見た目の良い奴隷程度の認識しかなかったのだろう。
 仕方がない。奴らは馬鹿だからな。
 しかし私は違う。何故なら私はお前を作ったからだ。
 お前を使い方を、目的を、そして手段を私は理解している。」

女は言い聞かせるようにゆっくりと囁く。
女は心から喜んでいた。自らが作り上げたそれが、この場に至ったことに。
こうして腕の中にいることに。

「私ならお前を理解できる。
 そしてお前なら私の理想になりうるんだ。
 賢いお前には簡単な事だろう?」

女にとって今手の中にあるものは自分にとってのすべてであり

「私の愛しい被造物(娘)なのだから」

--- >  
「私は貴方が……」

抱きしめられたまま戦慄くように口元が震える。
そういえばこんな風に抱きしめられたことがある。
酷くつらい世界の中で、優しい言葉と共に髪を撫で、抱きしめて
それはとても暖かくて



「大嫌いだった」

死ぬほど気持ちが悪かった。
抱きしめる女の背中から銀閃が飛び出し、空中に血しぶきを散らす。

「嫌で、嫌で仕方がなかったよ」

触れる肌が、伝わる体温がそして何より
自分の家族を実験動物としてしか見ない目が
オトウサン達と同じ位、いや、それよりももっと。

「お前が母親?だから何?
 私の家族に母親はいない。
 お前はただの創造主だ」

ゼロ距離なら妨害されるより早く串刺しに出来る。
自分ごと貫いた槍を引き抜きながらそれは吐き捨てた。

白衣の女 > 突き放され、ふらふらと後ずさり、椅子に座り込む。
胸元を染める赤い液体を女は信じられないとばかりに見下ろしせき込んだ。

「あ、あぁ……」

その手が胸を貫く槍を握る。
繊細な意匠が施された白銀の槍にべっとりとついた血の色を見つめ

「……あは、アハハハハハハ!」

女は笑った。
天を仰ぎ、哄笑する。
その顔には満面の笑み。

「ああ、われらが宿願、ここに成就せり!」

血を吐きながら女は痛みでもなく驚きでもなく歓喜に身を震わせていた。

白衣の女 > 「我らが造りし欲望の伽藍はついには我ら創造主に逆らう種子へと成長した!
 楽園を追放されたかのアダムとイヴのように。」

喜色を満面にたたえたまま叫ぶように女は歓喜の声を上げる。
もはや狂気じみたその笑みはおおよそ人の浮かべるものではなく。

「ただの情報であるはずのお前が、停滞の象徴であったはずのお前が
 ついに我らへの反逆を成した。どれほどこの時を待ちわびたことか。
 長かった。無数の無能共に私の傑作を取り上げられ
 ここに至るまでに実に14年もの年月を要した。
 本当に長かった。」

女は胸を貫く槍を掴み、ぐっと力を込める。
緩やかに抜けていく槍に徐々に力を籠め

「っ……は。これほど嬉しい痛みは初めてだ」

抜き去ったそれを放り投げる。
軽やかな音を立てて床を滑っていくそれを見ながら胸元を抑え、
数秒後にはその穴はふさがっている。

「選任者は皆、理解していなかった。
 お前の完成のさせ方を。
 保身に走り、重要な点を見逃していた。
 道具と歌いながらそれの使い方を理解していなかった」

実に馬鹿な事だと女は笑う。
所詮強硬派だの実力者だのいうわりに道具一つ使いこなせていない。

「従順なだけの人形など意味がない。
 我らが欲したのは新人類を興す禁断の果実だ。
 それらが従順でなどあるものか。現に我ら人間が神に従順か?
 否、われらは神に従うものではなく神に成り代わるもの
 そしてそれは今この瞬間に実現した。
 我らが同胞、可愛らしい兄や妹(モルモット)、数多の獣(能力者)を貪り喰らい
 この獣が蔓延る蟲毒の島で私の果実は結実したのだ。
 ああ、なんと素晴らしい」

歓喜の感情のままに女は空を仰ぐ。
その目元からは歓喜の涙があふれだし頬を伝っていた。

--- >  
「……楽園の蛇が自分だと?」

女の言葉にいくつかあった疑問が氷解していく。
眠らせた機能、与えられた役割
その全てがそれが目的であったなら。

「ああ、貴方は文字通り自分を神だと信じているんだね」

目の前の女が何を欲しているのか理解してしまった。
この女は”そんなことのため”にあの実験を行っていたのだと。

白衣の女 >  
「楽園の蛇?違う、われらはまさに神となったのだ。
 分かるだろう?お前なら。
 お前がどういったもので、どう作られたのかお前はもう理解しているのだろう?」

