2020/08/23 のログ
ご案内:「オトナミソフト」にエコーさんが現れました。
エコー > オトナミソフトは美少女ゲームを販売しているゲームメーカーである。
店主兼開発部員兼社長ポジションである教師――を忍んで夏休み期間中の稼ぎとするため、開発に尽力を尽くしてきた。
様々なグレーゾーンを潜り抜け、取り潰しを免れて幾星霜。

『ん、ぅう♡ ねぇもっと……もっと犯して』

カウンターの奥。開発部署と書かれた看板の扉の向こうにて喘ぎ声がする。

『私のことをめちゃくちゃにして♡ おまんこびしゃびしゃになってるの♡』

テキストを打ち込み、背景と合わせて動くGIFアニメーションの女性。風紀委員キャラとタグ付けされたキャラクターは足を広げ、正常位で男の逸物を咥え込んでいる。
ループするアニメーションの動きに合わせて口パクをさせ、台詞を出力していく。音取りはまだしていないからテキストと自分の声で間隔を掴んでいくが。

「……なんか違う」

ゲームの喘ぎ声を出力した画面に手を翳し、窓を拭くようにウインドウに姿を現して台詞を消していく。

エコー > エコーは次のゲームの開発をしていた。
タイトルは『ワルイコとしよ♡』。風紀委員や公安など、学園の役職についている人たちをえっちな道に引きずり込んで背徳的な行為に勤しませるという学園エロコメである。
真面目系やカタブツ系、正義に厚い女生徒たちを次々をオトして行こうというコンセプトでそれぞれに個別エンドまで実装している。
しているのだが。

「……解釈一致にならないんだけど。もっとでろでろに落ちていく方が良いと思うけど~。
 わ~からないよっ」

筆を進めるのに難航していた。
非実在性AIのエコーでは仮想的なエロの描写を行うのにも限界がある。男女以前にそもそも性的なことに一切の経験のないエコーには人の模倣と学習、応用しか出来ないのだ。

『ここがね、うずうずしちゃってるの……お願い、あなたのたくましいおちんちんを頂戴……?』

言葉を重ねて台詞を朗読するがすぐに首を傾げた。
え、良いのかなこれ、抜けるのかなこれ。
エコーはキャラの解像度と解釈が不一致によっておこるスランプにドハマりしていた。

エコー > 「……男子生徒の手助けを借りたら早いかなぁ。解像度の高いキャラ像は身近にいる人に聞いた方が良いし~。
 委員会に所属してたりそっちに詳しい子が来てくれないかなぁ。報酬は出して上げるから~。
 ……学園の子をモデルにしてるって言ったら私アンインストールされそうだけど」
 
 もう天の頼みレベルにまで失墜したやる気。奮い起こすようにチェアに腰掛けて、ふと店を映している画面を一瞥。
 相変わらず客は少ないがちょくちょく買いに来てくれる常連の姿がチラチラと見えていた。

エコー > 「今まではお話の流れで和姦で出来たけど~今回はエロコメにチャレンジするわけだし、もうずっこんばっこんってなるでしょ~。
 催眠アプリ系や復讐に近い主人公像で、委員に所属する子たちをエロエロアヘアヘさせないとこう、支持を得られ無さそうだし~。

 でももう少しテレを混じらしてウブっぽい感じにした方がよくない? まだこの子は初期段階だし淫語は抑えめで良さそう。

 でもこういうのががっつりエロいのが良いっていうパターンもあるし」

ぐぐ、っと椅子に深く腰掛けてのけぞる。ぐるぐると回転させて頭を揺すってみる。堂々巡りは解決しなんだ。

エコー > 作戦を切り替えて、思いつくままにヒロインの台詞を打ち出して朗読してみる事にした。

『こんな感覚知らないぃぃい……クリトリス、だ、ダメ……こすれちゃっ』

『分からない♡ こんな気持ちいいの分からないの♡』

ぴた、とタイピングが止まる。

「……うぶな娘ってクリトリスって分かるのかな。保体の授業でしか形式ばったものしか習わないけど。でも勉強できる子なら性知識くらいあ……あ~。
 ある???」

エコー > 世の中色々な人がいる。夏休み中に一皮むけた子もいれば、妙にエロティックになって「あーこの夏で大人になったか~」というような子もいる。
こうして夏に2本のゲームを作って売りさばく美少女AIもいれば、3本目のゲームを作っているサイカワAIもいる。

「……んっと~最近はSNSやエロティックなコンテンツも充実しているから知識だけはある子もまあいる、と仮定して~。
 ……これはこっそり保体の先生に訊いてみよ」

懸念事項をひとつ残しつつ、続けてテキストを進めていく。

『ほらよ、バックなら苦しくないだろ、少しは楽になる』

ちなみに男にボイスは付属しないが雰囲気で低音ボイスを出していた。

『ひやぁん♡ 深い、深くまで入ってる♡ 子宮をキスされて悦んじゃってる♡

 動物みたいな交尾でこんなこと……屈辱的なはずなのに。
 私いっぱいきゅんきゅんしちゃってるぅ♡』

エコー > この一人朗読遊びは開発に並んで虚無だが、エコーには何となく楽しい時間だった。
普段表の世界では絶対に喋らない口調を疑似的にロールプレイして遊び倒せる有意義な時間だからだ。
出力された文字情報だけでは感情的とは言えない。思いを込めて紡ぐからこそ情感的な得難い経験を獲得できる。
己は子作りも出来ないしそんな所感の一切は分からないから、言葉だけでは『濡れない』し発情も難しいのだけど。

『知らないことをいっぱい知っちゃった♡』

このヒロインのように知らないことを知る時が来るのだろうか。万感の思いを込めながらエコーは演じる。

エコー > ――まあ別に自分の声で収録されるわけではないから、やはり虚無だ。霞を食べる仙人か。

『中に出してぇ♡ 私の中にいっぱい種付けしてぇええ♡』

白濁差分、白フラッシュ3回。それだけの指定を入れたスクリーンと共に、射精感を表現する画面にハートが浮かび上がる。
感極まってふるふると肩を震わせるエコーはどっさりと疲れ果てて伸びをする。

「……や、やっと1ルート分終わった……。あとは流れで進めよう」

そして一時間かけてテキストを完成し終えたエコーは、今日もゲームを作り続ける。

ご案内:「オトナミソフト」からエコーさんが去りました。