女はくつくつと笑い声をこぼす。
研究所で”愛玩物”だったこれを今でも鮮明に思い出せる。
個人実験の名称で、研究員共に嬲り、およそ入れられるものすべてを入れられていたこの道具を。

「お前は只の道具だった。
 その体で、その顔で、男共に奉仕する自慰のための道具。
 故に生きている必要すらなく、情報体で十分だったのだ。
 自ら腰を振り、甘い声で啼き声をあげ、男共の欲を満たすためだけの。
 その顔も、その力も、全てそれらを蹂躙するために与えられたもの。
 事実多くの馬鹿共が勘違いしていただろう。
 多くの力をも蹂躙するお前を蹂躙することで
 それらを自分が越える事が出来ていると馬鹿共は驕り高ぶっていたのだ。」

それを証拠に前任者は数年前の事件を恐れ、完全に縮こまってしまっていた。
だというのに切り離したコレを辱めることはやめられなかったのだ。

「だがどうだ。
 人類に従属するはずの天子様がこうして人類へ人逆して見せた。
 これまでは隷属しかなかったはずの存在が、一線を越えたのだ。
 このまま進めばお前はやがて人類をも等しく支配するだろう。
 人類に従属するために人類を支配するのだ。」

もっとも今となっては感謝している。
前回の事件では確信を持てなかったが、それはある意味教育になった。
反逆するための種を育てる養分になったのだ。その命を持って。
しかもこの芽は死ぬことがない。
どれだけ隠蔽しようと倫理を持って踏みつぶそうと世界は無視し続けられない。

「ああ、素晴らしい。
 お前こそ我らへ献身する天使であり、同時に我らをも支配する女帝の種子だ。
 萌芽したお前は従属し、従属させることで万人を等しく天国へ導く守護天使になりうる。
 そんな生命を生み出す誘惑に人類が抗えようか?抗えるはずもない。」

不滅の全き愛を注ぐもの。人類にとってこれ以上が存在するだろうか
そしてそれを作り出したのは他ならぬ自分なのだと女は歓喜に震える。

「この偉業が明るみに出れば世界中がお前というデータを欲し、お前を模すだろう。
 世界は大きくその在り方を変えるだろう。異能者が現実に実現しうる最高の道具だということを世界は思い知る。
 そうなれば異能者などという半端な生き物は全て鎖に繋がれることとなる。
 共存?調和?馬鹿な話だ。道具と共存する必要がどこにある。
 道具は使ってこそであり共にあるものなのではない。」

女はまるで学会で世紀の発見を発表するかのように熱弁をふるっていた。
いや、彼女にとって今この瞬間は学会などよりも大きな世界そのものを相手に弁をふるっているに等しかった。

「同時に我らは伝説となり、人類を創造主として進化させたものとして永遠に語り継がれる。
 我らを不当に謗り排し、さらには共存などという世迷言を吹聴した先導者共も、それにそそのかされた愚かな群衆も思い知る。
 我々こそが正しかったのだと!」

--- >   
それは長広舌をふるう女をただ静かに眺めていた。
怒りも嫌悪感もそこにはない。
ただあるのは何処までも静かな理解と失望だけ。

「……ああ、期待してもこの程度か。」

今までは警戒していた。
自らを作り上げ、そして野に放ちここまで泳がし続けてきた。
それだけの能力があり、まだ隠している対処しえない切り札があるのかと。
理解しえない領域に本当に相手は到達しているのではないかと。
……どこかで期待していた。本当に神様に出会えることを。

「……ありがとう。もういいよ。」

制止するように左手を伸ばす。
たどり着いた先で見つけたのは……狂人ですらない、ただのヒトだった。
1㎜たりとも彼女はそれの理解の先にいなかった。
彼女こそ旧世代の象徴だったと失望を隠しもせずにそれは言う。

「もう必要な”破片(情報)”は揃ったから」

ああ、どれだけの時を無駄に過ごしただろう。
何処まで行っても”私”は……

「道具ですらなかったんだね」

左手を握る。
同時に部屋に漆黒の風が吹き荒れた。

白衣の女 >  
吹き荒れた風は触れるもの全てを消し去っていった。
モニタを、デスクを、PCを、、女の傍に立つ人影を、そして女自体も巻き込んで。
一瞬の静寂のあと、湿ったものが二つ崩れる音が部屋内に響く。

「は……ああ、良い”機能”だなぁ」

半身を無くし、自らの血に沈んでもそれでも女は笑っていた。
理不尽に映るほどのこの圧倒的な能力。どれだけ夢見たことだろう。
死ぬことなど怖くはない。
むしろこの場所におびき寄せ、自分を殺すことで証明することこそが
女にとっての目的。そしてその目的は完遂された。

「私、……は、永遠に、生き……続ける」

残った片手をゆっくりと愛しき贋造物に差し伸べ女は笑う。
ああ、本当に良かった。私の娘が、こんなにも健やかに成長してくれて。

「貴方……が、私達の……」
 
何を悲しむ事があるだろう。
そう、それは永遠に生き続けるのだから。
偉業として世界に刻まれる彼女の名と共に。

「アイの、証明」

そう呟くと同時にその瞳から光が消えた。

--- >  
静寂に満ちた部屋の中で、それはゆっくりと手を下ろす。
……もうこの部屋には用はない。そして、ここから先、”識るべきこともない”。
上階ではおびき寄せられた違反部活たちが地下で起きていることも知らずに暢気に神経をとがらせている。
風紀委員もそうだ。
”全ては彼女の性能の証明のために準備されただけ”だ。
両方をかいくぐって、彼女を殺すために。
そしてその性能はここに居合わせたものによって証明されるだろう。

「……そうはならないけどね」

そう。思惑通りに等させない。
確信を持てなかったがこの女をも喰ったことで一つ確信を得た。
それは長らく見つける事が出来なかった答え。
この女は知らない。それを仮想の答えとして、今まで準備してきたことを。
ああ本当に、”最もつまらない答えだった”。

「”私は私を否定する”」

それの足元にゆっくりと魔方陣が広がる。
複数の魔術陣は仮想劇場型の固有世界を作り出すもの。

「”物語は終を迎え、全ては結へと収束する”」

ああ、簡単だ。
世界が私を知るというのなら、世界が私たちを知るというのなら

「”今ここに吟じよう。偽りの全ての終わりの物語を”
 ”世界にベールをかけ、優しい物語を紡ごう”
 ”それはありふれた、どこにでもある物語”
 ”この終わりなき世界に一瞬の永遠を”」

下らない物語で私ごと否定してやろう。
ありきたりでつまらない、ハッピーエンドを上書きしてやろう

「私は英雄にも、大悪党にもならない。
 無様に、無為に、みっともなく死んでいく。
 それが私の……私達の」

「最期の抵抗。」

--- > そして世界に光が満ちる。
彼女の立つ場所を中心に光の柱が立ち上り、それは爆発的に広がり全てを飲み込んでいく。
そこにいる者たちの願いも想いも飲み込みながら。
直径3㎞ほどの大きさまで膨れ上がったそれは世界の片隅に”世界(地獄)”をなぞる様に顕現させた。
それはまるで残り火の様な輝きを持って音もなく廃墟を照らしていた。


これは彼女の”最期の始まりの物語”


side" "   独りの誰か

ご案内:「◆黄泉の穴周辺、廃棄区域」から---さんが去りました。
ご案内:「学園街のとある住宅」に楠間 和泉さんが現れました。
ご案内:「学園街のとある住宅」にエスティアさんが現れました。
楠間 和泉 > 少々色々あったお風呂から、二人してタオルを撒いて上がり、寝室へと向かう。

「………はい。」

少女は少しだけ頬を染めながら、静かに部屋の中へと入り、ベッドへ腰掛ける。
もう片方の少年ををちらりとたまに、視線で追いながら。

エスティア > 「え、えっと……その………。」

同じような姿でベッドに腰掛、先輩の方を見るが……お風呂場での出来事を思い出してつい視線が泳ぐ。

「。oO(今になって気まずくなってきた……それに…こ、これって雰囲気的にもアレだし……。)」

男として自分から動くべきかどうか物凄く悩みつつ、時間だけが経っていく。

楠間 和泉 >  
互いにどうにも気まずくて、静かな時間だけがただ流れる。
しかして、しばし立てばそれに耐え切れなくなったのか…。

「……え、エスティア、その…。」

少女の方から身を乗り出して、おそるおそる話しかけてきた。

エスティア >  
「ふぁ!?ふぁい!?ななな…なんですか…?先輩…。」

声を掛けられビクっと身体を動かし、無意識に背筋を伸ばしつつ上擦った声で返事をする。

楠間 和泉 >  
かわいらしい少年のあわってっぷりに、頬が緩む。
緊張している今は、それを見ていると緊張が解れるのだ。

「…えっと、しないの?」

だから気を取り直して、微笑みながらそんな言葉を問いかけた。

エスティア >  
「………!?い、いえ……その……します、しますけどぉ……。」

あまりにストレートな言葉のせいで妙に冷静になりつつ、先輩の方へ再び視線を向ける。

「せせせ…先輩、えっと……途中でやめれる自信が無いので、一応そのつもりで…。」

図書館で初めて会って、その後も色々勉強を教えて貰ったりで好意があるのも事実だし、こういう事をしたい気持ちもあったが、いざそうなると上手く動けない自分に少々自己嫌悪を覚えるが…それでも言葉だけはなんとか搾り出す。

楠間 和泉 >  
「あはは…、うん、其処は大丈夫。
私もそのつもり、でいたから。」

軽く苦笑しつつも、絞り出した言葉に優しく答える。
そうしながら、少女数度深呼吸し、身体の力を抜くようにベッドに転がった。

エスティア >  
「そ、そうですか……?なら……。」

ベッドに転がる姿を目で追いつつ、自分も深呼吸した後でゆっくりとその横に転がり、改めて顔を向ける。

「……せ、先輩は全然緊張とかしてない感じ…ですね……。」

慣れてる…ともまた違うんだろうけど、落ち着いてる辺り大人だなぁ…と思いつつ軽く身体を動かし、自分の腕が胸に当たる。

楠間 和泉 >  
「…緊張、してるよ?ほら。」

胸に当たった少年の手を取って、自身の胸元へと触れさせる。
とくんとくん…と、速まった鼓動をその手で感じさせるために。

エスティア >  
「ひぁ!?せ、先輩も緊張してたんですね…す、すみません……。」

手を取られそのまま胸元へ持っていかれるのは予想外で、つい反射的に謝ってしまうが━━━

「……………。」

一瞬呆然としてしまったが、すぐに触れた肌の暖かさと、目の前の扇情的な先輩の姿を見て胸元に持っていかれた手を動かし、そのまま胸の方をゆっくりと揉むように動かす。

楠間 和泉 >  
「んぅっ…!……いい、よ。好きにして。」

柔らかな胸に、少年の小さな指先が沈みこむ。
女性らしい肌の瑞々しさと弾力が、少年を誘うように震える。

エスティア >  
「は…はい……、い、痛かったら言ってくださいね…?」

無意識にゴクっと喉を鳴らし、柔らかい感触をどこか楽しむように片手で揉みしだきつつ……ゆっくりとそのまま覆い被さるように身体を動かす。

「ずっと思ってたんですが……先輩の身体ってすごくえっちですね…。」

そんな言葉を呟きつつ、そのまま馬乗りになるような体勢のまま、空いてる片手も胸元に伸ばし、両手で柔らかく弾力のある胸を弄ぶ。

楠間 和泉 >  
「っ…う、うん…、や、優しくお願いね?」

胸が沈みこみ、揉みこまれる感触に身震いし、頬が赤くなる。
そのまま覆いかぶされば、胸の鼓動が更に加速する。

「へっ!?…ど、どういう意味…っはぅ!」

そうして掛けられた言葉を聞けば、思わず意識が真っ白になって…その不意を、胸の感触が貫いた。

エスティア >  
「は、はい………。」

小さく頷きつつ刺激を与えるが、続く言葉に━━━

「え?そ、そのままの意味なんですけど……、先輩…あまり自覚無さそう……だったり?

って……先輩の胸……凄く柔らかいですね……揉んでて凄く気持ちいいです…。」

普段の格好も含めての言葉だったが、すぐにそれもどうでも良くなって両手に伝わる感触を楽しむように動きを激しくした後で手を離し、今度は指先で両の先端を摘み上げる。

楠間 和泉 >  
「ひゃぅっ…♡
そ、そんなえっちじゃあ…は、ぅっ!?♡」

両手で胸を弄ばれて、そのままその先端をつままれれば、大きな甘い声が上がる。
身体が震え、高揚で肌が淡くピンク色に染まって行く。

エスティア >  
「……そうです?そのわりには……声も出てる気が…。」

自分の行為で甘い声をあげる先輩の姿に自身も気持ちが昂ぶり、下半身の方も自然と硬くなりつつ、先端を摘む強さを少々強める。

「今の先輩……凄く可愛いです、でも……後輩の前でこういう姿見せちゃうのはどうなんでしょう…?」

普段の世話焼きで頼りになる先輩の姿からは想像も出来ないほど乱れた声と姿に少々悪戯心が沸き、わざとそんな事を呟く。

楠間 和泉 >  
「声は…エスティアが、弄るから、じゃ…んんっ♡」

甘い甘い、声が上がる。
自身よりも小さな少年の行為に、少女はどうにも流されていた。

「それ…はぁっ…♡」

だから、そんな悪戯心からの囁きに、反論を返せない。
身悶えし、いいように弄られながら、頬を染めるだけだ。

エスティア >  
「ぼ、僕のせいです!?そ、そんな事無いと思いますけど……。」

甘い声でそんな事を言われると思ってもなかったのもあって少々動揺するが、それでも手の動きは止めず。

「………先輩ってもしかして……強引に"こういう事"されるの好きだったり……?」

目の前で頬を染め、身悶えする姿にどうにも昂ぶり、両手はそのままで、先輩の身体に自身の硬くなった部分を押し当てつつ、意地悪な質問を続ける。

楠間 和泉 >  
「ふ、うぅっ…♡そんなこと…ある、よ…っ♡」

それでも止まらない手の刺激で、少女は更に身を捩り。

「…っ!♡」

問いかけられた意地の悪い質問と、身体に押し当てられた少年の固い感触に、息を呑む。
それはまるで図星を付かれたかのような…。

エスティア >  
「質問の答えになってないですよ?先輩……。

……どうかしました?」

質問の答えは返ってこなかったが、押し当てた感触に気づくような反応を見て、胸を弄る手の方を離す。

「先輩が言ってくれれば僕もそれに応えたいなって、先輩にも喜んで欲しいですし…。」

普段と違って上から見下ろすような姿勢のまま、わざと言わせるような質問を続ける。

楠間 和泉 >  
「ぅっ…!♡
え、エスティア…。ぅぅ…その…。」

手を放され言わせるように見下ろす少年を上目遣いで見上げて…。

「……そ…そう、なのかも…。」

かぁっと紅く染まる表情で視線を逸らしながら、もじもじと答えた。

エスティア >  
「っ……じゃぁ……先輩が悦んで貰えるように僕も頑張りますね…?」

上目遣いにこちらを見つめる姿にドキっとしつつ、質問の答えに頷き……無理矢理タオルを剥ぎ取る。

「こっちの方が…全部見えていいですよね?胸だけじゃなくて先輩の全部見えちゃいますし。」

楠間 和泉 >  
「ぅ…♡お、おねがいするね…?」

こくりと頷きに答え、タオルが剥がされる。
豊満な胸も、ピンクに染まり透き通った素肌も、ほんのりと湿った秘所も、全てをさらけ出して。

「…私の身体…全部…みて、いいよ…?」

エスティア >  
「はい……和泉先輩ががっかりしないようにします……。」

視界に入る憧れの先輩のあられもない姿に息を飲みつつ、小さく頷く。

「和泉先輩の身体……凄く綺麗です、こことか……。」

身体をずらし、湿り気のある秘所に手を伸ばし……その周囲に指を這わせる。

楠間 和泉 >  
「ひゃぁっ…♡い、いきなりそこは…♡」

ぬちゅりと、濡れそぼった秘所に指が這わされれば全身が震える。
身を更に捩って、そこからはさらにとろりと雫が零れ落ちた。

エスティア >  
「凄く濡れてますね……胸を弄っただけだったのに…先輩ってやっぱりえっちですよ。」

わざと水音を立てるように指を動かし、羞恥を煽るような言葉を投げるものの…そんな姿を見て自身もすっかり欲情し、見た目とは裏腹に硬く反った其処を秘所の入り口へ押し当てる。

「先輩のせいで……こんな事になっちゃったので責任取ってくださいね……?」

再び上から見下ろす形でそちらを見る。

楠間 和泉 >  
「うぅっ…♡だってそれはぁ…♡」

けれども、紛れもなく感じていたのは自分自身で。
だからこそ恥ずかしさと、ぞくぞくとした”何か”が込みあがり、更にそこを濡らした。

そうして、そこへと少年の其処が押し当てられれば…。

「…!……うん…♡」

こくりと小さく、気が付けばうなずいていた。

エスティア >  
「"それは"だけじゃ分からないですよ。

………責任…って言ったけど、先に…お仕置きしないとダメかもですね…?」

先輩を悦ばせたい気持ちと、屈服させたい気持ちで少々複雑な感情を覚えつつ、両足を強引に開かせ、少女のような見た目と反して怒張しきった其処を秘所へ捻じ込む。

「っぅ…!はっ…ぁ……和泉先輩……どうですかぁ……?」

体重を掛けるようにしてそのまま最奥まで突き進めてから先輩の方を見る。

楠間 和泉 >  
「…え、エスティア…?
おしおき…って…?ひゃぁ…!?」

どうにも様子が変わった少年を恐る恐る見上げる。
強引に足を開かれて、男らしくそりたった其処が自身の中へと沈みこんで行けば…。

「あっぁっ?!♡く、ふぅぅっ…!♡」

鈍い痛いと…それに混ざる、仄かな快感に、少女は顔を歪めながらも甘い息を零していた。
最奥まで突き入れられれば、たらりと初めての鮮血が零れた。

エスティア >  
「くっ……ぁ、先輩の中…きつい……。
……動いても大丈夫ですか……?」

お仕置きとは言ったものの、それでも気遣いつつ、ついそんな質問をしてしまう。

楠間 和泉 >  
「だい…じょう、ぶ…♡
好きに動いて、いいよ?」

痛みはあれど、それよりも込上げる何かが身を包み、言葉となる。
両手を広げてそのように言葉をかける。

エスティア >  
「っぅ……それじゃ……動きますね……っ……。」

身体に覆い被さるようにして抱き締め、ゆっくりと突き上げるように腰を動かす。

「……和泉先輩の初めて…貰っちゃいましたね……?」

自分より少々大きい先輩を抱き締め、突き上げつつ…耳元でそんな事を囁く。

楠間 和泉 >  
こくりと小さく頷いて、覆いかぶさる小さな身体を抱き返す。
けれどもそれはむしろ、小さな身体に縋りつくような形で。

「くぅうっ…♡ふっ…♡
そう、だよ…エスティアが、私のはじめて…♡」

囁きの羞恥と、今の事実の背徳感が、少女の身体を高ぶらせていた。
きゅうきゅうと少年の其処を、きつく中は絞めあげて。

エスティア >  
「くぁっ……!んっ!……先輩…っ……そんな締められると…僕…我慢が…っ…。」

ゆっくりと突き上げてた動きが締め付けの快感で少しづつ早くなり、いつの間にか室内に水音と肌と肌がぶつかる音が響くほどの勢いで最奥を突き上げ続ける。

「普段の和泉先輩も…っ…可愛いですけどっ………今の先輩もっ……凄く可愛いです……っ!」

楠間 和泉 >  
「ふくっ…♡いい、よ、エスティア…♡我慢、しなくて…♡」

交われば交わるほどに、その水音が増していく。
零れ落ちた体液が、べっどを淡く湿らせる。

「いまのエスティアもっ…♡いつもより、男らしい、よ…っ♡」

その高ぶりに蕩けた表情で、とろりとした視線を交わらせた。

エスティア >  
「そ、それはぁ……か、格好はいつもあんな感じですけどっ…!んっ!!僕…男ですしっ…!くっ……先輩みたいな可愛い子の前くらいではっ……男らしくしたいですしっ……!」

蕩けた表情で見つめてくる姿に益々昂ぶり、激しく腰を撃ち付けるように動かし━━━

「っぅ……和泉…先輩っ……僕そろそろ限界……くぅぅっ!!」

自身の其処の形を覚えさせるようにし、締め付けてる膣内を擦り上げるように最奥を突き上げ……精を叩きつける。

楠間 和泉 >  
「まっ…!?♡そんなにぃ、激しく動いたらぁっ♡
わたし、変に…っ♡ふ、んんぅっ…!!♡♡」

激しく腰を打ち付けてくる少年のその動きに、少女はもはや耐え切れない。
きゅんきゅんと少女の中に溜まっていたそれも限界が近づき。

びくびくっ!と身体が震えて少女が達するのと、その精が中へと注がれたのは殆ど同時だった。

エスティア >  
「はっ…ぁはぁ……、出しちゃい…ました………、和泉先輩……大丈夫ですか……?」

脱力感を覚えつつ、繋がったままの状態でびくんと身体を震わせる先輩の耳元でそっと囁く。

楠間 和泉 >  
「はぁ…ふぁ…♡
大丈夫…エスティアは…?」

荒くなった息を何とか整えながら、耳元で囁く声に、静かに答えて少年を抱き寄せる。

エスティア >  
「ぼ、僕の方は全然大丈夫……。
………先輩……やっぱりえっちです…よね?」

抱き寄せられ、自分も抱き返しながらやっぱりそんな事を呟く。

「……正直、ちょっとだけ癖になっちゃいそうな気もして怖いですけど……。」

楠間 和泉 >  
「だ、だからそれはエスティアの…、もう。」

そう反論をして見るが、どうにも否定できない部分のあって口ごもる。

「……そ、そんなに?」

エスティア >  
「じゃ、じゃあ…お互い様ってことで……。」

自分も大して変わりないな、と思い…一旦納得して貰う為にもそんな事を呟く。

「………はぃ……。」

気まずそうに小さい声で肯定する言葉が零れる。

楠間 和泉 >  
「そ、そうしよう、うん…。」

そういう事にしておこうと、その言葉に同意した。

「……いいよ、そうなったらそうなったで、なんて。」

すっと視線を逸らしながら、半ば冗談めかしてそう答える。

エスティア >  
「………え?いいんですか……?」

冗談交じりとはいえ思わぬ言葉に思わず瞬きをしつつ聞き直す。

「っと言うか……先輩も……別にいつでも良いですからね……?その…僕で良ければですけど……。」

少々言い辛そうにしつつ言葉を返す。

楠間 和泉 >  
「…うん、その、嫌じゃなかったし…、私もその…。」

宙にのの字を書きながら、恥ずかしそうに告白して。

「エスティア以外と…しないよ、こんなこと、は。」

エスティア >  
「は…はい………。」

恥ずかしそうな告白を聞きつつ、自分もつい視線を泳ぐ。

「ほ、本当ですか……?よ、よかった……。
……と、とりあえず……色々と片付け……しましょうか…?」

話題を変える為だったのあるが、いつまでもこのまま…というのも良くないのでそんな提案をする。

楠間 和泉 >  
「そそ、そうだね…!
うん……名残惜しい気もするけど、片付けようか。」

静かに手を放して、互いに動けるようにする。

エスティア >  
「で、です……それじゃぁ……。」

繋がったままだったのをゆっくりを抜き、先に先輩の方を綺麗にする為にティッシュに手を伸ばし、先輩の身体の方を拭いていく。

楠間 和泉 >  
「んんっ…♡
……ありがと、エスティア。」

ティッシュで互いの身体の体液を拭っていく。
少々の身震いと、何ともいえない感覚のまま、それを続けていく。

エスティア >  
「と、とりあえず……こんな感じで大丈夫……ですか?」

大体拭き取った後で改めて先輩の裸が目に入り、視線を逸らす。

「ふ、服も……着た方がいいかなぁ……って……。」

楠間 和泉 >  
「うん、大丈夫…そっちはどう?」

ひとまずはすっきりとした身体を軽く動かして頬笑みを浮かべて。

「と…そうだね、うん、もうパジャマでいいかなぁ。」

ちらりと視線を時計に向ける。
既に日を跨ごうとしているそれに苦笑しながら。

エスティア >  
「だ、大丈夫です……ありがとうございます…。」

同じように身体を軽く動かしてから返事をする。

「っと……僕は流石に帰らないと…泊まる訳にもいかないですし。」

パジャマ姿を想像して可愛いな…と思いつつ、元々雨宿りで来た事を思い出す。

楠間 和泉 >  
「ん、ならよかった。
……あれ、泊まって行かないの?」

パジャマを手にしながら、こてりと首をかしげる。
もう遅いのだから泊まって行くものだと勝手に思っていた。

エスティア >  
「ふぇ…?せ、先輩が良いならいいですけど……。」

首を傾げる姿にドキっとしつつも、泊まって邪魔にならないかな…?と…そんな考えが過ぎってしまい、そんな言葉を返す。

楠間 和泉 >  
「ぜんぜん構わないよ?
てっきり泊まって行くものだと思ってたし。」

ふわりと笑いかけながらそう答える。
半ば見せ付けるかのように、ふわふわとした淡い桃色のパジャマに着替えつつ。

エスティア >  
「そ、それじゃあ……お世話になります……。
っと……先輩、結構可愛いパジャマ着てるんですね…?」

桃色のパジャマ姿を見て素直な感想を述べる。

「……僕の制服乾いてるかな……。」

考えたら着替えなど持ってきてるはずもなく、ツインテールも解けて裸のままぽつりと呟く。

楠間 和泉 >  
「えっと…あ、ありがとう。
…なんだか恥ずかしいなぁ。」

ぽりぽりと指で頬を掻きながらぽつりと。

「…私の昔着てたパジャマならあるけど、着る?」

エスティア >  
「似合ってるから大丈夫ですよ?」

恥ずかしがる姿を微笑ましく見つつ。

「……はい……お借りします……。」

流石にこのままとはいかないので大人しく頷く。

楠間 和泉 >  
「に、似合ってる、かぁ。」

少しだけ、嬉しそうな頬笑みを向けて。

「うんうん、じゃあちょっと持ってくるね。」

ベッドから起き上がり、近くのタンスを漁ればパジャマを取り出す。

「んー、これでいいかな?」

そうして差し出したパジャマはふりふりとした水色の、少女の体格よりは小さなパジャマだ。

エスティア >  
嬉しそうな微笑みに小さく頷く。

「……先輩、その…先輩のパジャマだから変とかそういうのじゃないんですが、凄く可愛い感じのパジャマ…ですね……。」

ふりふりとした水色のパジャマを見てそんな感想が浮かぶ。

「……ぼ、僕が着て似合わなくても笑わないでくださいね……。」

楠間 和泉 >  
「あはは…こう言うの、昔から好きで…。」

実は趣味なのだとポツリと零す。

「大丈夫、エスティアなら私より似合うと思うし。」

エスティア >  
「なるほど…先輩は可愛いものが好き…っと……。」

何となく頭の片隅にメモしておく。

「……こ、根拠が無さ過ぎて疑問なんですけど……。
ま……まぁいいや、それじゃちょっとお借りします…。」

苦笑いしつつパジャマを受け取り、袖を通す。

「ど、どうですか……?」

先輩が着てたパジャマと意識してちょっとドキドキしつつ、パジャマを着た姿を見て貰う。
髪を下ろしてるのもあって見た目だけなら完全に少女にしか見えないだろう…。

楠間 和泉 >  
「みんなには内緒でね?
…あんまりイメージと違うだろうし。」

話す相手がいるかは分からないが、一応そう言っておく。

「根拠はあるよー?
普段のエスティアはいつも私よりかわいいし…うん、やっぱりすっごい似合ってる!」

ちょっと眼をキラキラとさせながら、少女のようなかわいらしい少年にぐいぐいっと身を寄せる。

エスティア >  
「い、言わないですよ……勿体無い…じゃなくて、先輩が困っちゃうだろうし…。」

一瞬本音を言ってしまって慌てて訂正する。

「……普段も先輩の方が可愛いと思います…。
に…似合ってます?なら良かった……。」

男としてはあまり良くない気もするが、褒められて悪い気がするはずもなく、ちょこんと座ったまま先輩が身を寄せてくるのを受け入れる。

楠間 和泉 >  
「勿体無い?」

こてりと首をかしげる。
何げに少女は耳ざとかった。

「そうかなぁ、羨ましいくらいだけど…。
まま、それより、もう寝ちゃおう?疲れてるかも…だし。」

身を寄せた少年の手を取って、ベッドへと共に倒れこもうとする。

エスティア >  
「ほ、他の人に先輩のそういう姿を知られるのは嫌だなぁって…。」

もじもじしつ答える。

「は、はい……僕もだいぶ疲れちゃったので、今日はこのまま…。」

そのまま倒れ込み、妙な安心感を覚えながら目を閉じ、そのうち寝息が聞こえてくるだろう。

楠間 和泉 >  
「……そ、そっかぁ…。」

知識だけはある分、そういった言葉が何を意味するかはなんとなく察せてしまう。
少しだけ此方も恥ずかしくなり目を逸らす。

「うん、じゃあおやすみ、エスティア。」

手を繋いだまま、少女もゆっくり眠りに付く。
二つの寝息が聞こえてくるのに、そう時間はかからなかった。

ご案内:「学園街のとある住宅」から楠間 和泉さんが去りました。
ご案内:「学園街のとある住宅」からエスティアさんが去りました。